iPaaSとは
iPaaSとは、社内運用しているさまざまな業務システムやサービスなどを統合管理するプラットフォームのことです。ITツールを有効活用するには、社内で運用しているすべてのソフトウェアやアプリケーションのデータ統合・管理が欠かせません。
しかし、次々と登場するソフトウェア同士を、スムーズに連携させるのは困難です。iPaaSは、クラウドやオンプレミスといった運用形態にかかわらず、シームレスなデータ統合や業務連携を可能にします。
iPaaSの基本機能とできること
iPaaSを導入することで、データ・システム・ワークフローの連携ができるようになります。iPaaSの基本機能は以下のとおりです。
- ■統合管理
- システム統合のインターフェースやテンプレート活用・作成、統合管理のポートフォリオ管理が可能。
- ■データの連携・変換
- 自社内の業務システムやアプリの独立したデータを変換し連携が可能。各システムのデータを一元管理できるようになります。
- ■ワークフローの整理・自動化
- 連携したシステムのタスクを整理し、ワークフローをスケジューリングすることで自動的に実行が可能。定時に行う業務の自動化・効率化に貢献します。
- ■イベントの検知・自動処理
- 特定のイベントを検知した場合、自動で処理の実行が可能。定時で行うのではなく、特定の現象が起きた場合にワークフローを実施したい場合に活用できます。
- ■セキュリティ対策
- シングルサインオン(SSO)やアクセスコントロール、権限の付与などの管理が可能。
iPaaSを使った業務自動化は、さまざまな分野で活用できます。例えばメールに添付された書類やデータは、自動で文字データ化し、任意のフォルダに保存が可能です。さらに、Googleスプレッドシートで入力したデータを、SFAやCRMなどの既存ツールと連携させられます。今まで人力で行われていた作業を自動化できるため、業務効率化の手法として有効です。
iPaaSが注目されている理由
iPaaSはなぜ多くの企業で導入されているのでしょうか。iPaaSが注目されている理由を紹介します。
SaaSの導入によるデータの点在化を解決できる
SaaSはソフトウェアをインターネット経由で利用する仕組みであり、データ管理をソフトウェアごとに行う必要がありました。そのため、必要なときに必要な情報を取得しにくいことが問題でした。
iPaaSの登場によって、各所に点在するSaaSサービスが効率的に統合管理され、業務効率化が実現しました。また、従来のようにプログラミングを使って独自システムを開発する必要がなく、企業が保有する各データを統合管理できることがiPaaSが注目される理由のひとつです。
日本製のiPaaSが登場しはじめた
iPaaSはかつて海外製が主流でしたが、近年は日本のベンダーが開発・提供する製品も増えてきました。海外製品のように英語でマニュアルをみたりトラブルを解決したりする必要がないため、国内でも注目されはじめています。
iPaaSのメリット
iPaaSを導入すると、具体的にどのような効果を得られるのでしょうか。iPaaSのメリットを紹介します。
コストと時間をかけずにシステム統合ができる
iPaaSを導入すると自社のサーバからクラウド上での業務運用に切り替わるため、サーバ負荷の低減や管理コスト・リソースの削減が可能です。さらにデータ連携がノーコードで実現でき、プログラミングなどの専門スキルが必要ありません。
業務フローを効率化できる
iPaaSによる連携が進むと、それぞれのシステムでデータ管理する必要がなくなり、業務フローが効率化されます。データ連携によりシステムごとに手動入力が不要になるため、データの共有もスムーズです。また、トリガーを設定すれば、必要なときに必要なアクションを実施できます。
多角的な分析が迅速に行える
各部署に点在していたデータを集約することで、多角的なデータ分析が可能になります。従来のように、必要なデータがあれば担当者に確認したり、Excelなどにデータ入力して分析したりする必要がありません。CRMやアクセス解析ツールなどで収集したデータを解析し、経営判断やROIの可視化に利用できます。
新規システムをスムーズに導入できる
iPaaSを利用していれば、今後新しくリリースされるクラウドやSaaSサービスなどに対応できます。従来のように、新規システム導入時に既存システムとの連携性を考える必要がありません。どのようなサービスとも連携できるため、新規アプリケーションやソフトウェア導入の選択肢が広がります。
iPaaSのデメリット
iPaaSの導入で得られるのは、メリットだけではありません。iPaaSのデメリットを紹介します。
APIが非公開のサービスとは連携できない
iPaaSでデータ統合するには、元サービスとのAPI連携が必要です。そのためAPIが公開されていないサービスとは、システム統合できません。iPaaSを導入する際は、API連携に対応しているか確認しましょう。連携時に通信データを秘匿できるセキュリティ体制も重要です。
ITスキルが乏しいと扱えない場合がある
iPaaSは操作の難しい製品もあるため、ITスキルが乏しいと扱えない場合があります。特に海外製品だと、英語力がないとマニュアルの読解やトラブルなどに対応できません。また、レシピ型だとノーコードでデータ連携のフローを作成できますが、EAI型やESB型だとシステム連携に関する高度な知識が不可欠です。
