電子署名の必要性と法的要件とは
電子署名は契約書などの電子文書に対して付与される署名を指し、改ざんされていないことや署名しているのが本人であることを証明する目的で使われます。これは2001年4月に施行された「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」にもとづくものであり、一定の要件を満たせば手書きの署名や押印と同じ効果があると認められています。
電子証明書やタイムスタンプを用いて本人であることと改ざんされていないことを客観的に示せれば、法的に有効となりビジネスでの利用も可能です。
参考:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov法令検索
電子署名を用いるメリット
企業において、電子署名を活用するメリットは次のとおりです。
- ●なりすましや改ざんなどの不正を防げる
- ●郵送・手渡し不要のため、手続きにかかる期間を短縮できる
- ●ペーパーレスにより、印紙税や印刷・郵送・管理コストを節約できる
紙の書類を電子化することで、書類の管理も社内システムで行えるようになります。テレワークでも書類管理が可能になるほか、検索性も高いため業務効率化につながるでしょう。
電子文書へ電子署名を行う方法
電子署名を行う方法は利用するソフトに応じて複数あります。それぞれ見ていきましょう。
AcrobatやAcrobat ReaderでPDF文書に電子署名する
AcrobatあるいはAcrobat Readerを使用することで、PDFファイルに電子署名を付与できます。どちらもPDFファイルを操作するソフトです。後者は閲覧と印刷に特化しているため機能は限られていますが、無料で利用できます。
これらを用いた電子署名の方法は以下のとおりです。
- 1.「ツール」→「証明書」→「電子署名」の順に選択
- 2.「ドラッグして新規署名ボックスを作成」をクリック
- 3.ダイアログボックス「証明済み文書として保存」が出たら「OK」をクリック
- 4.ドラッグで署名箇所を指定
- 5.デジタルIDを設定
- 6.ダイアログボックス「デジタルIDで署名」でIDを指定
- 7.デジタルID設定時のパスワードを入力
- 8.指示に従ってファイルを保存
「5.」におけるIDの設定は自身で作成することも可能ですが、ビジネス文書においては認証機関に発行してもらうのが適切でしょう。自社が求める証明の信頼性に応じて選ぶとよいです。
ワードやエクセルソフトで電子署名する
PDF以外のワードやエクセル文書にも電子署名は可能です。あらかじめ認証機関によるデジタルIDを取得してから行いましょう。
- 1.電子署名したいファイルを開く
- 2.追加したい箇所にカーソルを配置し「挿入」→「テキスト」の順に選択
- 3.「署名欄の追加」をクリック
- 4.ダイアログボックス「署名の設定」で情報を入力
- 5.追加された署名欄を右クリックし「署名」を選択
- 6.キーボードやタッチペンで署名を行い保存する
電子契約サービスで電子文書に署名する
電子契約サービスとは、紙の契約書の代わりに電子文書にて契約を取り交わすためのツールです。基本機能として電子署名の付与が可能なため、自社で電子契約サービスを導入していれば、デジタルIDの取得不要で簡単に信頼性の高い電子署名を付与できます。
電子契約サービスの電子署名には、契約印の代わりにメール認証だけで手軽に利用できる「立会人型・事業者署名型」と、電子認証局が発行する電子証明書を用いてより高い信頼性を付与できる「当事者型」があります。
電子署名サービスの利用は、文書の安全性とそれに関する業務の効率を同時に高められる方法といえるでしょう。
電子署名の仕組み
電子署名ではどのように安全性が確保されているのでしょうか。順を追って見ていきましょう。
- 1.文書作成者は文書から圧縮データを作成する
- 2.圧縮データを秘密鍵で暗号化する
- 3.圧縮データと文書本体を相手に送信する
- 4.受信者は「1.」と同様の操作で圧縮データを得る
- 5.「4.」とは別に、受信した圧縮データを公開鍵で復号し、圧縮データを得る
- 6.「4.」「5.」の圧縮データを比較する
ここでポイントになるのが秘密鍵と公開鍵です。これはペアになっており、秘密鍵で暗号化したものは対になっている公開鍵でしか復号できません。
つまり、受信者が公開鍵で圧縮データを元どおりに復元できれば、その圧縮データは秘密鍵をもつ正規の送信者によって作成されたものであると確認できます。そして、圧縮データが元どおりに復元できたかどうかは「4.」で得た圧縮データと比較すればわかります。同じ文書からは必ず同じ圧縮データが得られるからです。
電子署名を行う際の注意点
電子署名にはいくつかの注意点があります。代表的なものを見ていきましょう。
- 本番前に一度テストする
- 初めて電子署名で契約書などの重要電子書類をやり取りする場合は、一度テストをしてみましょう。秘密鍵と公開鍵がペアであることを示す電子証明書の期限切れなどが生じていると、文書の正当性を証明できません。
- 電子署名を使ってよいのか確認する
- 一部の契約書は紙で契約締結しなければなりません。電子文書で問題ないかどうかあらかじめ確認しましょう。
- 秘密鍵の管理を徹底する
- 先述したように、電子署名による証明力は「秘密鍵を持っているのは正規の文書作成者(署名者)のみ」であることに依拠しています。秘密鍵が第三者の手に渡ってしまっては意味がないため、厳重に管理しましょう。
- 電子証明書の効力を確認する
- 電子証明書の内容に変更が生じた場合や秘密鍵が第三者の手に渡った際には、認証局に電子証明書の失効を依頼する必要があります。
電子署名に電子契約サービスを活用するメリット
電子文書に電子署名を付与するのはそこまで難しい操作ではないものの、電子署名をするたびに行うとなると負担になり得るでしょう。そこで、電子契約サービスの活用がおすすめです。ここでは電子署名時に電子契約サービスを活用するメリットについて解説します。
電子署名の付与が効率化できる
電子契約サービスを利用していれば、特別な操作をせずとも自動的に電子署名が付与されます。そのため電子署名を用いた取引が多い場合、電子契約サービスの導入により工数削減が可能です。
また、スマホ操作に対応した電子契約サービスなら、取引先など社外で電子契約を結ぶ際にもその場で電子署名を付与できます。取引にかかるリードタイムを短縮し、企業活動の加速化に貢献するでしょう。
長期署名に対応できる
電子署名法施行規則によると、「電子証明書の有効期限は5年を超えないものであること」と記されています。そのため、電子証明書は通常1~3年程度の有効期限が定められます。しかし契約書は税法により7年間の保管が必要です。さらに、契約の時効などを考慮すると10年は保存しておきたいものです。
電子契約サービスでは、電子署名とあわせてタイムスタンプの付与にも対応しています。タイムスタンプは付与した時点での電子文書の存在を証明し、以降改ざんがないことを証明する役割があります。また、タイムスタンプの有効期限は10年です。つまり、電子署名とあわせて契約書に付与すれば10年間は電子署名の有効性が保証されます。さらに、タイムスタンプを有効期限内に再度付与することで10年以上の請負契約などにも対応可能です。
参考:電子署名及び認証業務に関する法律施行規則 | e-Gov法令検索
電子署名の方法を知り、電子文書を保護しよう
電子署名を利用すれば、文書が改ざんされておらず、文書作成者が正規の作成者であることを証明できます。契約書をはじめとした電子書類のやり取りで、安全性を確保するために使いましょう。
電子契約サービス導入により、手軽に信頼性の高い電子署名が行える体制を構築するのがおすすめです。費用や機能などを比較し、導入を検討してみましょう。