人事コンサルティングとは
人事コンサルティングとは、人事という観点から企業が抱えるあらゆる課題を見つけだし、改善や改革までを支援するサービスです。人事業務の専門的な知識と豊富な経験をもつコンサルタントから、さまざまな支援が受けられます。
経営や人事の課題を分析、原因を明らかにし、解決するためのアプローチを提案してくれます。その後、アドバイスや効果測定を行いながら、企業が求める経営のサポートが可能です。希望すれば、アドバイスだけでなく人事業務の代行を行います。
人事コンサルティングが行う改善や改革は、企業の業績に大きな影響を与えるため、経営戦略の主要な項目として検討する必要があります。
人事コンサルティングが提供するサービスの種類
人事コンサルティングが提供するサービスは、広範囲で人事や経営にプラスの効果をもたらします。代表的な5つのサービスを紹介します。
人事制度コンサルティング
従業員の待遇と福利厚生に関するコンサルティングサービスです。従業員の待遇としては、給与・賞与・評価・等級などの制度についてコンサルティングを行います。主な例としては、年俸制を新たに導入する支援、成果主義にもとづく給与体系などです。
福利厚生としては、年金の導入や退職金などについてコンサルティングを行います。具体的には、確定拠出年金の導入、新しい年金制度の導入、退職金制度などが主なテーマです。これら以外に、定年延長・再雇用、契約・パート従業員、役員報酬なども対象です。
人事コンサルティングサービスの対象となるテーマは幅広く、場合によっては総務や現場部署など、人事以外のメンバーがプロジェクトに参加します。
人材教育・育成コンサルティング
人材教育・育成のプログラムの立案と実行や、個別人材育成を行うコンサルティングサービスです。従業員の能力を開発し、高いモチベーション・生産性の人材育成を目標として行います。
対象は、新入社員から管理職・経営層まで幅広く、レベルごとの研修が用意されています。また、テーマ別に用意されている研修は、「次世代のリーダー育成」や「マネジメント能力の向上」などです。
近年注目されているのは、チェンジマネジメントに関する研修で、「リーダーや従業員自らが率先して企業を変えていく」をテーマにしています。パッケージ型のほか、企業別にカスタマイズした研修を行います。
採用コンサルティング
企業が人材を採用するための戦略立案や、実際に採用活動を行うコンサルティングサービスです。採用の実績やノウハウがない企業に対しては、計画・立案・ターゲット策定・手段の選定などを行います。人事担当者が少なく人手が足りない企業には、コンサルタントが書類選考や面接から入社に至るまで、人事業務の代行を行います。
採用コンサルティング成功のカギとなるのは、企業が求める人材のスキルの把握です。企業理念や風土に、どのような人材がマッチするかを見極めることが大切です。
グローバル人事コンサルティング
グローバル展開する企業に必要な人事制度に関するサービスです。海外のビジネスを成功させるためには、そのための人事制度が必要になります。しかし、それを作成する業務は、日本とは文化・習慣などが大きく異なるため、難易度の高い作業です。
このサービスは、海外ビジネスに必要となるさまざまな内容のコンサルティングを行います。主な内容を以下に紹介します。
- ●グローバル人材のスキル要件の整理
- ●グローバル人材の教育育成プログラム作成と実施
- ●グローバル人材のマネジメント
- ●グローバルな人事評価
- ●多国籍メンバーへの経営理念の浸透
- ●国際間の異動
- ●グローバル経営者の育成
要望があれば、海外現地に常駐が可能です。近年はグローバルな企業が増え、十数か国同時に人事組織再編などを検討するプロジェクトが増え、グローバル人事コンサルティングの需要が高まっています。
人事システムコンサルティング
人事システムの企画から運用までを行うコンサルティングサービスです。人事業務に精通したコンサルタントが担当し、以下のステップで進めます。
- 1.課題の整理
- 現行業務のヒアリングを行いシステムの課題整理、負荷の高い業務課題の洗い出し
- 2.業務マップ作成
- 現行システムを整理、手作業業務やシステム間連携で非効率な箇所を明確化
- 3.機能要件作成
- 社内ヒアリングから得られたシステム化すべき要件整理、他社で必要となった要件を加味して次期システムに求められる機能要件を作成
- 4.導入支援
- システムの導入の支援
- 5.運用支援
- 運用の支援
顧客の要望にあわせ、コンサルティングの内容やステップはカスタマイズ可能です。
人事コンサルティングを依頼するメリット
人事コンサルティングは、人事戦略のみにとどまらず経営戦略に大きなメリットをもたらします。特に、注目すべきメリットについて解説します。
