業種によって懸念が変わる背景
XRとは、現実に情報を重ねるAR、仮想の空間を体験するVR、両者を組み合わせるMRをまとめた呼び方です。使う場所と使う人によって、必要な条件が変わります。
使用する環境の違い
屋内の落ち着いた場所で使う用途と、稼働中の設備の近くで使う用途では、求められる条件が異なります。明るさ、騒音、通信の届き方、作業中の姿勢といった要素が、機器の選定に影響します。
検討の前に、実際に使う場所を訪れて条件を確認しましょう。日差しの強さ、通信が届くか、装着したまま安全に移動できるかといった点を見ます。可能であれば、その場所で試用の機会を設けると、事務所での確認では気づかない課題が見えてきます。
利用する人の状況の違い
従業員が業務として使う場合と、顧客や生徒に体験してもらう場合では、事前の説明にかけられる時間が変わります。初めて機器に触れる人が多い環境では、手順の分かりやすさが利用の可否を左右します。
整理の際は、利用者の属性と、説明にかけられる時間を書き出しましょう。付き添う担当者を配置できるか、利用者だけで進められる必要があるかによって、求める作りが変わります。年齢や体調への配慮が必要な場合は、その条件も要件へ含めてください。案内の資料をどこまで用意する必要があるかも、この段階で見込んでおきましょう。
製造業の現場で定着しない場面
導入したものの現場で使われなくなる背景には、環境と作業の流れに関する要因があります。
装着したまま作業できない場面
保護具と併用できない、視界が狭くなって足元が見えにくい、重さが負担になるといった理由で、作業中の装着が続かない場合があります。安全面での懸念があると、現場の判断で使用が止まることもあります。
確認したいのは、着用している保護具と併用できるか、装着したまま周囲を確認できるか、連続して装着できる時間の目安はどの程度かという点です。現場の作業者に試用へ参加してもらい、実際の作業の流れの中で試すことが有効です。安全を担当する部門にも、早い段階で確認を依頼しましょう。使用してよい場所と、使用を避ける場所を決めておくと、現場での判断もそろいます。
内容が現場の手順と合わない場面
表示される手順が実際の作業と細かい点で異なると、現場では使われなくなります。設備の型番や配置が拠点ごとに違う場合、共通の内容では対応しきれないこともあります。
対応としては、現場の担当者が内容の作成や修正に関われる仕組みを検討しましょう。確認したいのは、拠点ごとに内容を分けられるか、部分的な修正が容易か、更新した内容をすぐ配信できるかという点です。作成した内容を現場で確認してもらう工程を、運用へ組み込むことも大切です。設備の更新や手順の変更があった際に、誰が内容を直すかも決めておきましょう。
不動産業でVR内見が使われない場面
顧客に体験してもらう用途では、利用のきっかけと手軽さが活用を左右します。
閲覧までの手順が多い場面
閲覧するために専用のアプリケーションを導入する必要がある、会員登録が求められるといった手順があると、途中で離脱する可能性があります。顧客が自分の端末から手軽に見られる形が望まれます。
確認したいのは、端末の画面から直接閲覧できるか、案内のリンクから移動できるか、読み込みにかかる時間はどの程度かという点です。実際に自社の回線環境と、一般的な通信環境の両方で閲覧を試してみましょう。物件ページへ組み込める形かも、既存のサイトを担当する部門と確認してください。案内する際の文面や導線も、営業の担当者と一緒に整えておくと利用が進みます。
作成が追いつかない場面
物件の数が多い場合、撮影と公開の作業が追いつかず、一部の物件しか対応できない状態になる可能性があります。作成にかかる時間と体制が、活用の広がりを決めます。
確認したいのは、1件あたりの撮影から公開までの所要時間、必要な機材と技能、複数の担当者で分担できるかという点です。撮影を外部へ依頼する場合の費用と期間も確認しましょう。全物件に対応するのか、条件を決めて絞るのかという方針も、あらかじめ整理しておくと運用が定まります。閲覧の状況を確認できる機能があれば、対応する物件を選ぶ際の判断材料にもなります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でXRシステムの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
医療機関の訓練運用で生じる場面
手技の訓練に使う場合、内容の正確さと運用の管理の両方が求められます。
内容が実際の手順と合わない場面
既製の教材を使う場合、その手順が自院の方針と異なることがあります。使用する器材や術式が違うと、訓練の内容として適さない可能性があります。
確認したいのは、教材の監修について説明を受けられるか、自院の手順にあわせて調整できるか、更新の頻度はどの程度かという点です。調整が必要な場合の費用と期間も確認しましょう。導入の目的と、訓練で何を身につけてもらうかを、教育を担当する部門と整理してから選定を進めてください。自院で内容を編集できる範囲があるかも、あわせて聞いておくとよいでしょう。
