出張管理システム(BTM)のセキュリティが重要視される理由
出張管理システムは、社員の位置情報や行動履歴を扱うため、他の業務システム以上に保護の重要度が高い分野です。個人情報保護法や企業の内部統制にも関わるため、導入時にはリスクの把握と対策の整理が欠かせません。
まずは出張データが持つ特徴と、企業として守るべきポイントを確認し、どのような観点でセキュリティを検討すべきか整理していきましょう。
企業の出張データが抱えるリスク
出張データには、氏名や所属、連絡先、日程といった個人情報が含まれます。これらが外部に漏えいすると、本人だけでなく取引先や顧客からの信用を損なう恐れがあります。
さらに、移動ルートや滞在先は安全管理に直結する情報です。悪意ある第三者が把握した場合、待ち伏せやストーカー行為など、物理的なリスクにつながる可能性も否定できません。
保存場所やアクセス可能なユーザーが多いほど、情報管理の難易度も上がります。海外拠点や委託先と共有する企業では、国や地域ごとの法規制や契約条件も確認が必要です。
リスクを過度に恐れる必要はありませんが、事前にどのような危険があり得るかを把握しておくと、自社に合う出張管理システムと運用ルールを選びやすくなります。
個人情報管理とコンプライアンスの強化
出張管理システムで扱う多くのデータは、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」の対象となります。利用目的の明確化やアクセス制限、保管期間の管理など、法令に沿った取り扱いが求められます。
クラウド型サービスを利用する場合は、委託先としてのサービス事業者の管理体制も重要です。情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格である「ISO/IEC 27001」や、サービス組織の内部統制報告である「SOC 2」の有無は、一つの判断材料になります。
これらの規格・報告があるから絶対に安全というわけではありませんが、情報管理の仕組みが一定の水準で整備されている目安として活用できます。社内監査や取引先からの問い合わせに対しても、説明を行いやすいでしょう。
参考:個人情報の保護に関する法律|e-Gov 法令検索
参考:ISO/IEC 27001(情報セキュリティ)概要|日本品質保証機構(JQA)
参考:SOC 2® - SOC for Service Organizations: Trust Services Criteria|AICPA
出張管理システム(BTM)で実装されている主なセキュリティ機能
出張管理システムには、多くの技術的なセキュリティ対策が組み込まれています。アクセス権限の制御や通信データの暗号化、ログの記録などは、現在のクラウドサービスでは標準的な機能といえます。
ここでは、代表的なセキュリティ機能を整理しながら、「システム側で担保される技術的対策」と「企業側で整える運用ルール」の境界も意識して見ていきます。
アクセス権限管理とログ管理
アクセス権限管理は、業務に必要な範囲に限定して情報を閲覧・更新できるように制御する仕組みです。部署や役職ごとに権限を分けることで、不要な情報へのアクセスを抑えられます。
ログ管理は、誰がいつどの機能やデータを操作したかを記録する仕組みです。不自然なアクセスや大量のデータ出力がないかを後から確認できるため、不正利用やミスの早期発見につながります。
これらはシステムに備わった機能ですが、企業側で「権限付与の基準」「退職・異動時の権限削除」「ログの確認頻度」などをルール化しなければ、十分な効果を発揮しません。
技術と運用を組み合わせることで、出張データを扱う担当者の範囲を適切に保ち、内部不正や誤操作のリスクを下げやすくなります。
データ暗号化と情報漏えい対策
多くの出張管理システムでは、通信中と保存時の両方でデータ暗号化を行っています。暗号化により、万が一ネットワーク上で盗み見られたとしても、内容を容易に読み取られにくくなります。
あわせて、ログイン時の多要素認証や、一定時間操作がない場合に自動的にログアウトする機能も有効です。IDとパスワードだけに頼らず、端末や追加コードで本人確認を行うことで、不正ログインのリスクを抑えられます。
クラウドサービスの場合は、データセンターの入退室管理やバックアップ体制など、物理的なセキュリティも事業者が整えています。災害時の復旧計画(BCP)まで含めて安全性を高めているケースもあります。
一方で、パスワードの使い回しや安易な共有、端末の無施錠など、利用者側の行動が原因で情報が漏れるパターンも少なくありません。技術対策を前提にしつつ、社内教育やルール整備で人的なリスクも減らしていく視点が重要です。
以下の記事では出張管理システム(BTM)の価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
出張管理システム(BTM)のセキュリティ運用で押さえるべきポイント
