導入後に想定とずれが生じる背景
シングルサインオンとは、一度の認証で複数のサービスへログインできるようにする仕組みです。効果の大きさは、対象にできる範囲と運用の設計によって変わります。
対象にできる範囲を確認する
連携できるのは、対応する方式を備えたサービスに限られます。社内で稼働している古い業務システムや、連携に対応していないサービスは対象外となり、個別のログインが残ります。導入前に、社内の利用サービスを一覧にして対応状況を確認しましょう。
一覧には、サービス名、利用者数、対応する方式、契約の更新時期を記載すると検討に役立ちます。対象外のサービスが多い場合、期待できる効果はその分小さくなります。代替の手段があるか、将来的に対応予定があるかをサービス提供会社へ確認したうえで、導入の判断材料としてください。
導入の目的を関係者で共有する
目的が関係者の間で異なると、完了後の評価も分かれます。情報システム部門は管理の効率化を、利用者は操作の手間の軽減を、経営層は監査への対応を期待しているという状態は珍しくありません。
着手の段階で、解決したい課題と、完了時に確認する項目を文書にしておきましょう。アカウント登録にかかる時間、問い合わせの件数、権限一覧の作成にかかる工数といった項目を挙げ、導入前の数値を記録しておくと比較ができます。数値で示せると、追加の投資を検討する際の説明もしやすくなります。
アカウント管理の属人化が残る理由
新しい仕組みを導入しても、管理の状態が変わらないことがあります。背景には、機能とは別の要因があります。
既存の運用をそのまま持ち込んだ場合
現在のアカウント情報をそのまま移行すると、実態のないアカウントや、必要以上の権限が付与されたままの状態も一緒に引き継がれます。結果として、把握しにくい状況が新しい環境でも続く可能性があります。
避けるには、移行を棚卸しの機会として活用しましょう。現在のアカウント一覧を出力し、最終のログイン日時や所属と照らして利用実態を確認します。判断がつかないものは関係部署へ照会する期間を設けてください。件数が多い場合は、扱う情報の重要度が高いサービスから着手し、段階的に進める方法が現実的です。
記録を残す手順が整っていない場合
設定変更の履歴が自動で残る機能があっても、なぜその権限を付与したかまでは記録されません。依頼者と目的が分からないと、後から見直す判断ができず、権限が積み重なる状態に戻ります。
導入とあわせて、申請の様式を整えることをおすすめします。依頼者、対象のサービス、必要とする理由、想定する利用期間、承認者を記入する欄を設け、システム側の履歴と対応づけて保管しましょう。特定の担当者だけが内容を把握する状態を避けるため、複数人が参照できる場所に保管してください。
個別ログインからの移行でつまずく原因
従来の方法から切り替える過程では、利用者と管理者の双方に影響が及びます。計画の立て方が結果を左右します。
並行期間の扱いが決まっていない場合
すべてのサービスを同時に切り替えられるとは限らず、一定期間は新旧の方法が並存します。この期間の扱いを決めておかないと、利用者がどちらの方法を使えばよいか分からず、問い合わせが増える可能性があります。
対策としては、サービスごとに切り替え時期を決めた計画を作り、利用者へ事前に案内する方法が有効です。切り替え後は従来の方法を使えないようにするのか、当面は両方を残すのかも明記しましょう。従来の方法を残す場合、いつまで残すかという期限も決めておくと、移行が滞りにくくなります。
利用者への案内が足りない場合
初回の登録手続きや、認証を強める仕組みの設定は、利用者自身が行う必要がある場合があります。手順が伝わっていないと、開始直後に問い合わせが集中する可能性があります。
準備としては、画面の図を含む手順書を用意し、対象者へ事前に配布する方法が挙げられます。一部の部署で先行して開始し、寄せられた質問をもとに資料を整えてから全社へ広げると、対応の負担を分散できます。問い合わせ窓口の体制と、開始時期の設定もあわせて計画へ含めてください。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でシングルサインオンの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
パスワードの使い回しが減らない理由
導入後も同じパスワードが使われ続ける場合、対象範囲と運用ルールの両面から確認します。
対象外のサービスが残っている場合
連携できないサービスについては、従来どおり個別のIDとパスワードが必要です。対象外のサービスが多いほど、利用者が管理するパスワードの数は減りません。この部分は仕組みの導入だけでは解決しにくい領域です。
対応としては、対象外のサービスを一覧にし、それぞれの扱いを決める方法があります。パスワードを安全に保管する仕組みを併用する、利用を段階的に終了する、対応する製品へ切り替えるといった選択肢が考えられます。優先順位は、利用者数と扱う情報の重要度から判断するとよいでしょう。
認証の入り口のルールが定まっていない場合
入り口となるパスワードの条件が緩いままだと、そこで同じパスワードが使われる可能性があります。文字数や種類の条件、変更の頻度をどう設定するかは、運用ルールとして決める必要があります。
確認したいのは、条件を管理者側で設定できるか、どの項目まで指定できるかという点です。あわせて、複数の要素を組み合わせた認証を併用すると、パスワードだけに頼らない構成を検討できます。ただし、条件を厳しくしすぎると利用者の負担が増え、別の問題につながる可能性があるため、業務の実態を踏まえて決めてください。
