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大病院向け電子カルテをクラウドで運用できる?向く条件と課題

2026年10月21日 最終更新

大病院向け電子カルテをクラウドで運用できる?向く条件と課題

大病院向け電子カルテはクラウドでも運用できますが、病院向けに提供されている製品はまだ限られ、回線や部門システムとの接続を含めた設計が必要です。サーバ室の維持や機器更新の負担を減らしたい病院や、災害時の診療継続を強化したい病院では、有力な検討対象です。この記事では、大病院が電子カルテのクラウド化を考える際に知っておきたい方式の違いや課題、国の動き、回線障害への備えを解説します。

この記事は2026年10月時点の情報に基づいて編集しています。
目次

    ITトレンドがおすすめする製品・サービス

    ■クラウドの提供形態別
    • SaaSとして提供される電子カルテ:HOPE LifeMark-HX、Wing
    • クラウドとオンプレミスから選べる電子カルテ:Wing
    ■大病院のクラウド化で確認したい点別
    • サーバーの二重化による障害への備え:HOPE LifeMark-HX
    • 同一法人の複数施設でのカルテ一元管理:Wing

    大病院向け電子カルテのクラウド型とは

    クラウド型電子カルテとは、電子カルテのサーバを病院の外にあるデータセンターに置き、ネットワークを通じて利用する形態です。一口にクラウド型といっても方式に違いがあるため、まずは大病院で検討される主な方式を整理しましょう。

    病院ごとに環境を用意するデータセンター設置型

    病院ごとに専用のサーバ環境をデータセンター上に用意し、閉域網などで院内とつなぐ方式です。従来のオンプレミス型と近い仕組みのまま、機器を院外に移す形のため、部門システムとの接続や画面の作り込みを比較的引き継ぎやすい傾向があります。

    一方で、病院専用の環境である以上、ソフトウェアの更新や機器の更改に伴う費用は病院ごとに発生します。サーバ室の負担は減っても、更改の周期や費用の構造が大きく変わらない場合がある点は確認しておきましょう。

    関連記事 大病院向け電子カルテおすすめ比較!選び方と導入時のポイントを解説

    複数の病院で共同利用するSaaS型

    SaaS型は、提供会社が用意した一つのシステムを複数の医療機関で共同利用する方式です。複数の利用者で同じ仕組みを使う形はマルチテナント方式と呼ばれ、更新は提供会社がまとめて行います。

    病院ごとの改修が抑えられ、費用を平準化しやすい点が特徴です。その反面、病院独自の画面や機能を追加する余地は小さく、標準の機能にあわせて運用を見直す姿勢が求められます。大病院でどこまで標準機能に寄せられるかが、検討の分かれ目です。

    大病院でクラウド型電子カルテが検討される場面

    大病院がクラウド型電子カルテを検討するきっかけは、病院ごとの事情によって異なります。どのような場面で検討が進むのかを知ると、自院にとってクラウド化を考える時期かどうかを判断しやすくなります。

    サーバの更新時期とサーバ室の維持負担

    オンプレミス型では、数年ごとにサーバやストレージを更新し、サーバ室の空調や電源設備も維持する必要があります。機器の保守期間の終了が近づいたタイミングは、クラウド型へ移すかを検討する機会です。

    医療情報部門の人員が限られている病院では、機器管理の負担を減らし、職員を院内の業務改善やデータ活用に振り向けたいという事情もあります。ただし、クラウド化しても院内のネットワークや端末の管理は残る点に注意しましょう。

    災害時の診療継続と遠隔地での保管

    地震や水害で院内のサーバ室が被災すると、電子カルテを使えなくなるおそれがあります。データセンターを院外に置くクラウド型は、診療記録を院外で保管する手段として検討されます。

    ただし、データセンターの所在地や設備、バックアップの保管先は提供会社によって異なります。院内が被災しても回線が使えなければ利用できない点も踏まえ、どの程度の災害を想定し、どこまで継続したいかを病院として決めておくことが大切です。

