クラウド構築後の運用でつまずきやすい場面
クラウド構築は完了しても、運用体制が整っていないと、日常的な管理やトラブル対応に支障が出る場合があります。構築段階から運用を見据えた準備が重要です。
運用でつまずきやすい背景
運用でつまずく背景には、社内の担当者体制が構築時の想定と合っていないケースや、構築を依頼したベンダーとの役割分担が曖昧なまま運用が始まってしまうケースがあります。構築時に決めたはずの運用ルールが、実際には形骸化してしまうこともあります。
特に、情報システム部門の人員が限られる企業では、構築後の運用が想定より負担の大きい作業になり、日常業務を圧迫する場合があります。構築前の段階で、運用開始後にどのような作業が発生するかを具体的にイメージしておくことが重要です。想定していなかった作業が後から発覚すると、担当者の負担が一時的に急増する要因にもなります。
事前に整理しておきたい視点
運用面でのつまずきを防ぐには、構築を依頼する段階で、運用開始後の役割分担を明確にしておくことが重要です。どこまでを社内で対応し、どこからをベンダーに依頼するのかを事前に整理しておくとよいでしょう。
また、運用ルールを整理した資料やマニュアルを作成し、担当者が変わっても引き継げる状態にしておくことも重要です。属人化を防ぐためには、特定の担当者だけが把握している情報を減らし、複数人で状況を共有できる体制を整えることが望ましいとされています。定期的な情報共有の場を設けることで、担当者の異動があっても運用の質を維持しやすくなります。
情シス1人体制で運用が回らなくなる懸念
情報システム担当者が1人しかいない企業では、クラウド構築ベンダーとのやり取りや日常的な運用管理が、その担当者に集中しやすくなります。
少人数体制で起こりやすい負荷集中
担当者が1人の場合、ベンダーとの連絡窓口、設定変更の依頼、トラブル対応のすべてを一人で担うことになりやすく、業務が集中してしまう場合があります。担当者が休暇や体調不良で不在の際に、対応が滞るリスクも考えられます。
また、専門知識が特定の担当者に偏ることで、担当者が異動や退職をした場合に、運用ノウハウが引き継げなくなる可能性もあります。1人体制であっても、業務の一部を外部に委託するなど、負荷を分散する工夫が重要です。日頃から業務内容を可視化しておくことで、急な引き継ぎが必要になった場合にも落ち着いて対応しやすくなります。
負荷を分散するための工夫
負荷を分散するには、日常的な監視や一次対応をベンダー側に委託し、社内担当者は判断が必要な場面のみ対応する体制を検討する方法があります。役割分担を明確にすることで、担当者の負担を軽減しやすくなります。
また、運用手順をドキュメント化しておくことで、担当者が不在の際にも他の社員が最低限の対応を行える体制を整えられます。定期的に運用状況を上長やチームに共有する機会を設けることも、属人化を防ぐ工夫のひとつです。ドキュメントは作成したままにせず、更新のタイミングを決めておくと形骸化を防ぎやすくなります。
情シス不在での発注が引き継ぎ困難につながる懸念
情報システム部門が存在しない企業が、総務や経営者の判断でクラウド構築を発注した場合、構築後の運用を誰も引き継げなくなるケースが見られます。
情シス不在で発注した場合に起こりやすいこと
専門部署がない状態で発注すると、構築時の要件伝達が不十分になったり、運用開始後に必要な作業内容が担当者に正しく共有されなかったりする場合があります。結果として、トラブル発生時に誰が対応すべきか分からなくなることもあります。
また、発注時に対応した担当者が異動や退職をした場合、運用の詳細が引き継がれず、ベンダーとのやり取り自体が滞ってしまうケースも考えられます。情シス不在の企業ほど、構築段階から運用の引き継ぎ方法を明確にしておくことが重要です。契約内容や過去のやり取りが記録として残っていないと、後任者が状況を把握するまでに時間がかかることもあります。
引き継ぎ体制を整える視点
引き継ぎ体制を整えるには、構築時にベンダーから提供される設定資料やマニュアルを、担当者以外にも共有しておくことが重要です。特定の担当者だけが内容を把握している状態を避けることが望ましいとされています。
また、情シス部門がない企業では、運用の一部を外部の構築代行会社に継続して依頼する選択肢も有効です。定期的な運用報告を受ける仕組みを整えることで、担当者が変わっても運用状況を把握しやすくなります。報告内容を経営者や複数の担当者で確認する体制にしておくと、特定の個人への依存を減らしやすくなります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でクラウド構築の一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
多拠点アクセスでの権限設計の混乱
複数拠点からシステムにアクセスする構成では、拠点ごとに異なる権限設定が必要になり、設計が複雑になりやすい傾向があります。
多拠点構成で権限設計が複雑になる理由
拠点ごとに担当業務や必要なアクセス範囲が異なる場合、権限設計を一律にすると、一部の拠点で必要な機能にアクセスできなかったり、逆に不要な範囲まで閲覧できてしまったりする場合があります。想定外の範囲まで閲覧できる状態は、情報管理の観点からも見直しが必要になります。
