給与前払いサービスとは
まず給与前払いとは、給与の一部を給与日前に受け取れる制度です。急にお金が必要になった従業員にとって有益な制度ですが、通常の給与支払いの手続きとは違ったイレギュラーな対応が必要なため、経理担当者の負担増加が課題となるでしょう。そこで注目されているのが、給与前払いサービスです。
給与前払いサービスとは、給与前払いにかかる事務手続きを代行するサービスのことです。給与前払いサービスを利用すれば、少ない業務負担で前払いを実現できます。また、パソコンやスマホから簡単に申請できる、最短翌日で振り込まれるなどの特徴があり、従業員・経営者ともに気軽に前払いを実施できるようになります。
給与前払い制度の概要やサービスの仕組み、導入するメリット・デメリットなどについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。給与前払いサービスの「立替払い」と「自社払い」の2つのタイプについても解説しています。
給与前払いサービスは違法か
原則として給与前払いサービスに違法性はありません。ただし「立替型」のサービスにおいては注意が必要です。
立替型の給与前払いサービスは、自社で前払い給与を準備する「自社払い型」とは異なり、サービス提供会社が前払い分の給与を立て替えます。これが法律上の「貸付け行為」とみなされた場合、給与前払いサービスは賃金業に該当するためサービス手数料は利息と判断され、条件によっては利息制限法に抵触するおそれがあります。
しかし、金融庁は「給与前払いサービスが貸金業法2条1項の貸金業に該当するか」という立替払いタイプのサービス提供会社からの質問に対し、「貸金業に該当しない」という見解を示しています。そのため給与前払いサービスは、適切な手続きや方法に従って行われている場合、違法性を指摘されることはありません。
参考:確認の求めに対する回答内容の公表(平成30年12月20日)|金融庁
参考:グレーゾーン解消制度に係る事業者からの照会に対し回答がありました|経済産業省
給与前払いサービスが違法にあたるケース
給与前払いサービスは法律に則った制度ですが、場合によっては法律上の問題が発生するケースもあります。ここでは、給与前払いサービスの法律上の問題となりうる点について解説します。
利息制限法に該当する場合
給与前払いサービスは「賃金業に該当しない」ケースが多いものの、すべてのサービスが「賃金業に該当しない」わけではありません。サービス内容によっては賃金業に該当し、この場合サービス提供会社は賃金業登録を行う必要があります。しかしなかには、貸金業登録していない違法な給与前払いサービスもあるため注意しましょう。
このような事業者は法外な手数料を取ったり、解約すると違約金を請求したりすることがあります。例えば、サービス提供会社が前払い給与を支払う際に、振込手数料が年利換算して20%を超える場合は利息制限法に違反します。
参考:上限金利について【貸金業界の状況】|日本貸金業協会
賃金支払いの5原則に反する場合
給与前払いサービスの多くは、サービス利用にあたって利用料と振込手数料が発生します。このとき、企業ではなく従業員が料金を負担する場合に注意が必要です。通常支払われるべき給与から手数料などを天引きした場合、労働基準法第24条にある賃金の支払い5原則のうち、「全額払いの原則」「直接払いの原則」に抵触する恐れがあります。
法律違反とならないためには、給与前払いサービス導入前に労使協定の締結・改訂を行い、労使の合意を得ることが必要です。
参考:賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。|厚生労働省
お金をやりとりする給与前払いサービスには法的リスクがともなうため、安全な環境下で運用を行うには、信頼できるサービス事業者を選択することが何より大切です。サービスごとに異なる料金設定や運用方法などについて詳細に把握し、信頼性の高いサービスを選びましょう。
以下の記事ではおすすめの給与前払いサービスの特徴を比較しているので、給与前払いサービスについて理解するための参考にしてください。
給与ファクタリングとの違い
給与前払いと混同されやすいサービスに、給与ファクタリングがあります。給与前払いサービスは勤務先である企業とサービス事業者が契約するのに対し、給与ファクタリングは労働者とサービス事業者が賃金債権の買い取りについて契約を交わす、個人向け金融サービスです。
給与ファクタリングを事業として行うには「貸金業登録」が必要です。しかし、給与貸金業者登録をしていないヤミ金業者や違法業者が関与していることも多くあります。また、利息制限法の上限を無視した法外な手数料を設定しているケースもみられ、金融庁も注意を促しています。給与前払いサービスについても、導入企業から預託金を受け取り運営しているにもかかわらず銀行業や資金移動業などの登録を受けていないなど、法に抵触するサービスを提供している一部事業者には気をつけましょう。
給与前払いサービスと給与ファクタリングは、支払日より前に給与を受け取れる仕組みである点は同じですが、契約内容や法的位置づけ、リスクなどが大きく異なるため注意しましょう。
参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起 | 金融庁
給与前払いサービスの課題と解決方法
少ない業務負担で前払いを実現できる給与前払いサービスはメリットが多い一方で、デメリットや運用上の課題もあります。給与前払いサービスの利用を検討する際には、以下の課題を把握しておくとよいでしょう。
- ■手数料や運用コストの負担
- 給与前払いサービス利用にかかる料金のうち、毎月発生するサービス利用料は企業が支払い、前払い給与を受け取る際の振込手数料は従業員が負担するのが一般的です。サービスごとに料金設定はさまざまですが、給与前払いサービスのタイプによって下記のような違いがあるため、サービス選定時の参考にしてください。
【立替払いタイプ】準備金を用意する必要がなくサービス利用料も低め。企業負担を減らしたい企業向け
【自社払いタイプ】振込手数料が低い傾向になる。従業員負担を減らしたい企業向け
- ■勤怠データの共有が必要
- 従業員が前払い給与を受け取るには、前払い申請と同時に従業員の勤怠データを給与前払いサービスへ共有する必要があります。また、通常の給与日には前払い分を差引いた額を支払うため、給与データと給与前払いサービスとの連携も欠かせません。そのため、勤怠管理システムや給与計算システムを活用している場合は、円滑に連携できるサービスを選びましょう。事務処理を自動化でき、経理担当者の業務負担が軽くなります。勤怠や給与をアナログ管理している企業は、システム化を検討しましょう。
給与前払いサービス利用における課題や注意点についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
信頼できる提供会社の給与前払いサービスを利用しよう
給与前払いサービスは、原則として違法性はありません。ただし、特定の法律に従わない場合や高金利、不透明な手数料の設定などがある場合、違法とみなされる可能性があります。そのため給与前払いサービスを利用する際には、サービス提供会社の資格保有を十分に確認し、信頼性の高いサービスを選定しましょう。
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