生体認証システムの基本機能と構成
生体認証システムは、利用者の生体情報を読み取る端末と、データを照合・管理するソフトウェアの組み合わせで動きます。方式ごとの違いを理解する前に、どの製品にも共通する基本機能と構成を押さえておきましょう。
登録・照合・管理の3つの基本機能
生体認証システムの基本機能は、登録、照合、管理の3つです。登録は利用者の生体情報を読み取り、特徴をデータとして保存する機能です。照合は認証時に読み取った情報を登録データと突き合わせ、本人かどうかを判定する機能を指します。
管理は、利用者や権限の設定、認証結果の記録、端末の状態確認などを行う機能です。製品を比較する際は、認証精度だけでなく、管理画面の機能や他システムとの連携方法まで確認しましょう。導入後の運用負担を見積もりやすくなります。
認証方式によって異なる端末と設置条件
生体認証の端末は、方式によって必要なセンサーが異なります。顔認証はカメラ、指紋認証は指を置くセンサー、静脈認証は近赤外線で血管の形を読み取るセンサー、虹彩認証は目を撮影する専用のカメラを使うのが基本です。
スマートフォンやノートパソコンに内蔵された顔認証や指紋認証の機能を使える製品もあり、専用端末を購入せずに導入できる場合があります。入退室管理に使うのか、パソコンへのログインに使うのかによって必要な端末が変わるため、利用場面を先に決めておきましょう。
顔認証と指紋認証の特徴と確認点
顔認証と指紋認証は、スマートフォンにも搭載されており、利用者にとってなじみのある方式です。製品の選択肢も比較的広いため、それぞれの特徴を理解したうえで、自社の利用場面に向いているかを確認しましょう。
顔認証の特徴と向いている場面
顔認証は、カメラの前に立つだけで認証できる非接触の方式です。手がふさがっていても使え、複数人が続けて通過する出入口でも流れを止めにくい点が特徴です。感染症対策として、端末に触れずに使える点を評価する企業もあります。
一方で、逆光や暗い場所、マスクや帽子の着用によって認証しにくくなる場合があります。選定時は、マスクを着けたまま認証できるか、照明条件が変わる場所でも使えるかを、実際の設置場所に近い環境で試しておくと安心です。
指紋認証の特徴と向いている場面
指紋認証は、指をセンサーに置いて認証する方式です。端末が比較的小型で、パソコンに接続するUSBタイプの読み取り機も流通しています。そのため、パソコンへのログインや業務システムの本人確認で使われることがあります。
ただし、指先の乾燥や汚れ、けがによって読み取りにくくなるケースがあり、手袋を着けたままでは使えません。指紋認証に強い製品を探す場合は、読み取り方式の種類を比べましょう。複数の指を登録して予備にできるか、センサーの清掃方法が示されているかも判断材料です。
静脈認証と虹彩認証の特徴と確認点
静脈認証と虹彩認証は、顔や指紋に比べて専用の読み取り機器が必要になる場合がある一方、本人以外による認証を抑えたい場面で検討される方式です。4つの方式の違いを表にまとめたうえで、それぞれの特徴を解説します。
| 方式 | 読み取る情報 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| 顔認証 | 顔の形や目鼻の位置 | 照明条件、マスク着用時の対応 |
| 指紋認証 | 指先の紋様 | 指の乾燥や汚れ、手袋着用の有無 |
| 静脈認証 | 指や手のひらの血管の形 | 専用センサーの設置場所、手のかざし方 |
| 虹彩認証 | 黒目の周りの模様 | 専用カメラの有無、眼鏡着用時の対応 |
静脈認証の特徴と向いている場面
静脈認証は、指や手のひらに近赤外線を当て、皮膚の内側にある血管の形を読み取る方式です。体の内部の情報を使うため、表面に残る指紋に比べて盗み取られにくい方式とされています。国内では、金融機関のATMで手のひら静脈認証が使われている例があります。
指紋に比べて指先の乾燥や汚れの影響を受けにくいとされる一方、専用センサーが必要で、手のかざし方によって認証結果が変わる場合があります。静脈認証に対応した製品を選ぶ際は、指静脈と手のひら静脈のどちらに対応しているかを確認しましょう。
虹彩認証の特徴と向いている場面
