業種によってシングルサインオンの懸念が変わる背景
シングルサインオンとは、一度の認証で複数のサービスへログインできるようにする仕組みです。同じ仕組みでも、利用の形態が業種によって異なるため、生じる課題も変わります。
端末の使われ方の違い
1人1台の端末を使う環境と、複数の担当者が同じ端末を交代で使う環境では、認証の設計が変わります。共有端末では、前の利用者のログイン状態が残らないようにする配慮が必要です。
確認したいのは、一定時間の操作がない場合に自動でログアウトする設定ができるか、利用者を素早く切り替える手段が用意されているかという点です。切り替えのたびに複数の手順が必要になると、現場の業務に影響します。実際の使われ方をサービス提供会社へ伝え、想定される手順を示してもらうと判断しやすくなります。
既存の仕組みとの関係
すでに社内で運用している認証の仕組みがある場合、それを残すのか、置き換えるのか、組み合わせるのかによって設計が変わります。長く使われてきた仕組みほど、連携する業務システムの数も多くなります。
検討の前に、現在どの仕組みで本人確認を行っているか、どのシステムがそこにつながっているかを整理しましょう。図と一覧にまとめておくと、サービス提供会社との相談がスムーズに進みます。既存の仕組みを扱っているベンダーがある場合は、その担当者にも同席してもらうと、双方の条件を確認できます。
金融機関で既存基盤とのすり合わせが必要になる場面
金融分野では、以前から運用している認証の基盤や、外部と切り離されたネットワークが存在する場合があります。
既存の認証基盤との接続
社内に構築された利用者情報の管理基盤があり、業務システムがそこへ問い合わせて本人確認を行っている構成では、新しく導入する仕組みとの役割分担を決める必要があります。どちらを本人確認の起点にするかによって、設定と移行の作業量が変わります。
確認したいのは、既存基盤と連携できるか、連携する場合に必要な条件は何か、情報の同期はどの方向で行うかという点です。移行にともなって既存の設定を変更する必要がある場合は、業務システムへの影響も確認しましょう。判断が難しい場合は、既存基盤を担当するベンダーと新しいサービスの提供会社の双方から回答を得たうえで比較してください。
外部との通信が制限された環境での利用
外部との通信を限定している環境では、クラウド上で提供されるサービスをそのまま利用できない場合があります。通信を許可する範囲や、経路の設計を情報システム部門と検討する必要があります。
確認したいのは、接続に必要な通信先が公開されているか、社内に設置する形態の提供があるか、通信が一時的に途切れた際の動作はどうなるかという点です。監査で求められる記録の要件がある場合は、その項目も選定条件に加えましょう。要件の整理は、監査担当や外部の専門事業者と進めることをおすすめします。
製造業の現場環境で生じる制約
工場や倉庫では、事務所とは異なる条件で端末が使われます。現場の実態を要件へ反映しておくことが大切です。
共有端末での利用に関する課題
製造の現場では、ライン脇に設置した端末を複数の担当者が使う運用があります。交代のたびに時間のかかるログイン手順が必要だと、作業の妨げになる可能性があります。
確認したいのは、カードをかざす方式など短時間で切り替えられる手段に対応しているか、一定時間で自動的にログアウトする設定ができるかという点です。手袋を着用した状態では指紋による認証が使えない場合があるため、現場の作業条件にあう方式を選ぶ必要があります。導入前に現場で試す機会を設けると、実際の使い勝手を確認できます。
ネットワークが分離された環境での利用
生産設備を制御するネットワークを事務系と分離している場合、現場の端末から外部のサービスへ通信できない構成になっていることがあります。この環境では、認証の仕組みへ到達できない可能性があります。
対応としては、通信を許可する経路を限定して設ける方法や、社内に設置する形態を選ぶ方法が検討されます。ただし、分離の方針は情報セキュリティ上の判断にもとづくものであるため、変更する場合は情報システム部門や責任者と協議が必要です。現場ごとに構成が異なる場合は、拠点別に確認を進めましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でシングルサインオンの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
IT企業の運用で生じる論点
自社でサービスを開発する企業では、利用するサービスの数と種類が多く、権限の管理が課題になりやすい傾向があります。
利用サービスが多く管理が広がる場面
開発に使う基盤、検証用の環境、業務用のサービスなど、扱う対象が多岐にわたります。プロジェクトごとに新しいサービスを契約することもあり、全体像を把握しにくくなる場合があります。
整理を進めるには、契約しているサービスの一覧を定期的に更新する仕組みが有効です。誰が契約し、誰が使っているかを記録しておくと、退職や異動の際の対応が進みます。シングルサインオンで一元的に管理できる範囲と、個別に管理が残る範囲を分けて把握しておきましょう。対象外のサービスについては、確認の手順を決めておくことが大切です。
連携以外の経路が残る場面
開発の現場では、画面からのログイン以外に、プログラムから接続するための認証情報が使われる場合があります。こうした情報は、ログイン用の仕組みとは別に管理されることが多く、退職時の対応から漏れる可能性があります。
