生体認証システムの運用で発生する主な業務
運用体制を考える前に、導入後にどのような業務が発生するのかを把握しておきましょう。生体認証システムの運用業務は、利用者の情報を管理する業務と、システムの状態を見守る業務の2つに大きく分けられます。
生体情報の登録・削除と権限の変更
生体認証システムでは、入社や異動のたびに顔や指紋などの生体情報を登録し、退職時には削除する作業が発生します。登録は本人がその場にいないと行えない場合があり、日程調整や立ち会いの手間がかかる点が、ID・パスワードの管理と異なる部分です。
あわせて、どの扉を通れるか、どの端末にログインできるかといった権限の設定も必要です。部署異動や役職の変更に応じた権限の見直しも含め、年間の発生件数を見積もっておきましょう。件数がわかると、必要な体制を判断しやすくなります。
認証ログの確認と障害時の対応
もう一つの業務が、認証ログの確認と障害時の対応です。認証ログとは、誰がいつどの端末で認証したか、成功か失敗かを記録したデータを指します。不審な失敗が続いていないか、深夜の入室がないかを定期的に確認することで、不正の兆候に気づきやすくなります。
また、端末が反応しない、認証に失敗し続けるといったトラブルへの一次対応も必要です。端末の故障、ネットワークの不具合、登録データの状態など原因は複数考えられるため、切り分けの手順と問い合わせ先を決めておきましょう。
少人数や情シス不在の会社に向く運用体制
情報システムの担当者が1人しかいない会社や、専任の担当者がいない会社では、運用業務をいかに軽くするかが課題です。管理業務の集約と分担、外部の支援の活用という3つの方法を組み合わせて検討しましょう。
クラウド型で管理業務を集約する
担当者が少ない会社では、クラウド型の生体認証システムが選択肢の一つです。サーバの保守やソフトウェアの更新作業を、提供会社に任せられる場合があるためです。自社で管理するのは利用者の登録や権限設定に絞られるため、専門知識が少なくても運用を続けやすくなります。
管理画面をWebブラウザから操作できる製品であれば、担当者が出張中でも登録や削除に対応できます。ただし、クラウド型でも端末の設置や社内ネットワークの設定は自社で行う必要があるケースがあるため、提供範囲を事前に確認しましょう。
登録作業を現場の管理者へ分担する
生体情報の登録を情報システム担当者1人で担うと、入社時期などに作業が集中し、対応が滞るおそれがあります。各部署や拠点の管理者に登録作業を任せられるよう、管理者権限を細かく分けられる製品を選ぶと負担を分散できます。
例えば、拠点の管理者は自拠点の利用者の登録だけを行い、権限の変更は本社の担当者が承認するといった分け方です。分担する際は操作手順書を用意し、登録内容を複数人で確認できる状態にしておくと、特定の担当者への依存を避けられます。
ベンダーの支援範囲を見極める
情報システムの専任者がいない会社では、提供会社の支援をどこまで受けられるかが導入後の安定運用を左右します。支援と一口にいっても、マニュアルの提供、問い合わせ窓口、初期設定の案内、設定作業の代行など内容は製品や契約によって異なります。
資料請求や商談の段階で、どの作業を自社で行い、どの作業を依頼できるのかを一覧で確認しましょう。有償の導入支援や保守契約が用意されている場合は、費用と対応時間もあわせて比較しておくと、導入後に想定外の負担が生じにくくなります。
多拠点・グループ会社で一括管理する運用体制
拠点やグループ会社が複数ある企業では、拠点ごとに生体認証システムを運用すると、登録情報や認証ログが分散してしまいます。本社で一括管理するための権限やデータ統合の仕組みと、拠点側で確認したい条件を整理しておきましょう。
本社管理と拠点管理の権限設計
多拠点で運用する場合は、本社が各拠点の設定を閲覧・変更でき、拠点の管理者は自拠点の範囲だけを操作できる階層型の権限設計が役立ちます。こうした権限の範囲をどこまで細かく設定できるかは製品によって差があるため、比較時の確認項目にしましょう。
