AIコンサルティングによる課題解決の範囲と見極め方
AIコンサルティングは、どんな課題にも効く手段ではありません。支援が役立つ課題と、別の対策が必要な課題を見分けることが、課題解決の出発点です。ここでは、範囲の見極め方を三つの観点で整理します。
支援が役立つ課題の種類
AIコンサルティングが役立つのは、データにもとづく予測や分類、文書の要約や検索など、AIが得意とする処理で改善が見込める課題です。例えば、問い合わせ対応の振り分けや、帳票の読み取りが挙げられます。処理量が多く、手作業での確認に時間がかかる業務も対象です。
これらは、現状の工数や誤りの件数を数値で示しやすい課題でもあります。まず対象の業務を一つ選び、現状の数値を測っておくと、支援の効果を比べる基準として使えます。数値が取れない場合は、記録から始めましょう。
AIでは解決しにくい課題の見分け方
業務のルールが決まっていない、判断の基準が人によって異なるといった課題は、AIを導入する前に整理が必要です。AIは、基準が曖昧な作業をそのまま代わりに行えるわけではありません。AIの導入だけで解決しようとすると、費用だけが先行する恐れがあります。
データがそもそも存在しない、または記録の形式がばらばらな場合も、すぐには効果が出にくくなります。こうした場合は、業務の見直しやデータの整備を先に行うか、その作業も含めて依頼先に相談しましょう。
課題整理から定着までの工数の見通し
AI導入の支援は、課題の整理、PoC、モデルの構築、本番への組み込み、定着の支援と進みます。それぞれの工程に、社内の作業が発生し、担当者の時間の確保が必要です。依頼先に頼める作業と社内の作業を分けて、工数を見積もりましょう。
工数を減らすには、課題の整理を社内で先に進めておく方法があります。現状の業務フローと、使えるデータの一覧を用意しておくと、依頼先の確認の手間が減ります。複数の依頼先で工数の見積もりを比べることも有効です。
PoCで止まる悩みを解消する依頼のしかた
PoCで終わってしまう背景には、目的や評価の基準があいまいなことなど、複数の要因があります。依頼の段階で工夫できる点を、表と三つの工夫で整理します。
| 悩み | 原因の例 | 依頼時の工夫 |
|---|---|---|
| 検証だけで終わる | 目的と終了条件が不明確 | 終了条件と次の判断を先に決める |
| 本番に移れない | 評価の基準が実運用とずれている | 運用を見据えた評価基準を置く |
| 現場で使われない | 受け入れの準備が遅れた | 現場の担当者を早期に巻き込む |
PoCの目的と終了条件を先に決める
PoCは、本格導入の前に効果を確かめる実証実験です。何を確かめるのか、どの結果が出たら本番に進むのかを、開始前に決めておきましょう。終了条件がないと、検証が長引き、費用も増える場合があります。
終了条件には、精度の数値だけでなく、現場の作業時間の削減幅や、担当者の評価も含められます。結果が基準に届かなかった場合に、見直すか中止するかも、あらかじめ合意しておくと安心です。合意した内容は、議事録として関係者で共有しておきましょう。
本番運用を見据えた評価の基準を置く
PoCでは整った少量のデータで試すため、本番の環境で同じ結果になるとは限りません。本番で扱うデータの量や質に近い条件で、評価できるかを依頼先と確認しましょう。データの量や質が異なると、精度の評価が変わる場合があります。
あわせて、本番に移すときの費用や体制の見通しも、PoCの段階で示してもらいます。運用に必要な担当者の数や、既存システムとの接続にかかる手間が分かると、次の判断がしやすくなります。見積もりは、前提条件とあわせて書面でもらいましょう。
現場の受け入れ体制を早めに整える
PoCの結果が良くても、現場で使われなければ成果は出ません。現場の担当者が、検証の段階から結果を確認し、意見を伝えられる場を設けましょう。検証の段階から現場に参加してもらうと、使い方の課題を早く見つけられ、導入後の戸惑いも減らせます。
現場からの指摘は、本番の運用での使いやすさや、定着のしやすさを左右します。利用者向けの説明や研修の計画も、早めに依頼先と話し合いましょう。変更に不安を感じる担当者へは、丁寧な説明などの配慮も必要です。
属人化とExcel依存の課題解決に向けた判断の仕組み
Excelと担当者の経験に頼った判断には、担当者が替わると質が保てない、データが分散するといった限界があります。AIコンサルティングを使って、判断の仕組みを整える方法を見ていきます。
経験に頼る判断を言語化する作業
属人化(特定の担当者にしか分からない状態)を解消するには、担当者が何を見て判断しているのかを言葉にする作業が必要です。ベテランの担当者へ聞き取りを行い、判断の基準や例外の扱いを整理します。言語化の対象は、判断の回数が多く、担当者によって結果が異なる業務から選びましょう。
この作業は、AIコンサルティングの支援範囲に含められる場合があります。言語化した基準は、AIの設計だけでなく、新しい担当者の教育にも使えます。聞き取りの対象者に、負担がかかりすぎないよう配慮しましょう。
Excelで管理するデータの整備と移行
