生体認証システムの連携先と連携方式の全体像
生体認証システムは単体で使うより、既存の仕組みとつなぐことで効果を発揮する場面があります。個別の連携先を検討する前に、連携の目的と代表的な方式の違いを整理し、自社に必要な連携の範囲を明確にしましょう。
物理的なアクセスと論理的なアクセスの違い
生体認証の連携先は、大きく2つに分けられます。1つは扉の解錠やゲートの通過といった物理的なアクセスの管理で、入退室管理システムや勤怠管理システムとの連携が該当します。もう1つはパソコンや業務システムへのログインといった論理的なアクセスの管理です。
物理と論理の両方を1つの製品で扱えるものもあれば、どちらか一方に特化した製品もあります。自社がどちらの用途を優先するのかによって比較すべき製品が変わるため、利用場面を具体的に書き出してから候補を絞り込みましょう。
API・CSV・標準規格による連携方式の違い
システム同士をつなぐ方式には、主にAPI連携、CSVファイルによる連携、標準的な認証規格を使った連携があります。API連携は、あるシステムの機能やデータを別のシステムから直接呼び出す方式で、リアルタイムに近い連携が可能です。
CSV連携はファイルを出力して取り込む方式で、仕組みは単純ですが、反映までに時間差が生じる場合があります。SAMLやOpenID Connectといった標準規格に対応していれば、IDaaSなどとの連携で個別開発を減らせる可能性があります。
入退室管理・勤怠管理と生体認証の連携
生体認証の連携先として検討されることが多いのが、入退室管理と勤怠管理です。どちらも認証した日時と利用者の情報を受け渡す点は共通していますが、求められる即時性やデータの使い方が異なるため、確認すべき点も変わります。
入退室管理システムとの連携で見る点
入退室管理システムと連携する場合は、生体認証の結果を受けて扉の電気錠を制御する仕組みが必要です。生体認証の端末が電気錠を直接制御するタイプと、入退室管理システムの制御盤を経由するタイプがあります。既存設備との組み合わせによって、選択肢が変わる点に注意しましょう。
すでに入退室管理システムを導入している場合は、そのシステムが対応している認証端末のメーカーや機種を確認しましょう。ICカードと生体認証を併用する場合は、同じ利用者の情報を両方で管理できるかも確認が必要です。
勤怠管理システムとの打刻連携で見る点
勤怠管理システムと連携すると、生体認証の結果を出退勤の打刻として記録でき、代理打刻の抑止が期待できます。連携方式には、勤怠管理システムが生体認証端末を直接サポートしている場合と、打刻データをAPIやCSVで受け渡す場合があります。
まず、どの勤怠管理システムとの連携実績があるか、打刻データが反映されるまでの時間を確認しましょう。通信障害時に打刻データを保持し、後から送信できるかも重要です。従業員番号など利用者を特定する項目を両システムでそろえられるかも事前に確認しましょう。
Active DirectoryやIDaaSと生体認証の連携
パソコンや業務システムへのログインに生体認証を使う場合は、社内のアカウント管理の仕組みとの連携が欠かせません。Active Directory、IDaaS、個別の業務システムという3つの連携先ごとに、確認したい点を整理します。
Active Directoryとの連携で確認したい点
Active Directoryとは、Windows環境で社内のユーザーアカウントやパソコンを一元管理するMicrosoftの仕組みです。生体認証システムと連携すると、Windowsへのサインインにパスワードの代わりに指紋や顔を使える場合があります。
ユーザー情報を生体認証システムへ自動で取り込めるか、退職者のアカウントを無効にした際に生体認証側にも反映されるかを確認しましょう。社内サーバで運用するActive Directoryか、クラウドのMicrosoft Entra IDかによっても対応状況は異なります。
IDaaSとの連携とシングルサインオン
IDaaSとは、複数のクラウドサービスのIDをまとめて管理するクラウドサービスです。1回の認証で複数のサービスにログインできるシングルサインオンを提供します。生体認証をIDaaSの認証手段として組み込めば、IDaaSに登録した業務システムへのログインに生体認証を使える可能性があります。
