生体認証システムの連携エラーが起こる背景
連携エラーへの対策を考える前に、なぜ連携で不具合が起こりうるのかを理解しておきましょう。複数のシステムが関わるため、原因の特定や対応の責任があいまいになりやすい点が、単体のシステムのエラーとは異なる特徴です。
複数のシステムにまたがる責任分界
生体認証システムの連携では、生体認証の端末と管理ソフトウェア、連携先のシステム、その間をつなぐネットワークやAPIなど、複数の要素が関わります。それぞれを別の会社が提供している場合、不具合の原因がどこにあるのかの判断に時間がかかることも考えられます。
例えば、打刻データが勤怠管理システムに届かない場合を考えてみましょう。生体認証側の送信の失敗なのか、連携先の受信側の制限なのか、通信の問題なのかを切り分ける必要があります。導入前に、どの範囲をどの会社が担当するのかを確認しておくことが重要です。
連携方式ごとに異なる不具合の現れ方
連携の不具合は、連携方式によって現れ方が異なります。APIでリアルタイムに連携する方式では、通信の失敗や認証エラーによってデータの送信が止まる、一部の処理だけが失敗するといった症状が考えられます。
CSVファイルを出力して取り込む方式では、ファイルの形式や文字コードの違いによる取り込みの失敗、取り込み漏れによる反映の遅延が起こる場合があります。自社がどの方式で連携しているかを把握しておくと、エラーが起きた際に確認すべき箇所を絞り込みやすくなります。
入退室管理・勤怠管理との連携で起こる不具合
生体認証の連携先として代表的な入退室管理と勤怠管理では、日々の業務に直結する不具合が起こりえます。それぞれで考えられる症状と原因、トラブルを減らすために確認したい点を整理します。
扉の解錠と認証結果のずれ
入退室管理システムとの連携では、生体認証で本人と判定されたのに扉が解錠されない症状が起こる場合があります。解錠までに時間がかかるケースも考えられます。原因としては、制御盤との通信の遅延、電気錠の故障、入退室の権限設定の不一致などが考えられます。
生体認証側と入退室管理側で利用者の権限情報が一致していないと、認証は成功しても入室が許可されない状態が生じます。両システムの利用者情報がどのタイミングで同期されるのかを確認し、変更の反映手順を決めておきましょう。
打刻データの欠損や重複
勤怠管理システムとの連携では、生体認証で打刻したはずのデータが勤怠管理側に反映されない場合があります。同じ打刻が二重に登録されるといった不具合も考えられます。通信の一時的な途絶、送信処理の再実行、従業員番号の不一致などが原因として考えられます。
欠損や重複は給与計算に影響するおそれがあるため、締め処理の前に生体認証側の認証ログと勤怠データを照合する手順を設けておくと安心です。通信断の際に端末でデータを保持し、復旧後に自動で再送する機能があるかも確認しましょう。
生体認証のAPI連携で注意したい呼び出し制限
外部のシステムから生体認証の機能やデータを呼び出す接続口をAPIと呼びます。生体認証システムのAPIには、安定した運用のために利用条件が設けられている場合があり、条件を超えると連携エラーにつながります。
呼び出し回数の上限への到達
製品によっては、APIを1分間や1日あたりに利用できる回数に制限が設けられています。利用者数が多い企業で認証ログを短い間隔で取得したり、朝の出社時間に大量の打刻データを送信したりする場合は注意が必要です。上限に達して、リクエストが受け付けられなくなる可能性があります。
上限の値は製品や契約プランによって異なり、公開されていない場合もあります。契約前に上限の値と、上限を超えた場合にエラーが返されるのか、処理が待機されるのかを提供会社に確認しましょう。
認証トークンの期限切れ
APIを利用する際は、正規の利用者であることを示す認証トークンと呼ばれる情報を使う場合があります。認証トークンには有効期限が設定されていることがあり、期限が切れると連携が止まり、データが送受信されなくなるおそれがあります。
連携の仕組みを開発する際は、期限が切れる前にトークンを自動で更新する処理を組み込むことが大切です。管理者が変わった際に、APIの利用設定が引き継がれずに連携が止まるケースも考えられるため、設定内容を文書化しておきましょう。
