AIコンサルティングの導入条件を整理する基本の進め方
導入条件は、依頼先を比較する前に自社で整理しておくと、問い合わせや見積もりの依頼がスムーズに進みます。ここでは、条件の分け方、優先順位のつけ方、伝え方の三つを確認します。
自社側の準備と依頼先に求める要件の分け方
導入条件は、自社が準備する条件と、依頼先に求める条件の二つに分けられます。自社の準備には、対象業務の整理、データの用意、担当者の確保が含まれます。どちらの条件が不足しているかを把握すると、次の対応が明確にできます。
依頼先に求める条件には、セキュリティ体制、対応できる言語、システムとの連携、支援の範囲があります。二つを混同すると、依頼先に過度な期待をしたり、自社の準備が遅れたりする場合があるため、最初に分けておきましょう。
必須条件と希望条件の優先順位づけ
条件を一つも妥協せずに依頼先を探すと、候補が見つからない場合があります。守れないと業務に支障が出る必須条件と、あれば望ましい希望条件に分けて、優先順位をつけましょう。必須条件が決まっていないと、依頼先を比較する際の基準も定まらず、判断が遅れます。
例えば、個人情報を扱うなら情報の保管場所の指定は必須条件、デザインの調整は希望条件といった分け方です。必須条件は、最初に確認する項目として問い合わせの文面に入れておくと、効率的に進められます。
条件を依頼先に伝える要件整理の文書化
整理した条件は、一枚の文書にまとめておきましょう。目的、対象業務、扱うデータの種類、必須条件、希望する時期を書いておくと、依頼先からの提案の質が安定します。文書には、変更履歴も残しておくと、後から経緯を確認できます。
文書は、複数の依頼先に同じ内容で渡すと、提案を比較しやすくなります。機密性のある情報は、秘密保持契約を結んでから渡すようにし、文書に含める範囲をあらかじめ決めておきましょう。文書の内容は、提案を受けた後も見直して更新しましょう。
日本語対応と国内の商習慣への理解を確かめる点
国内の企業が依頼する場合、日本語での対応と、国内の商習慣を理解しているかが重要な確認項目です。ただし、国産かどうかだけで判断せず、具体的な対応内容を確かめましょう。
| 確認項目 | 確認の内容 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 日本語対応 | 資料や議事、問い合わせ窓口の言語 | 提案資料や契約書の言語を見る |
| 国内の商習慣 | 稟議や契約の手続きへの理解 | 進め方の説明を求める |
| 多言語対応 | 必要な言語と対応する範囲 | 対象の言語と業務を伝える |
日本語での資料作成と議事の対応を確かめる
日本語対応とは、提案書や議事録、問い合わせの窓口が日本語で提供されることです。言語が合わないと、社内での確認や共有に手間がかかります。担当者が日本語で説明できても、成果物や契約書は外国語のみという場合があります。
提案の段階で、成果物の言語や、問い合わせの受付時間を確認しましょう。海外の拠点にある担当者が対応する場合は、時差による連絡の遅れが出ないかも、あわせて聞いておくと安心です。連絡手段がメールのみか、電話にも対応するかも確認しておきましょう。
国内の法令や商習慣への理解を質問する
国内の商習慣には、稟議の進め方や、取引先との契約の手順、年度末の予算の組み方などがあります。こうした流れを理解した依頼先は、スケジュールの提案が現実的になる場合があります。契約書の形式や押印の扱いも、確認しておきたい点です。
法令については、個人情報保護法などの国内のルールにもとづいた対応ができるかを聞きましょう。国産かどうかではなく、実際の支援内容と体制で判断することが重要です。過去の支援での対応例を聞くと、理解の程度が分かります。
多言語対応が必要な範囲を明確にする
多言語対応が必要かどうかは、海外の拠点や取引先とのやり取りの有無で決まります。社内の文書を翻訳する、問い合わせに多言語で回答するなど、必要な場面を書き出しましょう。言語ごとに対応の品質が異なる場合があるため、事前の確認が必要です。
多言語に対応するといっても、言語の種類や精度、対応できる業務の範囲は依頼先によって異なります。必要な言語と、その言語で扱う業務の内容を具体的に伝え、できる範囲を書面で確認しましょう。試験的に翻訳した結果を見せてもらうのも一つの方法です。
セキュリティ要件と認証を確認する導入条件
セキュリティ要件が厳しい企業では、依頼先の情報管理体制が導入条件の中心です。要件の伝え方、認証の見方、個人情報や機密情報の扱いの三つを確認します。
セキュリティ要件の洗い出しと伝え方
まず、自社の情報セキュリティの規程から、依頼先に求める項目を洗い出します。データの保管場所、アクセスできる担当者の範囲、事故が起きたときの連絡の流れなどが主な項目です。規程が古い場合は、先に見直しておくと質問票の精度が上がります。