確認したいのは、そうした認証情報を発行や失効の観点でどう扱うか、記録を残す仕組みがあるかという点です。シングルサインオンの対象にできない部分については、別の管理手順を定め、担当者と確認の頻度を決めておきましょう。開発の担当部門と情報システム部門で役割を整理しておくと、対応の抜けを減らせます。
医療法人の院内環境で生じる制約
医療機関では、診療の継続性が優先されるため、認証の設計にも配慮が必要です。
診療の場面で求められる応答
診察や処置の場面では、端末へ素早くログインできることが求められます。手順が増えると業務の流れに影響する可能性があるため、認証の方式は現場の動きにあわせて選ぶ必要があります。
確認したいのは、カードや生体情報を使った方式に対応しているか、電子カルテの提供事業者が推奨する構成と組み合わせられるかという点です。緊急の場面で通常の手順を使えない場合の対応も、事前に決めておく必要があります。院内の担当者や電子カルテのベンダーと一緒に、運用の手順まで含めて検討してください。
認証の仕組みが利用できない場合の備え
認証をまとめると、その仕組みが利用できない状態になった際に、複数のシステムへログインできなくなる可能性があります。診療を継続する必要がある環境では、この点への備えが欠かせません。
確認したいのは、緊急時に個別のログインへ切り替えられるか、その手順を誰が実行するか、記録は残るかという点です。手順を文書にまとめ、関係する部署が参照できる場所に保管しておきましょう。あわせて、サービス提供会社の稼働状況の公開方法と、障害時の連絡手段も確認しておくことをおすすめします。
業種の事情に対応したいシングルサインオン
既存の認証基盤や共有端末での利用など、業種によって前提が異なります。構成を相談したい製品を集めました。
Secioss Access Manager Enterprise(SAME)
- シングルサインオンであらゆるサービスに連携
- FIDO認証や証明書認証などの多要素認証で認証を強化
- 柔軟なルール設定が可能なアクセス制御機能を搭載
株式会社セシオスが提供する「Secioss Access Manager Enterprise(SAME)」は、社内外のシステムへの認証をまとめて扱うシングルサインオンの製品です。社内で稼働している基盤を含めた構成を検討できるため、既存の仕組みを残したまま整えたい場合の材料になります。役割分担と情報の同期方法を確認しておきましょう。
AccessMatrixUSO
- IBMiシリーズ、AS/400にも対応!対象アプリを選ばずSSOを実現!
- 対象アプリ、ネットワークの設定変更は一切不要!
- らくらく無料トライアル!お客様にはPCをご用意いただくだけ!
株式会社ハイ・アベイラビリティ・システムズが提供する「AccessMatrixUSO」は、社内システムを含めた認証をまとめて扱うシングルサインオンの製品です。既存の業務システムと組み合わせる構成を想定した作りになっています。対応できるシステムの条件を、現在の構成を伝えたうえで確認するとよいでしょう。
AXIOLE
- ネットワーク認証に必要なスキーマ構築済みの認証アプライアンス
- LDAP/RADIUS認証に対応し様々なネットワーク機器から認証が可能
- 「時間」や「場所」を考慮した、より厳密な複合認証が可能
株式会社ネットスプリングが提供する「AXIOLE」は、社内の利用者情報と認証をまとめて扱う製品です。アカウントの管理と認証の仕組みを一つの基盤で運用でき、社内システムを含めた認証の整備を検討する際の選択肢になります。
IceWall SSO (日本ヒューレット・パッカード合同会社)
- 豊富な実績に基づく信頼性
- 安心の国内サポート
- 高品質、高性能、高可用性
シングルサインオンに関するFAQ
業種別のシングルサインオン導入について、よく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1: 既存の認証基盤を残したまま導入できますか?
- 連携できる場合があります。どちらを本人確認の起点にするか、情報の同期はどの方向で行うかによって設計が変わるため、双方のベンダーへ確認して比較しましょう。
- Q2: 共有端末でも利用できますか?
- 利用者を素早く切り替える手段や、一定時間で自動的にログアウトする設定に対応しているかを確認してください。現場の作業条件にあう認証方式を選ぶことも大切です。
- Q3: 外部との通信が制限された環境でも導入できますか?
- 接続に必要な通信先を限定して許可する方法や、社内に設置する形態を選ぶ方法があります。通信の方針は情報システム部門と協議したうえで検討してください。
- Q4: 緊急時にログインできなくなった場合はどうしますか?
- 個別のログインへ切り替える手順を用意し、実行する担当者と記録の残し方を決めておきましょう。手順は関係部署が参照できる場所に保管しておくと安心です。
まとめ
シングルサインオンの導入で業種ごとに生じる懸念は、端末の使われ方、既存の仕組みとの関係、通信の制約、緊急時の備えという観点から整理できます。金融では基盤との役割分担、製造では現場の作業条件、IT企業では対象外の認証情報、医療では診療継続への配慮が焦点です。現場の実態を整理したうえで、複数の製品資料を取り寄せて比較検討を進めてください。


