反社会的勢力とは何を指すのか
反社会的勢力は法律で一律に定義された言葉ではありません。まずは政府の指針が示す考え方と、判断の目安となる2つの要件を確認し、どのような相手が該当しうるのかを把握しましょう。
政府指針が示す反社会的勢力の定義
反社会的勢力の定義としてよく参照されるのが、2007年に政府の犯罪対策閣僚会議幹事会で申し合わせた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」です。この指針では、反社会的勢力を「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と表現しています。この指針に法的な拘束力はありませんが、企業が関係遮断に取り組む際のよりどころとして参照されています。
一方で、2019年に閣議決定された政府答弁書では、反社会的勢力は社会情勢に応じて変化しうるため、あらかじめ限定的かつ統一的に定義することは困難だと説明されています。そのため企業は、固定された名簿に頼るのではなく、相手の実態や行動を見て総合的に判断する姿勢が求められます。名称だけで判断しない意識が大切です。
属性要件と行為要件という2つの見方
先の指針では、反社会的勢力をとらえる視点として「属性要件」と「行為要件」の2つの考え方を示しています。属性要件は、暴力団や暴力団関係企業、総会屋など、相手が「どのような集団に属しているか」に注目する考え方です。所属する組織が明らかな相手ほど判断しやすい見方といえます。
行為要件は、暴力的な要求や、法的な責任を超えた不当な要求といった「どのような行動をとるか」に注目する考え方です。例えば、取引先の担当者が暴力団員でなくても、取引の中で脅しや過大な要求を繰り返す場合は慎重な対応が必要です。属性と行為の両面から確認することで、判断の見落としを減らせます。反対に属性要件だけに頼ると、会社名や肩書を変えて活動する相手を見逃すおそれがあります。
この記事をご覧の方には、以下の記事もおすすめです。あわせて参考にしてください。
反社会的勢力に含まれる主な種類
反社会的勢力には、暴力団のように組織が明確なものから、実態がつかみにくい集団まで幅があります。代表的な種類を知っておくと、確認時に注意すべき点が見えてきます。
暴力団と暴力団員、準構成員
もっとも代表的な存在が暴力団です。暴力団対策法では、構成員が集団的または常習的に暴力的不法行為などを行うことを助長するおそれがある団体を暴力団と定めています。一定の要件を満たす団体は、都道府県公安委員会から指定暴力団として指定されます。指定暴力団の構成員には、金品の不当な要求などの暴力的要求行為が同法で禁止されています。
暴力団に正式に所属する暴力団員のほか、暴力団員ではないものの暴力団と関係を持ち、その威力を背景に不法な行為を行うおそれがある準構成員も対象に含まれます。構成員を辞めてから一定期間が経過していない元暴力団員を、契約上の排除対象に加える企業も少なくありません。全国銀行協会の暴力団排除条項の参考例でも、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者を対象に含めています。
関係企業や総会屋、新たな犯罪グループ
暴力団員が経営に関わる、または暴力団に資金を提供する暴力団関係企業も反社会的勢力に含まれます。企業などを対象に不正な利益を求めて暴力的な不法行為などを行うおそれがある総会屋や、社会運動や政治活動を装って金銭を要求する社会運動等標ぼうゴロも代表例です。株主の権利行使に関する利益供与は会社法でも禁じられており、総会屋への対応は企業統治の面でも重要です。
さらに、暴力団との関係や資金的なつながりを背景に、構造的な不正の中核となっている特殊知能暴力集団も挙げられます。一般企業の形をとって取引に紛れ込むケースもあります。近年はSNSなどを通じて離合集散を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ」への警察の取り組みも強化されており、組織の形が見えにくい相手への警戒が欠かせません。
企業が反社会的勢力との関係を断つべき理由
反社会的勢力との関係は、意図せず生まれた場合でも企業に大きな損失をもたらします。条例による規制と、取引先や市場からの信用という2つの面から、関係遮断が求められる理由を確認します。
暴力団排除条例による規制