ログインが集中する時間帯の応答
始業時刻など特定の時間帯にアクセスが集まると、ログインまでの待ち時間が長くなる可能性があります。
応答が遅くなる要因を確認する
待ち時間には、サービス側の処理、社内の回線状況、連携先サービス側の応答といった複数の要素が関係します。原因を一方に限定せず、時間帯や対象者の範囲から切り分けを進めましょう。
確認の起点になるのは、影響が全社に及んでいるか一部の拠点に限られるか、特定のサービスへのログインだけで起きているかという点です。拠点が限られる場合は回線の状況、特定のサービスだけの場合は連携先の状態が関係している可能性があります。記録の見方を導入時に把握しておくと、状況を確認しやすくなります。
導入前に確認しておきたい項目
選定の段階で、想定される同時利用の人数と時間帯を伝え、対応の考え方を確認しましょう。稼働状況が公開されているか、遅延が生じた際にどのような手段で情報が提供されるかも確認項目です。
あわせて、試用の機会に一定人数で同時にログインする確認を行う方法もあります。実施する際は、業務への影響が出ない時間帯を選び、情報システム部門と調整してください。確認した結果は記録に残し、導入後に状況が変わった際の比較に使えるようにしておきましょう。
移行の進め方を相談したいシングルサインオン
個別のログインから切り替える際は、対象範囲と並行期間の設計が要点になります。導入支援まで含めて確認したい製品を紹介します。
IIJ IDサービス
- 超図解マニュアルと直感的・シンプルなUIで導入・運用がカンタン
- デバイス証明書認証やFIDO2認証など、さまざまな認証機能に対応
- 複数の国内DCで稼働する万全のセキュリティ体制
株式会社インターネットイニシアティブが提供する「IIJ IDサービス」は、社内外のサービスへのログインをまとめるシングルサインオンのクラウドサービスです。利用者情報の管理と認証を一つのサービスで扱えます。国内の事業者による提供のため、移行の手順や作業分担を日本語で相談できる点も検討の材料になります。
Gluegent Gate(グルージェント ゲート)
- 連携サービスとのシングルサインオン設定で利便性を向上
- 連携サービスのIDを一元管理することで管理者の負荷を軽減
- 多要素認証、アクセス制限をサービスごとに自由に組み合わせ可能
サイオステクノロジー株式会社が提供する「Gluegent Gate(グルージェント ゲート)」は、シングルサインオンとID管理を行うクラウドサービスです。対象とするサービスを順に増やす形で運用を広げられるため、段階的な切り替えを検討する際の選択肢になります。設定作業をどこまで依頼できるかを確認しておきましょう。
SeciossLink(セシオスリンク)
- シングルサインオンであらゆるサービスに連携
- IDの一元管理で業務効率化
- FIDO認証や証明書認証などの多要素認証で認証を強化
株式会社セシオスが提供する「SeciossLink(セシオスリンク)」は、クラウド型のシングルサインオンおよびID管理のサービスです。利用者の情報を集約して管理し、複数のサービスへのログインをまとめられます。既存のアカウント情報をどう引き継ぐかを、移行の計画とあわせて確認するとよいでしょう。
サテライトオフィス・シングルサインオン (株式会社サテライトオフィス)
- 7,000社以上の導入実績を誇る!( Microsoft 365版含む)
- SAML承認による外部システムとの連携も可能!
- クライアント証明書機能やセキュアブラウザ機能も無料!
シングルサインオンに関するFAQ
シングルサインオンの導入でつまずきやすい点について、よく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1: 現在のアカウント情報をそのまま移行してよいですか?
- 作業は早く進みますが、実態のないアカウントや過剰な権限も引き継がれます。移行を棚卸しの機会として活用し、利用実態を確認したうえで移す内容を選ぶことをおすすめします。
- Q2: 全社を一度に切り替えるべきでしょうか?
- 一部の部署で先行して開始し、寄せられた質問をもとに案内資料を整えてから広げる進め方のほうが、問い合わせの集中を抑えられます。繁忙期を避けた時期の設定も検討してください。
- Q3: 連携できないサービスはどう扱えばよいですか?
- 一覧にしたうえで、パスワードを安全に保管する仕組みの併用、利用の段階的な終了、対応製品への切り替えといった選択肢を検討します。利用者数と情報の重要度から優先順位を決めましょう。
- Q4: 同時ログインの影響は導入前に確認できますか?
- 想定人数と時間帯を伝えて対応の考え方を確認するほか、試用の機会に一定人数で同時にログインする確認を行う方法があります。実施時期は情報システム部門と調整してください。
まとめ
シングルサインオンの導入が想定とずれる背景には、対象にできる範囲の認識、移行の進め方、運用ルールの整備状況、集中時の応答という要素があります。属人化を避けるには申請と記録の様式を整え、移行では並行期間の扱いと案内の準備が有効です。導入前の数値を記録しておくと効果の確認もしやすくなります。自社の条件を整理したうえで、複数の製品資料を取り寄せて比較検討を進めてください。


