ロードバランサとはどのような機能か
種類を追う前に、何を行う仕組みなのかを押さえておきましょう。役割を理解すると、種類ごとの違いがどこに効いてくるかも見えてきます。
ロードバランサの基本的な役割
ロードバランサとは、利用者からの通信を複数のサーバへ分散して振り分ける仕組みです。一台のサーバに処理が集中して応答が遅くなる状況を避け、複数台で受け止められるようにします。負荷分散装置とも呼ばれます。
もう一つの役割が、サーバの状態を定期的に確認する働きです。応答しなくなったサーバを振り分けの対象から外すことで、利用者が停止中のサーバへつながることを防げます。処理を分散させる目的だけでなく、一部に不具合が生じても全体を止めないための仕組みとしても使われます。
種類を分ける三つの軸
ロードバランサの種類は、単一の分類で語られるものではありません。提供の形態、判断する通信の階層、振り分けの基準という三つの軸があり、それぞれ別の観点で選択肢が分かれます。
| 分類の軸 | 主な選択肢 |
|---|---|
| 提供形態 | 専用機器を設置する形態、ソフトウェアとして導入する形態、クラウドのサービスとして利用する形態 |
| 判断する階層 | ネットワーク層で振り分ける方式、アプリケーション層で振り分ける方式 |
| 振り分けの基準 | 順番や重み付けによる方式、接続数や応答時間による方式 |
以降では、この三つの軸に沿ってそれぞれの選択肢を確認していきます。
提供形態による種類
どのような形で用意するかによって、初期の費用も運用の担い手も変わります。三つの形態を確認します。
専用機器を設置する形態
負荷分散を専門に扱う機器を自社のネットワークに設置する形態です。処理に特化した構成のため、大量の通信を扱う環境でも安定した動作が期待できます。設定を自社の構成にあわせて細かく作り込める点も特徴です。
一方で、機器の購入費用と設置作業が必要になり、保守契約や機器の更新も計画に含める必要があります。処理量が増えて機器の性能を超える場合は、上位の機種への入れ替えを検討することになります。導入後の増減に柔軟に対応しにくい点は、事前に踏まえておきたい要素です。
ソフトウェアとして導入する形態
汎用のサーバ上にソフトウェアを導入して負荷分散を行う形態です。専用機器を用意しないため初期の費用を抑えやすく、仮想環境の上に構築する構成も選べます。
処理の性能は動作させるサーバの構成に左右されるため、想定する通信量に見合った環境を用意する必要があります。OSの更新やソフトウェアの脆弱性への対応も自社で担うことになります。設定の自由度は高い一方、扱うには一定の知識が求められる構成です。
クラウドのサービスとして利用する形態
クラウド事業者が提供する負荷分散の機能を利用する形態です。機器の管理や更新を事業者側が担うため、自社の負担を抑えやすくなります。通信量の変動にあわせて処理能力が調整される構成もあります。
クラウド上にシステムを構築している場合は、同じ環境内の機能を使うことで設定を進めやすくなります。一方、設定できる範囲は提供される機能の中に限られます。細かな制御が必要な要件がある場合は、実現できるかを事前に確認しておきましょう。
判断する階層による種類
通信のどの情報を見て振り分けるかによって、できることが変わります。二つの方式を確認します。
ネットワーク層で振り分ける方式
接続先のアドレスやポート番号といった情報をもとに振り分ける方式です。通信の中身を解析しないため処理が軽く、大量の接続を扱う環境に向いています。
ただし、どのような要求が来ているかまでは判断できません。特定の内容へのアクセスを別のサーバへ回すといった制御には対応できないため、単純に処理を分散させたい場合に適した方式といえます。応答の速さを重視する構成で選ばれます。
アプリケーション層で振り分ける方式
要求された内容やアドレスの記述、利用者の情報といった中身まで解析して振り分ける方式です。特定のページへの要求を専用のサーバへ回す、画像などの要求を別の系統へ分けるといった制御が可能になります。
同じ利用者からの通信を同じサーバへ継続してつなぐ制御にも対応しやすく、ログイン状態を保つ必要がある構成で使われます。暗号化された通信の処理をこの層で担わせる構成もあります。中身を解析する分の処理は加わるため、性能の見積もりが必要です。
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振り分けの基準による種類
どのサーバへ通信を渡すかを決める基準にも複数の考え方があります。代表的な二つの系統を確認します。
順番や重み付けで振り分ける方式
登録したサーバへ順番に振り分けていく方式が基本の形です。設定が分かりやすく、性能がそろったサーバを並べる構成に適しています。
サーバごとに性能の差がある場合は、それぞれに割合を設定して配分を変える方式が使われます。性能の高いサーバへ多く振り分けることで、全体の処理を効率よく進められます。いずれの方式も現在の混み具合は見ないため、処理の重さに差がある要求が混在する環境では偏りが生じる場合があります。
接続数や応答時間をもとに振り分ける方式
その時点で接続数が少ないサーバへ渡す方式や、応答の速いサーバを優先する方式です。実際の状況を見て判断するため、処理の重さにばらつきがある環境でも偏りを抑えやすくなります。
一方で、状況を把握するための処理が加わります。どの方式が適するかは、扱う要求の性質やサーバ構成によって変わるため、一つに決めつけず運用しながら見直す前提で選ぶとよいでしょう。設定を後から変更できるかも、確認しておきたい項目です。