虹彩認証は、黒目の周りにある虹彩の模様を専用のカメラで読み取る方式です。虹彩の模様は左右の目でも異なるため、高い精度での本人確認を求める場面で検討されています。非接触で認証でき、手袋を着ける作業現場でも利用できる点が特徴です。
一方で、専用カメラが必要なため、顔認証や指紋認証に比べて端末の選択肢が限られる場合があります。対応製品を探す際は、眼鏡やコンタクトレンズを着けたまま認証できるか、身長差のある利用者でも使える高さに設置できるかを確認しましょう。
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なりすまし対策に役立つ生体検知機能
生体認証は本人の身体的な特徴を使いますが、写真や動画、偽造物を使ったなりすましの手口も知られています。こうした不正を見分ける生体検知機能の仕組みと、製品を比較する際の確認方法を押さえておきましょう。
生体検知の仕組みと主な方式
生体検知とは、センサーの前にあるものが生きた人間の身体かどうかを判定する機能です。顔認証では、まばたきや顔の向きの変化を確認する方式や、奥行きを測る3Dカメラ、赤外線カメラを使う方式があります。
指紋認証や静脈認証でも、指の温度や血流、皮膚の状態を確認して偽造物を見分ける技術が用いられています。どの方式を採用しているかは製品によって異なります。利用者に動作を求める方式では認証に時間がかかる場合もあるため、利便性とのバランスも考慮しましょう。
選定時に確認したい生体検知の項目
生体検知の性能は製品ごとに評価方法が異なり、公開されている数値を単純に比べるのは難しい面があります。そのため、どのような攻撃を想定して対策しているのか、写真や動画、立体マスクのどれに対応しているのかを提供会社に確認しましょう。
生体検知の評価に関する国際規格には、ISO/IEC 30107シリーズがあります。この規格にもとづく第三者評価を受けているかも、参考材料の一つです。デモ機を借りられる場合は、提供会社が認める方法で社内の担当者が試してみることも有効です。
生体認証の認証ログ機能で見るべき点
認証ログは、不正の兆候の発見やトラブルの原因調査、監査への対応に使う重要な記録です。ログの記録範囲と出力方法は製品によって差があるため、自社の用途にあわせて確認すべき項目を整理しておきましょう。
記録される項目と保存期間
認証ログに記録される項目としては、認証した日時、利用者、端末や扉の場所、認証の成功や失敗の結果などがあります。製品によっては、認証に失敗した際の顔画像を保存したり、管理者の操作履歴を記録したりする機能を備えている場合もあります。
保存期間も確認したいポイントです。社内規程や取引先との契約で一定期間の記録保存が求められる場合は、その期間を満たせるか、期間を過ぎたログを自動で削除できるかを確認しましょう。顔画像を保存する場合は、個人情報としての管理方法も決めておく必要があります。
出力形式と他システムでの活用
認証ログを監査や分析に使うには、必要な期間や条件で絞り込んで出力できることが重要です。CSVやPDFでの出力に対応しているか、出力する項目を選べるか、定期的に自動で出力できるかを比較しましょう。
勤怠管理システムやセキュリティ監視の仕組みにログを取り込みたい場合は、APIで連携できるかも確認が必要です。出力したデータの文字コードや日付の形式が取り込み先と異なると、手作業での修正が発生します。サンプルデータを事前に入手して確認しておくと安心です。
異常を知らせる通知と管理者の操作履歴
認証ログは記録するだけでなく、異常にすばやく気づける仕組みと組み合わせることで役立ちます。同じ利用者の認証失敗が続いた場合や、許可されていない時間帯に入室しようとした場合に、管理者へメールなどで通知できるかを確認しましょう。
あわせて、管理者が利用者を登録・削除した履歴や、権限を変更した履歴を残せるかも重要です。誰がいつ設定を変更したかを後から確認できれば、誤った設定の原因を調べやすくなり、担当者が交代した際の引き継ぎにも活用できます。
顔認証と指紋認証に対応した生体認証製品
記事で紹介した4つの方式のうち、製品の選択肢が比較的広い顔認証と指紋認証の製品を紹介します。指紋認証と顔認証の両方に対応する製品や、指紋認証の組み込みに使える開発キット、顔認証に特化した製品があります。自社で採用したい方式にあわせて比べてみてください。