グループ会社を含める場合は、会社ごとに管理者を分けたうえで、親会社がログを横断して確認できるかも重要です。組織変更や拠点の統廃合が起きた際に、利用者の所属を一括で移し替えられるかも確かめておくと安心です。
生体情報と認証ログの統合方法
グループ会社で登録した生体情報と認証ログを統合管理する方法は、主に2つです。1つのクラウド環境やサーバにデータを集約する方法と、各社のシステムからログを定期的に取り込む方法があります。前者は管理が一元化される反面、既存システムの入れ替えが必要な場合があります。
後者はCSVやAPIでログを収集する仕組みを整える必要があり、項目名や時刻の形式をそろえる作業が発生します。生体情報をグループ会社間で共有する場合は、利用目的や共有範囲を社内規程で定めましょう。個人情報保護法への対応も、法務担当者と確認しておくことが大切です。
拠点ごとの端末と通信環境の把握
本社で一括管理する体制でも、実際に認証を行う端末は各拠点に設置されます。拠点によって通信回線の速度や安定性は異なります。回線が途切れた場合に端末単体で認証を続けられるか、復旧後にログが本社へ送られるかを確認しておきましょう。
また、端末の故障時に誰が交換対応をするのか、予備機をどこに置くのかも決めておきましょう。拠点ごとの端末の設置場所や台数、ファームウェアの版数を一覧で管理できる製品であれば、本社から状態を把握しやすくなります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で生体認証の一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
情シスと総務で生体認証を分業する際の役割分担
生体認証システムは、ITの管理と施設・人事の管理の両方にまたがるため、情報システム部門と総務部門で業務を分ける企業もあります。分業を円滑に進めるには、境界となる業務を明確にすることが重要です。
| 業務 | 情報システム部門 | 総務部門 |
|---|---|---|
| システム設定・連携 | 主担当 | 要望の取りまとめ |
| 生体情報の登録・削除 | 手順の整備と確認 | 主担当 |
| 入退室の権限設定 | 設定作業の支援 | 主担当 |
| 障害対応 | 原因の切り分けと復旧 | 現場からの報告受付 |
情報システム部門が担う領域
情報システム部門は、ネットワークやサーバ、他システムとの連携など技術的な知識が必要な業務を担う傾向があります。Active Directoryなどの社内のID管理基盤との連携設定や、セキュリティパッチの適用、障害時の原因の切り分けが代表例です。
分業体制で使いやすい製品を選ぶには、システム設定の画面と日常の登録業務の画面が分かれているかを確認しましょう。操作できる範囲を部門ごとに制限できれば、設定を誤って変更してしまうリスクを抑えられます。
総務部門が担う領域
総務部門は、入社や退職の手続きと連動する生体情報の登録・削除や、オフィスの入退室権限の管理を担うケースが考えられます。人事情報と近い業務を担当することで、退職者の登録が残るといった抜け漏れを減らせる可能性があります。
総務部門の担当者は、IT操作に不慣れな場合もあります。登録手順が画面の案内にそって進められるか、一括登録用のテンプレートがあるかを確認しましょう。部門間の依頼や承認の履歴を管理画面上に残せると、引き継ぎもスムーズです。
生体認証の運用体制を定着させるルールづくり
体制を決めても、ルールが共有されていなければ担当者の交代や組織変更のたびに運用が乱れるおそれがあります。導入後も継続して運用できるよう、文書化と定期的な見直しの2つの仕組みを、導入の段階から整えておきましょう。
手順書と引き継ぎの仕組みを整える
登録や削除、障害時の対応といった業務は、手順書として文書化し、関係者がいつでも参照できる場所に保管しましょう。手順書には操作方法だけでなく、誰の承認が必要か、どの期限までに対応するかといったルールも記載しておくと判断に迷いにくくなります。
担当者が1人だけで業務を抱えないよう、少なくとも2人が操作できる状態にしておくことも重要です。担当者の異動が決まった場合に備え、未対応の依頼や管理者権限の引き継ぎ手順も決めておきましょう。
