SaaS管理システムを業種別に選ぶ理由
一口にSaaS管理システムといっても、必要な機能は業種によって異なります。自社の業務特性や課題を整理した上でシステムを選ぶことで、導入後の効果を高めることができます。
業種によって異なるSaaS管理の課題
企業がSaaSを導入する目的や利用形態は業種ごとに大きく変わります。IT企業では多数のSaaSを短期間に試験導入するケースが多く、野良SaaS(未承認のクラウドサービス)が増えやすい傾向があります。一方、製造業では現場部門と本社でSaaSの管理体制が分断されていることが課題になりがちです。
人材業界では入退社の頻度が高いため、アカウントの発行・削除を迅速かつ正確に行う必要があります。医療業界では個人情報や患者情報を適切に管理することが求められ、アクセス権限の管理が一段と重要です。このように業種ごとに優先度の高い課題が異なるため、汎用的なシステムで一律に対応しようとすると、必要な機能が不足するケースがあります。
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システム選定前に整理すべき自社の要件
SaaS管理システムを選ぶ際は、まず自社が現状どのようなSaaSをどの部門で利用しているかを棚卸しすることが出発点です。利用SaaS数、従業員数、入退社の頻度、拠点数、セキュリティポリシーなど、自社固有の条件を明確にしておくと、ベンダーへの問い合わせや資料比較がスムーズです。
特にアカウント管理に課題を感じている場合は、IDプロバイダー(IdP)との連携機能があるかを確認することが重要です。シングルサインオン(SSO:一度の認証で複数のサービスにアクセスできる仕組み)やSCIM(ユーザー情報を自動同期する規格)に対応しているかどうかによって、運用負荷が大きく変わります。
IT企業・SaaS多用企業におけるシャドーIT対策
SaaSの利用数が多いIT企業では、従業員が業務上の判断で独自にサービスを契約してしまう「シャドーIT」が発生しやすい環境にあります。シャドーITはセキュリティリスクを高めるだけでなく、コストの無駄にもつながるため、早期の検知と管理体制の整備が求められます。
シャドーITが生まれやすい背景と検知の仕組み
IT企業では技術に詳しい従業員が多く、手軽に利用できるSaaSを個人のクレジットカードや部門予算で契約するケースが起こりやすい状況があります。このような状況では、IT部門が全体を把握しきれず、情報漏えいリスクや不正アクセスの温床となる可能性があります。
シャドーIT検知に強いSaaS管理システムは、ネットワークログやSSO認証ログを解析して未申請のSaaS利用を自動で検出する機能を持ちます。検知後は申請ワークフローへ誘導する仕組みを設けることで、現場の利便性を損なわずにガバナンスを強化することが期待できます。導入前には「どのようなログソースから検知するか」「検知精度はどの程度か」を確認しておくことをお勧めします。
SaaS棚卸しとコスト最適化の進め方
シャドーIT対策と並行して取り組むべきなのがSaaSの棚卸しです。複数の部門がそれぞれ同種のツールを契約しているケースも多く、統合や解約によってライセンスコストを削減できる可能性があります。SaaS管理システムには契約状況や支払い情報を一元管理し、重複や未使用ライセンスを可視化する機能を持つものがあります。
棚卸しの効果を高めるには、各SaaSの利用頻度データと紐づけて評価することが大切です。「契約しているが使われていないツール」を洗い出すことで、削減インパクトを数値で把握できます。システム選定時には、利用状況データをどの粒度でレポートできるかを事前に確認しておくとよいでしょう。
製造業・建設業における現場管理の課題と対策
製造業や建設業では、本社・工場・現場など複数の拠点にまたがってSaaSが利用されているケースがあります。本社が全体を把握できていない「野良SaaS」が現場ごとに生まれやすく、セキュリティポリシーの徹底が難しくなる傾向があります。
製造業での利用状況可視化ポイント
製造現場では、生産管理・在庫管理・品質チェックなど目的ごとに異なるクラウドツールが導入されていることがあります。IT部門が関与せずに現場主導でサービスが選ばれるケースも多く、どのツールがどの拠点で使われているかを本社が把握できていないことが課題です。
製造業向けにSaaS管理システムを検討する際は、拠点単位でのSaaS利用状況を可視化できるかどうかが重要な確認ポイントです。また、現場担当者のITリテラシーが高くない場合も多いため、申請フローやアカウント管理画面がシンプルで操作しやすいかという点も選定基準に加えると良いでしょう。
建設業における現場単位のSaaS管理
建設業では、プロジェクトごとに設計・施工・安全管理など複数のクラウドツールが使われることがあります。現場の担当者が独自に契約したSaaSを本社が把握していないまま運用されると、プロジェクト終了後もアカウントが残り続けるリスクがあります。
本社が現場ごとの契約状況を集中管理できる仕組みを持つシステムを選ぶことが重要です。プロジェクト終了に合わせたアカウント削除リマインドや、部署・プロジェクト単位でのグループ管理機能があるかどうかも事前に確認することをお勧めします。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でSaaS管理システムの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品の比較検討を進めましょう。
