業種でXRシステムの要件が変わる理由
XRとは、現実に情報を重ねるAR、仮想の空間を体験するVR、両者を組み合わせるMRをまとめた呼び方です。用途によって適した方式が変わるため、まず何を実現したいかを整理しましょう。
使う方式と機器の違い
作業をしながら手順を確認したい場合は、現実の視界に情報を重ねる方式が向きます。空間全体を再現して体験したい場合は、視界を覆う機器を使う方式が選ばれます。手元の端末の画面を通して見る方式であれば、専用の機器を用意せずに始められる場合もあります。
検討の前に、誰がどの場面で使うかを書き出しましょう。両手を使う作業中なのか、腰を据えて体験するのか、移動しながらなのかによって適した機器が変わります。機器の重さや装着時間の目安、視力の矯正が必要な人への対応もあわせて確認してください。
コンテンツの作り方の違い
表示する内容をどう用意するかも、業種によって異なります。既存の設計データを取り込んで使う場合と、撮影した映像を使う場合、ゼロから作成する場合では、必要な作業と体制が変わります。
確認したいのは、コンテンツを自社で作成できる仕組みがあるか、作成を依頼できるか、既存のデータを取り込めるかという点です。継続して内容を更新する予定があるなら、自社で編集できる仕組みが必要になります。作成にかかる期間と費用も、あわせて確認しておきましょう。
製造業と建設業のXRシステム要件
現場で作業をしながら使う業種では、装着したまま扱える設計と、設計データとの連携が論点になります。
製造業で確認したい条件
設備の保守や組み立ての手順を確認する用途では、両手を使える状態で情報を見られることが求められます。手順書を目の前に表示し、音声や視線で操作を進められる仕組みが検討されます。遠隔から熟練者が指示を出す使い方もあります。
確認したいのは、工場の環境で使える仕様か、保護具と併用できるか、通信の状況が悪い場所でも動作するかという点です。あらかじめ内容を機器へ保存しておける仕組みがあれば、通信が届きにくい場所でも利用できます。設計データを取り込んで表示できるかも、機種ごとに確認しましょう。
建設業で確認したい条件
施工前の確認や、現場での出来形の確認に使う用途では、設計データを実際の空間へ重ねて表示する精度が重要になります。位置を合わせる方法と、その手間が使い勝手を左右します。
確認したいのは、扱える設計データの形式、データの大きさに制限があるか、屋外での使用に対応しているかという点です。日差しの強い環境では表示が見えにくくなる場合があります。あわせて、複数人が同じ表示を共有できるか、確認した内容を記録として残せるかも見ておきましょう。
不動産業と小売業のXRシステム要件
顧客に体験してもらう用途では、専用の機器を用意せずに使えるかが検討の中心になります。
不動産業で確認したい条件
物件を遠隔で見てもらう用途では、顧客が自分の端末から手軽に閲覧できることが求められます。専用の機器や事前の準備が必要だと、利用のきっかけが減る可能性があります。
確認したいのは、撮影から公開までの手順、撮影に必要な機材、公開したページを既存のサイトへ組み込めるかという点です。物件数が多い場合は、作成にかかる時間と費用が運用を左右します。閲覧の状況を確認できる機能があれば、どの物件が関心を集めているかの把握にも使えます。間取り図との連動や、説明を追加できるかもあわせて確認しましょう。
小売業で確認したい条件
商品を身に着けた状態を確認してもらう用途では、商品の見え方の再現度と、扱える商品数が論点になります。1点ずつデータを用意する必要がある場合、品揃えが多いほど作業量も増えます。
確認したいのは、商品データの作成方法と1点あたりの所要時間、既存の商品情報と連携できるか、店頭と自宅の両方で使えるかという点です。あわせて、利用者の情報をどこまで取得するか、その扱いをどう説明するかも整理が必要です。撮影した画像を扱う場合は、保存の方針を法務の担当者と確認してください。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でXRシステムの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
医療機関と教育機関のXRシステム要件
訓練や学習に使う用途では、内容の正確さと、複数人での利用に耐える運用が求められます。
医療機関で確認したい条件
手技の訓練に使う場合、内容が実際の手順と一致していることが前提になります。監修の体制や、内容を更新する仕組みがあるかを確認しましょう。既製の教材を使うか、自院の手順にあわせて作成するかによっても、必要な体制が変わります。
確認したいのは、教材の監修について説明を受けられるか、訓練の記録を残せるか、複数名の実施状況を管理できるかという点です。院内で使う場合は、機器の消毒方法や、共有して使う際の衛生管理も検討が必要です。導入の目的と評価の方法を、教育を担当する部門と整理してから選定を進めてください。
教育機関で確認したい条件
授業で使う場合、一度に多くの生徒が利用するため、機器の台数と管理の方法が課題になります。使用後の充電や保管、内容の配信をどう行うかも運用の要点です。
