エリアマーケティングとは
最初に、エリアマーケティングの概要を解説します。
地域の特性に基づいたマーケティング手法のこと
エリアマーケティングとは、地域情報に基づいたマーケティング手法です。全国単位ではなく、各地域の特徴(生活様式、土地柄、交通インフラ、産業など)を考慮してマーケティングを行います。
具体的には、以下のような活動を含みます。
- ■地域情報に基づいた地域や市場の選定
- ■地域の特性に適した戦略の立案
- ■個別集中的なマーケティングの実施
上記の活動を地域ごとに行うことで、最終的には全社的な顧客満足度や売上の向上を目指します。新規店舗出店時にはもちろん、既存の店舗における売上拡大や統廃合にも有効なマーケティング手法です。
商圏分析を行って進めていく
商圏とは、店舗の顧客となり得る消費者が生活する地域を言います。基本的には、店舗を中心とした円形の地域です。店舗から辺縁部までを商圏距離、商圏のなかに存在する全人口を商圏人口と言います。
商圏の広さは業種や業態によりさまざまです。たとえば、スーパーやコンビニなどは数が多く、消費者は最寄り以外の店舗に行くことがあまりないため、商圏は狭くなります。逆に、店舗の数自体が多くなく、遠出をして買うことも多いアパレル商品やブランド品を扱う店舗は商圏が広くなります。
もちろん、具体的にどのくらいの広さになるのかは地域によりさまざまです。交通機関が発達している地域なら人の行動範囲が広くなるため、おのずと商圏も拡大します。また、住んでいる人の年齢層などによっても行動範囲が変わり、商圏も変化するでしょう。このように商圏の特徴を分析し、エリアマーケティングを進めていきます。
エリアマーケティングのメリット
続いて、エリアマーケティングのメリットを解説します。
1.需要や売上の予測ができる
利益を伸ばすには需要や売上の予測が欠かせません。エリアマーケティングは、その需要・売上予測を行うのに役立ちます。具体的には以下の分析手法に有効です。
- ハフモデル
- 「消費者はできる限り近くにあり、大きな店舗に行く」という前提に基づいて、来店確率を予測する手法です。この手法で予測するには、エリアマーケティングによって周辺地域の競合店などを把握しておく必要があります。
- 重回帰分析
- 複数の要素の中から売上に影響するものを洗い出す分析手法です。たとえば、自社店舗の売上に関係している要素が、最寄駅からの距離なのか、それとも近くに住んでいる人の年齢なのかといったことを明らかにします。この手法でも、エリアマーケティングによる周辺地域に対する理解が欠かせません。
2.広告・販売戦略の立案ができる
商品を売るには、自社の商品に適した人に対してアプローチをしなければなりません。どれほどアプローチ方法が優れていても、自社の顧客と商圏の住民がマッチしていなければ、店舗の売上増加は見込めないでしょう。
したがって、店舗の出店地を決める前に、エリアマーケティングによって商圏に住む人々の特徴を掴むことが大切です。たとえば、小さい子供向けの商品を売りたいのなら、若い夫婦が多い地域を選ぶと良いでしょう。
また、地域を選んだあとのアプローチ方法を考える際にもエリアマーケティングは有用です。自社の顧客に合ったアプローチ方法を実施すれば、リピート率向上が期待できます。たとえば、顧客が若者ならばSNSを使った販促、高齢者が多いのなら従来のチラシの広告が考えられます。
エリアマーケティングで商圏分析を行う4つのポイント
エリアマーケティングでは商圏分析が欠かせないことは先述しました。では、この商圏分析を進めるには具体的に何をすれば良いのでしょうか。
1.マクロ環境を分析する
マクロとは大きな視点で物事を捉えることを言います。つまり、エリアマーケティングにおけるマクロ環境とは、人口や政治環境、社会環境など大きな視点での経済環境のことです。逆に、顧客の動向や競合店舗の状況のように小さな視点で捉える経済環境はミクロ環境と呼びます。
ミクロ環境もマーケティングの成否に影響を及ぼしますが、これだけでは地域特性の全体像を理解できません。エリアマーケティングの目的が地域に最適化したビジネスを営むことである以上、マクロ環境を重視する必要があります。
具体的には、以下の指標から地域特性を俯瞰的に把握します。
- ■人口統計
- ■人口分布
- ■昼夜間人口差
- ■世代構成
- ■年代構成
- ■学生数
- ■高齢者数
上記を正確に把握すれば、これから当該地域における人口や年代がどう変化するのか予測できるため、中長期的に安定したマーケティング戦略が実現します。
2.住民の生活様式を分析する
次は、その地域における需要を分析します。この際に必要になるのが、前のステップで得た市場特性です。
たとえば、学生数が多い地域では若者向けの商品に需要があるでしょう。中高生が多い場合は、その親世代も同様に多いと考えられるため、その世代をターゲットとしたビジネスも成り立つかもしれません。
