企業規模でシングルサインオンの要件が変わる理由
シングルサインオンとは、一度の認証で複数のサービスへログインできるようにする仕組みです。同じ役割でも、企業規模によって重視される点は変わります。まず、差が生まれる背景を確認しましょう。
利用サービス数とアカウント数の違い
導入の効果は、社内で使っているサービスの数に左右されます。連携するサービスが2つか3つであれば、得られる効果は限定的です。一方、10を超えるサービスを使っている環境では、ログインの手間と管理の負担がまとまって軽くなる可能性があります。
検討の前に、社内で使用しているサービスを一覧にしてみましょう。部署ごとに契約しているものを含めると、想定より多いことに気づく場合があります。あわせて、それぞれのサービスが連携に対応しているかも確認します。対応していないサービスが多いと、導入後も個別のログインが残るため、効果の見積もりに影響します。
アカウント管理を担える体制の違い
小規模な企業では、情報システム専任の担当者を置かず、総務や管理部門の担当者が兼務しているケースがあります。この場合、設定を細かく作り込む前提のサービスよりも、標準の設定で使い始められるサービスのほうが運用を続けやすくなります。
従業員数が増えると、入社や退職、異動にともなうアカウントの登録と削除が日常的に発生します。この作業を人事の情報と連動させて自動化できるかどうかで、担当者の負担が変わります。どこまでを自動化し、どこから人が判断するかを先に決めておくと、サービスの絞り込みが進みます。
従業員50名までのシングルサインオン選定
50名までの企業では、機能の幅よりも導入と運用の手間の少なさが判断材料になります。ここでは規模ごとに確認したい項目を整理します。
従業員10名規模で確認したいこと
10名前後の企業では、専任の担当者がいないことを前提に、設定の手順が案内されているか、標準で用意された設定を使えるかを確認しましょう。最低契約人数が設定されているサービスもあるため、その条件も確認が必要です。
費用面では、1人あたりの月額に加えて、初期費用や機能ごとの追加料金まで含めて比較すると、導入後の想定外の支出を抑えられます。また、管理者のアカウントが1つしか作れないと、担当者が不在の際に対応できなくなります。管理者を複数登録できるかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。
従業員30名規模で確認したいこと
30名規模になると、部署ごとに使うサービスが分かれてきます。全員が同じサービスを使うわけではないため、所属や役割に応じてアクセスできる範囲を分けられるかが確認項目になります。
あわせて、認証を強める仕組みの有無も検討材料です。パスワードに加えて、スマートフォンのアプリや電話番号を使った確認を組み合わせる方式に対応しているかを確認しましょう。この機能が標準に含まれるか、追加の契約が必要かで費用が変わります。従業員が使う端末の種類も踏まえて、実際に運用できる方式かを確かめてください。
従業員50名規模で確認したいこと
50名規模では、入退社の件数が増え、アカウントの登録と削除の作業が積み重なります。人事情報と連動させて自動で処理できる仕組みがあるかが、負担を左右します。退職者のアカウントが残る状態を避けるうえでも重要な項目です。
この規模では、ログの確認方法も比較しておきたい点です。誰がいつどのサービスへログインしたかを記録し、後から検索できるかどうかで、問題が起きた際の確認にかかる時間が変わります。保存できる期間と、外部へ出力できる形式を資料請求時に確認しておきましょう。
従業員100名以上のシングルサインオン要件
100名を超えると、アカウント管理の自動化に加えて、監査や報告への対応が求められるようになります。ここでは段階ごとの要件を見ていきます。
従業員100名規模で求められる仕組み
100名規模では、人事システムの情報をもとにアカウントを自動で作成し、退職時に自動で停止する仕組みが検討対象になります。手作業での対応が続くと、作業の抜けが生じる可能性があるためです。導入事例を確認する際は、従業員数だけでなく利用サービス数や業種が近い事例を選ぶと参考にしやすくなります。
