企業で保管する文書の種類
文書や書類を作成・管理することは、企業活動において欠かせない業務のひとつです。ビジネス関連の文書は次の2つに大別できます。
保管期間の定めがある「法定保存文書」
法定保存文書とは、法律によって一定期間保存することが決められている文書のことです。文書の種類に応じて法定保存期間が1年~30年と規定され、永続的に保存しなければならないものも多くあります。また会社や個人にとって重要な文書の場合、法定保存期間を超えて保管されることもあります。
保管期間の定めがない文書
法定保存文書以外の文書には、以下のようなものがあります。
- ・特許関係の書類
- ・商品の製造、販売データ
- ・品質管理データ
- ・顧客リストや契約書などのバイタルレコード
- ・各種マニュアル
- ・企業コンプライアンスに関する書類
法定保存文書以外の文書は、企業内で保管の可否や保存期間などを決めるのが一般的です。業務を遂行するうえで重要な書類や予期せぬ事態を解決するために必要な書類、企業理念や社風に関わる書類など、重要度に応じた保管ルールを文書ごとに決めましょう。
ちなみに、文書の保管ルールを部署ごとに設定するのはおすすめしません。部署ごとでルールが異なると、いざ情報を取得しようとした時に必要な書類が揃わなくなる可能性があります。法定保存文書以外の文書を保管する際は、組織全体でルールを統一化しましょう。
文書保管で生じる義務とは
ここでは文書保管で生じる義務について解説します。
法律にのっとり行う義務
法定保存文書の保管は、各種法律によって一定期間の保存が義務付けられています。法定保存文書と各種法律の対応関係は以下のとおりです。
- 国税通則法:給与所得者の扶養控除(等)申告書、給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者控除申告書、源泉徴収票
- 労働安全衛生法:一般健康診断個人票、安全委員会議事録・衛生委員会議事録・安全衛生委員会議事録
- 雇用保険法:雇用保険の被保険者に関する書類、雇用保険に関する書類
- 労働基準法:労働者名簿、賃金台帳、就業規則、出勤簿、雇入・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要書類
- 健康保険法:健康保険に関する書類
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律:労働保険の徴収に関する書類
- 労働者災害補償保険法:労災保険に関する書類
- 厚生年金法:厚生年金保険に関する書類
- 証券取引法:有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書、臨時報告書など
- 消費税法:課税仕入関係書類、資産譲渡関係書類、財務関係書類
- 商法:会計帳簿(日記帳、仕訳帳、総勘定元帳)、賃貸対照表、付属明細書、株主名簿、社債原簿、株主総会議事録、取締役会議事録
- 法人税法、所得税法:契約書、仕訳帳、現金出納帳、決算に関する書類、経費帳、固定資産台帳、売掛帳、棚卸表、損益計算書、注文書
データの種類に応じた保管を行う義務
帳簿類は電子帳簿保存法によって、以下の3つの方法を使った電子保存が認められています。
- 1.電子帳簿等保存
- 2.スキャナ保存
- 3.電子取引
電子帳簿保存法とは、紙での保存が原則とされている帳簿類でも、一定の要件を満たせば電子保存できることを定めた法律です。ただし電子取引上で生じた帳簿類については、令和4年1月1日から電子保存することが義務付けられています。メールやWebサイトなどの電磁的媒体上で各種帳簿類をやり取りする場合は、必ず電子保存するようにしましょう。
電子保存が義務付けられているのは、電子取引で作成した帳簿類のみです。そのため電子取引以外で作成した帳簿類は、2022年の法改正以降も紙で保存できます。
違反した場合に適用される罰則
法定保存文書は一定期間の管理が義務付けられていますが、法令違反したからといってただちに罰則が適用されることはありません。違反しても税務署から指導や注意を受けるだけなので、現状、罰則についてはそれほど心配する必要はないでしょう。
ただし、法定保存書類の保管不備は青色申告の承認取り消し理由になるため、できるだけ避けた方が無難です。また、事業活動を続けていくと災害や裁判などで特定の書類を提出しなければならない時もあるので、法定保存文書は法定期間しっかりと保管することをおすすめします。特に会計帳簿類は税額控除を受けられるため、ビジネス上のメリットも多いです。
文書の廃棄における義務
保管期間が到来した文書は、基本的に管理者の意思によって自由に処理してもよいとされています。ただし顧客・従業員のプライバシー情報や会社の機密情報などが含まれている可能性もあります。そのため適切な処分・廃棄が大切です。
廃棄する際は、シュレッダーで文書をバラバラにしたり業者に依頼して溶解させたりして、第三者に内容がわからないようにしましょう。シュレッダーを使う場合は、二度と復元できないよう細かく砕くことが大切です。溶解させる場合は、文書の内容を外部に漏らさないような信頼のおける業者を選ぶ必要があります。
法律によって廃棄義務が課されている文書もあります。たとえばマイナンバーが記載されている文書は、保管期間経過後すぐに廃棄しなければなりません。
法律を順守し、適正に文書管理を行おう
文書保管には、法定保存文書を一定期間保管する義務と、データの種類に応じて保管する義務があります。法律にのっとって運用しないと青色申告を取り消されたり、必要に応じて書類を提出できなくなったりするので注意しましょう。
基本的に保管期間が到来した文書は管理者が自由に処理できますが、中にはマイナンバーが記載された文書など、廃棄が義務付けられている書類もあります。法律を順守し、適正に文書管理を行ってください。