大量データ処理時の遅延や一部失敗
人事異動の時期に多数の利用者情報を一括で更新する場合や、過去の認証ログをまとめて取得する場合は、処理に時間がかかります。途中で通信が切れ、一部のデータだけが処理されるケースもあります。一部が失敗していることに気づかないと、登録情報に抜け漏れが生じます。
大量のデータを扱う場合は、処理を小分けにして実行し、結果を件数で確認する手順を設けましょう。処理結果のログを確認できる製品であれば、失敗したデータだけを特定して再実行しやすくなります。
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AD・IDaaSと連携しても生体認証で手作業が残る理由
Active DirectoryやIDaaSと連携すれば、アカウント管理の手間を減らせると期待されます。ただし、生体認証の特性や連携の範囲によっては、連携後も手作業が残る場合があります。代表的な2つの理由を見ていきましょう。
生体情報の登録に本人の立ち会いが必要な場合
Active Directoryは、社内のアカウントやパソコンを管理する基盤です。IDaaSは、クラウドサービスのログイン情報を集約する基盤として使われています。これらと連携すれば、アカウントの作成や無効化の自動化が期待できます。
しかし、顔や指紋などの生体情報を本人が端末の前で登録する方式の製品もあります。この場合、アカウント情報が自動で作成されても、生体情報の登録作業と日程調整は手作業として残る点に注意しましょう。
同期される属性情報の範囲の制約
Active DirectoryやIDaaSとの連携で同期される情報は、氏名やメールアドレス、所属グループなどに限られる場合があります。入退室できる扉や時間帯といった生体認証側の権限設定は同期の対象外で、別途手作業で設定する必要があるケースも考えられます。
また、同期のタイミングが1日1回などに設定されていると、退職者のアカウントを無効にしても、生体認証側への反映に時間差が生じる場合があります。同期の対象項目と頻度を確認し、即時の対応が必要な場合の手順も決めておきましょう。
生体認証の連携エラーに備える監視と復旧
連携エラーをゼロにすることは難しいため、エラーにすばやく気づき、影響を最小限に抑えて復旧できる仕組みを整えることが重要です。エラー通知、再送や補正の手順、責任範囲の確認という3つの観点で、導入前後に整えたい備えを紹介します。
エラー通知とログの確認体制
連携エラーに早く気づくためには、連携の失敗を管理者へメールなどで通知する機能があるかを確認しましょう。通知がない場合、打刻データの欠損に給与計算の段階まで気づかないといった事態も起こりえます。
通知を受け取る担当者は1人に限定せず、複数人で確認できる体制にしておくことが大切です。連携の処理結果をログとして確認できれば、エラーの発生時刻や対象のデータを特定しやすく、原因の調査や提供会社への問い合わせもスムーズに進みます。
再送や手動補正の手順
連携エラーが発生した場合に備えて、失敗したデータを再送する方法と、手動で補正する方法を決めておきましょう。自動で再試行する機能がある製品もあれば、管理者が手動で再実行する必要がある製品もあります。
手動で補正した場合は、誰がいつどのデータを修正したのかを記録に残すことが重要です。補正の手順を文書化しておけば、担当者が不在でも対応でき、同じエラーが繰り返し起きていないかを振り返る材料にもなります。
連携の責任範囲の事前確認
連携エラーの対応を円滑に進めるには、関係する会社の責任範囲を契約前に確認しておくことが大切です。生体認証の提供会社、連携先の提供会社、連携の開発を担った会社が、それぞれどこまで対応するのかを明確にしましょう。
問い合わせ先の一覧を作成し、症状ごとに最初に連絡する窓口を決めておくと、問い合わせ先の確認に時間がかかる状況を避けやすくなります。連携先のシステムの仕様変更が予定されている場合に、情報が共有される仕組みがあるかも確認しましょう。確認した内容は、運用開始後も見直せるよう文書で残しておくと安心です。
連携先との役割分担を整理しやすい生体認証製品
Active Directoryと統合された製品や、クラウドを使わずに動作する製品など、連携の構成を検討する際に比べたい生体認証製品を紹介します。
