市場POSとは
市場POSとは、スーパーやドラッグストア、コンビニなど複数の小売店舗から収集したPOSデータを集計し、市場全体の販売動向を分析するためのサービスです。自社の販売実績だけでは把握しにくい市場規模やシェア、競合商品の売れ行きなどを確認できます。
商品別・カテゴリ別・地域別などの販売金額や販売数量、平均価格、販売店率などを分析でき、メーカーや卸売企業を中心に、マーケティング戦略の立案や営業提案、商品企画、新商品の販売状況の把握などに活用されています。
市場POSと自社POSの違い
自社POSは、自社店舗や取引先など特定の店舗で発生した販売実績を管理するデータです。一方、市場POSは複数の小売企業や店舗から集めたデータを利用するため、市場全体における自社商品の位置づけを把握しやすい点が特徴です。
例えば、自社商品の売上が前年より増加していても、市場全体の伸び率がそれ以上であれば、市場シェアは低下している可能性があります。市場POSを活用すれば、自社の販売実績を市場全体や競合商品と比較しながら評価できます。
POSシステムの仕組みや種類について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
市場POSとID-POSの違い
一般的なPOSデータから把握できるのは、「何が・いつ・どこで・いくらで・何個売れたか」といった販売情報です。一方、ID-POSは会員IDなどと購買データをひも付け、購入者の年代や性別、購入頻度、併買商品、リピート状況なども分析できます。
市場規模や商品別シェア、競合商品の販売状況を確認したい場合は市場POSが適しています。購入者像や購買行動まで深掘りしたい場合は、ID-POSを利用できるサービスも比較するとよいでしょう。
市場POSを活用してできること
市場POSは、市場調査だけでなく、マーケティング施策の立案や小売企業への営業提案、商品企画など幅広い業務に活用できます。主な活用方法は以下のとおりです。
- ●市場規模やカテゴリ動向の把握
- ●自社商品と競合商品の比較
- ●小売企業への営業提案
- ●新商品や販促施策の評価
- ●商品企画や需要予測
市場規模やカテゴリ動向を把握する
カテゴリごとの販売金額や販売数量を時系列で確認すれば、市場が拡大しているのか縮小しているのかを把握できます。前年同期比や季節変動なども確認できるため、中長期的な市場トレンドの分析にも有効です。
例えば、市場全体では販売数量が減少している一方、販売金額が伸びている場合、価格改定の影響が考えられます。このように販売数量と金額を分けて確認することで、市場変化の背景を捉えやすくなります。
自社商品と競合商品を比較する
JANコードやブランド、メーカーなどの単位で販売実績を確認できるサービスでは、自社商品と競合商品の売れ行きを比較できます。販売数量や売上金額だけでなく、平均価格や販売店率などを組み合わせれば、売上変化の要因も分析しやすくなります。
競合商品の発売後の動向を継続して確認すれば、自社商品の市場での位置づけや、次の商品企画、価格設定を検討する際の参考にもなります。
小売企業への営業提案に活用する
メーカーや卸売企業の営業部門では、市場POSを商談資料の根拠として活用できます。市場で伸びているカテゴリや売れ筋商品、地域別の販売傾向などを提示すれば、経験や感覚だけに頼らない提案につながります。
市場では販売実績が高い一方、提案先では取り扱いが少ない商品を把握できれば、品揃えの拡充や棚割りの見直しを提案する材料にもなります。
新商品や販促施策の効果を評価する
日次や週次データを利用すれば、新商品の発売直後やキャンペーン実施後の販売推移を追跡できます。テレビ放映やSNSでの話題化、気温変化などの前後で売上を比較するなど、販促効果を検証する際にも役立ちます。
市場平均や競合商品の動きと比較することで、自社商品の販売増加が施策によるものなのか、市場全体の伸びによるものなのかを判断しやすくなります。
商品企画や需要予測に活用する
