規模とシングルサインオンの要件がずれる理由
シングルサインオンとは、一度の認証で複数のサービスへログインできるようにする仕組みです。ずれは、判断に必要な情報を集めないまま選定を進めた場合に生じやすくなります。
利用サービスの実態を把握しないまま選ぶ場合
効果の大きさは、連携できるサービスがいくつあるかによって変わります。社内全体でどのサービスを使っているかを把握していないと、導入後に想定より効果が小さいと感じる可能性があります。部署ごとに契約しているサービスは、情報システム部門が把握していない場合もあります。
検討の前に、契約しているサービスを部署へ照会して一覧にしましょう。利用者数、連携方式への対応状況、契約の更新時期をあわせて記録すると、導入の優先順位を決める材料になります。この一覧は、サービス提供会社へ相談する際の資料としても使えます。
同時に利用する人数を見込まない場合
従業員数が同じでも、始業時刻が全社でそろっている企業と、勤務時間が分散している企業では、同じ時間帯にログインする人数が異なります。この差は、認証の処理にかかる時間へ影響する可能性があります。
選定の際は、想定される同時利用の人数と時間帯をサービス提供会社へ伝え、応答についての考え方を確認しましょう。あわせて、稼働状況が公開されているか、過去の実績を確認できるかも見ておくとよいでしょう。判断が難しい場合は、試用の機会に一定人数で同時にログインする確認を行う方法もあります。
小規模企業で契約が効果に見合わない場合
機能の幅が広いサービスは多くの環境に対応できますが、利用サービス数が少ない企業では活用できる範囲が限られる場合があります。
費用に対する効果が小さくなる場面
従業員50名前後で、連携対象となるサービスが2つか3つという環境では、削減できる手間に対して支払う費用が大きく感じられる可能性があります。利用者1人あたりの月額に加え、機能ごとの追加料金が重なると、年間の負担が想定を超えるケースもあります。
避けるには、契約前に機能ごとの費用を分けて確認し、当面必要な機能と将来検討する機能を仕分けることが有効です。後から機能を追加できる料金体系であれば、必要になった時点で契約する進め方もあります。見積もりを受け取ったら、各機能が自社のどの課題に対応するのかを説明してもらい、対応関係が示せない項目は再検討しましょう。
設定を活用しきれない場面
条件に応じて認証を変える設定や、細かな権限の分割は、担当者が内容を理解して運用できることが前提になります。専任の担当者がいない企業では、標準の設定のまま使い続け、契約した機能を活用できない状態になる可能性があります。
導入前に、試用の機会で日常的に行う作業を実際に操作してみると、運用できる範囲を把握できます。あわせて、設定作業を依頼できるか、依頼できる範囲はどこまでかをサービス提供会社へ確認しましょう。導入支援の内容が、設定方法の案内までなのか作業の代行まで含むのかで、必要な社内工数は変わります。
連携できないサービスが残る場合
費用を抑えることを優先した結果、必要な連携に対応していない構成を選ぶと、手作業が残る可能性があります。
対応範囲が想定と異なる場面
従業員100名規模で、業務の中心となるサービスが連携の対象外だった場合、そのサービスについては従来どおり個別のログインが残ります。結果として、利用者にとっての手間が想定ほど減らない状況が生じる可能性があります。
選定の段階で、社内の利用サービス一覧を提示し、それぞれの対応状況を確認しましょう。標準的な方式に対応していれば設定によって連携できる場合もあるため、対応の可否だけでなく、必要な作業と費用まで含めて回答を求めてください。連携できないサービスが残る場合は、その運用をどうするかもあわせて検討します。
アカウントの自動連携が及ばない場面
アカウントの作成や停止を自動化できる範囲は、連携先のサービスによって異なります。ログインだけを連携し、アカウントの管理は手作業という組み合わせになる場合があります。
確認したいのは、自動化に対応しているサービスの一覧と、対象外のサービスで必要になる作業の内容です。入退社の件数が多い企業では、この差が担当者の負担に直結します。手作業が残る部分は、担当者と手順を決めて文書に残しておきましょう。導入前に作業量を試算しておくと、費用対効果の判断もしやすくなります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でシングルサインオンの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
大規模環境で認証が集中する場合
従業員数の多い企業では、ログインが特定の時間帯へ集中します。想定を伝えたうえで確認しておきたい項目を整理します。
始業時刻に処理が集中する場面
全社の始業時刻がそろっている環境では、短い時間に多数の認証が行われます。処理が集中すると、ログインまでの待ち時間が長くなる可能性があります。原因はサービス側の処理能力だけでなく、社内の回線や連携先サービス側の状態にも左右されます。
選定時には、想定される同時利用の人数と時間帯を伝え、対応の考え方を確認しましょう。あわせて、稼働状況を公開しているか、遅延が生じた際にどのような手段で情報が提供されるかも聞いておくとよいでしょう。導入後は、利用者から報告を受けた際に状況を確認できるよう、記録の見方を把握しておくことをおすすめします。
切り替え時に問い合わせが集中する場面
全社で一斉に利用を開始すると、初回の登録手続きや操作方法についての問い合わせが同時期に集まります。対応する体制が整っていないと、業務に影響が及ぶ可能性があります。
影響を抑えるには、段階的に対象を広げる計画が有効です。まず一部の部署で開始し、寄せられた質問をもとに案内資料を整えてから全社へ広げる進め方が現実的です。あわせて、よくある質問と回答をまとめた資料や、問い合わせ窓口の体制を事前に用意しておきましょう。開始時期は業務の繁忙期を避けて設定してください。