また、拠点の増減や組織変更のたびに権限設定を見直す必要があるため、設計が複雑なまま運用を続けると、変更対応に時間がかかるようになります。権限設計は初期段階でシンプルな構造にしておくことが、その後の運用のしやすさにつながります。複雑な設計をそのままにしておくと、後任の担当者が全体像を把握しづらくなる点にも注意が必要です。
権限設計を整理する視点
権限設計を整理する際は、拠点ごとではなく、役割や業務内容を基準にグループを設定する方法が有効です。役割ベースの設計であれば、拠点が増えても既存のグループに割り当てるだけで対応しやすくなります。
また、権限設定の変更履歴をいつでも確認できる仕組みがあれば、意図しない権限変更が行われた場合にも原因を特定しやすくなります。定期的に権限設定を棚卸しし、不要な権限が残っていないかを確認することも重要です。棚卸しの担当者や頻度をあらかじめ決めておくと、確認作業が形骸化しにくくなり、継続的な見直しにつながります。
情シスと開発部門の認識違いによる問題
クラウド構築の要件を決める際、情報システム部門と開発部門の間で認識にずれが生じ、後から問題が発覚するケースがあります。
部門間の認識違いが起こりやすい背景
情報システム部門はセキュリティやコストの観点を重視し、開発部門は開発効率や柔軟性を重視するなど、部門によって優先する視点が異なる場合があります。要件定義の段階で両部門の意見をすり合わせないまま構築が進むと、後から要件の食い違いが判明することがあります。食い違いに気づく時期が遅いほど、修正にかかる工数も大きくなりやすい傾向があります。
特に、開発環境の構築では、開発部門が求める柔軟性と、情報システム部門が求める管理のしやすさが相反する場合もあります。どちらか一方の要望だけで決定せず、双方が納得できる落としどころを探ることが重要です。優先順位を事前に共有しておくことで、意見が対立した際にも判断の基準を持ちやすくなります。
認識をそろえるための進め方
認識違いを防ぐには、要件定義の段階から両部門の担当者が同席し、それぞれの要望を共有する場を設けることが有効です。要件を文書化し、双方が確認したうえで構築を進めることで、後からの食い違いを減らしやすくなります。文書には、決定事項だけでなく検討の経緯も残しておくと、後から見直す際の判断材料になります。
また、構築途中の段階でも定期的に進捗を共有し、認識のずれがないかを確認することが重要です。構築が完了してから認識違いに気づくと、修正に時間と費用がかかる場合があるため、早い段階での確認を習慣づけることが望ましいといえます。進捗共有の場を定例化しておくと、双方の担当者が変わっても同じ運用を継続しやすくなります。
少人数の情シス体制でも運用を任せやすいサービス
情シス担当者が少ない、あるいは専任者が不在の企業でも、日常的な監視や運用の一部を任せやすいクラウド構築サービスを紹介します。引き継ぎ資料の整備状況もあわせて確認してみてください。
株式会社ディーネットのAWS導入・運用支援サービス
- AWS環境のみならず、OSやミドルウェアまで含めた対応が可能
- 導入後も24時間365日体制でお客様のAWS環境を有人で運用監視
- 構築のみ、運用のみのご相談でも大歓迎
株式会社ディーネットが提供する「株式会社ディーネットのAWS導入・運用支援サービス」は、AWSの導入設計から構築、運用までを支援するサービスです。日常的な監視や設定変更への対応を相談でき、情シス担当者が1人しかいない企業でも、ベンダー側に一次対応を任せることで負荷を分散しやすくなります。
AWSソリューション(クラウド移行/サーバーレス開発/運用保守/内製化)
- オンプレミスとクラウドのハイブリッド環境構築に対応
- 一緒に悩み寄り添いながら全国どこでも対面フォロー
- AWS最上位となる「AWSプレミアティアサービスパートナー」を取得
株式会社TOKAIコミュニケーションズが提供する「AWSソリューション(クラウド移行/サーバーレス開発/運用保守/内製化)」は、AWSを活用したクラウド構築を支援するサービスです。運用保守を任せながら将来的な内製化も見据えた支援メニューが用意されており、情シス部門の体制にあわせて役割分担を相談できます。
「さくらのクラウド」構築・運用パック
- データ転送無料メリット最大化。予実管理しやすい定額運用を支援
- 夜間休日も緊急対応まで全て代行。実績に基づいたサポートで安心
- 専門知識、いりません。設計から請求の一元化まで丸投げOK
株式会社フューチャースピリッツが提供する「『さくらのクラウド』構築・運用パック」は、さくらのクラウドを活用したシステム構築・運用を支援するサービスです。構築後の運用保守までをパックとして依頼できるため、情シス部門が不在の企業でも運用の引き継ぎ先を確保しやすくなります。
AWS導入支援&構築 (カチシステムプロダクツ株式会社)
- AWS認定資格保有者が多数在籍
- お客様のビジネスに合わせた柔軟な設計
- 導入から運用・保守まで一貫サポート
アイネット (株式会社アイネット)
- 企業に合ったCSIRTモデルを提案し、最適な体制設計を重視。
- 構築だけでなく運用フェーズの実践的なインシデント対応を支援。
- 分析、対策、セキュリティの可視化と改善ロードマップを提示。
まとめ
クラウド構築後の運用は、情シス体制の負荷集中や情シス不在での発注、多拠点での権限設計の複雑化、部門間の認識違いなど、さまざまな懸念によってつまずく場合があります。構築段階から運用体制や役割分担を整理し、引き継ぎやすい仕組みを整えることが重要です。自社の担当者体制に合わせて、無理のない運用の進め方を検討してください。