市場POSに蓄積された長期データを分析すると、商品の容量や価格帯、フレーバーなどに関するトレンドを把握できます。どのような商品群が伸びているかを確認し、新商品開発や既存商品のリニューアルに活用できます。
また、気象データや自社の出荷実績などを組み合わせれば、季節商品の需要予測や販売計画の精度向上にもつながります。
販売実績をもとに将来の需要を予測したい場合は、需要予測システムの活用も選択肢です。以下の記事では、おすすめ製品や選び方を紹介しています。
市場POSを比較するときの選び方
市場POSは、対象となる店舗や商品カテゴリ、データの更新頻度、分析できる切り口などがサービスによって異なります。単純にデータ量や収集店舗数だけで比較するのではなく、どの市場を把握し、どのような分析に活用したいのかを明確にすることが重要です。ここでは、市場POSを比較する際に確認したいポイントを解説します。
- ●対象業態・店舗・商品カテゴリが自社に合っているか
- ●データの対象店舗やサンプル構成に偏りがないか
- ●必要な頻度でデータが更新されるか
- ●必要な粒度や切り口で分析できるか
- ●市場POSだけで十分か、ID-POSも必要か
- ●必要な期間まで過去データを遡れるか
- ●データの出力・連携・二次利用に対応しているか
- ●操作しやすくサポート体制が整っているか
対象業態・店舗・商品カテゴリが自社に合っているか
まず確認したいのが、どのような小売業態や店舗、商品カテゴリを対象としているかです。スーパーを中心とするサービスもあれば、ドラッグストアやコンビニ、ホームセンター、家電量販店、ECなどまでカバーするものもあります。
また、加工食品や飲料、菓子、日用品などを幅広く扱う一方、生鮮食品や惣菜、インストアコード商品などは対象範囲が異なる場合があります。自社商品の主要な販売チャネルやカテゴリと、サービスの収集対象が合っているか確認しましょう。
データの対象店舗やサンプル構成に偏りがないか
市場POSは、収集店舗数の多さだけで判断しないことも重要です。特定の地域やチェーンにデータが偏っている場合、自社が把握したい市場の実態と異なる傾向が表れる可能性があります。
全国市場を分析したい場合は、地域ごとの店舗構成や対象チェーン、サンプル設計なども確認しましょう。また、収集した販売実績をそのまま集計するのか、サンプルから市場全体を推計するのかによってもデータの意味は異なります。
必要な頻度でデータが更新されるか
市場POSには、日次・週次・月次などさまざまな更新頻度があります。新商品や短期間のキャンペーンを分析したい場合は日次データ、中長期の市場分析や定例レポートが中心であれば週次・月次データでも対応できる場合があります。
なお、「日次更新」であっても、販売当日の実績がすぐ反映されるとは限りません。販売から何日後に確認できるのかまでチェックするとよいでしょう。
必要な粒度や切り口で分析できるか
商品別やブランド別、メーカー別だけでなく、地域、業態、価格帯、店舗規模など、どのような軸でデータを切り分けられるかも重要です。
マーケティング部門では市場シェアや競合比較、営業部門では地域別・業態別分析、商品企画部門では長期トレンドや価格帯別分析など、求める切り口は異なります。現在作成している分析資料や商談資料を洗い出し、必要な分析を再現できるか確認しましょう。
市場POSだけで十分か、ID-POSも必要か
市場全体の販売状況やシェア、競合商品の売れ行きを把握することが目的であれば、市場POSを中心に比較します。一方、「誰が購入したのか」「再購入したか」「どの商品と一緒に買われたか」まで分析したい場合は、ID-POSも候補になります。
特に商品企画やブランドマーケティングでは、年代・性別、リピート率、併買などのデータが役立ちます。必要以上に分析範囲を広げると費用も増えるため、利用目的に応じて判断しましょう。
必要な期間まで過去データを遡れるか
中長期的な市場変化を分析する場合は、過去データの蓄積期間も確認しましょう。数年程度だけでなく、10年、20年以上前まで遡れるサービスもあります。