経済産業省と総務省のAI事業者ガイドラインも、セキュリティ確保を共通の指針の一つとしています。自社の規程に加えて、こうした公的な指針も参考にしながら、質問票にまとめて依頼先に回答してもらいましょう。
ISMS認証など第三者認証の読み取り方
ISMSは、ISO/IEC 27001にもとづく第三者認証で、認証範囲は組織やサービスごとに異なります。認証を持っていても、依頼するサービスの業務が範囲に含まれているとは限りません。
認証の有無だけでなく、登録されている範囲や、対象の拠点を確認しましょう。認証は製品の安全性を保証するものではなく、管理の仕組みがあることの目安です。あわせて、AIに関するマネジメントシステムの国際規格として、ISO/IEC 42001もあります。
個人情報や機密情報の取り扱いと保管場所の確認
個人情報保護法には、個人データを外国にある第三者へ提供する場合のルールがあります。依頼先が、データをどの国のサーバに保存し、どこで処理するのかを、事前に確認しましょう。保管場所に加えて、バックアップの扱いも確認しておきましょう。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスへの入力について、利用目的の範囲内かや、入力情報が機械学習に利用されないかの確認を求めています。依頼先が使うAIサービスの規約も、契約前に確認します。規約が変わった際に通知があるかも、確認項目です。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でAIコンサルティングの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
API連携とカスタマイズの範囲を決める方法
既存のシステムとの連携や、自社の業務にあわせた調整が必要な場合は、その範囲を導入条件として明確にします。範囲があいまいだと、見積もりや期間が大きく変わる場合があります。
API連携で必要な範囲を絞る
APIとは、システム同士がデータをやり取りするための接続の仕組みです。AIコンサルティングで連携が必要になるのは、基幹システムや顧客管理システムなど、AIが参照するデータの元になる場合です。連携の範囲は、見積もりの根拠にもなります。
連携の対象となるシステム名、やり取りするデータの項目、更新の頻度を一覧にしましょう。全項目を連携するのではなく、効果に直結する部分に絞ると、検証の期間と作業量を抑えられます。接続のために必要な権限の取得も、事前に確認しておきましょう。
カスタマイズの範囲を要件に落とし込む
カスタマイズとは、標準の仕組みでは足りない部分を、自社向けに調整することです。画面の項目、業務の流れ、出力の形式など、どこを変えたいのかを具体的に示しましょう。例えば、入力画面の項目の追加や、出力する帳票の様式の変更が該当します。
調整の幅が広いほど、設計や検証に時間がかかり、運用後の保守も複雑になる場合があります。標準の範囲で対応できる部分を確認したうえで、本当に必要な調整だけを条件に入れましょう。標準の機能で足りるかを、デモや試験的な利用で確認すると判断しやすくなります。
追加の対応が生じたときの進め方を決める
検証を進めると、当初の想定にない要望や、システム側の制約が見つかる場合があります。追加の対応が生じたときに、誰が判断し、どのように合意するかを契約前に決めておきましょう。追加の対応が増えると、期間や費用が当初の見込みと変わる場合があります。
変更の依頼は書面で記録し、内容と作業の範囲を双方で確認する流れにしましょう。料金体系は個別に確認が必要ですが、追加対応の扱いの取り決めがあるかは、事前に聞いておきましょう。
学習データが整備されていない状態から着手するための準備
社内に学習データが整備されていなくても、AIコンサルティングを始められる場合があります。着手前に確認したい点を、次の三つにまとめます。
- ■データの棚卸し
- どこに、どのようなデータがあるかの一覧化
- ■整備の範囲
- データの整備を依頼先の支援に含めるかの確認
- ■権利関係
- データの利用が許される範囲と著作権の確認
データの所在と状態の棚卸し
学習データが未整備とは、データが散在している、形式がそろっていない、記録が不足しているといった状態です。まず、社内のどこにどんなデータがあるのかを一覧にしましょう。棚卸しは、担当部門へのヒアリングで進めると漏れが減ります。
一覧には、データの種類、量、保管場所、管理する部門、個人情報の有無を記載します。この一覧があれば、依頼先は必要な整備の作業量を見積もりやすくなります。データが不足している場合は、収集の計画から相談できます。
整備を支援に含める際の契約上の注意
データの整備を依頼先に頼む場合は、作業の範囲と成果物を契約で明確にします。整備の過程で個人データを扱う場合は、個人情報保護法にもとづき、委託先に対する必要かつ適切な監督が求められます。契約書には、作業の完了の基準も記載しておくと安心です。