定期的な棚卸しと見直しを行う
運用を続けるうちに、退職者の生体情報が残ったままになったり、不要な権限が付与されたままになったりするケースがあります。四半期や半期ごとに登録者の一覧と人事情報を照合し、不要なデータを削除する棚卸しを行いましょう。
棚卸しのタイミングでは、認証エラーの傾向や問い合わせの内容も振り返ると、運用ルールの改善点が見つかります。拠点の増加や組織変更にあわせて役割分担を見直すことも、体制を長く機能させるためのポイントです。
運用担当者の管理負担を抑える生体認証製品
認証ポリシーを組織全体で統一したい企業や、日々の管理作業を減らしたい企業に向けて、運用体制づくりの参考になる生体認証製品を紹介します。
DigitalPersona AD
- 指紋認証と顔認証から選択可能で、顔認証は赤外線カメラに対応
- Active Directory完全統合型で認証ポリシーを徹底
- 記憶認証と所持認証と組み合わせて使用することも可能
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「DigitalPersona AD」は、Active Directoryと統合して使うパソコンの認証強化システムです。この統合により認証ポリシーを徹底できるため、組織全体で認証ルールをそろえやすくなります。多拠点やグループ会社でルールをそろえたい場合にも検討しやすい構成です。認証方式は指紋認証と顔認証から選べ、パスワードやICカードと組み合わせた多要素の運用にも対応しています。オンプレミスのパッケージソフトとして提供されます。
EdgeFACE
- オフィスや工場のDXを推進するエッジ・オンプレ顔認証システム
- 完全売り切りで1台から導入可能!SDKは無償提供で量産活用可能
- パスワード忘れ・鍵紛失の心配なし!ICカード書き換え作業も不要
イノテック株式会社が提供する「EdgeFACE」は、エッジとオンプレミスで動作する顔認証システムです。顔で本人を確認するため、パスワードを忘れたり鍵を紛失したりする心配がなく、ICカードの書き換え作業も不要です。パスワード再発行やカード管理といった作業を見直したい少人数の企業にとって、検討材料の一つです。国産の顔認証AIと国産の産業用パソコンメーカーの強みを掛け合わせ、長期の安定稼働を重視しています。売り切り型で1台から導入できます。
KPASクラウド (パナソニック コネクト株式会社)
- 世界最高水準の顔認証精度を実証済み。
- 汎用端末+API連携によるスピーディな導入。
- 入退場管理・勤怠・決済連携など幅広いユースケースに対応。
NeoFaceKAOATO (NECソリューションイノベータ株式会社)
- マスク着用時でも顔認証が可能
- AIによる振る舞い検知でウォークスルー認証を支援
- マスキング機能でプライバシーに配慮した運用が可能
SmartSESAME PCログオン (株式会社シーイーシー)
- ICカードと生体認証を組み合わせた強固な二要素認証
- ICカードには既存の社員証を利用可能
- 勤怠管理とシングルサインオンがオプションとして提供
AUTH thru (株式会社ロココ)
- 顔認証で手ぶら解錠、ICカード・暗証番号不要。
- 認証ログを自動記録し、管理画面から確認可能。
- 拠点・扉ごとに細かく入退場制限を設定可能。
タッチレスソリューション (株式会社日立ビルシステム)
- 顔認証システムで共連れ入館を防止
- 人数検知システムで「密」を可視化
- 入退室管理と防犯カメラ機能を統合。
まとめ
生体認証システムの運用体制は、発生する業務を洗い出したうえで、自社の人員や拠点の状況にあわせて組み立てることが大切です。担当者が少ない会社ではクラウド型や作業の分担、多拠点やグループ会社では階層型の権限設計とログの統合方法が選定のポイントです。
情報システム部門と総務部門で分業する場合は、境界となる業務を明確にしましょう。自社の体制にあう製品を見つけるために、複数の製品を資料請求して比較してみてください。

