与信管理が会社に求められる理由
会社どうしの取引では、商品を先に渡し、代金は後からまとめて受け取る形が多く使われます。この形を掛け取引と呼びます。代金を受け取るまでの間に相手の経営が悪くなると、支払ってもらえない恐れがあります。まずは基本の流れと、判断に使う情報を確認しましょう。
与信管理の一連の流れ
与信管理は、新しい取引先を調べるところから始まります。集めた情報から支払う力を評価し、取引してよい金額の上限を決めます。この上限を与信限度額と呼びます。取引が始まった後も、入金の遅れや相手の状況の変化を見続け、必要に応じて上限を見直します。
代金を受け取り終えるまでが一連の流れです。入金が遅れた場合にどう連絡するか、社内の誰に報告するかも先に決めておく必要があります。調べるところから回収までを一つの流れとして設計しておけば、担当者によって対応がばらつくことを防げます。
判断に使う主な情報
与信の判断では、いくつかの情報を組み合わせます。信用調査会社がまとめた報告書、取引先から受け取る決算書、法務局に登録されている会社の情報、そして自社での取引や入金の記録などです。一つの情報だけで決めると、実際の状態とずれた評価になる恐れがあります。
| 情報の種類 | わかること |
|---|---|
| 信用調査会社の報告書 | 会社の概要や評価点、支払いの様子を、第三者がまとめた形で確認できます。 |
| 決算書 | 売上やもうけ、会社が持っている財産など、お金の状態を数字で確認できます。 |
| 登記情報や官報 | 会社名や役員、住所の変更、法的な手続きの公告といった事実を確認できます。 |
| 自社の取引記録 | これまでの注文金額や入金の遅れの有無など、実際の取引で得た情報を確認できます。 |
情報を集めるときは、かかる費用と得られる正確さのつり合いも考えましょう。取引の金額が小さい相手にすべての調査を行うと、費用が見合わない場合があります。金額の大きさに応じて、調べる範囲を変える方法があります。
与信管理に取り組むメリット
与信管理の効果は、損を防ぐことだけではありません。判断の基準がそろうことで、営業の仕事そのものも進めやすくなります。3つの角度から整理します。
代金を回収できない事態を避けやすくなる
掛け取引では、商品やサービスを渡してから入金までに期間が空きます。この間に相手のお金のやりくりが苦しくなると、代金を受け取れない恐れがあります。回収できなかった金額をもうけで埋めるには、その何倍もの売上が必要になることもあります。
取引を始める前に支払う力を確かめ、上限を決めておけば、損の大きさを一定の範囲に抑えられます。取引が始まった後も入金の遅れを早く見つけられれば、追加の出荷を止めるといった判断を早く下せます。被害を小さくとどめる効果が期待できます。
営業担当者の判断の基準をそろえられる
与信の判断が担当者それぞれの経験にまかされていると、似たような相手でも取引の条件が変わってしまいます。判断した理由が残らないため、後から経緯を確かめることもできません。取引先から条件の違いを指摘される場面も考えられます。
評価する項目と上限の決め方を社内で定めておけば、誰が担当しても近い結論になります。基準を超える案件だけを上の立場の人が判断する形にすれば、確認にかける時間も配分できます。営業担当者にとっても、断る理由を説明しやすくなる利点があります。
取引条件の話し合いを進めやすくなる
評価の結果は、取引の条件を決める材料にも使えます。支払う力に不安が残る相手なら、先にお金を受け取る、一部だけ前払いにする、保証をつけるといった案を示せます。取引そのものを断らずに、条件を調整して進める形です。
判断の理由を示せると、条件を変えたい申し出も説明しやすくなります。相手にとっても、なぜその条件なのかが伝わるため、話し合いが進みやすくなります。取引を続けながらリスクを抑える手段として使えます。
与信管理のデメリットと現場の課題
一方で、与信管理には手間と制約が伴います。負担を知らないまま基準だけを厳しくすると、現場で続かなくなる恐れがあります。ここでは3つの課題を取り上げます。
調べる作業に手間と費用がかかる
信用調査会社の報告書を取り寄せるには、1件ごとに費用がかかります。決算書の中身を読み解く作業にも、ある程度の知識と時間が必要です。取引先が増えるほど、調べて判断する負担は積み上がっていきます。
定期的に見直す場合、そのたびに同じ作業が発生します。担当者が他の仕事と兼ねている場合、見直しが後回しになることもあります。どの取引先をどのくらいの間隔で見直すのかを決め、対象を絞る工夫が欠かせません。
商談の機会を逃す恐れがある
判断に時間がかかると、取引を始めるまでの期間が延びます。その間に他社が先に取引を始めてしまう場面も考えられます。基準を厳しくしすぎると、成長の途中にある会社との取引を見送ることになり、将来の売上の機会を失う恐れもあります。
この課題を抑えるには、金額の小さい取引は簡単な確認で進め、一定の金額を超える場合だけ詳しく調べるという段階分けが役立ちます。急ぎの案件については、いったん低めの上限で始めて後から見直す手順を用意しておく方法もあります。
取引先の情報の扱いに配慮が求められる
与信管理では、決算書や調査会社の報告書など、外部に出せない情報を扱います。見られる人を決めずに共有フォルダに置くと、意図しない持ち出しが起こる恐れがあります。契約で、他社に渡してはいけないと決められている資料もあります。
保管する場所と見られる人を決め、誰がいつ見たかを確かめられる状態にしておきましょう。退職や異動のときに設定を見直す運用も必要です。判断に迷う場合は、社内のシステム担当や法務の担当者に確認する流れを決めておくと安心です。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で与信管理システムの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