iPaaSのタイプ
iPaaSツールは以下の4つのタイプがあります。
- ●レシピ型
- ●ESB型
- ●ETL/ELT型
- ●EAI型
それぞれのタイプについて詳しく解説します。
レシピ型
データ連携によるアクションやフローを作成し、レシピとしてテンプレート化するタイプです。直感的な操作で利用できるため、プログラミングなどの専門知識が必要ありません。「毎日9時になったらデータ連携する」といった、トリガーやアクションを設定するのが一般的です。
ESB型
SaaSやオンプレミスなどを連携するためのOSを作成するタイプです。データの統合管理だけでなく、SaaSのAPI管理・設計ができる製品もあります。導入コストが非常に高いため、インフラストラクチャが充実している大企業向けの製品です。
ETL/ELT型
アプリケーションなどのデータをシステム上で抽出し、データウェアハウスに格納するタイプです。レシピ型のようにデータ連携するのではなく、データを処理するためフローを構築します。複数のSaaSを共同運用している企業に有効です。
EAI型
複数のシステムで記録されているデータを、カタログ化して処理するタイプです。定期的に同期や更新を行う「ETL」とは異なり、好きなタイミングで必要なデータを統合管理できます。データ処理のフローが複雑化しやすいため、大量のデータ連携には向きません。複雑な処理をするほど、導入コストも高くなる傾向があります。
iPaaSの選定ポイント
自社にあうiPaaSを導入するには、機能や料金プランなど基本的な情報に加え、どのような点に注意すればよいのでしょうか。iPaaSを選定する際のポイントを3つ紹介します。
日本製か海外製か
海外製のiPaaSは、使いこなすのにある程度の英語力が必要です。海外での利用を想定しているため、国内でのビジネス環境にあわない可能性もあります。国内製SaaSとの連携性も考慮しなければなりません。そのため、社内に英語力の高い人材がいない場合は、海外製を避けた方がよいでしょう。
日本製のiPaaSは、国内でのビジネス環境が想定されているため、国内製SaaSとの連携やマニュアルの読解、トラブルなどに対応できます。
連携できるアプリの数
連携できるアプリの数が多いほど、システム連携の幅が広がり、データ統合が効率化されます。そのため、iPaaSを導入する際は、現在運用しているシステムのほか、できるだけ多くのアプリに対応している製品を選びましょう。事前に今後導入予定のSaaSがないか、検討することをおすすめします。
操作のしやすさ
高機能のiPaaSを導入しても、チームメンバー全員が同じように操作できなければ意味がありません。ツールの使用が属人化すると、突然のトラブルに対応しにくくなり業務が滞ります。業務の引き継ぎもスムーズに行えません。そのため、自社の担当者が誰でもシステム連携できる操作性をもった製品をおすすめします。
【日本製】iPaaSを比較
近年、日本でもiPaaSの開発が進み、国内のiPaaS市場の成長が注目されています。ここからは、主要な日本製iPaaSを紹介します。
《Workato》のPOINT
- 誰でも自動化を実現!ノーコード、ローコードだから簡単
- システム連携を容易に!400種類以上のアプリと簡単に接続
- すぐに使える!22万以上の自動化ワークフロー『レシピ』を提供
リックソフト株式会社が提供する「Workato」は、1,000種類以上のアプリケーションを統合管理できるツールです。トリガーとアクションを設定することで、自社の目的に最適な統合環境の構築が可能です。セキュリティが充実しており、強固に暗号化されたシステム連携により安全な運用につながるでしょう。
価格 |
ー |
無料トライアル |
◯(30日間) |
主な機能 |
データ統合、ノンプログラミング自動化設計、Slackのbot化、ファイル暗号化など |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
《ActRecipe》のPOINT
- お客様要件に合わせた「レシピ」をワンストップで提供
- ノーコード/ローコードでSaaS連携
- 国内SaaSへの柔軟な対応と手厚いサポート
アクトレシピ株式会社が提供する「ActRecipe」は、自社運用のSaaSに点在するデータを統合管理できるツールです。データ処理のフローを設計することで、クラウド間のシステム連携を実現します。データ統合による業務効率化はもちろんのこと、社内IT化の促進にも効果的です。
価格 |
ー※無料プランあり |
無料トライアル |
ー |
主な機能 |
データ統合、内部統制強化など |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
《bindit》のPOINT
- 多彩なレシピから自動化したい業務を選択するだけで簡単に自動化
- 数ステップで完了でき、誰でも使用できるシンプルなUIを用意
- 自社の業務に合うように自由な業務フロー作成が可能
「bindit」は、株式会社ユニリタが提供しているクラウド型のiPaaSツールです。業務フローのテンプレートを選ぶだけで、簡単にクラウド業務が自動化します。RPAのような機能性の高さが特徴ですが、導入や運用のシンプルさもポイントです。GmailやGoogle Drive、スプレッドシート、Slackなどさまざまな連携が実現します。