一方、昼夜間人口差が大きい地域では、昼間は地域の外に働きに出ている人が多いと考えられます。さらに調査を進めると、通勤手段が電車なのか車なのかといったことも分かるかもしれません。電車通勤の人が多ければICカード所有者が多いことになるため、それらを利用した決済サービスに需要がありそうです。
逆に、車通勤が一般的であれば、ドライブスルーサービスに需要があるでしょう。
このように、地域の人々の行動や生活、世代などのデータから理解できる需要はたくさんあります。その地域特有のニーズを満たすサービスを考える助けになるでしょう。
3.地域の文化的な側面を分析する
人々の行動を左右するのは、生活様式だけではありません。地域特有の文化的な特徴も多大な影響を及ぼします。
例として、寒さの厳しい地域を考えてみましょう。この地域に住む人々は過ごしやすい気候の地域に住む人々と比べ、外出に対するハードルが高いと言えます。必要に応じてこまめに買い物に行くより、一度の買い物でまとめて購入する可能性が高いです。また、通販を利用し、外出自体を控える人も多いかもしれません。
さらに、食べ物や衣服も変わってきます。別の地域では冷やして食べるものを、加熱調理するのが一般的になっているかもしれません。服は厚手のものの方が売れやすいでしょう。
このような生活文化に根付いた特徴を理解しなければ、売れるものとそうでないものを大きく見誤ります。人口や世代割合と異なり定量的な把握が難しい要素ですが、気候や地形から分かることも多いため、可能な限り分析しましょう。
4.エリアの競争市場を分析する
顧客の次は、ライバルについて調べなければなりません。対象の地域でビジネスを展開した場合、競合の数・規模はどうなのかを定量的に分析しましょう。具体的には、競合店舗についての以下の指標が用いられます。
- ■店舗数
- ■売場面積
- ■立地
- ■営業時間
- ■サービス内容
上記の情報を踏まえ、地域の消費者がライバルの店舗を選ぶ理由を考えます。そうすることで、自社がライバルに対抗するうえでどのような施策が必要なのか見えてきます。
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エリアマーケティングを行う3つのステップ
ここまでは商圏分析の方法を解説してきました。次は、それを含めたエリアマーケティングの流れを紹介します。
1.商圏分析を実施する
最初に行うのが先述した商圏分析です。自社で調査するほか、国勢調査などのデータを活用すると分析が円滑に進みます。また、それらの情報をグラフや地図にまとめるなどすれば、俯瞰的に商圏を把握しやすくなるでしょう。
2.分析結果をもとに強化エリアを設定する
前のステップの分析結果を踏まえて、施策を行うエリアを選定します。需要の高い場所を選ぶのはもちろん、ライバルの状況もよく確認しなければなりません。
人はできるだけ近い店舗に足を運ぶ傾向があります。どれほど需要の高い地域でも、すでにライバル店舗がある地域で施策を行ってしまえばあまり高い効果は見込めません。需要とライバル状況の両方を踏まえたうえで、施策の効果が見込めそうな地域をあぶり出しましょう。
3.施策効果の見直しをする
エリアを選定したら、実際に施策を行います。しかし、それで終わりではありません。その効果を測定し、次へつなげる必要があります。施策によって、その地域における購買行動がどのように変化したのか把握しましょう。当初の計画と実際の来店状況を比較することで、施策の浸透度を測定できます。
また、顧客の声を直接集めるのもよいでしょう。DM(ダイレクトメッセージ)やアンケートの実施で生の声を聞き、それを次の施策へ反映させます。この繰り返しで段階的に顧客を増やしていくのが理想的です。
エリアマーケティングを効率的に行えるツールとは
エリアマーケティングをすべて人力で行おうとすると、膨大な労力やコストがかかります。そこで活用したいのがエリアマーケティングツールです。その名のとおり、エリアマーケティングを支援するITツールを言います。例として、いくつかの機能を紹介します。
- 登録機能
- 地図上に自社店舗やライバル店をプロットしたり、統計データを表示したりします。エリアマーケティングに必要な情報だけを盛り込んだオリジナルの地図を作成できるため、分析が捗ります。
- 表示設定機能
- 人口の多いエリアは赤、普通のところはピンク、少ないところは白など、データの表示方法を設定できます。
- 分析機能
- 登録データを基に、人口やライバル企業の出店状況などを踏まえて商圏分析を行います。
- 検索機能
- 住所の入力などにより、目的の地点を検索します。
ポイントを押さえて効果的なエリアマーケティングの実施を!
エリアマーケティングとは、地域特性を踏まえたマーケティング手法です。地域に最適化されたマーケティング施策を実施できます。
流れは以下のとおりです。
- 1.商圏分析
- 2.分析結果をもとにした強化エリアの設定
- 3.施策効果の見直し
また、商圏分析の方法は以下のとおりです。
- 1.マクロ環境の分析
- 2.生活様式の分析
- 3.文化的特徴の分析
- 4.競合市場の分析
以上を踏まえ、売上増加を目指しましょう。