ICカードや暗証番号の認証で起こりうる課題
ICカードや暗証番号は手軽に導入できる一方で、「本人が持っている」「本人が知っている」ことを前提にしています。そのため、本人以外が使える余地が残ります。まずは現在の認証方法で起こりうる課題を確認しましょう。
カードの貸し借りや暗証番号の共有によるなりすまし
ICカードは、カードを持っている人を本人とみなして認証します。同僚にカードを貸したり、忘れた人のために代わりにかざしたりすると、別の人の入室でも記録上は本人の入室として残ります。暗証番号も、メモを貼ったり口頭で伝えたりすると他人に知られかねません。
こうした行為は悪意がなくても起こりうるため、ルールの周知だけで抑えるには限界があります。生体認証は本人の身体的な特徴を使うため、貸し借りや共有が起こりにくい点が特徴です。
カードの紛失・再発行と管理工数の増加
ICカードは紛失や破損、置き忘れが起こる可能性があり、そのたびに利用停止や再発行の手続きが必要です。紛失したカードを第三者が拾った場合、無効化するまでの間に不正に使われるリスクもあります。
従業員数が増えるほど、カードの発行、回収、在庫の管理といった作業は増えていきます。退職者からカードを回収し忘れるケースもあります。管理工数と情報セキュリティの両面で負担を感じている場合は、生体認証への切り替えや併用を検討するタイミングといえます。
課題別に考える生体認証システムの選び方
生体認証システムを導入すれば、どのような課題でも改善するわけではありません。自社が解決したい課題に応じて、重視すべき機能は変わります。ここでは代表的な3つの課題について、確認したい機能を整理します。
なりすまし対策を重視する場合
なりすましを抑えたい場合は、写真や動画、偽造した指などを使った不正な認証を見分ける「生体検知」の機能を確認しましょう。生体検知の方式や精度は製品によって異なるため、どのような攻撃を想定した対策なのかを提供会社に確認することが大切です。
また、共連れと呼ばれる、認証した人の後ろについて入室する行為は、認証方式だけでは抑えにくい課題です。フラッパーゲートなど1人ずつしか通れない設備との組み合わせや、入室と退室の記録の整合性をチェックする機能もあわせて検討しましょう。
登録や運用の工数削減を重視する場合
認証情報の登録や管理の工数を減らしたい場合は、利用者の基本情報をCSVファイルで一括登録できるかを確認しましょう。人事システムと連携して、入退社情報を自動で反映できるかも比較のポイントです。顔認証の製品の中には、利用者が自分のスマートフォンから顔写真を登録できるものもあります。
ただし、登録を簡略化するほど本人確認が不十分になる可能性も考えられます。登録時に管理者の承認を挟めるか、登録内容を確認できる画面があるかもあわせて比較すると、工数とセキュリティのバランスをとりやすくなります。
紙の入退室記録簿の電子化を重視する場合
紙の入退室記録簿は、記入漏れや判読しにくい文字、保管場所の確保といった課題を抱えています。ペーパーレス化を進めたい場合は、認証のたびに日時や場所、利用者を自動で記録し、管理画面で検索や絞り込みができる製品を選ぶことが重要です。
監査や来訪者の確認に使う場合は、記録をCSVやPDFで出力できるか、保存期間を自社の規程にあわせて設定できるかを確認しましょう。来訪者の受付を電子化するツールと組み合わせれば、社外の人の入退室もまとめて記録できる場合があります。
生体情報の取り扱いに不安がある場合の選び方
生体認証を導入する際、担当者が特に気にかけやすいのが、生体情報という個人情報の取り扱いです。法律上の位置づけを理解したうえで、製品ごとの保存方式や削除のルールを確認すれば、不安を具体的な確認項目に落とし込めます。
個人情報保護法における生体情報の位置づけ
個人情報保護法では、顔や指紋などの身体の特徴をコンピュータで扱えるように変換したデータを「個人識別符号」の一つとしています。特定の個人を識別できるものが対象です。個人識別符号を含む情報は個人情報にあたるため、利用目的の特定や安全管理措置が求められます。
導入にあたっては、個人情報保護委員会のガイドラインを参照しながら、利用目的の通知や同意取得の方法を社内で整理しましょう。判断に迷う場合は、法務部門や専門家に相談することをおすすめします。
保存方式と削除ルールの確認
生体認証システムには、顔や指紋の画像そのものではなく、特徴を数値化したデータを保存して照合に使う方式の製品があります。ただし、元の画像を保存するかどうか、データを暗号化するかどうかは製品によって異なるため、提供会社の資料で確認しましょう。
保存場所がクラウドか社内サーバか、あるいは端末やICカードの内部かによっても、管理の方法は変わります。退職時や利用停止時にデータを確実に削除できるか、削除の記録を残せるかも、選定時に確認したい項目です。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で生体認証の一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
本人認証業務の属人化を解消する運用の工夫
入退室管理や本人認証の業務は、特定の担当者だけが手順を把握している状態になりがちです。生体認証システムの導入を機に、業務の流れを見直して、複数人で対応できる体制を整えましょう。ここでは手順の標準化と情報共有の2つの工夫を紹介します。
登録から削除までの業務手順の標準化
属人化を解消する第一歩は、生体情報の登録から権限の変更、退職時の削除までの手順を文書にまとめることです。誰が依頼し、誰が承認し、誰が作業するのかを明確にしておくと、担当者が休暇や異動で不在になっても業務を止めずに済みます。
システムの管理画面で操作手順を案内する機能や、依頼から作業完了までの流れを記録できる機能があると、手順の標準化を進めやすくなります。手順書は運用開始後も見直し、現場の声を反映して更新していくことが大切です。