2011年までに、全国すべての都道府県で暴力団排除条例が施行されました。多くの条例では、事業者が暴力団の活動を助長することを知りながら利益を提供する行為を禁止しています。あわせて、契約の際に相手が暴力団関係者でないかを確認することや、契約書に暴力団排除条項を盛り込むことを努力義務として定めています。
違反した場合、条例の内容によっては勧告や事業者名の公表などの措置がとられることがあります。「知らなかった」では済まされない場面もあるため、取引を始める前に相手を確認し、その記録を残しておくことが大切です。記録は、自社が適切に確認していたことを示す材料にもなります。条例の内容は地域ごとに異なるため、事業を行う都道府県の規定を確認しておきましょう。
この記事をご覧の方には、以下の記事もおすすめです。あわせて参考にしてください。
取引停止や上場審査など経営への影響
反社会的勢力との関係が明らかになると、取引先から契約を解除されたり、金融機関からの融資や預金口座の利用に支障が出たりするおそれがあります。多くの企業や金融機関が契約書や約款に暴力団排除条項を設けており、相手方が該当すると判明した時点で関係を解消できる仕組みを持っているためです。
株式上場を目指す企業にとっても影響は大きく、証券取引所の上場審査では反社会的勢力との関係を有しないことが求められます。役員や株主、主要な取引先に問題がないかを説明できなければ、上場準備のスケジュールが遅れる可能性もあります。報道によって企業イメージが傷つき、採用や顧客離れにつながる点も見逃せません。一度の関係発覚が長期にわたり信用に響くことを意識しておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で反社チェックツールの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
反社チェックの進め方と確認方法
相手が反社会的勢力に該当するかどうかは、外見や会話だけでは判断できません。まず確認する対象と範囲を決めたうえで、公開情報や記事データベースなどを使って調査します。疑わしい情報が見つかった場合は、担当者だけで判断せず専門家へ相談することも重要です。ここでは、反社チェックの基本的な進め方を解説します。
チェックする対象と確認範囲を決める
反社チェックでは、取引先の企業だけでなく、代表者や役員、主要株主なども確認対象になる場合があります。自社の従業員や採用候補者を対象とするケースもあります。取引の重要度やリスクに応じて、「誰を」「どこまで」確認するのかをあらかじめ社内規程などで決めておくと、担当者による判断のばらつきを抑えられます。
確認範囲を決める際は、反社チェックとコンプライアンスチェックの違いも押さえておきましょう。反社チェックは、反社会的勢力への該当や関係の有無を確認するものです。一方、コンプライアンスチェックでは、法令違反や行政処分、不祥事の報道、訴訟、海外の制裁対象者リストなど、より幅広いリスクを調査します。新規取引では反社チェックを必須とし、重要な取引先にはコンプライアンス上のリスクまで確認するなど、相手に応じて調査範囲を設定するとよいでしょう。
公開情報や記事データベースで調査する
自社で行う基本的な方法は、インターネット検索や新聞記事データベースを使った調査です。会社名や代表者名に「逮捕」「暴力団」「詐欺」などの言葉を組み合わせて検索し、過去の報道がないかを確認します。検索する言葉を社内で統一しておくと、担当者ごとの差を抑えられます。あわせて商業登記簿で役員の構成や本店所在地の変更履歴を確認する方法もあります。
ただし、同姓同名の人物の記事が混ざったり、担当者によって検索結果の判断が異なったりする点には注意が必要です。取引先の数が多い企業では、検索結果の記録や定期的な再チェックにも手間がかかります。こうした作業を効率化するには、記事データベースの検索や結果の保存を自動化できる反社チェックツールを活用する方法もあります。
この記事をご覧の方には、以下の記事もおすすめです。あわせて参考にしてください。
疑わしい情報が見つかったら専門機関へ相談する
調査の結果、反社会的勢力との関係を疑わせる情報が見つかっても、担当者だけで該当すると判断するのは避けましょう。報道された人物と本人が同一人物なのか、過去の関係が現在も続いているのかなど、公開情報だけでは判断できないケースがあるためです。誤った情報をもとに取引を断れば、相手とのトラブルにつながるおそれもあります。まずは法務部門や顧問弁護士と情報を共有し、対応方針を検討します。