連携方式としては、SAMLやOpenID Connectのほか、パスワードを使わない認証の標準規格であるFIDO2に対応しているかが確認ポイントです。自社が利用しているIDaaSとの接続実績や、設定手順書の有無も比較しましょう。
業務システムのログイン機能との連携
自社で開発した業務システムや、標準規格に対応していない古いシステムのログインに生体認証を使いたいケースもあります。この場合は、生体認証システムが提供する開発キットを使ってシステムに組み込む方法や、ログイン画面への入力を代わりに行う代理認証の機能を使う方法が考えられます。
開発キットを使う場合は開発工数が発生するため、社内の開発体制や外部委託の費用もあわせて見積もりましょう。代理認証の場合は、対応できるアプリケーションの種類を事前に確認しておくことが重要です。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で生体認証の一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
生体認証のAPI連携とCSV出力の柔軟性を比べる
既存製品との連携実績がない場合でも、APIやCSVによるデータ連携が柔軟であれば、自社で連携の仕組みを組める可能性があります。ここでは、APIとCSVそれぞれで柔軟性を判断するための確認項目を紹介します。
APIの公開範囲と仕様書の確認
API連携のしやすさを比べる際は、まずAPIの仕様書が公開されているか、契約前に閲覧できるかを確認しましょう。利用者の登録や削除、認証ログの取得、端末の状態確認など、どの操作をAPIで行えるかは製品によって異なります。
あわせて、APIの呼び出し回数の上限、認証方式、仕様変更時の告知方法も確認したい項目です。APIの利用に追加料金がかかる場合や、上位プランでのみ提供されている場合もあります。料金表とあわせて確認しておくと、後から費用が増えることを避けやすくなります。
CSV出力の項目と自動化の可否
CSV出力が柔軟かどうかは、出力する項目や並び順を選べるか、期間や拠点で絞り込めるか、文字コードや日付の形式を変更できるかで判断できます。取り込み先のシステムが指定する形式にあわせられれば、手作業での加工を減らせます。
定期的にデータを連携したい場合は、決まった時間に自動でCSVを出力し、指定のフォルダやサーバへ保存する機能があるかも確認しましょう。CSVでの一括登録に対応していれば、人事システムからの利用者情報の取り込みにも活用できます。
連携性を前提に生体認証を選ぶ際の進め方
連携を前提に製品を選ぶ場合は、カタログ上の対応表だけで判断せず、要件の整理と事前の検証を段階的に進めることが大切です。導入後の手戻りを減らすために、要件の洗い出しと検証環境でのテストという2つの段階に分けて進め方を紹介します。
連携要件の洗い出しと優先順位づけ
最初に、連携したいシステムの名称とバージョン、やり取りしたいデータの項目、反映までに許容できる時間を一覧にまとめましょう。複数の連携を一度に実現しようとすると費用や期間が膨らむため、必須の連携と、将来的に実現したい連携を分けて優先順位をつけることが重要です。
一覧を資料請求や商談の段階で提供会社に共有すれば、対応の可否や追加費用の有無を具体的に回答してもらいやすくなります。複数の製品に同じ一覧で問い合わせると、回答を横並びで比較できる点もメリットです。
検証環境での事前テスト
候補の製品を絞り込んだら、可能な範囲で検証環境を用意し、実際のデータに近いサンプルで連携を試しましょう。本番環境で試すと既存システムに影響が出るおそれがあるため、提供会社や情報システム部門と相談して安全な方法で進めることが大切です。
検証では、正常に連携できるかだけでなく、異常時の動きも確かめましょう。通信が途切れた場合や不正なデータが含まれた場合にエラーが通知されるか、再送できるかを確認しておくと、運用開始後のトラブルに備えられます。
既存の仕組みとの連携を前提に比べたい製品