複数人で状況を把握できる仕組みづくり
手順を標準化しても、情報が1人の担当者に集まる状態では属人化は解消しません。管理者アカウントを複数発行し、登録状況や認証ログを複数の担当者が確認できる状態にしておきましょう。
認証エラーや不審な入室があった際に、関係者へ自動で通知できる製品であれば、担当者の不在時にも異常に気づきやすくなります。月に1回など定期的に担当者間で対応履歴やトラブル事例を共有する場を設けると、ノウハウが組織に蓄積されていきます。
本人認証業務は内製と外部委託のどちらが良いか
生体認証システムの運用を自社で担うか、外部の事業者に委託するかは、社内の人員とセキュリティ要件によって判断が分かれます。それぞれに向いているケースを比較表で整理したうえで、自社の状況に近いほうを検討しましょう。
| 比較項目 | 内製 | 外部委託 |
|---|---|---|
| 社内の人員 | 運用担当者を複数確保できる | 担当者の確保が難しい |
| 対応の柔軟さ | 社内事情にあわせて即時に対応できる | 委託範囲と契約内容に左右される |
| 費用の考え方 | 人件費と教育コストが中心 | 委託費用が継続的に発生 |
内製が向いているケース
社内に情報システム部門や総務部門の担当者を複数確保でき、入退社や異動の頻度がそれほど高くない企業では、内製での運用が選択肢です。生体情報を社外の事業者に扱わせたくないという方針がある場合も、内製のほうが管理範囲を限定できます。
内製の場合は、担当者の教育や手順書の整備にかかる工数を見込んでおく必要があります。導入時だけ提供会社の設定支援を受け、繁忙期の登録作業のみ応援を依頼しつつ、日常の運用は自社で行うという組み合わせも検討しましょう。
外部委託が向いているケース
拠点が多く登録作業が頻繁に発生する企業や、運用担当者を確保できない企業では、外部委託が負担軽減の選択肢です。警備会社やビル管理会社が、入退室管理の運用をあわせて請け負うケースもあります。
委託する場合は、生体情報を扱う範囲や委託先の安全管理措置、再委託の有無を契約で明確にしておくことが重要です。個人情報保護法では委託先の監督が求められているため、定期的に運用状況の報告を受け、委託先任せにしない体制を整えましょう。
カードや暗証番号に頼らない本人確認を支える製品
ICカードの貸し借りや紙での記録といった課題の解消に向けて、本人の生体情報で確認できる製品を紹介します。
EdgeFACE
- オフィスや工場のDXを推進するエッジ・オンプレ顔認証システム
- 完全売り切りで1台から導入可能!SDKは無償提供で量産活用可能
- パスワード忘れ・鍵紛失の心配なし!ICカード書き換え作業も不要
イノテック株式会社が提供する「EdgeFACE」は、エッジとオンプレミスで動作する顔認証システムです。顔で本人を確認する仕組みのため、パスワードを忘れたり鍵を紛失したりする心配がなく、ICカードの書き換え作業も不要です。カードの貸し借りや発行管理の手間を見直したい場面で検討できます。クラウドでの顔認証が使えない環境にも対応しています。国産の顔認証AIと国産の産業用パソコンメーカーの強みを掛け合わせ、長期の安定稼働を重視した製品です。売り切り型で1台から導入できます。
DigitalPersona AD
- 指紋認証と顔認証から選択可能で、顔認証は赤外線カメラに対応
- Active Directory完全統合型で認証ポリシーを徹底
- 記憶認証と所持認証と組み合わせて使用することも可能
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「DigitalPersona AD」は、Active Directoryと統合して使うパソコンの認証強化システムです。指紋認証または顔認証でパソコンへのログインを確認でき、顔認証は赤外線カメラに対応しています。パスワードなどの記憶認証や、ICカードなどの所持認証と組み合わせることも可能です。既存のカード運用を残しながら本人確認を強化したい場合の選択肢の一つです。オンプレミスのパッケージソフトとして提供されます。
VisionPass / VisionPass SP (株式会社昭電)
- 3D・赤外線カメラ搭載で、マスクや横顔でも認証可能。
- 非接触の高速顔認証で、円滑なアクセス管理を実現。
- 屋内外対応で既存の入退室管理システムと統合可能
NDS顔認証システム (NDSインフォス株式会社)
- 顔認証による本人確認と他システムとの自動連携。
- 入退室管理や宅配ボックス等の施設サービスと統合運用が可能
- 来客者の事前登録により、顔認証でのスムーズな受付が可能。
顔認証なりすまし防止ソリューション (NECソリューションイノベータ株式会社)
- NIST顔認証ベンチマークテストでNo.1評価の顔認証エンジン搭載。
- マスク着用でも顔認証可能、外す必要なし
- AIが歩行中や複数人同時認証を支援
AUTH thru (株式会社ロココ)
- 顔認証で手ぶら解錠、ICカード・暗証番号不要。
- 認証ログを自動記録し、管理画面から確認可能。
- 拠点・扉ごとに細かく入退場制限を設定可能。
タッチレスソリューション (株式会社日立ビルシステム)
- 顔認証システムで共連れ入館を防止
- 人数検知システムで「密」を可視化
- 入退室管理と防犯カメラ機能を統合。
まとめ
ICカードの貸し借りや紙の記録簿の管理といった課題は、生体認証の導入で改善が期待できます。なりすまし対策なら生体検知、工数削減なら一括登録や人事連携、ペーパーレス化ならログの検索と出力が確認のポイントです。課題にあわせて、確認すべき機能を絞り込みましょう。
生体情報の取り扱いや運用体制も含めて検討することが、導入後の失敗を減らすポイントです。まずは複数の製品を資料請求し、自社の課題に対応できるかを比較してみてください。