Excelの表は、列の名前や入力の形式が担当者ごとに異なる場合があります。AIで活用するには、項目の名前や単位をそろえ、重複や欠けを直す作業が必要です。整備の範囲は、AIで使う項目に絞ると作業を抑えられますが、後から項目を足す手間も考慮しましょう。
この整備に、想定より時間がかかることがあります。依頼先に、データの整備を支援の範囲に含められるか、必要な工数はどのくらいかを確認しましょう。移行の際は、元のファイルを残しておくと安心です。
属人化を防ぐ運用手順と教育
判断の仕組みを整えても、使い方を知る人が限られると、再び属人化が起こります。運用の手順書を作り、複数の担当者が操作できるようにしておきましょう。手順書がないと、担当者の記憶に頼る運用に戻り、再び属人化が進んでしまう場合があります。
手順書の作成や、利用者向けの研修、質問を受け付ける窓口の整備を、支援に含めてもらう方法があります。定期的に手順を見直し、担当者が替わったときの引き継ぎの項目も整えておくと、仕組みが続きやすくなります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でAIコンサルティングの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
成果への不安を減らす投資判断と紙業務のデータ化
投資しても成果が出ないのではという不安は、効果の測り方と投資の区切り方で和らげられます。紙の業務資料をデータ化する場面も含めて、進め方を確認します。
効果の測り方を契約前に決める
成果への不安を減らすには、何をもって効果とするかを、契約前に決めておくことが大切です。作業時間の削減、誤りの減少、問い合わせへの回答時間などが、指標の候補です。指標が多すぎると管理が難しくなるため、三つ程度に絞ると運用しやすくなります。
指標は、現状の値と目標の値を数値で記録し、依頼先と共有します。効果が出るまでの期間は業務によって異なるため、確認の時期も決めておきましょう。測定を行う担当者と、結果を報告する相手も明確にします。
投資の判断を段階ごとに区切る
最初から大きな契約を結ばず、企画、PoC、本番導入と段階ごとに契約や判断を区切る方法があります。各段階の結果を見てから、次に進むかを決められます。段階を区切ることで、見通しが立たない場合の損失を抑えられる場合があります。
区切りごとに、成果物や費用の見込みを確認する会議を設けましょう。次の段階に進まない場合の取り扱いも契約に記載しておくと、見直しの判断がしやすくなります。料金体系は、依頼先によって異なるため個別に確認が必要です。
紙のマニュアルや帳票をデータ化して活用する
紙の業務マニュアルや帳票は、文字を読み取る技術でデータ化し、検索や要約に使える状態にできる場合があります。ペーパーレス化とAI活用を、同じ流れで進める方法です。読み取った結果の確認を人が行う運用も、あわせて考えます。
手書きの文字や古い資料は、読み取りの精度が下がる場合があります。対象の資料の種類と状態を依頼先に見せ、事前に試してもらいましょう。データ化した資料の保管のルールや、元の紙を廃棄する際の扱いも決めておく必要があります。
課題解決を左右する内製と外部委託の使い分け
AI導入の推進を内製にするか外部に委託するかは、社内の人材と目的によって異なります。それぞれが向く条件と、契約で確認したい点を、次の三つにまとめます。
- ■内製
- 社内に知識を蓄積でき、改善を自社で続けやすい
- ■外部委託
- 専門知識を短期間で活用でき、社内の負担を抑えられる
- ■併用
- 立ち上げは外部の支援を受け、運用は社内で担う
内製を選ぶ場合の条件と留意点
内製は、AIに詳しい人材が社内にいて、継続的に改善に取り組める体制がある場合に向いています。社内にノウハウが蓄積され、業務が変わっても柔軟に対応しやすくなります。ただし、継続して取り組む時間と予算の確保が前提です。
一方で、人材の採用や育成に時間がかかり、担当者の異動で運用が止まる恐れもあります。内製に必要な人数と期間を見積もり、外部に頼る部分があるかも、あわせて検討しましょう。判断に迷う場合は、まず小さな範囲で内製を試す方法もあります。
外部委託を選ぶ場合の条件と留意点
外部委託は、専門知識を短期間で活用したい場合や、社内の人材が足りない場合に向いています。ただし、委託すれば責任も任せられるわけではなく、AIを使う企業としての管理は残ります。委託先の選定や管理の担当者を社内に置くことも重要です。
AI事業者ガイドラインは、AIの利用者にも安全な利用に向けた取り組みを求めています。委託先の作業内容を確認し、問題が起きたときの連絡と対応の流れを決めておきましょう。連絡の窓口と、報告の頻度も契約前に確認しておきましょう。
併用する場合の契約と成果物の扱い
立ち上げを外部に頼み、運用を社内に移す併用は、実務的な進め方の一つです。移行の時期を事前に決めておくと、社内の準備を進めやすくなり、委託先の作業も計画しやすくなります。契約では、成果物の範囲、権利の帰属、運用の引き継ぎの内容を明確にします。
