CI/CDツールが企業規模とずれたときに起こり得ること
CI/CDツールの選定で企業規模とのずれが生じると、導入後に想定外のコストや作業が発生することがあります。ずれ方には大きく分けて2つのパターンがあります。それぞれの特徴を押さえておくと、自社がどちらに当てはまりやすいかを判断できます。
費用対効果が下がるパターン
1つ目は、自社の利用量に対して過剰な製品やプランを選び、費用に見合う効果が得られないパターンです。ビルドの回数が少ない、開発者が少ないといった状況で、大規模向けの機能を備えたプランを契約した場合に起こる可能性があります。
このパターンでは、ツール自体は問題なく動くため、失敗に気づきにくい点が特徴です。契約の更新時に費用と利用状況を見比べて、初めて割高だったとわかるケースもあります。定期的に利用状況を確認する仕組みがあれば、早めに気づける可能性があります。
機能不足で手作業が残るパターン
2つ目は、費用を抑えることを優先した結果、必要な機能が足りず、手作業や別の仕組みで補う必要が生じるパターンです。開発チームが増えた会社や、既存システムとの連携が必要な会社で起こる可能性があります。
手作業が残ると、CI/CDツールを導入した目的である作業の自動化やミスの削減が十分に実現できません。さらに、手作業の部分だけが特定の担当者に頼る状態になり、属人化が続くおそれもあります。導入の効果を測る際は、自動化できた範囲と残った手作業の両方を把握しましょう。
小規模・50名規模で費用対効果が悪くなる失敗
従業員50名以下の会社では、開発者が数名から十数名の場合もあり、ビルドの回数も限られることがあります。こうした状況で起こり得る費用対効果の失敗と、その原因を3つのケースに分けて解説します。
ビルド回数が少ないのに高機能プランを契約する
50名規模の会社が、将来の拡大を見込んで高機能なプランを契約したものの、実際のビルドは週に数回程度だったというケースが考えられます。同時実行数の多さや高度な分析機能は、利用量が少ないと効果を発揮しにくいものです。
原因としては、導入前に利用量を見積もらなかったこと、提供会社の推奨プランをそのまま選んだことなどが挙げられます。まずは無料枠や下位プランで始め、利用量の増加にあわせてプランを変更できるかを確認すると、無駄な費用を抑えやすくなります。
最低契約数や年間契約に縛られる
製品によっては、最低ユーザー数や年間契約が条件になっている場合があります。開発者が3名しかいないのに、10ユーザー分の料金を払う契約になっていた、というケースも起こり得ます。
年間契約は割引が適用される一方、途中でプランを下げたり解約したりしにくい場合があります。契約前に、最低契約数、契約期間、途中変更の条件を確認しましょう。小規模な会社では、月単位で契約できるプランのほうが柔軟に見直せることもあります。
使わない機能のために設定が複雑になる
高機能なツールは設定項目が多く、小規模な会社では使わない機能のために設定や学習の時間がかかることがあります。開発担当が少ない会社では、ツールの管理に時間を取られ、本来の開発が遅れる場合もあります。
費用対効果は、利用料金だけでなく、設定や運用にかかる人の時間も含めて考えることが大切です。必要な機能を絞り込み、その機能を少ない手順で使える製品を選ぶと、小規模でも効果を実感しやすくなります。
100名規模で安いCI/CDツールを選んだときの機能不足
100名規模になると、複数の開発チームや既存の社内システムが関わるようになり、求められる機能が増えます。この段階で費用だけを基準に選ぶと、機能不足が課題となる場合があります。起こり得る2つのケースを解説します。
基幹システムと連携できず手作業が残る
100名規模の会社で安価なCI/CDツールを導入したものの、社内の基幹システムへのデプロイ(本番環境への反映)に対応できないケースが考えられます。この場合、その部分だけ手作業が残ります。基幹システムが社内ネットワーク内にある場合、クラウドの実行環境からは接続できないことがあります。
原因は、ツールの機能だけでなく、社内ネットワークの制限や基幹システム側の仕様にもあります。社内に実行環境を置けるか、API(ソフトウェア同士をつなぐ窓口)で連携できるかを事前に確認し、連携先のシステム担当者とも相談しておきましょう。
権限管理や実行履歴が不足する
開発チームが複数になると、チームごとに権限を分けたり、誰が本番に反映したかを記録したりする必要が出てきます。安価なプランでは、権限の細かな設定や監査ログ(操作の記録)が提供されない場合があります。
この場合、本番環境への反映を一部の担当者だけに限定できず、誤った操作のリスクが高まるおそれがあります。権限管理や履歴の保存期間がどのプランに含まれるかを確認し、必要な機能があるプランの費用で比較することが大切です。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でCI/CDツールの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
大企業でビルドが集中して処理が追いつかないトラブル
開発者が多い大企業では、リリース前など特定の時間帯にビルドが集中し、処理が追いつかなくなる場合があります。開発の遅れやリリース日程への影響につながるため、仕組みを理解して備えることが大切です。原因と対策を3つに分けて解説します。
リリース前に順番待ちが発生する理由を知る