外部の専門知識を活用できる
人事コンサルタントは、幅広い知識と経験をもつ専門家です。業種を問わず多くの企業の人事の課題を知り、その解決手段を知っています。他企業の成功事例や失敗事例など多くの知識を活かし、目先の課題だけに捉われず、将来発生する課題を予測して提案可能です。
また、経営や法律に関する知識を有する人事コンサルタントも多くいます。小規模事業者の場合、財務・資金調達・事業継承など経営に関わる人材や、法律の専門家を社内に抱えるのは困難です。人事に加え、これらのコンサルティングを受けられます。
自社内に保有する専門知識に、外部の専門知識を組みあわせて活用すれば、大きなシナジー効果が生まれるでしょう。
第三者の視点から客観的に分析できる
人事コンサルティングを利用すれば、自社を客観的に分析できます。長く経営を続けていると、気づかずに業界や企業の常識に縛られ、そのなかから抜け出せずにいる場合があります。コンサルタントは、その常識が企業に有益かどうか第三者の視点で指摘するのが仕事です。
経営者は、第三者に指摘され、常識からの脱却につながる気付きを得る効果があります。従業員は、第三者のコンサルタントからの客観的な指摘であるがゆえに、受け入れやすくなります。
第三者の客観的分析は、経営者や従業員に気づきを与えて、企業の改善につながるのです。
業務負荷の軽減につながる
人事部門は重要な業務をたくさん抱えています。しかし、小規模事業者はほかの仕事を兼務しているケースも多く、人事評価制度の策定や改革に十分な時間を割けません。
そこで人事コンサルティングサービスを活用すれば、専門家から的確なアドバイスが受けられ、人事評価制度の策定や改革を迅速に行えます。担当者の時間をほかのコアな作業に当てられるだけでなく、調査などの業務にかかる負荷を軽減できます。
人事コンサルティングを依頼するデメリット
人事コンサルティングの活用にはメリットがある一方、デメリットも存在します。導入前に注意すべき点を解説します。
自社の課題が不明確な場合はコストがかさむ
サービスの費用は、自社が解決したい課題の内容によって決まります。課題の内容が不明確であいまいな場合、途中で新たな課題が出てくることがあります。手戻りや方向性の変更があると追加費用が発生してしまうため、事前にコンサルタントと十分すり合わせをすることが大切です。コンサルティング内容と費用の条件をよく確認し、ある程度の追加予算を計上しましょう。
また、企業がもつ実績・経験・ノウハウはそれぞれ異なります。無駄な費用をかける事態を避けるため、自社の規模や課題にあっているか、見極める必要があります。
相性があわない場合は効果を実感しづらい
自社と相性があわない企業を選ぶと、プロジェクトはスムーズに進まず、コンサルティングの効果を実感できません。サービス提供会社とコンサルタントは、特定の業界・業種に強みをもっていることが多く、大企業あるいは中小企業など対象企業を絞っていることもあります。
強みやターゲットをよく確認して、相性のよいサービス提供会社およびコンサルタントを選ぶことが重要です。自社の規模・業界・業種などにあっているかを確認すれば、リスクは最小限に抑えられます。
すべてを任せると社内に知見を蓄積できない
コンサルタントにすべてを任せると、会社経営に重要な、人事業務の知見が社内に蓄積されません。その結果、自社における人事部のスキルや知識が伸びなくなる可能性があります。
人事担当者はコンサルタントへ完全に寄りかかるのではなく、必要に応じて業務を分担し、協力するというスタンスを取りましょう。とりわけ経営と密接に関わる業務は、知見を蓄えるために人事担当者が行うべきでしょう。
人事コンサルティングサービスの選び方
人事コンサルティングサービスの導入を成功させるためには、どのような点に着目してサービス提供会社を選べばよいのでしょうか。ここでは4つの選定ポイントを紹介します。
自社の課題にあったサービスを選ぶ
人事コンサルティングサービスは、人事制度の設計から人材育成、採用支援まで幅広く存在します。そのため、依頼する前にまずは自社が抱える課題を明確に特定することが重要です。課題が明確でない状態でコンサルティングを依頼すると、的外れなサービスを提案されたり、必要以上のサービスを押し付けられたりするリスクがあります。
課題の特定には、社内の人事部門だけでなく、経営層や現場の声も踏まえて多角的に分析することが効果的です。課題が明確になったら、合致したサービスを提供している会社を探しましょう。各社のWebサイトやパンフレットなどで、サービス内容を詳しく確認することをおすすめします。また、実際に数社に相談してみることで、自社の課題にあったサービスを提案してくれる会社を見つけやすくなります。