人材業界・医療業界でのアカウント管理と法令対応
人材業界や医療業界では、アカウントの発行・削除に関する正確性と速度が特に求められます。入退社の頻度が高い人材業界ではアカウント管理の手間が課題になりやすく、医療業界では個人情報保護の観点から退職者アカウントの削除漏れが大きなリスクとなります。
人材業界における入退社対応の自動化
人材業界では派遣社員や契約社員の入退社が頻繁に発生するため、アカウント発行・削除の作業が担当者の負担になりがちです。手作業では対応が遅れたり、削除漏れが起きたりするリスクがあります。SaaS管理システムの中には、人事システムと連携してアカウントのライフサイクルを自動管理できるものがあります。
入社時に必要なSaaSアカウントを一括発行し、退社時には一括削除する自動化機能の有無は、人材業界にとって重要な選定ポイントです。また、派遣先企業や契約形態ごとに利用できるSaaSを制限できるかどうかも確認しておくと、権限管理をより細かく行えます。
医療業界での退職者アカウント削除リスクの回避
医療法人や病院では患者情報や診療データなどの機密情報を扱うため、退職した職員のアカウントが残ったままになっていると、情報へ不正アクセスされるリスクが高まります。個人情報保護法をはじめとする法規制への対応という観点から、アカウントの削除漏れは特に注意が必要です。
医療業界でSaaS管理システムを選ぶ際は、退職者アカウントの自動停止・削除機能のほか、いつ・誰が・どのSaaSを利用したかを記録する監査ログ機能が備わっているかを確認することが大切です。アクセス権限の変更履歴を追跡できる機能があると、万一の際の原因究明がしやすくなります。
飲食業・スタートアップにおけるSaaS管理の注目ポイント
飲食業では店舗ごとの共有アカウントと本部スタッフの個別アカウントが混在しがちであり、管理の一元化が課題です。スタートアップでは急速な従業員増加に対応できるスケーラビリティが求められます。それぞれの特性を踏まえた機能確認が重要です。
飲食業での共有アカウントと個別アカウントの一元管理
飲食チェーンでは、店舗のスタッフが共有タブレットや共有アカウントでPOSシステムや勤怠管理ツールを使うケースがあります。一方で本部スタッフは個人アカウントでさまざまなSaaSを利用しており、管理体制が分断されやすい状況があります。
このような環境では、店舗単位・拠点単位での権限管理ができるSaaS管理システムが有効です。共有アカウントの利用状況も個別アカウントと同じ管理画面で一元的に確認できるか、また権限の付与・剥奪を管理者が一括で操作できるかどうかを選定時に確認することをお勧めします。
スタートアップでのID管理とSaaS管理の両立
スタートアップは従業員数が急増しやすく、増員のたびにアカウントを個別に発行・設定していては管理が追いつかなくなります。少人数のIT担当者でも効率よく運用できる仕組みが求められます。
スタートアップに適したSaaS管理システムは、IDプロバイダーとの連携によるSSO(シングルサインオン)に対応していることが条件の一つです。新入社員のオンボーディング時にアカウント発行から権限付与まで自動で行えると、管理者の工数を大幅に削減できます。初期費用や月額費用が従業員数に応じて増減するかどうかも、成長フェーズにある企業にとっては大切な確認事項です。
SaaS管理システム導入前に確認すべきよくある疑問
SaaS管理システムの導入を検討する際、業種を問わず共通して生じやすい疑問があります。以下によくある質問とその確認ポイントをまとめました。
- ■Q1:SaaS管理システムは中小企業でも導入できますか?
- はい、中小企業向けの料金プランを設けているベンダーもあります。従業員数や利用SaaS数に応じてプランが変わる製品が多いため、自社規模に合わせた費用感をベンダーに確認することをお勧めします。また、機能を絞ったシンプルなプランから始めて、必要に応じて拡張できる製品を選ぶと、導入コストを抑えられます。
- ■Q2:既存の人事システムや勤怠管理ツールと連携できますか?
- 連携できるかどうかはシステムによって異なります。主要な人事システムやAD(Active Directory)との連携に対応している製品は多くありますが、自社が利用しているシステムと連携できるかどうかは事前にベンダーへ確認することが大切です。SCIM対応の有無もあわせて確認しておくと、自動化の範囲を把握しやすくなります。
- ■Q3:SaaS管理システムの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
- 導入期間はシステムの規模や自社環境の複雑さによって変わりますが、シンプルなクラウド型であれば数週間から1か月程度で稼働するケースもあります。既存システムとの連携設定やアカウント情報の移行が必要な場合は、それ以上の期間を見込んでおくとよいでしょう。ベンダーにサポート体制や実績を事前に確認することが重要です。
まとめ
SaaS管理システムは、業種ごとに異なる課題に対応できる機能の有無を確認した上で選ぶことが大切です。IT企業ならシャドーIT検知、製造業・建設業なら現場単位の可視化、人材・医療業界ならアカウントの自動管理、飲食業なら共有アカウントの一元化、スタートアップならスケーラビリティといった観点が選定の軸となります。まずは自社の業種と課題を整理し、複数の製品を比較検討することをお勧めします。