価格 |
月額30,000円/10ユーザーまで |
無料トライアル |
◯(3か月) |
主な機能 |
ユーザー招待、フロー作成、レシピなど |
《BizteX Connect》のPOINT
- 社内チャット・ストレージ・各種SaaS等、アプリ連携がカンタン
- APIのないシステムでも、RPAとの連携で自動化可能
- ノウハウの詰まった独自システム連携テンプレートを提供
BizteX株式会社が提供する「Biztex Connect」は、ノンプログラミングで社内運用中のSaaSをシステム連携できるツールです。ChatWorkやZoomなど、主要なWebサービスとデータ統合できます。実績が豊富なテンプレートが提供されているため、未経験でも問題ありません。また、同社が提供するRPA「cobit」との標準連携にも対応します。
価格 |
ー |
無料トライアル |
◯(7日間) |
主な機能 |
テンプレート提供、ノンプログラミング自動化設計など |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
DataSpider Servista
株式会社セゾン情報システムズが提供する「DataSpider Servista」は、プログラミングなしでさまざまなアプリやシステムを連携できるツールです。直感的な操作だけで、スピーディーにデータ統合できます。Javaを活用した高い処理能力が実装されているため、大容量のデータ管理も問題ありません。
価格 |
月額200,000円~ |
無料トライアル |
◯(30日間) |
主な機能 |
データ統合、ノンプログラミング自動化設計、カスタム処理の実装、運用支援サポートなど |
【海外製】iPaaSを比較
現在、世界や日本で普及しているiPaaS製品の多くが、アメリカをはじめとした海外製品です。そのなかから、主要な海外製iPaaSを紹介します。
《Boomi》のPOINT
- 様々なシステムやデータをクラウドやオンプレミスをまたいで連携
- SaaSにも対応するコネクターを提供し、ローコードでシステム連携
- APIの作成・管理やマスターデータ管理の機能を提供する製品群
Boomi Japan合同会社が提供する「Boomi」は、SaaSやオンプレミス環境に管理されているデータを統合管理できるツールです。システム上でデータを統合・検出することで、人やサービスをシームレスに連携できます。ノーコードでのワークフロー作成も可能です。
価格 |
ー |
無料トライアル |
◯(30日間) |
主な機能 |
データ統合、ノンプログラミング自動化設計、レシピ(テンプレート)、共同作業など
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※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
Zapier
Zapier Inc.が提供する「Zapier」は、6,000個以上のアプリをすべて1か所に連携できるiPaaSです。SlackやShopifyなどの主要なWebサービスに加え、運用中のSNSやCMSなどとも連携できます。セキュリティ体制が充実しており、データ漏えいの心配もありません。月間100タスクまでのデータ連携なら、無料プランのまま利用できます。
価格 |
初期費用無料 月額費用3,051円~ ※無料プランあり |
無料トライアル |
◯(14日間) |
主な機能 |
業務自動化、マーケティング、ワークフローの自動作成、データのフォーマットなど |
Informatica
インフォマティカ・ジャパン株式会社が提供する「Informatica」は、社内保有するあらゆるデータを連携できるツールです。統合管理だけでなく、データ同士の関連性も可視化できます。AIと人間の相互作用によって、高品質なデータ管理が可能です。
価格 |
ー |
無料トライアル |
◯(30日間) |
主な機能 |
データ統合管理、カタログ化、データ品質の管理など |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
MuleSoft
「MuleSoft」はSalesforceが提供しており、あらゆるサービスやアプリケーションを連携できるツールです。データの統合管理により、開発フェーズへの移行がスムーズに進むため、生産性の向上につながるでしょう。データの統合状況をグラフ化できるため、必要な情報を即座に把握可能です。
価格 |
ー |
無料トライアル |
◯(30日間) |
主な機能 |
データ統合、データ変換、カスタムマーケットプレイスの構築など |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
iPaaSをはじめて導入するなら日本製がおすすめ
iPaaSは、低コストでシステム連携し業務効率化できる便利なツールです。しかし、APIが非公開なサービスとは連携できず、製品によってはITスキルがないと扱えません。
導入にはいくつかの比較ポイントがあるため、紹介したポイントを参考に自社にあった製品を比較検討するとよいでしょう。以下のボタンから各社製品の資料を一括請求できるので、iPaaSの導入検討に役立ててください。