需要予測とは
まず、需要予測とは何かについて解説します。
自社商品における売れ行きの傾向を予測すること
需要予測とは、自社商品における今後の需要量を予測することです。自社の商品やサービスへの需要要因を分析して、市場調査を行ったり、予測モデルを活用したりして導き出します。
企業は、需要予測を行うことで、仕入れから販売までの計画を正確に立てられるようになります。
在庫の適正化・利益最大化のために必要
企業の収益を最大化するには、在庫を適正化し、販売機会の損失を防がなくてはいけません。そこで役に立つのが需要予測です。
需要予測を正確に行えれば、過剰な在庫を抱えてしまうリスクが低減します。それに伴い、管理にかかる費用の無駄な部分を削ることが可能です。大きな販売機会が訪れた際の在庫不足も未然に防げます。
需要予測の計算手法
代表的な需要予測の計算手法は以下の5つです。
- 算術平均法
- 過去の一定期間の販売実績を単純に平均化して予測を行う方法です。例えば過去6か月の販売数がそれぞれ100, 110, 120, 110, 90, 100だった場合、これを6で割り算して平均値(105)を求め、次月の予測値とします。
- 移動平均法
- 特定の期間の販売実績の平均を計算し、その期間を一定のステップで移動させていくことで、連続した予測値を得る方法です。例えば3か月の移動平均で予測する場合、1-3か月、2-4か月、3-5か月…といったようにデータの範囲を移動させながら平均を取ります。この方法は季節性の影響を取り除くためにも用いられます。
- 加重移動平均法
- 移動平均法と同様に一定期間のデータを用いますが、最新のデータにはより大きな重みを、古いデータには小さな重みを与えて平均をとります。これにより、新しい傾向や変動をより敏感に反映させることができます。例えば3か月のデータがあるとすると、最新月には最大値が1の重みを付け、一つ前の月には重み0.9、さらに前の月には重み0.8を与えて加重平均を計算する方法があります。
- 指数平滑法
- 過去の予測値と実際のデータを元に新しい予測値を計算する方法です。この方法の特徴は、新しいデータが得られるたびに、過去の予測と実際のデータの間で「滑らかに」調整を行うことです。
- 具体的には、たとえば過去の予測販売数が100で、実際の販売数が105だった場合、この5の差を平滑化係数(例: 0.2)で掛け合わせ、新しい予測値に反映させます。この場合、新しい予測は100 + (5 x 0.2) = 101となります。この平滑化係数は0以上1以下で定義され、予測誤差を最小化するように選択し、過去のデータにどれだけ影響を受けるかを調整します。
- 回帰分析法
- 一つ以上の独立変数と依存変数の関係をモデル化し、未来の需要を予測する方法です。たとえば、天気やイベントの有無といった外部要因と売上の関係をデータに基づいてモデル化し、そのモデルを掛け合わせることで未来の売上を予測することが可能となります。
自社で取り扱っている商品・サービスと照らし合わせ、適した需要モデルを選択しましょう。
需要予測を正確に行うポイント
需要予測を正確に行うには、どのようなポイントを意識すればよいのでしょうか。
予測と結果の比較検証を継続して行う
いくら正確なデータを取得して需要予測を行おうとしても、必ず誤差が生じます。下記のような外的要因を事前に予測することが難しいためです。
- ・競合他社から商品がリリースされた
- ・天候による影響が出た
- ・取引先の状況が変化した
このとき、誤差をそのままにしてはいけません。なぜ誤差が生じたのか分析して、次回以降の需要分析へ反映させましょう。比較検証を継続的に行うことが、より高精度な需要予測につながります。
最新の正確なデータを使う
新しいデータであればあるほど正確な需要予測につながります。また、最新のデータを揃えられても、情報の信憑性が低ければ意味がありません。
この2つは基礎的な部分ですが、失念しがちなポイントでもあります。数年前のデータよりも前日のデータを用意する、情報の更新や確認を怠らないといった点に注意しましょう。
異常値があることを考慮する
異常値とは、売上が一時的に増減した際の数値を指します。下記のような出来事が要因となり発生します。
- ・メディアに取り上げられた
- ・販促キャンペーンを実施した
- ・国内の経済状況に大きな変化が起こった
発生した異常値をそのままにすると正確な需要予測ができません。そのため、除外するなどの対応をすべきです。
需要予測システムを活用する
担当者の経験や勘に頼る手動での分析には限界があります。高精度な需要予測を行うには、より多くのデータを多角的に分析する仕組みが必要です。
AIを活用した需要予測システムであれば、過去の販売実績・天候・競合他社情報などのさまざまな情報をビッグデータとして分析できます。また、複数の要因から結果を算出できる機能を備えており、その商品に合わせた最適な需要予測を行うことが可能です。
こういった性能・機能により、発注業務の効率化や余剰在庫の削減、欠品による販売機会の損失防止が期待できます。企業収益の最大化を図る上で重要な役割を果たします。
以下の記事では需要予測システムについて詳しく解説しているので、導入を検討している人は参考にしてみて下さい。
需要予測をシステム化するメリット
需要予測をシステム化することで、主に下記の3つのメリットがあります。1つずつ解説していきます。
- ・効率的なデータ分析
- ・正確性の向上
- ・経営判断の高速化
効率的なデータ分析
手作業でのデータ収集や分析には多くの時間がかかります。需要予測をシステム化することで、過去のデータの自動収集や計算が可能となり、人手を大幅に削減しながら迅速に分析を行うことができます。
正確性の向上
人の手作業での分析ではミスが発生する可能性があります。システム化することでデータの一貫性を保ちつつ、精度の高い予測を行うことが可能となります。また、多くのデータを扱うことができるため、より細かい予測が実現できる点もメリットの1つです。
経営判断の高速化
迅速かつ正確な予測が可能となることで、経営に必要な情報を即座に入手できます。これにより、市場の変化や状況に応じた迅速な判断ができ、ビジネスチャンスを逃さず、リスクの回避もしやすくなります。
以下の記事では需要予測をシステム化するためのおすすめツールを紹介しています。システム導入を検討している方は参考にしてみてください。
実施するときのポイントを押さえて需要予測を導入しよう!
需要予測とは、自社の商品やサービスが今後どのくらい売れるか予測することです。在庫の適正化や収益を最大化するために導入されています。
需要予測を正確に行うためのポイントは下記の通りです。
- ・予測と結果の比較検証を継続して行う
- ・最新の正確なデータを使う
- ・異常値があることを考慮する
- ・需要予測システムを活用する
需要予測のポイントを押さえて、自社での実施を検討してみましょう。