業種別にAIコンサルティングを選ぶ前の基本的な考え方
AIコンサルティングの支援内容は、業種ごとの課題やデータの種類によって異なります。業種別の違いを知ると、依頼先に伝えるべき情報が整理できます。ここでは、選定前に押さえたい三つの基本を確認します。
業種で異なる課題とAI活用のテーマ
業種によって、AIで解決したい課題は異なります。製造業なら検査や設備の保全、小売なら需要の予測と発注、金融なら書類の確認や問い合わせ対応が、検討の入り口になる場合があります。最初の対象は、効果を測りやすい業務を選ぶと、社内で合意を得やすくなります。
自社の課題が、画像や数値、文書のどのデータにもとづくのかを整理しましょう。扱うデータの種類が分かると、依頼先に必要な技術も見えてきます。同じ業種でも、会社によって課題は異なります。
業界知識と技術力の両方を確かめる観点
AIコンサルティングの依頼先には、AIの技術を中心に扱う会社と、特定の業界の業務に詳しい会社があります。どちらかに偏ると、技術は高度でも現場にあわない提案になる場合があります。技術と業務の両面から提案できるかが、判断の分かれ目です。
確かめる観点は、業界の専門用語を理解しているか、関連する法令や指針を把握しているかです。過去の支援内容を聞く際は、自社に近い業務の進め方を具体的に尋ねましょう。回答は記録しておき、複数の依頼先を同じ基準で比べましょう。
現場の業務を理解した支援かどうかの見分け方
初回の打ち合わせでは、現場の業務の流れを質問されるかに注目しましょう。現場の担当者への聞き取りを提案する依頼先は、業務への理解を深めようとしている可能性があります。質問の内容は、依頼先の業務理解を見極める材料として使えます。
反対に、課題を聞く前に特定の手法を勧められる場合は、提案の根拠を確認しましょう。現場の担当者にも打ち合わせに同席してもらうと、実務と提案のずれを早めに見つけられます。ずれが大きいと、導入後の手戻りにつながる場合があります。
製造業、小売チェーン、物流業での支援内容の違い
製造業、小売チェーン、物流業は、現場で生まれる数値データや画像データを活用する場面があります。業種ごとの主な活用テーマと、依頼時の確認点を表にまとめます。
| 業種 | 主な活用テーマ | 依頼時の確認点 |
|---|---|---|
| 製造業 | 検査や設備の保全 | 現場のデータを取得できる状態か |
| 小売チェーン | 店舗横断の需要予測 | 店舗ごとのデータ形式がそろっているか |
| 物流業 | 需要予測と配送の計画 | 効果の検証方法を事前に決めているか |
製造業は検査や保全の現場データを生かす
製造業では、外観検査の自動化や、設備が故障する予兆の把握が検討されることがあります。いずれも、カメラやセンサーから得たデータの量と質が成果を左右します。検査の対象や不具合の種類を、あらかじめ整理しておくと検討が進みます。
データが十分に蓄積されていない場合は、データの取得方法から相談できる依頼先が向いています。現場の稼働を止めずに試せるかも、PoCの計画で確認しましょう。検証の結果を現場の担当者が確認できる仕組みも、あわせて相談しましょう。
小売チェーンは店舗横断のデータ整理から始める
小売チェーンでは、店舗ごとに商品コードや販売データの形式が異なる場合があります。需要予測や発注の支援を頼む前に、データの形式をそろえる作業が必要になる場合があります。店舗間で表記が異なる場合は、整える作業にも時間がかかります。
支援サービスには、データ整理とAIの検証をどの順で進めるかを提案してもらいましょう。まず数店舗で試し、効果を確認してから全店舗に広げる進め方も考えられます。結果の比較に使う指標も、先に決めておくと検証が進めやすくなります。
物流業は需要予測の効果を段階的に検証する
物流業では、荷物量の需要予測が配送の計画や人員の配置に関わります。予測の精度は、季節や取引先の動きなど、さまざまな要因に左右されます。予測の対象期間は、日別か週別かなど、運用にあった単位で決めることが大切です。
最初は特定の拠点や路線に絞って予測を試し、実績との差を確認する方法があります。精度を評価する基準を依頼前に合意しておくと、判断がぶれにくくなります。拠点を広げる前に、現場の担当者の意見を聞く機会を設けると、運用上の課題を見つけられます。
金融業や医療法人で確認したい規制と情報管理
金融業や医療法人は、扱う情報の機微性が高く、守るべき指針や法令もあります。依頼先が、これらを理解したうえで支援するかを確認することが重要です。
金融業に求められるリスク管理と説明可能性
金融庁は、金融機関などにおけるAIの活用と健全な利活用に向けた論点を整理した「AIディスカッションペーパー」を公表しています。リスク管理やガバナンス、データの整備などが論点として挙げられています。公表された内容は、依頼先と話し合う際の共通の前提にできる点も利点です。
