タイムスタンプって何?
タイムスタンプとは「この時間には確かにこのデータがあった」ことを保証する証明書のことです。タイムスタンプを目的の書類(電子データ)に押す(付与)することで、その時点に、該当するデータが存在していたことを証明できます。
ペーパーレス化が推進されるようになって、多くの書類が電子化して保存されるようになりました。持ち運ぶこともスペースも不要となり、業務の効率化やコスト削減に貢献しています。
ただし、電子化されたデータは簡単に変更されやすい欠点を持っています。悪意の有無にかかわらず、書き換えられてしまう危険性があるのです。このため、重要な書類が現時点まで書き換えられていないことを証明する手段が必要になりました。
これを目的で開発されたのが「タイムスタンプ」です。タイムスタンプを付与することで、「存在証明(そのファイルがいつから存在しているのか)」「完全性証明(存在時刻から現在まで内容が変更されていないか)」を保証できます。
似たようなものに「電子証明」があります。しかし、電子証明では、いつの時点で存在した電子データなのかを証明できません。
タイムスタンプの仕組み
では、タイムスタンプは、どのように時刻と完全性を証明するのでしょうか。ここでポイントとなるのは、保証する第三者が必要になるということです。そもそも、「存在」とは単独では証明できません。存在を認める第三者がいて、はじめて確立します。
この第三者をタイムスタンプサービス事業者(時刻認証局=TSA: Time-Stamping Authority)と呼びます。このタイムスタンプサービス事業者がタイムスタンプを発行して、目的の書類に付与することになります。
タイムスタンプサービスは、タイムスタンプの①要求、②発行、③検証の3工程があります。
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①要求:
利用者がタイムスタンプを押すデータのハッシュ値を生成し、それを時刻認証局に送付します。
ハッシュ値は「指紋」にたとえられる固有のデータです。
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②発行:
時刻認証局がハッシュ値をベースに偽造不能のタイムスタンプを発行して、利用者に返送します。
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③検証:
原データからハッシュ値を計算し、それとタイムスタンプに含まれているハッシュ値と比較します。
これにより、原データがタイムスタンプに含まれている時刻以降変更されていないことを証明できます。
経費精算になぜタイムスタンプ?
スキャナ保存制度は、紙で受け取った請求書や領収書などを電子化して保存することを認可する法律です。しかし、電子化することでデータを変更される危険性が出てきます。わかりやすい例が領収書データの変更です。経費を多く見せるために、「3万円の領収書」を「300万円の領収書」に書き換えることは簡単です。
このようなことをされては、国税局がたまりません。そこで義務づけているのがタイムスタンプの付与というわけです。平成28年度税制改正大綱では、「スキャナ装置について、原稿台と一体となったものに限定する要件を廃止」した反面、「国税関係書類の受領後、受領者が当該書類に署名を行った上で、3日以内にタイムスタンプを付与」としました。
「デジタルカメラで撮影してた画像データでも、スマートフォンで撮影した画像データでもかまいません。ただし、3日以内にタイムスタンプを付与してください」ということです。
まとめ ~ タイムスタンプは無料ではない! ~
スキャナ保存制度によって、一般の社員は領収書などを撮影し、データをシステムに登録するだけとなり、大幅な業務効率化が可能となりました。会社側も紙の帳票管理から解放されて、コスト削減が可能となります。
ただし、スキャナ保存制度にはタイムスタンプが必要です。これは無料ではありません。第三者となるタイムスタンプサービス事業者を利用し、1件あたり、または定額でサービスを受ける必要があります。財団法人日本データ通信協会に認証されている事業者もあります。まずは資料など情報を集めましょう。
出典:国税庁「電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正されました」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/03.pdf