システムのセキュリティ機能が充実していても、運用が追いつかなければ十分な効果は得られません。企業としてのルールづくりや、利用者の意識・行動も含めて管理していく必要があります。
ここでは、出張管理システムを安全に使い続けるために、実務担当者が確認しておきたい運用上のポイントを整理します。
社内ルールとセキュリティポリシー策定
出張管理システムの安全運用には、利用ルールやセキュリティポリシーの明文化が欠かせません。アクセス権限の設定手順、申請・承認の流れ、外部へのデータ持ち出し条件などを文書にまとめておくと、判断が統一されます。
あわせて、パスワード管理や不審メールへの対応、不正なUSBメモリの利用禁止といった基本的なセキュリティ教育も重要です。担当者任せにせず、全社的に情報セキュリティへの意識を高めることで、ヒューマンエラーを抑えやすくなります。
出張管理システムに特化したルールとしては、「誰が出張データの修正を行うか」「予約やキャンセルの操作権限をどこまで与えるか」なども検討したい項目です。業務フローと権限設計を揃えることで、運用の混乱を防げます。
ポリシーや手順は一度作成して終わりではなく、法改正やシステム変更に応じて定期的に見直すことが大切です。
定期的な運用監査と内部統制
運用監査は、設定や利用状況が想定どおりに保たれているかを確認する作業です。具体的には、権限が過剰になっていないか、退職者のアカウントが残っていないか、ログに不自然なアクセスがないかなどを点検します。
内部統制の観点では、業務の役割分担とシステム権限が適切に分かれているかも重要です。例えば、申請と承認を同一人物が行える状態になっていないか、チェック機能が働く設計になっているかを確認します。
監査は大がかりな取り組みである必要はなく、四半期ごとや半期ごとの簡易チェックから始めても効果があります。チェックポイントをリスト化し、結果を記録しておくと、次回以降の見直しや外部からの問い合わせ対応にも役立ちます。
このような継続的な見直しを行うことで、出張管理システムの運用を、単なる「システム任せ」ではなく、組織として管理された状態に近づけていけます。
出張管理システム(BTM)のセキュリティでよくある課題と対策
セキュリティの課題は、技術的な問題だけでなく、社内の運用ルールや利用者の行動に起因するケースも少なくありません。出張管理システムも例外ではなく、「便利にしたい」という思いから、意図せずリスクが高まることもあります。
ここでは、出張管理システムでよく挙げられる課題と、その対策の考え方を紹介します。あらかじめ把握しておくと、導入後のトラブルを抑えやすくなります。
シャドーITによるリスクと防止策
シャドーITとは、社内で正式に許可されていないツールやクラウドサービスを、業務目的で勝手に利用してしまう状況を指します。出張手配サイトや外部の予約アプリを個別に使うと、管理外のデータが増え、情報漏えいや不正アクセスの温床になりかねません。
防止の第一歩は、公式に利用できる出張管理システムや手続き方法を明確に示し、利用しやすい環境を整えることです。正規ルートが不便な場合、利用者が独自ツールに流れやすくなるため、現場の声を取り入れながら運用を見直す姿勢も重要です。
また、「なぜシャドーITが危険なのか」「どのような影響が出る可能性があるのか」を、具体例を交えて説明する教育も有効です。禁止事項を告げるだけでなく、背景を理解してもらうことで、自主的な抑制につながります。
ログの確認やネットワーク監視などとあわせて、ルール・教育・システムの三つの観点から対策を組み立てると、シャドーITによるリスクを抑えやすくなります。
デバイス管理と不正アクセス対策
出張管理システムは、社内のパソコンだけでなく、ノートパソコンやスマートフォン、タブレット端末から利用されることが一般的です。端末の紛失や盗難が発生した場合、その端末からシステムへアクセスされるリスクが生じます。
対策としては、端末の画面ロックや、一定時間操作がない場合に自動でロックする設定が基本になります。OSやブラウザを最新の状態に保ち、不要なアプリケーションをインストールしないといったルールも合わせて整えたいポイントです。
さらに、多要素認証の導入や、社外からのアクセスに制限を設ける方法も有効です。遠隔から端末データを初期化できる仕組みや、紛失・盗難時の連絡フローを整備しておくと、万が一の際に素早く被害拡大を防ぎやすくなります。
デバイス管理は情報システム部門だけで完結せず、総務や各部門の管理職とも連携して取り組むことで、現場の実態に沿った現実的なルールを作りやすくなります。
まとめ
出張管理システム(BTM)は、社員の行動履歴や費用情報など、機密性の高いデータを扱います。そのため、技術的なセキュリティ機能だけでなく、社内ルールや教育、運用監査など、組織全体での取り組みが重要になります。
国際規格や法令への対応状況を確認しつつ、自社の業務フローやリスクの大きさに合った対策を組み合わせることが、安心してシステムを活用していく近道です。
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