経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は、開発の契約で検討する事項を整理しています。個人データを扱う場合は、個人情報保護法にもとづく委託先の監督もあわせて確認しましょう。
課題の段階から検討する支援サービス
課題の整理から実装、定着までの支援が掲載されているサービスを、掲載情報の範囲で紹介します。
Microsoft 365 Copilot
- ワークショップ/PoC/アセスメント/サポート/カスタマイズの5Plan
- 何から利活用を始めていいかわからない方に向けた体験とサービス
- Microsoft 365 Copilotトータルソリューションパートナー 認定
株式会社ピーエスシーが提供する「Microsoft365 Copilot」は、Copilotの活用を支援するサービスです。ワークショップやサポートを含む5つのプランが用意され、何から利活用を始めてよいか分からない企業に向けた体験も含まれます。PoCの段階から相談できる点が特徴で、AI導入戦略の策定に対応する機能も示されており、提供エリアは全国です。実証で止まらず進めたい場合に、プランの内容と支援の範囲を確認できます。
pluszeroのAI開発
- AI開発だけでなく、上流から下流までワンストップで対応可能
- 企業規模・分野を問わず、様々な事業課題の相談が可能
- 自然言語処理に注力し、研究開発を通して技術の進展を牽引
株式会社pluszeroが提供する「pluszeroのAI開発」は、AI開発の上流にあたる課題の整理から、下流の開発・保守まで対応するアウトソーシングサービスです。専任のタスクフォースを組成して進める形で、社内の情報システム部門のように利用できます。データ分析・モデリングやAIソリューションの開発・実装を支援する内容です。課題の整理から実装まで一つの窓口で進めたい場合や、PoCの先の開発まで見据えたい場合に確認できます。
AIDX顧問
- AI・DXのプロがヒアリングから構築、内製化まで一気通貫で支援
- AIを活用した理想の社内体制を構築し、貴社の資産を増やせる
- 貴社の業務・環境に応じた最新AIの活用方法を月1でアドバイス
株式会社LOGが提供する「AIDX顧問」は、AI・DXの専門家が課題の整理から実作業、内製化まで進めるAI顧問サービスです。製品ページでは、ヒアリングで課題と解決策、優先度を整理したうえで、実際に作業して課題を解決し、考え方を共有して内製化につなげるとされています。AI導入戦略策定やリスク管理、AIガバナンス・倫理指針策定も支援の対象として掲載されています。対象の課題に対応できるかを含め、支援の範囲は個別に確認しましょう。
AI導入支援サービス (deep consulting株式会社)
- AIエンジニアとデータサイエンティストが最先端技術を提供
- PoCのみなどスポット的なコンサルティングにも対応
- 自社でAI開発できる体制づくりを支援
ChatGPT活用コンサルティング (株式会社HappyCreate)
- AIチャットボットランキング第1位
- 中小企業向けAIチャットボット導入サービス
- 従業員向けのChatGPT活用トレーニングも提供
Liaro生成AI導入支援サービス (株式会社Liaro)
- 商品・業務特性にあった、貴社にカスタマイズした生成AIを開発
- 医薬品、アパレル、食品、不動産など幅広い分野での成功事例あり
- 本稼働後もサポート!AIモデルの精度やUXを継続的改善
AIコンサルティングに関するよくある質問
AIコンサルティングの課題解決についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:PoCで良い結果が出ても、本番に進めない場合があるのはなぜですか?
- A:評価の条件が本番と異なる、費用や体制の見通しが不足している、現場の受け入れが遅れたなど、複数の要因が考えられます。PoCの段階で本番を見据えた基準を置くことが大切です。
- ■Q2:AIコンサルティングを依頼すれば、課題は解決できますか?
- A:解決できるとは限りません。課題の性質、データの状態、社内の体制によって結果は変わります。依頼前に、効果の測り方と見直しの条件を依頼先と合意しておきましょう。
- ■Q3:社内にAIの人材がいない場合、内製化はあきらめるべきですか?
- A:あきらめる必要はない場合があります。立ち上げは外部の支援を受け、運用を社内に移す方法もあります。教育や手順書づくりを支援に含められるかを確認しましょう。
- ■Q4:成果が出ているかを判断する指標は、誰が決めるべきですか?
- A:事業部門と推進担当が中心となって決め、依頼先と合意する進め方があります。現状の数値を記録し、確認する時期も決めておきましょう。現場の担当者の評価を加える方法もあります。
まとめ
AIコンサルティングによる課題解決では、支援が役立つ課題かを見極め、PoCの目的と終了条件を先に決めることが重要です。属人化やExcel依存は判断の言語化とデータ整備から、成果への不安は効果の測り方と段階ごとの投資判断で和らげられます。内製と外部委託は、契約で成果物と責任を確認しましょう。複数の支援サービスの資料を請求し、自社の課題にあう依頼先を比べてみてください。