規模にあう構成を選ぶ確認手順
ここまでの懸念点を踏まえ、導入前に確認しておきたい項目を整理します。順を追って確認すると、ずれを抑えやすくなります。
規模ごとに注意したい点を整理する
下表は、企業規模ごとに生じやすい懸念と、事前に確認したい項目をまとめたものです。自社の状況に近い行を起点に、確認の計画を立ててください。
| 企業規模 | 生じやすい懸念 | 事前に確認したい項目 |
|---|---|---|
| 50名前後 | 連携対象が少なく費用に見合う効果を得にくい | 利用サービスの一覧、機能ごとの費用、後からの追加可否 |
| 50名前後 | 設定を活用しきれない | 試用時の操作性、設定作業の依頼範囲、導入支援の内容 |
| 100名前後 | 主要サービスが連携の対象外で手作業が残る | 各サービスの対応状況、必要な作業と費用、代替手段 |
| 100名前後 | アカウント管理の自動化が一部にとどまる | 自動連携の対応サービス、対象外の作業内容と件数 |
| 大規模 | 始業時刻にログインが集中する | 同時利用の想定、稼働状況の公開、遅延時の情報提供 |
| 大規模 | 開始直後に問い合わせが集中する | 段階的な展開計画、案内資料の準備、窓口の体制 |
確認を進める順序を決める
効率よく進めるには、現状把握、要件の整理、比較、検証という順序で作業するとよいでしょう。現状把握では利用サービスと同時利用の状況、要件の整理では必要な機能と運用できる体制を書き出します。
比較の段階では、同じ条件を複数社へ提示し、提案内容と見積もりをそろえて並べます。検証の段階では、試用の機会を活用し、日常の作業と一定人数での同時ログインを試します。判断が難しい項目については、情報システム部門や専門事業者へ相談してください。各段階の結果を記録しておくと、社内で説明する際の資料としても使えます。
規模と利用実態にあわせたいシングルサインオン
連携できるサービスの数と、同時にログインする人数の想定は事前に伝えておきたい条件です。提案を受けたい製品を紹介します。
GMOトラスト・ログイン
- 社内システム、業務アプリ、複数SaaSのIDを効率的に一元管理
- シングルサインオンで情報漏えいのリスクを減らし、利便性も向上
- 迅速に多要素認証を導入し、セキュリティを強化
GMOグローバルサイン株式会社が提供する「GMOトラスト・ログイン」は、複数のサービスへのログインを一度の認証でまとめるシングルサインオンのサービスです。必要な機能に応じて構成を選ぶ形のため、まず使いたい範囲を整理してから条件を確認できます。利用者数の増減にともなう扱いもあわせて聞いておきましょう。
IIJ IDサービス
- 超図解マニュアルと直感的・シンプルなUIで導入・運用がカンタン
- デバイス証明書認証やFIDO2認証など、さまざまな認証機能に対応
- 複数の国内DCで稼働する万全のセキュリティ体制
株式会社インターネットイニシアティブが提供する「IIJ IDサービス」は、社内外のサービスへのログインをまとめるシングルサインオンのクラウドサービスです。利用者情報の管理と認証を一つのサービスで扱えます。想定する利用者数と連携したいサービスの一覧を伝えて、構成の提案を受けるとよいでしょう。
Okta Workforce Identity
- フィッシングに強い認証フローでログインをより簡単・安全にする
- ADやLDAP等と統合。全てのIDを単一コントロールプレーンから管理
- ユーザーのアクセスを1か所で管理しアクティビティを適切に把握
Okta Japan株式会社が提供する「Okta Workforce Identity」は、従業員が業務で使うサービスへのアクセスを管理するサービスです。多くのクラウドサービスとの接続を想定した作りで、利用者ごとの設定を管理画面から扱えます。利用サービスが多い環境ほど効果を見込みやすく、対象の一覧を提示して確認しましょう。
OneLogin (ペンティオ株式会社)
- 5000を超えるアプリケーションへクリックひとつでログイン
- 18種のMFA(多要素認証)を利用可能
- 11種8方式のディレクトリ連携をサポート
シングルサインオンに関するFAQ
企業規模とシングルサインオンの懸念点について、よく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1: 利用サービスが少ないと導入の効果は小さいですか?
- 連携できる数によって効果は変わります。まず社内の契約状況を部署へ照会して一覧を作り、対象になるサービスの数を把握してから判断することをおすすめします。
- Q2: 使いたいサービスが連携の対象外でした。
- 標準的な方式に対応していれば、設定によって連携できる場合があります。必要な作業と費用を確認し、対応できない場合の運用方法もあわせて検討しましょう。
- Q3: 始業時刻の集中による影響は事前に確認できますか?
- 想定する同時利用の人数と時間帯を伝えて、対応の考え方を確認する方法があります。試用の機会に一定人数で同時にログインする確認を行うこともできます。
- Q4: 全社で一斉に切り替えたほうが効率的ではありませんか?
- 作業はまとまりますが、問い合わせも同時期に集中します。一部の部署で開始して案内資料を整えてから広げる進め方のほうが、対応の負担を分散できます。
まとめ
シングルサインオンと企業規模のずれは、利用サービスの数、連携できる範囲、同時にログインする人数という3点を確認することで抑えられます。小規模では機能ごとの費用と活用できる範囲、100名前後では主要サービスの対応状況と自動化の範囲、大規模では集中時の応答と展開の進め方が論点です。自社の状況を整理したうえで、複数の製品資料を取り寄せて比較検討を進めてください。