Active Directoryとの統合や、自社アプリケーションへの組み込みなど、連携を前提に検討したい生体認証製品を紹介します。
DigitalPersona AD
- 指紋認証と顔認証から選択可能で、顔認証は赤外線カメラに対応
- Active Directory完全統合型で認証ポリシーを徹底
- 記憶認証と所持認証と組み合わせて使用することも可能
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「DigitalPersona AD」は、Active Directoryと統合して使うパソコンの認証強化システムです。Active Directoryと統合して、認証ポリシーを組織全体へ徹底できます。認証方式は指紋認証と顔認証から選べ、パスワードやICカードと組み合わせた多要素の運用も可能です。社内のアカウント管理と生体認証をあわせて運用したい場合に検討したい製品で、オンプレミスのパッケージソフトとして提供されます。
DigitalPersona SDK
- 乾燥指に強い指紋リーダーを使用可能
- 360度どこからでも認証可能な指紋リーダーを使用可能
- 登録時の指の置き方を再現不要な指紋リーダーを使用可能
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「DigitalPersona SDK」は、アプリケーションに指紋認証システムを組み込むための開発キットです。そのため、自社の業務アプリケーションに生体認証を取り入れる際、認証部分をゼロから作り込む負担を抑えやすくなります。乾燥した指に強い指紋リーダーや、360度どの向きからでも認証できる指紋リーダーなどを利用できる点も特徴です。既存システムへ指紋認証を組み込みたい開発者向けの提供形態です。
EdgeFACE
- オフィスや工場のDXを推進するエッジ・オンプレ顔認証システム
- 完全売り切りで1台から導入可能!SDKは無償提供で量産活用可能
- パスワード忘れ・鍵紛失の心配なし!ICカード書き換え作業も不要
イノテック株式会社が提供する「EdgeFACE」は、エッジとオンプレミスで動作する顔認証システムです。SDKが無償で提供されており、量産での活用も可能です。クラウドでの顔認証が使えない環境を想定した製品です。国産の顔認証AIと国産の産業用パソコンメーカーの強みを掛け合わせ、長期の供給と安定稼働を重視しています。パスワード忘れや鍵の紛失の心配がなく、ICカードの書き換え作業も不要です。売り切り型で1台から導入できます。
SmartSESAME PCログオン (株式会社シーイーシー)
- ICカードと生体認証を組み合わせた強固な二要素認証
- ICカードには既存の社員証を利用可能
- 勤怠管理とシングルサインオンがオプションとして提供
KPASクラウド (パナソニック コネクト株式会社)
- 世界最高水準の顔認証精度を実証済み。
- 汎用端末+API連携によるスピーディな導入。
- 入退場管理・勤怠・決済連携など幅広いユースケースに対応。
FaceVOX〜ekyc対応顔認識AI〜 (vizo株式会社)
- お客様の利用環境やシステムに合わせ様々なカスマイズが可能
- 他社のAPIを利用しておらず、自社オリジナルAIモデルを使用
- オンライン電子本人認証(eKYC)の対応でよりセキュリティを強化
AUTH thru (株式会社ロココ)
- 顔認証で手ぶら解錠、ICカード・暗証番号不要。
- 認証ログを自動記録し、管理画面から確認可能。
- 拠点・扉ごとに細かく入退場制限を設定可能。
FaceMe (サイバーリンク株式会社)
- 高精度AIエンジンにより認証精度99.7%を実現
- 多様な環境下で安定した顔認証。
- APIで柔軟なシステム連携
まとめ
生体認証システムの連携性は、連携先と連携方式によって確認すべき点が異なります。入退室管理や勤怠管理では、認証結果の受け渡し方法を確認しましょう。Active DirectoryやIDaaSでは同期範囲と標準規格への対応、独自の業務システムでは開発キットや代理認証の有無がポイントです。
APIの公開範囲やCSV出力の柔軟性も比較材料です。自社の連携要件を整理したうえで、複数の製品を資料請求して比較してみてください。