運用面では、設定変更の履歴を残せるかどうかも確認しておきましょう。誰がいつどの設定を変えたかを追えないと、ログインできないという問い合わせを受けた際の原因調査に時間がかかります。変更前の状態へ戻せる仕組みがあるかも、あわせて確認してください。
従業員300名以上で求められる仕組み
300名を超える規模では、多数の従業員が同じ時間帯にログインする状況が生じます。始業時刻にアクセスが集中した際の応答時間について、想定される利用者数を伝えたうえでサービス提供会社へ確認しましょう。
また、この規模では部署や役職ごとに異なるルールを適用する必要が出てきます。所属に応じてアクセスできるサービスを分ける設定や、接続元によって認証の強さを変える設定に対応しているかが確認項目です。設定が複雑になるほど確認の手間も増えるため、ルールの一覧を出力できるかもあわせて見ておくとよいでしょう。
上場企業で求められる管理体制
上場している企業や、上場を目指す企業では、誰がどのシステムへアクセスできる状態にあるかを外部へ説明できることが求められます。アカウントの棚卸しを定期的に行い、記録として残せる体制が必要です。
具体的には、アクセス権限の一覧を出力できるか、承認の手順を組み込めるか、操作ログを一定期間保存できるかが確認項目になります。特定のサービスを導入すれば要件を満たせるわけではなく、社内の運用ルールと組み合わせて初めて成立します。監査で求められる項目は企業ごとに異なるため、監査担当や外部の専門事業者と要件を整理したうえで選定してください。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でシングルサインオンの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
グループ会社のアカウントをまとめて管理する
親会社と子会社、あるいは複数のグループ会社でアカウントを扱う場合、統合の範囲によって運用の形が変わります。
統合管理する場合の利点と条件
グループ全体で同じ仕組みを使い、一つの管理画面からアカウントを扱う構成では、認証の基準をそろえやすくなります。従業員がグループ内で異動した際も、権限の付け替えで対応できる場合があります。
一方で、この構成には条件があります。各社の人事情報をどこまで共有するか、誰が権限を承認するかを整理しておく必要があります。会社ごとに雇用形態や利用するサービスが異なる場合、完全に同じルールを適用できないこともあるため、共通部分と個別部分を分けた設計が現実的です。個人情報の取り扱いについては、法務や人事の担当と確認を進めてください。
会社ごとに個別導入する場合の注意
各社が独自にサービスを選ぶ構成では、それぞれの業務にあった機能を選べる自由度があります。ただし、グループ内で共同利用しているシステムがある場合、会社ごとに認証の仕組みが異なると、利用者が複数の方法を使い分けることになります。
この場合、共同利用するシステムについてはどの認証を使うかを決めておくと混乱を抑えられます。あわせて、問い合わせを受けた際の窓口を各社に置き、対応の記録を共有する運用が有効です。担当者を1人に固定せず、複数人で状況を把握できる体制にしておくと、引き継ぎ時の負担も軽くなります。
企業規模別の確認項目を整理する
ここまでの内容を、規模ごとの確認項目としてまとめます。自社がどの段階にあるかを踏まえ、資料請求時の質問を組み立てる材料としてください。
規模ごとの比較の目安
下表は、企業規模ごとに優先して確認したい項目を整理したものです。実際の要件は利用サービス数や業種によって変わるため、検討の出発点として活用してください。
| 企業規模 | 優先して確認したい項目 |
|---|---|
| 10名前後 | 最低契約人数、初期費用を含む総額、管理者の複数登録 |
| 30名前後 | 所属別のアクセス制御、認証を強める仕組みの有無と費用 |
| 50名前後 | アカウント登録と停止の自動化、ログの保存期間と検索方法 |
| 100名前後 | 人事情報との連動、設定変更履歴の記録と復元手段 |
| 300名以上 | 集中時の応答時間、条件別の認証設定、権限一覧の出力 |
資料請求時に聞いておきたいこと
比較の精度を上げるには、自社の情報を整理したうえで質問することが有効です。従業員数、社内で使用しているサービスの一覧、社外から接続する人数、人事システムの製品名をまとめておくと、具体的な提案を受けやすくなります。