与信管理システムを選ぶときの確認項目
調べる作業や見直しの負担を減らす手段として、専用システムが候補に入ります。効果は機能の範囲と自社の体制で変わるため、次の2点を確認しましょう。
扱える情報の範囲と更新の仕組み
製品によって、つなげる信用調査会社や取り込める情報の種類が違います。評価点を取り込むだけのものから、決算のデータを登録して自社で点数をつけられるものまで幅があります。自社が判断に使っている情報を登録できるかを、まず確認しましょう。
取引先の状況が変わったときに知らせが届くかも重要です。評価点の変化や法的な手続きの公告といった情報が届く仕組みがあれば、見直しのもれを減らせます。情報が新しくなる間隔と、知らせを受け取る担当者を複数登録できるかもあわせて確認しておきましょう。
今の業務とのつながりと運用の負担
与信管理は、販売管理や請求の仕事と深く関わります。上限を超える注文が入ったときに知らせを出せるか、入金の遅れを取り込めるかは、効果を左右する点です。つなげられる製品の範囲と、やり取りできる項目を確認しましょう。
つなぐ仕組みが思ったとおりに動かない場合、製品の仕様、社内のネットワーク設定、つなぐ相手のサービスの制限など、いくつもの原因が考えられます。データのやり取りが止まったときに管理者へ知らせが届くか、手動でやり直せるかも確認しておくと、使い始めてからの対応が進めやすくなります。
取引先の状況を確認できる与信管理サービス
調査や審査の負担を抑えたい場合や、回収できない事態への備えを検討する際に候補となるサービスを紹介します。
e-与信ナビ
- 与信判断と与信限度額を、誰でも統一した基準で判断・算出可能
- モニタリング機能による継続的な信用動向チェックが可能
- API連携により、既存システムに柔軟に組み込み可能
リスクモンスター株式会社が提供する「e-与信ナビ」は、取引先の信用に関する情報を確認し、与信の判断を支えるサービスです。企業ごとの評価を参照しながら、社内で定めた基準にもとづく審査を進められます。取引先の状況に変化があった際に知らせる仕組みも備えており、継続的な取引の管理に活用できます。審査の記録が残るため、判断の経緯を後から確認することもできます。
URIHO
- URIHOは「倒産・支払い遅延」も保証対象で使いやすい!
- 審査は最短即日!
- 安心の定額制。かかるのは月額料金だけ!登録は何社でも!
株式会社ラクーンフィナンシャルが提供する「URIHO」は、売掛金の未回収に備える保証型のサービスです。取引先が支払えない状況になった際に、契約の範囲で保証を受けられます。与信の調査を自社で行う負担を抑えつつ、回収できない事態による影響を軽くしたい場合の選択肢になります。保証の対象や上限は契約の内容によって定まるため、取引の状況を伝えて確認するとよいでしょう。
マネーフォワード 掛け払い
- 100%の入金保証で『入金遅延』や『貸し倒れ』リスクを回避
- 高精度な最短1秒の高速与信審査で審査通過99%を実現
- 売り手・買い手用の窓口をそれぞれ設置し、貴社と同じ目線で伴走
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード 掛け払い」は、取引先への請求と回収に関わる業務を代行するサービスです。与信の判断から請求書の発行、入金の確認、未入金への対応までを任せられる構成になっています。回収の業務にかかる工数を抑えたい場合や、掛けでの取引を広げたい場合の選択肢です。対応できる取引の条件は事前に確認しておきましょう。
D&B Hoovers (株式会社東京商工リサーチ)
- 数億件超の企業・人物・ニュースデータを収録。
- 200超の条件で企業を精緻に抽出できるリスト作成機能。
- 企業分析やCRM連携など多彩な機能をワンパッケージで提供。
SCORE LINK (TISI株式会社)
- 従業員サーベイの実施とエンゲージメントスコアリング
- 組織課題の可視化とレポーティング機能
- PDCAサイクルの施策立案支援
与信管理に関するよくある質問
与信管理の進め方についてよく寄せられる疑問をまとめました。社内での検討にお役立てください。
- Q1: 取引の上限額はどのように決めればよいですか?
- 相手の支払う力と、自社が受け入れられる損の大きさの両方から考えます。相手の財産や仕入れの規模を参考にする方法、自社の売上やもうけに対する割合で上限を決める方法があります。業種によって考え方が変わるため、社内で基準を決めて運用しましょう。
- Q2: 今ある取引先も見直す必要はありますか?
- 取引を始めたときの評価がそのまま続くとは限らないため、定期的な確認が求められます。取引金額の大きい相手は年に1回、それ以外は条件が変わった時点で確認するなど、対象と間隔を分ける方法があります。入金の遅れは見直しのきっかけとして扱いましょう。
- Q3: 小さな会社でも与信管理は必要ですか?
- 取引先が少ない場合、1件の未回収が経営に与える影響は大きくなります。すべての相手を詳しく調べる必要はありませんが、取引金額の大きい相手については、登記情報やこれまでの取引記録の確認から始める方法が考えられます。
- Q4: 与信管理はどの部署が担当すべきですか?
- 営業と経理のどちらが中心になるかは会社によって違います。営業が情報を集め、経理や管理の部門が評価と上限の決定を担う分け方が採られる例があります。判断する人と営業する人を分けておくと、基準を保ちやすくなります。
まとめ
与信管理には、代金を回収できない事態を避けやすくなること、営業担当者の判断の基準をそろえられること、取引条件の話し合いを進めやすくなることという良い点があります。一方で、調べる手間と費用、商談の機会を逃す恐れ、取引先の情報の扱いという課題も伴います。取引先の数と1件あたりの金額を確認し、調べる範囲を段階的に分ける設計から始めましょう。製品を比べたい方は、資料請求を活用してみてください。