    関連記事 大病院向け電子カルテシステムの価格相場はいくら?費用を左右する要因と比較の進め方

    複数病院を運営する法人での共同利用

    複数の病院や診療所を運営する法人では、各施設の電子カルテをまとめて管理したいという要望があります。クラウド上で共通の仕組みを使えば、施設ごとにサーバを置く必要がなく、マスタや運用ルールをそろえやすくなります。

    一方で、施設ごとに診療内容や部門システムが異なる場合は、共通化できる範囲を慎重に見極める必要があります。法人内で患者情報をどこまで共有するかは、本人の同意や院内規程も含めて整理しましょう。

    大病院のクラウド化で課題になりやすい点

    大病院の電子カルテをクラウドで運用する場合、中小規模の医療機関とは異なる課題があります。導入後の不具合を防ぐため、検討段階で次の点を提供会社と詰めておきましょう。

    回線の帯域と冗長化の設計

    大病院では、外来のピーク時に多くの職員が同時に記録やオーダーを行い、画像や文書のデータもやり取りします。回線の帯域が不足すると、画面の応答が遅くなったり、処理が途中で失敗したりする可能性があります。

    回線は提供会社と通信事業者の双方が関わるため、帯域の見積もりや回線の二重化、障害時の切り替え方法を設計段階で確認します。稼働前の負荷試験で、実際の利用に近い条件の応答を確かめておくと安心です。

    院内に残る部門システムとの接続

    電子カルテ本体をクラウドに移しても、検査機器や放射線の装置とつながる部門システムは院内に残る場合があります。クラウドと院内の間でオーダーや結果をやり取りするため、通信経路や認証の設計が必要です。

    接続の仕様は電子カルテと部門システムの提供会社で調整するため、どちらが何を担うかを明確にしておきます。通信が途切れた場合にデータが欠けたり重複したりしないか、再送の仕組みや確認方法もあわせて確認しましょう。

    カスタマイズの制約と運用の標準化

    SaaS型の電子カルテでは、病院ごとの画面や帳票の作り込みに対応しない、または対応範囲が限られることがあります。大病院では、診療科ごとに長年使ってきたテンプレートや院内独自の運用が多く、そのままでは移せない場合があります。

    クラウド化を検討する際は、現行のカスタマイズを棚卸しし、標準機能で代替できるもの、運用の見直しで対応するもの、どうしても必要なものに分けて整理します。診療科の代表者を交えて話し合い、標準化の方針を院内で合意しておくことが大切です。

    国の標準仕様と大病院のクラウド化

    厚生労働省は、カスタマイズされたオンプレミス型から、クラウドネイティブを基本とする廉価な電子カルテへの移行を図る方針を示しています。病院向けの標準仕様がどのような内容か、大病院にどう関わるかを確認しましょう。

    中小病院向け標準仕様で示された要件

    厚生労働省の資料では、医科診療所と中小病院向けの電子カルテの標準仕様として、稼働率の実績99.9%以上や国内でのデータ保持などが示されています。また、マルチテナント方式の採用や、個別のカスタマイズに対応しない仕様も含まれます。

    病院向けには、機能の一覧をWebサイトで開示することも求められています。標準仕様に準拠した製品は厚生労働省が認証する方向で、制度の詳細は今後も更新されるため、最新の情報を確認しましょう。

    セキュリティとバックアップに関する要件

    同じ標準仕様では、セキュリティ要件として、政府のクラウドサービス評価制度であるISMAP、またはISMS認証とISMSクラウドセキュリティ認証の取得が挙げられています。第三者機関によるペネトレーションテストや、脆弱性診断の実施も求められています。

    バックアップは、物理的かつ論理的に隔離された別の環境へ定期的に行う仕様とされています。大病院がクラウド型を比較する際にも、これらの項目は提供会社への確認事項として役立ちます。

    大規模な病院への段階的な拡大

    同じ資料では、200床未満の中小病院向けの標準仕様から始め、小規模な病院から段階的に普及させたうえで、大規模な病院へ広げる方向が示されています。病院向けにクラウド型電子カルテを提供している事業者は、現状では限られているとされています。

    大病院が今すぐ標準仕様の製品を選べる状況ではありません。ただし、次回の更改で選ぶ構成は、さらに先の更改で取れる選択肢にも影響します。国の検討の進み具合を確認しながら、中長期の計画を立てるのが大切です。

