セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメント(Sales enablement)とは、営業組織を改善し、強化するための仕組み作りを意味する言葉です。セールスが営業力、イネーブルメントが「~ができるようになること」や「有効化すること」を意味します。
セールスイネーブルメントが注目されるようになったきっかけは、国内第一人者である山下貴宏氏の著書『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』です。
山下氏はセールスイネーブルメントを「成果を出す営業社員を輩出し続ける人材育成の仕組み」と定義し、セールスイネーブルメントの取り組み方や手順を解説しています。営業力はさまざまな企業が抱える問題であり、セールスイネーブルメントは営業力を強化するための方法として、注目されているのです。
なお、セールスイネーブルメントで起点となるのは、組織が達成するべき「営業成果」です。成果を達成するために必要な、一貫したプログラム(PDCAサイクル)を作成することが、セールスイネーブルメントの特徴です。
セールスイネーブルメントが注目される背景
セールスイネーブルメントが注目される背景には、人材育成にまつわる各種問題があります。トレーニングが実施されていても、部署ごとの連携や実務への反映といった側面で、不十分なケースもあるでしょう。また、プログラム実施後のフォローや効果測定が行われず、「こなすだけ」になっている事例も少なくありません。
Webマーケティングの急激な普及もあり、見込み客を獲得する機会は増加しています。会社としての営業力が不足していれば、対応し切れないままチャンスを逃す恐れがあるでしょう。
限られた人材を有効活用するためにも、個々のスキルではなく、会社全体の能力向上が必須です。成果を起点としてPDCAサイクルを回すセールスイネーブルメントなら、より着実に営業力を高めていけるでしょう。
セールスイネーブルメントが必要な理由
セールスイネーブルメントは、すでに多くの企業で取り入れられている取り組みです。必要とされる理由は、以下を参考にしてください。
営業活動の属人化を防ぐため
営業力に自信をもつ企業は多いものです。しかし実際のところは、「個人がもつ能力や資質に頼り切っている」というケースは珍しくありません。たった一人でも優れた営業パーソンがいれば、成果は上昇するでしょう。しかし、その人材が会社を去れば、営業力は一気に低下してしまいます。
個人的に優れた営業ノウハウを有していても、ノウハウが共有されなければ、営業活動の属人化が進みます。組織全体として考えると、将来的に非常に大きなリスクを抱えることにもなりかねません。
セールスイネーブルメントでは、人材育成の仕組みを作るなかで、個々がもつ情報を共有します。企業全体で営業力アップを目指せるため、属人化せず、チームで高い営業力を保持しやすくなります。
Webマーケティングの進化に対応するため
Webマーケティングの進化により多くの見込み客を獲得できるようになっても、営業が的確に顧客を取り込めなければ成果にはつながりません。マーケティングの技術力が向上した今だからこそ、営業力アップは急務といえます。
セールスイネーブルメントでは、マーケティング部門と営業部門の関係強化が可能です。情報の共有や連携ができるようになれば、成果の期待度に応じて、営業担当がかける時間の調整も可能に。最大限の成果につなげられるでしょう。
効率よく人材育成をするため
企業にとって人材育成は重要な課題であり、できるだけ効率よく、成果につなげていくのが理想です。セールスイネーブルメントでは、担当者の営業成果や手法の見える化が可能になります。「行きづまった人材を素早くフォローする」「売れるノウハウを共有する」といった方法で、効率化を図れます。
人材育成プログラム別の成果が明らかになれば、どれが効果的なのかは一目瞭然です。結果をもとに、さらにPDCAを回すことで、より効率のよい人材育成につながるでしょう。
費用対効果が明らかになれば、効果の薄い取り組みも明確になります。人材育成にかかる経費の節約効果も見込めるでしょうか。
セールスイネーブルメントは4つのステップで無理なく導入
ここからは、実際にセールスイネーブルメントを導入する際の手順について解説します。4つのステップを意識して行動すれば、無理なくスタートできるでしょう。
1.営業データの収集と整備
セールスイネーブルメントを活用するために、まず必要なのが営業データの収集および整理です。以下のいずれかのシステム導入を検討してみてください。
- ■セールスフォースオートメーション(SFA)
- ■カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)
自動で収集されたデータに管理項目を設定し、情報共有しやすい環境を整備しましょう。作業をスムーズに進めていくためには、マネジメント層の関わりが重要です。トップダウンで指示を出し、進捗や問題点のリアルタイムな管理が可能な環境づくりを行ってください。
2.導入担当者の決定
セールスイネーブルメントの導入には、担当者が必須です。具体的には、以下のようなタスクを担ってもらいます。
- ■営業データ分析
- ■育成プログラムの開発
- ■必要な営業ツールの導入や開発
- ■プログラムの効果検証
- ■経営層との情報共有
担当者は、これらの業務を専任または兼任で行います。自社において何を重視するのかを明らかにしたうえで、必要な要件を満たした人材を確保しましょう。
3.トレーニングプログラムのスタート
分析された営業データをもとに、トレーニングプログラムを開発します。自社の状況や求める成果にあわせて、必要なプログラムを準備しましょう。効果的な施策としては、以下のようなものが挙げられます。
- ■高い成果を出す営業担当の行動パターンをナレッジとして共有する
- ■商談で提示する資料や動画のなかでも成約率の高いものを汎用化・体系化する
- ■営業に必要なスキルを定義し、習得のためにやるべきことを明らかにする
- ■マネージャー層が現場営業のコーチングをする
開発したプログラムは、順次スタートしていきましょう。
4.トレーニング成果の検証とPDCAサイクルの構築
トレーニングがスタートしたら、履歴情報から成果を検証します。実際の営業成果と見比べつつ、実際に効果があったのかどうか判断しましょう。評価については、事前に重要業績評価指標(KPI)を決めておけば、視点が明らかになり成果検証しやすくなります。
分析結果から改善点を明らかにしたうえで、プログラムを修正してください。PDCAを回せば回すほど、より効率的かつ効果的な人材育成プログラムを構築できます。セールスイネーブルメントをスムーズに進めていくためには、経営層の理解が必須です。
ていねいな情報共有のもとでPDCAを回していくことで、求める成果にたどりつきやすくなるでしょう。
セールスイネーブルメントとは何かを理解して効果的な施策を
セールスイネーブルメントとは、営業組織を改善し、強化するための仕組み作りを意味する言葉です。定義や手法を理解したうえで、具体的な取り組みを進めていきましょう。セールスイネーブルメントを活用できれば、企業の営業にまつわるさまざまな課題を解決へと導けます。
営業活動の属人化や営業担当者ごとの能力のばらつきといった悩みを抱えている企業は、ぜひ注目してみてください。セールスイネーブルメントツールの導入を検討するなら、まずは資料請求からスタートするのがおすすめです。