依頼先には、AIの判断の根拠を説明できる設計や、誤りがあった場合の対応手順を確認しましょう。社内の審査部門や監査部門が検討に加わる体制も、あらかじめ想定しておくと安心です。
医療法人で確認したい医療情報の安全管理
医療機関などが医療情報を扱う場合、厚生労働省が公表する「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が参考にできます。外部委託やクラウドサービスを利用するときの責任分担についても整理されています。
AIコンサルティングを依頼する際は、患者の情報を扱う範囲や、委託先との責任の分け方を契約で明確にしましょう。個人情報保護法にもとづく取り扱いもあわせて確認してください。医療現場の運用への影響も、導入前に確認しておくと安心です。
画像診断支援を検討する際の法令上の確認
診断や治療に使うことを目的としたソフトウェアは、薬機法でプログラム医療機器として扱われる場合があります。画像診断支援のAIも、用途によっては承認などの手続きが必要です。法令上の扱いは、ソフトウェアの目的や機能によって異なります。
支援サービスの範囲が、研究や業務の補助にとどまるのか、診断への利用を想定するのかを最初に整理しましょう。判断に迷う場合は、所管の窓口や専門家に相談することが大切です。相談の記録は、社内の関係者と共有しておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でAIコンサルティングの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
建設業と人材サービス業における業種別の支援の進め方
建設業は現場の資料、人材サービス業は個人情報と基幹システムが論点になりやすい業種です。業種別に、依頼前に整理しておきたい点を見ていきます。
建設業は現場の写真や図面などの資料を整理する
建設業では、図面や工事写真、日報など、紙やファイルに分散した資料が活用の対象です。安全管理や施工の進捗の確認にAIを使う場合も、まず資料の整理が前提です。資料の形式がそろっていないと、AIによる読み取りの手間が増える場合があります。
現場は屋外で、通信環境が限られる場合があります。支援サービスには、現場での使い方や、担当者が無理なく入力できる運用を提案してもらいましょう。現場の担当者が日々の作業中に無理なく入力できるかを、試験導入で確かめるとよいでしょう。
人材サービス業は求職者の個人情報の扱いを定める
人材サービス業では、求職者の経歴などの個人情報を扱います。職業安定法は、求職者等の個人情報を、業務の目的の達成に必要な範囲内で収集、保管、使用するよう定めています。要配慮個人情報にあたる項目が含まれないかも、確認が必要です。
AIに情報を入力する際は、利用目的の範囲に収まるかを確認しましょう。マッチングの支援でAIを使う場合は、判断の理由を人が確認できる仕組みも必要です。AIの出力をそのまま判断に使わず、担当者が最終確認を行う運用を決めておきましょう。
基幹システムとの連携は範囲を絞って検討する
人材サービス業に限らず、基幹システムとデータをやり取りする場合は、接続の方法やデータの形式によって作業量が変わります。最初から全項目を連携すると、検証が長引く場合があります。連携の範囲は、見積もりの金額や期間にも影響します。
最初は参照のみで始めるなど、範囲を絞る方法があります。基幹システムの提供元との調整が必要か、依頼先がその調整を支援するかも、あわせて確認しましょう。運用が安定した段階で、連携する項目を少しずつ増やす進め方が考えられます。
業種別の知見を生かせる依頼先の見極め方
業種に詳しい依頼先を選ぶには、質問の仕方に工夫が必要です。確認したい項目を整理し、最後に契約面の注意点も確認します。
- ■類似業種の支援経験
- 自社に近い業務での支援の進め方
- ■業界の用語や商習慣の理解
- 打ち合わせでの質問や提案の内容
- ■契約上の取り決め
- 成果物の権利と責任の分担
類似業種の支援経験を確認する質問
類似業種の支援経験は、依頼先の説明を聞いて確認します。公開できる範囲で、どのような課題に対して何を行ったのかを尋ねましょう。例えば、業種ごとの課題や、使ったデータの種類についても、確認できると安心です。
経験の有無だけでなく、PoCから本番運用に進んだ過程も聞くと参考にできます。守秘義務により詳細を話せない場合は、業務の進め方の説明を求めるとよいでしょう。回答の内容は、他の依頼先との比較にも使えるよう、メモに残しておきます。
業界特有の用語や商習慣への理解の見極め
業界特有の用語や商習慣を理解しているかは、打ち合わせでの質問の質からうかがえます。自社の取引の流れや、繁忙期の違いなどを踏まえた質問があるかに注目しましょう。質問の内容が一般的な説明にとどまらず、自社の事情に踏み込んでいるかも見ます。
