経費精算システムにおける人工知能の活用
内容を理解して費目を自動入力
手入力が面倒で、ついつい後回しにしがちな経費精算業務。経費精算が必要なのは理解できても、一般の社員にとっては雑務であり、本業が優先されがちです。
日本ではこの経費精算に必要なレシートや領収書の電子化が本格化しています。平成27年度と28年度の税制改革で、これまでの制限が大幅に緩和され、スマートフォンによる撮影が解禁されました。画像データも経費精算の書類と認められるようになったのです。
これだけでも大きなニュースですが、これをさらに進化させるサービスが登場しました。撮影したレシートや領収書の画像データから必要事項などの情報を読み取り、システムに自動入力するAI-OCR(光学文字認識)機能が追加されたのです。
ここで活躍しているのが人工知能です。例えば、接待の領収書。撮影した画像データの文字を認識し、お店の名前や住所、電話番号、日付を識別し、システムの入力項目に割り振っていきます。社員は接待した相手など、必要最低限の項目だけを入力すればデータ登録が完了。AI-OCR機能によって、経費申請をはじめとする経費精算業務を大幅に省力化できます。
業務交通費の精算でも使えます。例えば、出張でエアチケットを立て替えた際、領収書を撮影すると、必要項目が航空運賃の費目に自動入力されます。
経費精算の間違いや不正検出
人工知能のメリットは営業社員ばかりではありません。承認する上長や経理担当者の経理業務での負荷も大幅に軽減します。人工知能で入力作業を行っていることから、入力ミスや転記ミスなどの手入力による単純ミスをなくすことができます。さらに不正の防止。領収書の写真データがセットになっているため、金額のごまかしようがありません。
疑わしい申請があれば、ピックアップしてフラグを立てることもできます。会議費(飲食代)や接待となっているにもかかわらず、お店が飲食店でないことを人工知能は発見します。休日の申請で、「社内規則違反」を疑われることもあります。これらを人間がチェックしていては膨大な時間を要しますが、機械のため瞬時に処理します。
人間はフラグの立った疑わしい申請を監査するだけで済みます。
音声認識でデータ入力
撮影データからの文字認識だけが人工知能の力ではありません。ICカードで決済した電車賃など、レシートや領収書がない経費も存在します。その際は音声認識での入力が可能です。しかも、入力欄にカーソルを置いて、順番に入力するような面倒な手順は必要ありません。
パソコンやスマートフォンに向かって、思い付いた順番に声を出します。人工知能はそれらを音声認識し、該当する入力欄に自動で登録していきます。経費精算は入力するデータが限られているため、機械的に区分けして登録することが比較的簡単です。
仮払いの申請も同様です。声に出して思い付いた順番に入力することで、仮払申請書ができあがり、内容を確認してワークフローの開始ボタンを押せば、承認ルートに流れていきます。
これであれば、もう経費精算業務を面倒に感じたり、時間がなくなって自腹で済ませたりすることもなくなるでしょう。経理担当者も月末になって押し寄せる経費精算処理に悩まされることがなくなります。
音声でレポート作成や分析処理
経理担当者は経費科目のレポートを作成が求められ、マネージャクラスになると経費分析をする作業も必要です。これも音声で指示することができます。人工知能は担当者の今までの作業を学習し、指示された音声から、求められる集計作業を認識し、一覧表を作成します。そのグラフ化も分析作業に最適な種類で表示します。これにより、人間による手作業やミスを大幅に削減できます。
人工知能で労働時間の削減
経理業務のほか、金融業界などの労働集約型産業では、効率化が課題視されていました。経理業務に人工知能が活躍し、金融ビジネスでもFinTechが活用されています。人工知能による業務効率化や自動化によって、残業削減を推進することが多くの日本企業で求められています。