さらに詳しい確認が必要な場合は、調査会社への依頼や、警察、各都道府県の暴力追放運動推進センターへの相談も選択肢です。相談する際は、取引内容や自社で確認した情報、疑わしいと判断した根拠を整理しておくとスムーズです。契約解除など具体的な対応に進む場合は、法的なトラブルを防ぐためにも弁護士と連携して進めましょう。
反社会的勢力を排除するための社内体制づくり
反社会的勢力への対応は、一部の担当者に任せるのではなく、会社全体の仕組みとして整えることが大切です。基本方針や契約書の整備と、取引開始後の運用の2つに分けて解説します。
基本方針の策定と契約書への暴排条項の導入
最初に取り組みたいのが、反社会的勢力との関係を遮断する基本方針の策定です。政府の指針では、組織としての対応、外部の専門機関との連携、取引を含めた一切の関係遮断、有事における民事と刑事の法的対応、裏取引や資金提供の禁止という5つの基本原則が示されています。策定した方針を自社のWebサイトなどで公表する企業もあります。
方針を定めたら、取引基本契約書や利用規約に暴力団排除条項を盛り込みます。この条項には、相手方が反社会的勢力でないことの表明と保証、該当が判明した場合に無催告で契約を解除できることなどを定めるのが一般的です。条項があれば、関係が判明した際に速やかに取引を解消する根拠となります。既存の契約書も、更新のタイミングで条項の有無を見直すと安心です。
取引開始後の定期チェックと対応マニュアル
反社チェックは取引を始める時に一度行えば終わりではありません。取引先の役員や株主は時間とともに変わるため、既存の取引先も年に1回など期間を決めて再確認することが望まれます。代表者や主要株主が変わった時は、期間を待たずに臨時で確認するとよいでしょう。確認の結果や日付を記録しておくと、後から経緯を説明する際にも役立ちます。
また、不当な要求を受けた時の対応マニュアルを整えておくことも重要です。窓口となる部署、上司や法務部門への報告ルート、警察や弁護士への連絡手順を明文化し、従業員に周知します。担当者が一人で対応しない体制をつくることで、従業員の安全を守りながら組織として毅然と対応できます。定期的な研修で対応手順を実際に確認しておくことも効果的です。
この記事をご覧の方には、以下の記事もおすすめです。あわせて参考にしてください。
反社チェックの確認作業を効率化できるツール
ここでは、記事データベースや公開情報の検索、結果の保存など、反社チェックの手間を減らす機能を備えたツールを紹介します。
RISK EYES(リスクアイズ)
- 関係のない情報がフィルタリングされた記事データベースを提供
- 余計な工数を省ける多彩な機能で手間を92.5%削減
- 記事検索の前に注意すべき相手をすぐに発見できる独自DB検索も!
ソーシャルワイヤー株式会社が提供する「RISK EYES(リスクアイズ)」は、反社チェック・コンプライアンスチェックサービスです。反社会的勢力との関係や犯罪への関与、不祥事の情報を、公知情報と独自データベースから確認できます。映画やドラマなど関係のない情報を除いた記事データベースを検索でき、検索履歴は自動で保存されます。政府や国際機関の制裁リストの検索にも対応しています。
RoboRoboコンプライアンスチェック
- ネット+SNS+新聞+反社DB+海外DBなど業界随一の情報の網羅性
- 取引先の一括登録とワンクリック検索で作業時間を軽減!
- 様々なデータベースから調査対象を選択可能
オープン株式会社が提供する「RoboRoboコンプライアンスチェック」は、取引先のコンプライアンスを自動で確認するクラウドサービスです。Excelファイルから複数の企業をまとめて登録・検索でき、インターネットやSNS、新聞、反社データベース、登記簿情報などを横断して調べられます。検索結果はPDFやExcel、CSV形式で自動保存され、AIによる注目度の判定やAPI連携にも対応しています。
ホライズンリスクチェッカー (ホライズンテクノロジー株式会社)
- 多様な情報源から自動収集されたデータを活用。
- 生成AIで従来見逃しがちな文脈やニュアンスも捉える高精度判定。
- AI判定ロジックをカスタマイズ可能。
まとめ
反社会的勢力とは、暴力や威力、詐欺的な手法で経済的利益を追求する集団や個人を指し、暴力団のほか関係企業や総会屋なども含まれます。企業には関係を断つための備えが欠かせません。属性と行為の両面から相手を確認し、基本方針や暴排条項、定期チェックの仕組みを整えましょう。確認作業の負担が大きい場合は、反社チェックツールの活用も検討してみてください。