理解が十分でない部分は、自社が資料を共有して補う前提で、進め方を相談できます。用語集や業務フロー図を用意しておくと、認識のずれを減らせます。資料を共有する前には、秘密保持契約を結んでおくと安心です。
業種を問わず契約で定めたい成果物と責任の分担
委託契約では、成果物の範囲と権利の帰属を明確にします。経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は、AIの開発契約で検討したい事項を整理した資料です。成果物には、報告書やプログラム、学習用のデータなどが含まれます。
PoCの段階で得た知見や学習済みモデルの扱いも、事前に取り決めましょう。AI事業者ガイドラインも参考にしながら、問題が起きたときの責任の分担を契約書に書いておくと安心です。取り決めは、契約書の別紙にまとめておくと、あとから確認しやすくなります。
分野を問わず相談できる支援サービス
業種や分野を問わず相談できるとされる支援サービスを、掲載情報の範囲で紹介します。
pluszeroのAI開発
- AI開発だけでなく、上流から下流までワンストップで対応可能
- 企業規模・分野を問わず、様々な事業課題の相談が可能
- 自然言語処理に注力し、研究開発を通して技術の進展を牽引
株式会社pluszeroが提供する「pluszeroのAI開発」は、課題発見からAI開発、保守までを一つの窓口で提供するアウトソーシングサービスです。企業規模や分野を問わず、さまざまな事業課題を相談できるとされています。研究開発を通じて自然言語処理に注力しており、データ分析・モデリングやAIソリューションの開発・実装を支援します。自社の業種の課題や、必要な専門知識に対応できるかは、個別に確認しましょう。
AIDX顧問
- AI・DXのプロがヒアリングから構築、内製化まで一気通貫で支援
- AIを活用した理想の社内体制を構築し、貴社の資産を増やせる
- 貴社の業務・環境に応じた最新AIの活用方法を月1でアドバイス
株式会社LOGが提供する「AIDX顧問」は、AI・DXの専門家が社内業務の改善を設計から内製化まで支援するAI顧問サービスです。製品ページでは、さまざまな業界業種の事例を、他の企業でも活用しやすい仕組みにして展開するとされています。現場で使っている資料や作業をもとに、業務フローにある課題へ対応する進め方とされています。自社の業種に近い事例があるか、対応できる業種の範囲はどこまでかを、個別に確認しましょう。
ChatGPT活用コンサルティング (株式会社HappyCreate)
- AIチャットボットランキング第1位
- 中小企業向けAIチャットボット導入サービス
- 従業員向けのChatGPT活用トレーニングも提供
AI導入支援サービス (deep consulting株式会社)
- AIエンジニアとデータサイエンティストが最先端技術を提供
- PoCのみなどスポット的なコンサルティングにも対応
- 自社でAI開発できる体制づくりを支援
AIコンサルティングに関するよくある質問
AIコンサルティングの業種別の選び方についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:業界に詳しい依頼先と、AIの技術を中心に扱う依頼先のどちらを選ぶべきですか?
- A:どちらか一方に決めるより、両方の観点で確認することが大切です。業界の業務や法令の理解と、技術的な実現方法の両面を、提案の内容で見比べましょう。
- ■Q2:自社の業種での支援経験が見つからない場合は、依頼を見送るべきですか?
- A:見送る必要はない場合があります。似た業種や似た課題での進め方を聞き、自社の業務を理解しようとする姿勢があるかを確認しましょう。現場の担当者との打ち合わせが提案されるかも判断の材料です。
- ■Q3:医療や金融など規制のある業種では、何を先に確認すべきですか?
- A:所管する省庁や業界団体が示している指針を、先に確認しましょう。そのうえで、依頼先がその指針を理解し、情報管理の体制を説明できるかを聞きます。判断に迷う点は、専門家に相談してください。
- ■Q4:業種ごとの課題は、依頼の前に社内でどこまで整理すべきですか?
- A:対象の業務の流れ、使えるデータの種類、現状の工数や誤りの件数を書き出しておくと、提案を比較しやすくなります。一度に全部を整理できない場合は、分かる範囲を伝えて相談しましょう。
まとめ
AIコンサルティングを業種別に選ぶ際は、業界の業務と規制に詳しい支援かを確かめることが重要です。製造業や小売、物流ではデータの整備と段階的な検証、金融や医療では指針や法令にそった情報管理、人材サービス業では個人情報の扱いが論点です。契約では成果物の権利と責任の分担も確認しましょう。複数の支援サービスの資料を請求し、自社の業種にあう依頼先を比べてみてください。