確認したいのは、複数の機器へまとめて内容を配信できるか、利用の状況を教員が確認できるか、機器の管理を支援する仕組みがあるかという点です。あわせて、利用者の年齢に応じた注意事項も確認しましょう。機器の使用について推奨される年齢や、連続して使用する時間の目安が示されている場合があります。授業の設計にこれらを反映してください。
IT企業の用途と業種別の整理
自社で製品を開発する企業では、作り込みの自由度が選定の中心になります。
IT企業で確認したい条件
製品の試作や検証に使う場合、標準の機能だけでなく、自社で開発した内容を組み込めるかが重要になります。開発に使う環境や、対応する機器の種類を確認しましょう。
確認したいのは、開発向けの資料が公開されているか、外部のプログラムと接続する手段があるか、検証用の環境を用意できるかという点です。あわせて、対応する機器が今後も提供され続けるかという見通しも確認しておきましょう。試作の段階から特定の機器に依存すると、後から変更しにくくなる可能性があります。複数の機器で動作させる想定があるなら、その対応範囲もあわせて確認しておきましょう。
業種ごとの確認項目を整理する
下表は、業種別に優先して確認したい項目をまとめたものです。同じ業種でも用途によって要件は変わるため、検討の起点として活用してください。
| 業種 | 優先して確認したい項目 |
|---|---|
| 製造業 | 両手が使える操作、現場環境への対応、通信が届かない場所での動作 |
| 建設業 | 設計データの形式と容量、位置合わせの方法、屋外での見え方 |
| 不動産業 | 撮影から公開までの手順、機材、既存サイトへの組み込み |
| 小売業 | 商品データの作成時間、商品情報との連携、利用者情報の扱い |
| 医療機関 | 教材の監修、訓練記録の保存、機器の衛生管理 |
| 教育機関 | 複数機器への配信、利用状況の確認、年齢と使用時間の目安 |
| IT企業 | 開発向け資料、接続手段、検証環境、機器の提供見通し |
用途に応じて選ぶXRシステム
現場の作業支援、施設や空間の紹介、研修など、目的によって適した形は変わります。それぞれの用途を得意とする製品を並べました。
Tours
- 360度空間を歩き回り企業文化を体験的に伝達
- クリック操作で社員紹介やクイズを組み込める
- バーチャル見学からシームレスにエントリーへ誘導
株式会社Toursが提供する「Tours」は、360度の高精細な映像で空間を再現し、その場にいるように見て回れる体験を届ける採用向けのサービスです。オフィスや現場の様子を仮想的に探索でき、社員紹介やクイズといった要素を組み込めます。パソコンとスマートフォンのどちらからも閲覧でき、管理画面から内容を編集できます。職場の雰囲気を遠隔で伝えたい用途に向いた構成です。
AR作業支援ソリューション (サイバネットシステム株式会社)
- 作業対象に合わせ手順やノウハウをARで自動表示
- 写真や数値入力で工程記録、トレーサビリティを確保。
- 多言語・遠隔サポートで教育・支援に活用。
Spacely (株式会社スペースリー)
- 初めてでも30分でVRコンテンツが作れる簡単操作!
- 成約率を2倍にも向上させるほどのセールスマーケティング効果!
- 「バーチャル家具」で実際の入居イメージをアピール!
VuforiaStudio (PTCジャパン株式会社)
- CADやアニメを再利用し、AR作業指示を直感的に作成可能。
- IoTデータとAR統合で機器状況を視覚化。
- マルチデバイス対応、クラウド・オンプレミス展開可能。
XRシステムに関するFAQ
業種別のXRシステム選定について、よく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1: 専用の機器は必ず必要ですか?
- 用途によって変わります。手元の端末の画面を通して見る方式であれば、専用の機器を用意せずに始められる場合があります。想定する使い方を伝えて確認しましょう。
- Q2: 既存の設計データをそのまま使えますか?
- 扱える形式と容量の制限によって変わります。現在使用しているデータの形式とおおよその大きさを伝えて、取り込みの可否と必要な変換作業を確認してください。
- Q3: コンテンツは自社で作成できますか?
- 編集できる仕組みを備えた製品があります。継続して内容を更新する予定があるなら、自社で作成できる範囲と必要な知識を確認しておきましょう。
- Q4: 長時間の使用に問題はありませんか?
- 機器ごとに、推奨される使用時間や年齢の目安が示されている場合があります。休憩を挟む運用とあわせて、利用する場面の設計へ反映してください。
まとめ
業種別にXRシステムを選ぶ際は、使う方式と機器、コンテンツの作り方、利用する環境という3点から整理すると判断しやすくなります。製造業や建設業では現場環境と設計データ、不動産や小売では手軽さと作成の工数、医療や教育では内容の正確さと機器の管理が論点です。IT企業では開発の自由度が中心になります。自社の用途を整理したうえで、複数の製品資料を取り寄せて比較検討を進めてください。