DigitalPersona AD
- 指紋認証と顔認証から選択可能で、顔認証は赤外線カメラに対応
- Active Directory完全統合型で認証ポリシーを徹底
- 記憶認証と所持認証と組み合わせて使用することも可能
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「DigitalPersona AD」は、Active Directoryと統合して使うパソコンの認証強化システムです。認証方式は指紋認証と顔認証から選択でき、顔認証は赤外線カメラに対応しています。パスワードなどの記憶認証やICカードなどの所持認証と組み合わせた多要素の運用もでき、用途に応じて認証の強さを調整できます。Active Directory上で認証ポリシーを組織全体へ徹底できる点も特徴です。オンプレミスのパッケージソフトとして提供されます。
DigitalPersona SDK
- 乾燥指に強い指紋リーダーを使用可能
- 360度どこからでも認証可能な指紋リーダーを使用可能
- 登録時の指の置き方を再現不要な指紋リーダーを使用可能
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「DigitalPersona SDK」は、アプリケーションに指紋認証システムを組み込むための開発キットです。乾燥した指に強い指紋リーダーや、360度どの向きからでも認証できる指紋リーダーを利用できます。登録時の指の置き方を再現しなくても認証できる指紋リーダーにも対応しています。指紋認証の読み取り条件を重視して方式を比べたい場合に確認したい製品です。組み込み用のキットのため、認証部分をゼロから作り込む負担も抑えやすくなります。
EdgeFACE
- オフィスや工場のDXを推進するエッジ・オンプレ顔認証システム
- 完全売り切りで1台から導入可能!SDKは無償提供で量産活用可能
- パスワード忘れ・鍵紛失の心配なし!ICカード書き換え作業も不要
イノテック株式会社が提供する「EdgeFACE」は、エッジとオンプレミスで動作する顔認証システムです。クラウドでの顔認証が使えない環境を想定しており、オフィスや工場での活用を見込んだ製品です。国産の顔認証AIと国産の産業用パソコンメーカーの強みを掛け合わせ、長期の供給と安定稼働を重視しています。パスワード忘れや鍵の紛失の心配がなく、ICカードの書き換え作業も不要です。売り切り型で1台から導入でき、SDKが無償で提供されます。
顔認証なりすまし防止ソリューション (NECソリューションイノベータ株式会社)
- NIST顔認証ベンチマークテストでNo.1評価の顔認証エンジン搭載。
- マスク着用でも顔認証可能、外す必要なし
- AIが歩行中や複数人同時認証を支援
NeoFaceKAOATO (NECソリューションイノベータ株式会社)
- マスク着用時でも顔認証が可能
- AIによる振る舞い検知でウォークスルー認証を支援
- マスキング機能でプライバシーに配慮した運用が可能
Face-vox (vizo株式会社)
- 顔認証AIソリューションのデモサイトで体験可能。
- 顔情報は毎日夜12時にリセットされます。
- 顔情報は弊社で所有せず、プライバシーを保護。
FaceMe (サイバーリンク株式会社)
- 高精度AIエンジンにより認証精度99.7%を実現
- 多様な環境下で安定した顔認証。
- APIで柔軟なシステム連携
VisionPass / VisionPass SP (株式会社昭電)
- 3D・赤外線カメラ搭載で、マスクや横顔でも認証可能。
- 非接触の高速顔認証で、円滑なアクセス管理を実現。
- 屋内外対応で既存の入退室管理システムと統合可能
まとめ
生体認証システムの機能を比較する際は、顔・指紋・静脈・虹彩のどの方式が自社の利用場面や環境に向いているかを最初に見極めることが大切です。そのうえで、なりすまし対策としての生体検知機能と、監査や運用に欠かせない認証ログ機能を確認しましょう。
方式ごとの向き不向きは、実際の設置環境で試してみるまでわからない部分もあります。複数の製品を資料請求し、デモや試用を通じて比較してみてください。