カテゴリの成長・縮小や価格推移、消費者ニーズの変化を検証する商品企画部門では、長期データが特に重要です。過去の類似商品の販売推移を、新商品の企画や需要予測に活用する方法もあります。
データの出力・連携・二次利用に対応しているか
市場POSのデータを自社で加工したい場合は、Excel・CSVなどの出力形式や外部データとの連携方法を確認しましょう。自社POSや出荷実績、広告データ、気象データなどと組み合わせれば、より多角的な分析が可能になります。
また、市場POSのデータを営業資料や広告、商品パッケージなどに使用する場合は、二次利用条件も確認が必要です。「カテゴリ売上No.1」などの表記に利用する際、申請や追加料金が必要になるケースもあります。
市場POSと自社の販売データなどを組み合わせて分析したい場合は、BIツールの活用も検討しましょう。以下の記事では、おすすめのBIツールや選び方を紹介しています。
操作しやすくサポート体制が整っているか
高機能な市場POSでも、担当者が分析画面を使いこなせなければ利用が定着しません。検索条件の設定やグラフ表示、レポート出力などを、デモや無料トライアルで確認するのがおすすめです。
あわせて、操作方法だけでなく、分析テーマの相談や研修、レポート作成支援などを受けられるかも確認しましょう。市場POSをはじめて導入する企業ほど、データ活用まで支援してくれるサービスが適しています。
おすすめの市場POS・関連データサービスを比較
ここからは、市場分析や競合比較、営業提案、商品企画に活用できる代表的な市場POS・POSデータサービスを紹介します。あわせて、購入者属性やリピート、併買など購買行動まで分析したい企業向けに、ID-POSサービスも取り上げます。
RDS
- 小売業358企業・7,300店舗・SMサンプルは3,800店舗で国内最大級
- 食品・日用品全カテゴリを売場目線の独自分類ですぐに分析可能
- 新商品・気温相関・売価動向・30年POSなど分析機能が充実
株式会社マーチャンダイジング・オンが提供する「RDS」は、スーパー・ドラッグストア・コンビニの販売実績を収集した市場POSデータサービスです。食品・日用雑貨に加え、生鮮・惣菜を含むカテゴリを横断して分析できます。スーパーでは2日後に日別データを閲覧でき、週別・月別・年別や30年以上の長期データも利用可能です。市場トレンドや新商品、価格動向などの分析に役立ちます。
SRI+® (株式会社インテージ)
- 全国約6,000店舗の販売実績をもとに国内売上を推計。
- スーパーやコンビニ、ドラッグストア、ECなどに対応。
- 月次に加え週次・日次データにも対応し、市場分析に活用可能。
KSPワイド (株式会社KSP-SP)
- 全国約1,400店舗のPOSデータを収集・提供。
- 食品SMとドラッグストアの食品データに対応。
- 月額定額制で、1契約につき何名でも同時ログイン可能。
POS EYES (株式会社日本経済新聞社)
- 約2,000の商品分類から売れ筋やトレンドを分析。
- 最短2日後から商品の販売状況を確認可能。
- ランキングや時系列など多彩な帳票を数クリックで表
BCNランキング・データサービス (株式会社BCN)
- 約150品目の販売実績データを日次・週次・月次で提供。
- メーカー別・シリーズ別・スペック別など多角的に分析可能。
- 専用Webツールで販売実績の閲覧やランキング検索が可能。
Dolphin Eye (株式会社True Data)
- キーワード検索と直感的なクリック操作でID-POSを分析。
- 分析データやグラフを表示し、ダウンロードにも対応。
- PC・スマホなどマルチデバイス対応で商談時にも分析可能。
Eagle Eye (株式会社True Data)
- 年間アクティブ会員6,500万人規模の購買データと連動。
- 2日前のデータを反映し、日次更新で新商品も分析可能。
- システム導入不要で、インターネット環境のみで利用可能。
real shopper SM (株式会社ショッパーインサイト)
- 生鮮・惣菜を含めた全食品のID-POSデータを分析可能。
- 100以上の分析バリエーションを用意し、多角的に分析。