ロードバランサの選び方
三つの軸を踏まえたうえで、実際に選ぶ際の確認事項を整理します。
想定する通信量と可用性の要件
最初に、扱う通信量の見込みと、停止が許容される時間を整理します。業務システムなのか、社外向けのサービスなのかによって、求められる水準が変わります。
負荷分散の仕組み自体が停止すると全体に影響が及ぶため、二重化の構成を検討するかどうかも決めておきましょう。繁忙期に通信が集中する事業であれば、その時期の見込みを基準に検討することが望まれます。現在の実績を数値で示せると、提案も具体的になります。
必要な機能と既存環境との関係
暗号化された通信の処理、同じ利用者を同じサーバへつなぐ制御、サーバの状態確認の方法、通信の記録といった機能のうち、必要なものを整理します。すべてを備えた構成は費用も上がるため、業務に欠かせないものを見極めましょう。
既存のネットワーク構成や、利用しているクラウド環境との関係も確認点です。設置場所や配線、設定変更に伴う停止時間の見込みも含めて検討する必要があります。判断が難しい部分は、情報システム部門やベンダーに相談しながら進めましょう。
サポート範囲と費用体系の確認
料金は、機器の購入と保守契約、ソフトウェアのライセンス、処理した通信量に応じた従量制など、形態によって考え方が異なります。数年単位の総額で比べると、形態ごとの差が見えやすくなります。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、初期の設定や構成の設計を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。停止が業務に直結する設備であるため、障害時の対応時間と代替機の有無も確認しておきましょう。
通信の振り分けに対応した製品
提供形態や振り分けの方式にあわせて比較できる、ロードバランサに関連する製品を紹介します。
ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ
- 業界最多クラスのセキュリティ機能の中から独自のカスタムが可能
- 管理者負担軽減!導入から運用、保守まですべて一括対応。
- 24時間365日の障害検知・切り分けから復旧対応までサポート!
株式会社 USEN ICT Solutionsが提供する「ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ」は、通信の制御機能を備えたネットワーク機器です。負荷分散に関わる設定を含め、企業のネットワーク構成にあわせた導入支援を受けられます。中小規模のオフィス環境での利用が想定されています。
BIG-IPLocalTrafficManager (エフファイブ・ネットワークス・ジャパン合同会社)
- 負荷分散とヘルスチェックで高可用性。
- 通信保護と性能向上を実現。
- 詳細ログと分析機能でトラフィック状況を可視化。
KempLoadMaster (プログレス・ソフトウェア・ジャパン株式会社)
- FIPS 140-2レベル1およびコモンクライテリア認定取得
- Web UIとAPIによるシンプルなアプリ配信管理
- ダッシュボードで詳細な分析情報とテレメトリを提供
Thunderシリーズ (A10ネットワークス株式会社)
- SSL/TLSオフロード、DDoS防御、WAF機能を標準サポート。
- Harmony Controller連携でオンプレ・クラウド環境を一元管理
- FlexPoolライセンスで複数のインスタンス間で帯域を共有可能
ロードバランサに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: サーバが二台でも導入する意味はありますか?
- 処理の分散だけでなく、一方が停止した際にもう一方へ振り分けられる点に意味があります。停止時間を短くしたい業務では、台数が少なくても検討の対象になります。求められる可用性の水準を整理して判断するとよいでしょう。
- Q2: どの振り分け方式を選べばよいですか?
- サーバの性能がそろっていれば順番に振り分ける方式で足りる場合が多く、処理の重さにばらつきがあれば接続数を見る方式が候補になります。運用しながら見直す前提で、設定を変更できる構成を選んでおくと調整しやすくなります。
- Q3: クラウドの機能で足りますか?
- クラウド上にシステムを構築している場合は、同じ環境内の機能で対応できることが多くあります。ただし細かな制御や特定の要件がある場合は、実現できるかを事前に確認する必要があります。要件を整理したうえで事業者に相談しましょう。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 形態や既存構成との関係によって幅があります。クラウドの機能を使う場合は短期間で始められる一方、機器の設置やネットワーク構成の変更を伴う場合は検証を含めて時間を要します。切り替え時の停止時間も含め、具体的な計画をベンダーと確認しましょう。
まとめ
ロードバランサの種類は、提供形態、判断する階層、振り分けの基準という三つの軸で整理できます。提供形態では機器の設置とソフトウェア、クラウドの利用が選択肢となり、階層ではネットワーク層とアプリケーション層で扱える制御が変わります。振り分けの基準も、順番による方式と状況を見る方式で性格が異なります。想定する通信量と可用性の要件を整理したうえで、必要な機能とサポートまで比べて選びましょう。まずは資料請求から検討を進めてみてください。