質問する内容は、公開情報だけでは判断しにくい項目に絞ると効率的です。自社が使っているサービスとの連携実績、集中時の応答についての考え方、サポートの対応時間と対応範囲、契約更新時の費用の変動などが該当します。複数社から同じ質問への回答を集めると、条件をそろえた比較がしやすくなります。
企業規模にあわせて選ぶシングルサインオン
利用者の人数や連携したいサービスの数によって、適した構成は変わります。提供の形が異なる製品を並べました。
GMOトラスト・ログイン
- 社内システム、業務アプリ、複数SaaSのIDを効率的に一元管理
- シングルサインオンで情報漏えいのリスクを減らし、利便性も向上
- 迅速に多要素認証を導入し、セキュリティを強化
GMOグローバルサイン株式会社が提供する「GMOトラスト・ログイン」は、複数のサービスへのログインを一度の認証でまとめるシングルサインオンのサービスです。利用者の登録や停止を管理画面から扱え、必要な機能に応じて構成を選ぶ形になります。まず限られた範囲から始めて対象を広げたい企業の材料になります。
CloudGate UNO
- 認証機能とアクセス条件機能を組み合わせた柔軟なアクセス制限
- ゼロトラストモデルのシングルサインオンでユーザーの利便性向上
- ユーザーの活動状況などを一元管理することで管理コストの削減
株式会社インターナショナルシステムリサーチが提供する「CloudGate UNO」は、クラウドサービスへのログインをまとめるシングルサインオンのサービスです。認証の際に接続元や端末の条件を組み合わせた制御に対応し、利用者ごとの設定を管理画面から扱えます。従業員数が増えた際の運用まで含めて確認するとよいでしょう。
Okta Workforce Identity
- フィッシングに強い認証フローでログインをより簡単・安全にする
- ADやLDAP等と統合。全てのIDを単一コントロールプレーンから管理
- ユーザーのアクセスを1か所で管理しアクティビティを適切に把握
Okta Japan株式会社が提供する「Okta Workforce Identity」は、従業員が業務で使うサービスへのアクセスを管理するサービスです。シングルサインオンや多要素認証に対応し、多くのクラウドサービスとの接続を想定した作りになっています。利用するサービスが多い環境で検討したい選択肢です。
Azure Active Directory (日本マイクロソフト株式会社)
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シングルサインオンに関するFAQ
企業規模とシングルサインオンの選定について、よく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1: 従業員10名でも導入する意味はありますか?
- 使用しているサービスの数によって効果が変わります。連携できるサービスが多いほど手間の軽減につながるため、まず社内の利用サービスを一覧にして検討することをおすすめします。
- Q2: 使っているサービスが連携に対応しているか分かりません。
- 各サービスの管理画面や公開されている資料で確認できる場合があります。判断が難しい場合は、利用サービスの一覧を提示して、対応状況をサービス提供会社へ確認してみてください。
- Q3: 従業員が増えたら契約を変更する必要がありますか?
- 人数に応じた料金体系では、追加分の契約が必要になる場合があります。年度途中で追加する際の手続きと単価を、契約前に確認しておくとよいでしょう。
- Q4: グループ会社でまとめて契約したほうが費用は抑えられますか?
- 契約形態によって条件が異なります。各社別々の契約とまとめた契約の両方で見積もりを取り、管理の手間も含めて比較する方法が現実的です。
まとめ
シングルサインオンの選定は、従業員数、社内で使っているサービスの数、アカウント管理を担える体制の3点から考えると整理しやすくなります。10名規模では導入の手軽さ、50名規模では登録と停止の自動化、100名以上では人事情報との連動と権限の記録が検討の中心です。グループ会社をまとめる場合は、情報共有の範囲を先に決めておきましょう。自社の条件を整理したうえで、複数の製品資料を取り寄せて比較検討を進めてください。