実施の管理が難しくなる場面
誰がどの内容をどこまで実施したかを把握できないと、訓練の計画を立てにくくなります。機器を共有して使う場合、記録が個人と結び付かない可能性もあります。
確認したいのは、利用者ごとに記録を残せるか、実施の状況を一覧で確認できるか、結果を外部の仕組みへ渡せるかという点です。共有して使う場合は、機器の消毒方法や、顔に触れる部分の扱いもあわせて確認しましょう。夜間や休日にも実施する環境では、機器の保管場所と管理の担当も決めておく必要があります。訓練の記録を人事や教育の仕組みへ渡せるかも、あわせて確認しておきましょう。
教育機関で再生に支障が出る場面
授業で一斉に使う場合、機器の台数と通信の環境が課題になります。
同時利用で読み込みが進まない場面
多数の機器が同じ時間に内容を読み込むと、通信に負荷が集中します。授業の時間内に開始できない、途中で止まるといった状況が生じる可能性があります。原因は機器側だけでなく、校内の通信環境にも左右されます。
確認したいのは、内容をあらかじめ機器へ保存しておけるか、必要となる通信の条件、同時に使える台数の目安という点です。あらかじめ保存しておける仕組みであれば、授業中の通信への依存を減らせます。実際に使う教室で、想定する台数を使った確認を事前に行いましょう。校内の通信を管理する担当者にも、実施の予定を伝えておくと調整が進みます。
準備と管理が負担になる場面
授業のたびに機器を配布し、充電し、内容を更新する作業は、教員にとって負担になります。準備に時間がかかると、活用の機会が減る可能性があります。
確認したいのは、まとめて充電や更新ができる仕組みがあるか、機器の状態を一覧で確認できるか、利用の状況を教員が把握できるかという点です。あわせて、生徒の年齢に応じた使用時間の目安も確認しましょう。体調に影響が出た場合の対応と、利用を希望しない生徒への代替手段も、授業の設計に含めてください。保護者への事前の案内が必要かどうかも、学校の方針とあわせて確認しておきましょう。
使う場所の条件から選ぶXRシステム
工場や店舗、オフィスなど、対象とする場所によって適した形は変わります。実際の環境で確かめておきたい製品を集めました。
Tours
- 360度空間を歩き回り企業文化を体験的に伝達
- クリック操作で社員紹介やクイズを組み込める
- バーチャル見学からシームレスにエントリーへ誘導
株式会社Toursが提供する「Tours」は、360度の高精細な映像で空間を再現する採用向けのサービスです。撮影する場所の明るさや広さによって見え方が変わるため、実際に公開したい場所を伝えて相談するとよいでしょう。パソコンとスマートフォンのどちらからも閲覧できます。
RealWear (株式会社電巧社)
- 100dBの騒音下でも両手を塞がずに作業を継続できる音声操作。
- IP66防塵・防水、耐衝撃、高堅牢設計で過酷な現場に対応。
- 高画質映像を共有し、遠隔指示や技術継承を支援。
AceReal (サン電子株式会社)
- スマートグラス・PCブラウザで遠隔支援。
- 複数スマートグラスで同じ操作感。
- 端末IDで簡単接続、通信環境に応じ通話品質を自動調整。
AR作業支援ソリューション (サイバネットシステム株式会社)
- 作業対象に合わせ手順やノウハウをARで自動表示
- 写真や数値入力で工程記録、トレーサビリティを確保。
- 多言語・遠隔サポートで教育・支援に活用。
XRシステムに関するFAQ
業種別のXRシステム導入について、よく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1: 現場で使えるかどうかはどう確認しますか?
- 実際に使う場所で試用の機会を設ける方法が確実です。保護具との併用や周囲の確認のしやすさについて、現場の作業者と安全を担当する部門にも見てもらいましょう。
- Q2: 顧客に専用のアプリケーションを入れてもらう必要がありますか?
- 端末の画面から直接閲覧できる形の製品もあります。閲覧までの手順が少ないほど利用されやすいため、実際の通信環境で試して確認してみてください。
- Q3: 教材の内容は自院の手順にあわせられますか?
- 調整の可否と、その費用や期間は製品によって異なります。監修の体制についても説明を受けたうえで、教育を担当する部門と要件を整理しましょう。
- Q4: 授業で一斉に使っても問題ありませんか?
- 通信の環境に左右されます。内容をあらかじめ機器へ保存しておける仕組みがあるかを確認し、実際に使う教室で事前に確認することをおすすめします。
まとめ
XRシステムの導入で業種ごとに生じる懸念は、使用する環境、利用する人の状況、内容の正確さ、準備と管理の負担という観点から整理できます。製造業では安全と手順の一致、不動産では閲覧の手軽さと作成の体制、医療では監修と記録、教育では通信と準備が焦点です。実際に使う場所での確認を計画へ含め、複数の製品資料を取り寄せて比較検討を進めてください。