CI/CDツールでは、同時に動かせるジョブ(ビルドやテストなど1回分の処理)の数に上限がある場合があります。リリース前に多くの開発者が一斉に変更を登録すると、上限を超えたジョブが順番待ちになり、結果が出るまでの時間が延びます。
処理の遅れは、同時実行数の上限だけが原因とは限りません。実行環境の性能不足、テストの数の増加、外部サービスの応答の遅れなど、複数の要因が重なることもあります。どこで待ち時間が発生しているかを、実行履歴から確認することが対策の第一歩です。
実行環境の増強と分散で備える
ビルドの集中に備えるには、同時実行数を増やせるプランへの変更や、自社の実行環境を追加する方法があります。必要なときだけ実行環境を自動で増やす仕組みに対応した製品やクラウドサービスもあります。
ただし、実行環境を増やすと費用も増えるため、ピーク時の負荷と平常時の負荷を比べて判断しましょう。パイプライン(ビルドからデプロイまでの処理の流れ)を見直して負荷を下げる方法もあります。テストを分割して並列に実行したり、前回の結果を再利用するキャッシュを活用したりする方法も検討します。
優先度の設定と運用ルールで調整する
ビルドが集中する時間帯には、本番リリースに関わるパイプラインを優先して実行できると、重要な作業の遅れを抑えられます。優先度の設定や、特定のパイプライン専用の実行環境を割り当てられるかを確認しましょう。
運用面では、リリース前の変更受付の締め切りを設ける、チームごとにリリースの時間帯をずらすといったルールも有効です。ツールの機能と運用ルールの両面から対策を考えることが大切です。ルールは開発チームと共有し、リリースの振り返りで見直していきましょう。
CI/CDツールが自社の規模にあうかを見極める方法
規模とのずれによる失敗を避けるには、導入前に自社の利用量を把握し、実際の条件に近い形で試すことが重要です。見極めのために取り組みたい2つの方法を紹介します。導入後も定期的に見直すことで、規模の変化にも対応できます。
実行量と今後の増加を見積もる
まず、現在の開発者数、1か月あたりのビルド回数、1回あたりの処理時間を把握しましょう。そのうえで、今後1~2年の採用計画や開発プロジェクトの増加を見込み、利用量がどの程度増えるかを見積もります。
見積もった利用量をもとに、各製品のプランで月額費用がいくらになるか、同時実行数は足りるかを確認します。現在の規模と将来の規模の両方で試算すると、プランの変更が必要になる時期の目安もつかめます。
試験導入で負荷と連携を確かめる
無料トライアルや試験導入の期間を使い、実際の開発案件の一部でパイプラインを動かしてみましょう。処理時間や順番待ちの発生状況、既存システムとの連携の可否を確認できます。
可能であれば、リリース前のように変更が集中する状況も想定して試すと、本番運用での課題を見つけやすくなります。試験導入の結果は記録に残し、契約するプランや運用ルールを決める際の根拠として活用しましょう。検証は本番環境に影響しない範囲で行うことが前提です。
自社の規模感にあうか見極めたいCI/CDツール
費用や処理能力が自社の規模に見合うかを確かめる際の候補として、CI/CDツールを紹介します。利用量が増えたときの料金や実行環境の拡張方法は、資料で確認しましょう。
AWS CodeBuild (アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)
- 自動スケーリングで無駄なくビルドを実行
- 使用した時間に対する分単位の従量課金制
- 独自のキーによる暗号化で情報を保護
GCP Cloud Build (グーグル合同会社)
- 固有の環境と自由なスケーリングができるプライベートプール!
- 15種類のマシンタイプから選択し最大数百の同時ビルド!
- Google社提供のマシンでビルドを大幅高速化!
CircleCI (CircleCI)
- コード変更ごとに自動テストで品質を検証
- クラウド・サーバー版で多様な開発環境に対応。
- ワークフローとキャッシュでパイプラインを高速化。
Jenkins (CloudBees, Inc.)
- ビルドとテストを自動化し継続的に変更検証。
- パイプライン定義で標準化CI/CDフロー構築。
- 豊富なプラグインで多様なツールや環境と連携可能。
AzureDevOps (日本マイクロソフト株式会社)
- あらゆる環境でCI/CDが可能
- ソース管理、作業管理などアジャイル開発機能が充実。
- テスト統合、品質保証からデプロイまで包括サポート。
CloudBeesCodeShip (CloudBees, Inc.)
- DockerベースのCI/CD環境を迅速に構築
- 主要コードリポジトリと連携可能
- 高度なセキュリティとコンプライアンス対応
BitbucketPipelines (アトラシアン株式会社)
- 100超のテンプレートとワークフローを提供。
- クラウドでスケール、CI/CDを組織全体で一元管理。
- 設定とログ監視でデプロイ状況を可視化し迅速対応
まとめ
CI/CDツールの失敗は、企業規模や利用量とのずれから生じる場合があります。小規模や50名規模では過剰なプランによる費用対効果の低下、100名規模では機能不足による手作業の残存に注意が必要です。大企業では、ビルドの集中による処理の遅れにも備えましょう。導入前に実行量を見積もり、試験導入で確かめることが対策の基本です。自社の規模にあうCI/CDツールを比較したい方は、ITトレンドの資料請求を活用してください。