    関連記事 AI機能搭載の大病院向け電子カルテを比較!AIの活用方法や運用のコツも紹介

    回線障害に備えるクラウド型電子カルテの運用

    クラウド型の電子カルテは、回線や提供会社側の障害によって院内から使えなくなる可能性があります。大病院では影響を受ける患者や職員が多いため、障害が起きても診療を続けられる運用を事前に整えておきましょう。

    参照用の仕組みと紙運用への切り替え

    回線障害に備える方法として、直近の診療記録や処方の情報を院内の端末やサーバに定期的に保存し、障害時に閲覧できるようにする構成があります。対応の可否や保存される範囲は製品によって異なるため、選定時に確認が必要です。

    あわせて、電子カルテが使えない間に紙の伝票で指示を出す手順や、復旧後に記録を入力し直す手順を決めておきます。職員が迷わないよう、手順書を各部署に配置し、訓練で確かめておきましょう。

    提供会社との責任分担と障害時の連絡

    クラウド型では、障害の原因が回線、データセンター、アプリケーション、院内の機器のどこにあるかによって対応する事業者が変わります。障害の受付窓口や連絡の流れ、復旧状況の報告方法を契約の段階で取り決めます。

    厚生労働省の安全管理ガイドライン第7.0版では、医療機関と事業者の役割分担やリスクコミュニケーションに関する記述が追記されました。稼働率や障害時の対応内容を示したサービス品質の合意書も確認しておきましょう。

    関連記事 大病院向け電子カルテの人気製品を比較!選び方や注意点も解説

    クラウド化を検討する大病院向けの製品一覧

    クラウドでの提供形態と部門システムとの関わりを軸に、大病院のクラウド化を考える際に比べたい製品をまとめました。

    製品名特徴
    HOPE LifeMark-HX300床以上の病院向けのクラウド型。電子カルテと医事会計、部門システムのデータを統合管理
    Wingサーバレスのクラウド運用とオンプレミスに対応。同一法人の複数施設でカルテを一元管理できる
    WebPathWebブラウザから使える標本情報のシステム。画像と標本情報を結び付けて瞬時に検索できる
    GINGABld輸血業務向けのシステム。輸血伝票からの重複入力を減らし、検査結果の変更履歴を管理できる

    SaaS提供と複数施設運用に対応する製品

    クラウドで利用できる電子カルテに加え、クラウド化の後も院内での接続を確かめたい部門システムを紹介します。回線障害時の参照方法や責任分担は、提供会社ごとに確認しましょう。

    HOPE LifeMark-HX (富士通株式会社)

    《HOPE LifeMark-HX》のPOINT
    1. カルテが見やすく、記載しやすく、情報を探しやすい
    2. 医療従事者の判断をサポートし、医療の質とスピードを向上させる
    3. 日常業務を止めることがない、スムーズなシステム運営を実現

    Wing (株式会社ライブワークス)

    《Wing》のPOINT
    1. システムトラブルの発生なし!24時間・365日の安定稼働実績!
    2. デバイスを問わず運用!スマートデバイスで往診対応も!
    3. サーバーひとつで同一法人の複数施設の業務を実現!

    WebPath (メディカルシステム株式会社)

    《WebPath》のPOINT
    1. 正晃テック株式会社の登録商標
    2. Web技術利用でWebブラウザから利用可能
    3. 画像と標本情報を関連付け、瞬時に検索・二次利用可能

    GINGABld (メディカルシステム株式会社)

    《GINGABld》のPOINT
    1. 輸血関連情報へ素早くアクセス
    2. 輸血伝票からの重複入力を削減し業務を合理化。
    3. バーコードで入力ミス防止・検査結果変更履歴を管理

    まとめ

    大病院向け電子カルテのクラウド型には、病院専用のデータセンター設置型と、共同利用するSaaS型があります。サーバ室の負担軽減や災害への備えにつながる一方、回線の冗長化や院内に残る部門システムとの接続、カスタマイズの制約が課題です。国は中小病院から段階的にクラウドネイティブ型を広げる方針のため、その動向も踏まえて計画を立てましょう。資料請求をして、クラウドの方式や障害時の備えを比べてみてください。

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