サービスの選定では、自社の予算や社内リソースも考慮に入れることが大切です。一時的なコンサルティングで解決できる課題なのか、長期的な支援が必要な課題なのかを見極め、最適なサービス内容と期間を選びましょう。
コンサルタントの専門性と経験を確認する
人事コンサルティングサービスの品質は、コンサルタントの専門性と経験に大きく左右されます。自社の業界や規模、抱える課題に精通したコンサルタントを選ぶことが重要です。
コンサルタントの専門性は、保有している資格や過去の実績から判断できます。例えば、人事制度設計に強みをもつコンサルタントであれば、社会保険労務士や中小企業診断士などの資格をもっている傾向にあります。人材育成や研修に強みをもつコンサルタントであれば、産業カウンセラーや教育関連の資格をもっているケースが多いでしょう。
また、コンサルタントの経験は、過去の担当クライアントや実績から判断できます。自社と同じような業界や規模の企業への支援実績があるコンサルタントであれば、自社の課題にもスムーズに対応してくれる可能性が高いでしょう。
信頼できるコンサルタントを選ぶことで、的確なアドバイスを受けられるだけでなく、社内の人事担当者の育成にもつながります。自社の人事機能の成熟度を高めるという観点からも、コンサルタント選びは慎重に行いましょう。
サポート体制を確認する
人事コンサルティングは、一時的なサービス提供で終わるものではありません。コンサルティングを通じて設計した人事制度や育成プログラムを、継続的に運用していくためのサポート体制も重要です。
コンサルティング終了後のサポート体制は、会社によって異なります。例えば、人事制度の運用支援や定期的な見直し、従業員向け説明会の開催など、導入後も継続的にサポートしてくれる会社があります。一方で、コンサルティングの提案で終わってしまう会社もあるでしょう。
そのため、人事部門の体制やスキルレベルを考慮し、どの程度のサポートが必要かを見極めることが大切です。特に、人事部門の人員が少ない小規模事業者は、導入後の運用を見据えた手厚いサポート体制が欠かせません。
また、コンサルティング期間中のサポート体制も確認しておくべきポイントです。担当コンサルタントとの連絡頻度やレスポンス速度、問い合わせ方法など、日々のコミュニケーションがスムーズに行える体制が整っているかどうかを確かめましょう。
費用対効果を考える
人事コンサルティングサービスの価格は、提供内容や期間、会社規模などによって大きく異なります。そのため、安易に価格の安さだけで判断するのは避けたいところです。大切なのは、提供されるサービス内容と照らしあわせて、費用対効果を考えることです。
まずは、自社の予算や投資余力を確認しましょう。人事コンサルティングは、一時的なコストがかかる投資といえるでしょう。長期的な視点で人事機能の強化につながる投資だと捉え、適切な予算を確保することが重要です。
次に、提案されたサービス内容を詳細に確認しましょう。自社の課題解決に必要十分な内容になっているか、不要なオプションが含まれていないかなどを吟味することが大切です。複数社から提案を受けた場合は、それぞれの内容を比較検討することで、費用対効果の高いサービスを選びやすくなります。
また、コンサルティングの期間や頻度も費用対効果に関わる要素です。自社の課題の複雑さや社内リソースの状況を考慮し、最適な期間とペースを選択しましょう。コンサルティング期間が長すぎると費用がかさみますが、短すぎても十分な効果が得られない可能性があります。
どのような人事コンサルティングサービスがあるか、具体的に知りたい方は以下の記事をご覧ください。選び方を参考にして自社に適したサービスを見つけましょう。
人事コンサルティングの活用を検討しよう
人事は、企業の成長と発展に直結する重要な経営機能です。しかし、人事部門の体制や専門性が十分でない場合、人事課題の解決に苦慮することもあるでしょう。そんなときこそ、人事コンサルティングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
人事コンサルティングは、企業が抱える課題を改善し改革するサービスで、主に以下の5つの種類にわけられます。
- ●人事制度コンサルティング
- ●人材教育・育成コンサルティング
- ●採用コンサルティング
- ●グローバル人事コンサルティング
- ●人事システムコンサルティング
そして、人事コンサルティングの活用には次のようなメリットがあります。
- ●外部の専門知識を活用できる
- ●第三者の視点から客観的に分析できる
- ●業務負荷の軽減につながる
自社の人事課題を解決し、より強い組織づくりを目指すために、ぜひ人事コンサルティングの活用を検討してみてください。外部の力を効果的に取り入れながら、自社の人事機能をさらに磨いていきましょう。