- 商品・会員を自由に分類できるユーザーマスター機能を搭載。
スーパーマーケット向けの市場POSを比較したい方は、以下の記事も参考にしてください。
市場POSを導入する際の注意点
市場POSは、市場や競合の販売動向を客観的に把握できる一方、データの対象範囲や集計方法を理解せずに利用すると、分析結果を誤って解釈する可能性があります。導入前に押さえておきたい注意点を確認しましょう。
市場全体の実数とは限らない
市場POSでは、日本国内のすべての小売店舗からデータを取得しているわけではありません。参加店舗の実績を集計するサービスや、サンプル店舗から市場全体を推計するサービスなど、集計方法も異なります。
そのため、同じカテゴリでもサービスによって市場規模やシェアの数値が異なる場合があります。複数サービスの数値を単純に比較せず、対象店舗や集計・推計方法を理解したうえで活用することが重要です。
市場POSだけでは売上変化の原因を断定できない
市場POSで自社商品の売上減少がわかっても、その原因まで特定できるとは限りません。販売店舗数の減少、価格改定、競合商品の販促、広告、天候など、販売実績にはさまざまな要因が影響します。
自社の出荷・販売実績や広告データ、店舗別POS、気象データなども組み合わせ、仮説を立てながら分析するとよいでしょう。
導入前に自社商品や競合商品のデータを確認する
同じカテゴリに対応した市場POSでも、自社商品や競合商品について十分な販売実績を取得できるとは限りません。販売地域が限定されている商品や販売店舗数の少ない商品では、サンプル数が不足する可能性があります。
無料トライアルやデモが用意されている場合は、実際の自社商品や主要な競合商品を検索し、必要なデータを取得できるか確認しましょう。あわせて、分析画面の操作性やデータ出力のしやすさもチェックすると安心です。
市場POSに関するよくある質問
市場POSの導入や比較を検討する際によくある疑問と回答をまとめました。
- Q1:市場POSとPOSデータの違いは何ですか?
- POSデータは、店舗ごとの販売実績を記録したデータです。一方、市場POSは複数の小売店舗から収集したPOSデータを集計し、市場全体の販売動向やシェア、競合商品の売れ行きなどを分析するためのサービスです。
- Q2:市場POSとID-POSはどちらを選べばよいですか?
- 市場規模や商品別シェア、競合商品の販売状況を把握したい場合は市場POSが向いています。購入者の属性やリピート率、併買商品など、購買行動まで分析したい場合はID-POSが適しています。
- Q3:市場POSではどのようなデータを確認できますか?
- 販売金額や販売数量、平均価格、市場シェア、商品ランキング、販売店率などを確認できるのが一般的です。サービスによっては、地域別・業態別・日次・週次など、さまざまな条件で分析できます。
- Q4:市場POSはどの部門で活用できますか?
- マーケティング部門では市場分析や競合比較、営業部門では商談資料や販売提案、商品企画部門では新商品開発やトレンド分析などに活用できます。複数部門で共通の分析データとして役立ちます。
- Q5:市場POSを比較する際に最も重要なポイントは何ですか?
- 自社が必要とする小売業態や商品カテゴリのデータを十分に取得できるかが重要です。そのうえで、データの更新頻度や分析粒度、過去データの蓄積期間、出力方法などを比較すると選びやすくなります。
まとめ
市場POSを活用すると、自社の販売実績だけでは把握しにくい市場規模やシェア、競合商品の売れ行き、新商品の販売動向などを客観的に分析できます。マーケティング戦略の立案をはじめ、小売企業への営業提案や商品企画、販促効果の検証にも役立ちます。
比較する際は、対象となる小売業態や商品カテゴリ、データの更新頻度・粒度、分析軸、過去データの蓄積期間、出力・二次利用条件などを確認しましょう。購入者属性やリピート状況まで分析したい場合は、ID-POSも選択肢です。各サービスの資料やデモを比較し、自社の分析目的や活用部門に適した市場POSを選んでください。