経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は、データの提供や整備に関する契約の考え方を整理しています。整備したデータの権利の帰属や、契約終了後の返却と削除の扱いも、あわせて決めておきましょう。
学習に使うデータの権利関係の確認
学習に使うデータには、社内で作成した資料のほか、第三者の著作物や、取引先から預かった情報が含まれる場合があります。利用してよい範囲は、契約や権利者の条件によって異なります。取引先から預かったデータは、目的外の利用を禁じられている場合があります。
文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」で、AIの開発や学習の段階と、生成物の利用の段階に分けて整理しています。同資料だけでは個別の事案が判断できない場合があるため、不明な点は専門家に相談しましょう。
導入条件の観点で確認したい支援サービス
セキュリティや連携、対応エリアなどの掲載情報がある支援サービスを紹介します。
neoAI Chat/Work
- 安心して社内データを活用できる高セキュリティ環境
- RAGと豊富なAIエージェントで高精度なアウトプットを出力
- 調査・分析・資料作成など、幅広い業務が入れるだけで完結
株式会社neoAIが提供する「neoAI Chat/Work」は、企業の業務で使う法人向け生成AIプラットフォームです。ITトレンドの掲載情報では、API連携とカスタマイズが可とされ、セキュリティ要件に応じた専用環境のプランも用意されています。ISO/IEC 27001の認証を取得しており、利用端末はPCとスマートフォンで、提供エリアは全国です。認証の範囲や、連携とカスタマイズの条件が自社の要件にあうかを、個別に確認しましょう。
pluszeroのAI開発
- AI開発だけでなく、上流から下流までワンストップで対応可能
- 企業規模・分野を問わず、様々な事業課題の相談が可能
- 自然言語処理に注力し、研究開発を通して技術の進展を牽引
株式会社pluszeroが提供する「pluszeroのAI開発」は、課題発見からAI開発・保守までをワンストップで提供するアウトソーシングサービスです。企業規模を問わず対応するとされ、提供エリアは全国です。データ分析・モデリングやAIソリューションの開発・実装を支援する内容で、専任のタスクフォースを組成して進めます。セキュリティ要件や、連携とカスタマイズの条件、データの扱いは、個別に確認しましょう。
Liaro生成AI導入支援サービス (株式会社Liaro)
- 商品・業務特性にあった、貴社にカスタマイズした生成AIを開発
- 医薬品、アパレル、食品、不動産など幅広い分野での成功事例あり
- 本稼働後もサポート!AIモデルの精度やUXを継続的改善
AI導入支援サービス (deep consulting株式会社)
- AIエンジニアとデータサイエンティストが最先端技術を提供
- PoCのみなどスポット的なコンサルティングにも対応
- 自社でAI開発できる体制づくりを支援
AIコンサルティングに関するよくある質問
AIコンサルティングの導入条件についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:導入条件が多く、満たす依頼先が見つからない場合はどうすればよいですか?
- A:条件を必須と希望に分け、優先順位をつけ直しましょう。希望条件は、段階的に対応できるかを相談する方法もあります。必須条件は、問い合わせの最初に伝えると効率的です。
- ■Q2:ISMS認証を持つ依頼先なら、セキュリティ要件を満たしていると考えてよいですか?
- A:そうとは限りません。ISMSはISO/IEC 27001にもとづく第三者認証で、認証範囲は組織やサービスごとに異なります。依頼するサービスが範囲に含まれるかを確認しましょう。
- ■Q3:学習データが社内にほとんどない状態でも、依頼できますか?
- A:依頼できる場合があります。データの収集や整備から支援する依頼先もあるため、支援の範囲と作業量を確認しましょう。第三者の著作物などを使う場合は、権利関係もあわせて確認してください。
- ■Q4:API連携やカスタマイズは、最初から依頼すべきですか?
- A:効果に直結する部分に絞り、段階的に進める方法があります。範囲を広げすぎると、検証の期間や作業量が増える場合があります。標準の範囲で足りるかを確認してから決めましょう。
まとめ
AIコンサルティングの導入条件は、自社側の準備と依頼先に求める要件に分け、必須条件と希望条件に優先順位をつけて整理します。日本語対応や商習慣への理解、セキュリティと認証の範囲、API連携とカスタマイズの範囲、学習データの準備と権利関係が主な確認項目です。条件を文書にまとめ、複数の支援サービスの資料を請求して比べてみてください。