DigitalPersona AD
- 指紋認証と顔認証から選択可能で、顔認証は赤外線カメラに対応
- Active Directory完全統合型で認証ポリシーを徹底
- 記憶認証と所持認証と組み合わせて使用することも可能
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「DigitalPersona AD」は、Active Directoryと統合して使うパソコンの認証強化システムです。Active Directory上で、認証ポリシーを組織全体へ徹底できます。認証方式は指紋認証と顔認証から選べ、パスワードやICカードと組み合わせた多要素の運用も可能です。アカウント管理と生体認証を別々に運用する手間を見直したい場合に検討したい製品です。オンプレミスのパッケージソフトとして提供されます。
EdgeFACE
- オフィスや工場のDXを推進するエッジ・オンプレ顔認証システム
- 完全売り切りで1台から導入可能!SDKは無償提供で量産活用可能
- パスワード忘れ・鍵紛失の心配なし!ICカード書き換え作業も不要
イノテック株式会社が提供する「EdgeFACE」は、クラウドでの顔認証が使えない環境を想定し、エッジとオンプレミスで動作する顔認証システムです。SDKが無償で提供されており、量産での活用も可能です。国産の顔認証AIと国産の産業用パソコンメーカーの強みを掛け合わせ、長期の供給と安定稼働を重視しています。パスワード忘れや鍵の紛失の心配がなく、ICカードの書き換え作業も不要です。売り切り型で1台から導入できます。
DigitalPersona SDK
- 乾燥指に強い指紋リーダーを使用可能
- 360度どこからでも認証可能な指紋リーダーを使用可能
- 登録時の指の置き方を再現不要な指紋リーダーを使用可能
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「DigitalPersona SDK」は、アプリケーションに指紋認証システムを組み込むための開発キットです。そのため、自社の業務アプリケーションに生体認証を取り入れる際、認証部分をゼロから作り込む負担を抑えやすくなります。乾燥した指に強い指紋リーダーや、360度どの向きからでも認証できる指紋リーダーを利用できる点も特徴です。自社システム側に指紋認証を組み込む構成を検討する際に確認したい製品です。
SmartSESAME PCログオン (株式会社シーイーシー)
- ICカードと生体認証を組み合わせた強固な二要素認証
- ICカードには既存の社員証を利用可能
- 勤怠管理とシングルサインオンがオプションとして提供
KPASクラウド (パナソニック コネクト株式会社)
- 世界最高水準の顔認証精度を実証済み。
- 汎用端末+API連携によるスピーディな導入。
- 入退場管理・勤怠・決済連携など幅広いユースケースに対応。
VisionPass / VisionPass SP (株式会社昭電)
- 3D・赤外線カメラ搭載で、マスクや横顔でも認証可能。
- 非接触の高速顔認証で、円滑なアクセス管理を実現。
- 屋内外対応で既存の入退室管理システムと統合可能
AUTH thru (株式会社ロココ)
- 顔認証で手ぶら解錠、ICカード・暗証番号不要。
- 認証ログを自動記録し、管理画面から確認可能。
- 拠点・扉ごとに細かく入退場制限を設定可能。
NDS顔認証システム (NDSインフォス株式会社)
- 顔認証による本人確認と他システムとの自動連携。
- 入退室管理や宅配ボックス等の施設サービスと統合運用が可能
- 来客者の事前登録により、顔認証でのスムーズな受付が可能。
まとめ
生体認証システムの連携エラーは、生体認証側だけでなく、連携先のシステムや通信環境、設定など複数の要因で起こる場合があります。入退室管理や勤怠管理ではデータの不一致、APIでは呼び出し上限やトークンの期限切れに注意しましょう。AD・IDaaS連携では、生体情報の登録や権限設定の手作業が残る場合があります。
エラー通知や再送の仕組み、責任範囲の確認を含めて製品を比較することが大切です。気になる製品は資料請求し、連携時の対応を確認してみてください。

