データマートとは
データマートとは、企業に蓄積された膨大なデータから、目的に応じて必要な情報のみを取り出したデータベースのことです。例えば、顧客へのメール送信を目的に「会員番号」と「メールアドレス」だけを取り出し構築されたデータベースなどが該当します。

データマートのメリット
データマートを活用する主なメリットは、「短期間で構築が可能なこと」「コスト効率がよいこと」が挙げられます。特定の部門や業務に必要な情報のみを保管するため、素早くデータ分析基盤を整えられ、効率的なアクセスや分析が可能になります。また、データ範囲が限定的なため、コスト効率が高く、中小規模のプロジェクトや限られた予算のなかでも利用しやすいでしょう。
データマートは、コストや構築時間を抑えつつ、部門ごとの迅速な意思決定を支える効率的な選択肢です。
データマートの3つのタイプ
データマートには、「従属型」「独立型」「ハイブリッド型」の3タイプがあります。それぞれの特徴を解説します。
従属型データマート
従属型データマートは、データウェアハウスを基盤として構築されるデータマートです。データウェアハウス内の統合データを抽出し、部門や業務ニーズに応じて加工・整理したうえで利用されます。データの一貫性が保たれるため、全社的なデータガバナンスを維持しつつ、個別の分析要求にも対応可能。データソースを統一することで、重複や不整合を防ぎます。ただし、データウェアハウスが必須のため、構築コストが高くなりがちです。
独立型データマート
独立型データマートは、データウェアハウスを使用せず、部門や特定業務に限定したデータ基盤です。個別のソースシステムから直接データを抽出して運用され、構築が迅速でコストも比較的低いのが特徴です。小規模な組織や初期段階のプロジェクトに適しています。ただし、全社的なデータ統合がされていないため、異なる部門間でのデータ整合性や一貫性に課題が生じる可能性があります。
ハイブリッド型データマート
ハイブリッド型データマートは、従属型と独立型の特徴をあわせもつタイプです。必要に応じて、データウェアハウスと外部ソースの両方からデータを収集します。全社的なデータ活用を目指しつつ、特定のニーズにも素早く応えられるのが特徴です。一方で、管理が複雑になる場合があり、設計時にデータの統合戦略を明確にする必要があります。
データウェアハウス(DWH)との違い
データマートと同じデータベースの一種に、データウェアハウス(DWH)とデータレイクがあります。それぞれの違いを以下にまとめました。
データマート | データウェアハウス | データレイク | |
---|---|---|---|
特徴 | 分析対象が狭い 短時間での構築が可能 初期構築が比較的安価 | 分析対象が広い データ統合により整合性を確保 構築に時間が必要 | データ保存が柔軟 構築が容易 コスト効率がよい |
目的 | 特定の分析やレポート作成 特定部門の短期的な意思決定を支援 | 複数部門の統合的な分析 全社的な意思決定基盤の提供 | 将来的な分析や機械学習のためのデータ保持 |
データの使用範囲 | 一部門 | 組織全体 | 組織全体(制限なし) |
サイズ | 小規模(通常100GB未満) | 大規模(通常テラバイト以上) | ペタバイト級の大容量データ |
データソース | 少ない | 多い | 多種多様なデータソースに対応 |
データの構造 | 構造化データ | 構造化データ | 構造化・半構造化・非構造化データ |
データの加工 | 二次加工データ | 一次加工データ | 未加工データ(そのまま保存) |
データマートとデータウェアハウスの大きな違いは、利用範囲と目的にあります。データマートは特定の部門や業務に特化した小規模なデータ基盤です。一方、データウェアハウスは複数部門を横断した分析や全社的な意思決定を支える大規模なシステムです。データマートは局所的な利用に適しており、全社的な統合分析にはデータウェアハウスが求められます。
データレイクは、あらゆる形式のデータをそのまま保存する大容量データベースです。構造化データだけでなく、半構造化データや非構造化データ(ログファイル・画像・動画など)を取り扱う点が、データマートやデータウェアハウスとの大きな違いです。また、主に大容量データの保存が目的で、データを後から活用する場合に適しています。
データウェアハウスやデータレイクについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
データ活用基盤の最適な選択肢とは
近年、従来のデータマート中心のデータ管理から、データウェアハウスやデータレイクを活用して全社的なデータ活用を目指す企業が増えています。
データウェアハウスは、複数の部門や業務システムからデータを統合し一元管理することで、運用コスト削減や業務効率向上が期待できます。データレイクも、非構造化データや大容量データをそのまま保存できるため、柔軟なデータ活用や迅速な分析プロセスの実現が可能です。
ただし、データマートからデータウェアハウスやデータレイクへの移行は、システム設計やデータ統合に高い負荷がかかるため、急な切り替えは避けるべきです。まずは既存のデータマートを統合可能な形に整備し、データウェアハウスやデータレイクを段階的に構築していくのがおすすめです。段階的なアプローチにより、データの一元化と運用効率の向上をスムーズに実現できます。
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システム導入前に確認すべき3つのポイント
データマートやデータウェアハウス、データレイクを導入する前に抑えておくべきポイントを解説します。
- ■利用目的の明確化
- 部門ごとの迅速な分析にはデータマート、全社的なデータ統合にはデータウェアハウス、柔軟なデータ活用にはデータレイクが適しています。目的が曖昧なままでは、システムの設計や運用が非効率になるリスクがあります。導入する際には利用目的を明確にすることが最優先です。
- ■予算の策定・確保
- データマートは比較的低コストで済む場合が多いでしょう。しかし、データウェアハウスやデータレイクは大規模かつ高度なシステムのため、導入後の維持費も考慮する必要があります。費用対効果を評価し、長期的な視点での投資計画を立てることが重要です。
- ■製品の比較・検討
- データマートやデータウェアハウス、データレイクには、さまざまな製品が存在します。クラウド型やオンプレミス型、ベンダーサポートの質、既存システムとの連携性など、企業要件にあった製品を選ぶことが成功の鍵です。
以下の記事では、データウェアハウスのおすすめ製品を比較しています。自社に適した製品の選び方も解説しているため、ぜひ参考にしてください。
まとめ
データマートは、データウェアハウスから用途に応じて必要な情報のみを取り出したデータベースです。特定の部門や業務に特化し、迅速な分析や意思決定を目的としています。
データウェアハウスは、組織全体のデータを統合し、横断的な分析を可能にする大規模なデータベースです。社内のビッグデータを有効活用して新しい価値を創造できるため、近年需要が高まっています。データレイクは、あらゆる形式のデータをそのまま保存する大容量データベースです。データは未加工のまま蓄積されるため柔軟性が高く、機械学習やビッグデータ分析に適しています。
データマートとデータウェアハウス、そしてデータレイクの特徴をそれぞれ理解したうえで、自社にとって必要なシステムを選択しましょう。下のボタンよりデータウェアハウスの一括資料請求が可能です。全社的な統合分析基盤を構築したい企業は、ぜひご活用ください。