企業規模でファイアウォールの選び方が変わる理由
ファイアウォールとは、社内ネットワークと外部の通信を監視し、許可した通信だけを通す仕組みです。同じ役割の製品でも、企業規模によって適した構成は変わります。まずは規模差がどこに現れるのかを押さえておきましょう。
同時接続数と処理性能の違い
従業員数が増えると、社内から外部へ出ていく通信の本数が増えます。ファイアウォールは多数の通信を同時に処理するため、処理できる同時接続数や通信量の上限を超えると、通信が遅くなったり、接続が不安定になったりする場合があります。カタログに記載されたスループットや推奨ユーザー数は、この処理能力の目安です。
ただし、実際の負荷は従業員数だけで決まるわけではありません。Web会議や大容量ファイルの送受信が多い職場では、人数が少なくても通信量は大きくなります。選定時は従業員数に加えて、業務でよく使うアプリケーションの種類も洗い出したうえでベンダーへ相談すると、想定に近い構成を提案してもらいやすくなります。
運用にかけられる人員の違い
小規模な企業では、情報システム専任の担当者を置かず、総務や経理の担当者が兼務しているケースがあります。この場合、細かなルール設定を自社で作り込む製品よりも、初期設定が用意されていて画面から操作できる製品のほうが運用を続けやすくなります。
一方、専任担当者がいる企業では、通信ログの分析や部署ごとの通信ルールの作り分けまで踏み込めます。どこまで自社で運用し、どこからをベンダーや外部事業者に任せるかを先に決めておくと、製品の絞り込みが進みます。設定作業の代行まで含むのか、設定方法の案内までなのかはサービスによって異なるため、契約前に範囲を確認しましょう。
拠点数とネットワーク構成の違い
本社だけで業務が完結する企業と、支店や工場を持つ企業では、守るべき通信の経路が変わります。拠点が複数ある場合は、拠点ごとに機器を置くのか、本社に集約して通信を経由させるのかという設計が必要です。
拠点ごとに機器を置く構成は、拠点内の通信が速くなる反面、設定の統一や機器の台数分の保守が課題になります。集約する構成は管理をまとめやすい一方で、本社側の回線と機器に負荷が集まります。どちらが適しているかは拠点の規模や回線状況によって変わるため、現在の構成図を用意したうえで比較検討を進めてください。
従業員50名までのファイアウォール選定
従業員数が50名までの企業では、機能の多さよりも導入と運用の手間の少なさが判断材料になります。ここでは10名・30名・50名という区切りごとに、確認しておきたいポイントを整理します。
従業員10名規模で確認したいこと
10名前後の企業では、ルーターにファイアウォール機能が含まれている小型の一体型機器や、パソコンごとに導入するソフトウェア型が選択肢になります。専任の担当者がいないことを前提に、初期設定が済んだ状態で届くか、設定を代行してもらえるかを確認しましょう。
費用面では、機器代金だけでなく年間のライセンス費用や保守費用まで含めて比較すると、導入後の想定外の支出を抑えられます。また、機器が故障したときの代替機の手配方法や、その間の通信をどうするかもあわせて聞いておくと安心です。無償のソフトウェア型を業務利用する場合は、ライセンス条件が法人利用に対応しているかを必ず確認してください。
従業員30名規模で確認したいこと
30名規模になると、部署ごとに扱う情報の重要度が分かれてきます。経理や人事が扱うデータと、営業が使う共有フォルダを同じ扱いにしていると、万一の侵入時に影響が広がる可能性があります。部署単位で通信のルールを分けられるかどうかが、この規模での確認項目です。
あわせて、社外から社内システムへ接続する仕組みの有無も検討材料になります。在宅勤務や外出先からのアクセスがある場合、暗号化された経路で接続する機能が製品に含まれているか、別途契約が必要かで費用が変わります。同時に何人まで接続できるかという上限も、製品によって差があるため比較しておきましょう。
従業員50名規模で確認したいこと
50名規模では、通信を許可するかどうかだけでなく、通信の中身を確認する機能が検討対象に入ります。アプリケーション単位で利用を制御する仕組みや、外部から持ち込まれた不正なプログラムを検知する機能を備えた製品は、次世代ファイアウォールと呼ばれます。
この規模では、ログをどこまで保存できるかも比較しておきたい項目です。問題が起きた際に、いつどの端末がどこへ通信したかをさかのぼれるかどうかで、原因の絞り込みにかかる時間が変わります。保存期間や検索方法、外部のログ管理サービスと連携できるかを、資料請求時に確認しておきましょう。
従業員100名以上のファイアウォール要件
100名を超えると、通信量の増加に加えて、監査や報告への対応が求められるようになります。ここでは100名規模から300名以上、上場企業までの段階で変わってくる要件を見ていきます。
従業員100名規模で求められる構成
100名規模では、機器が停止したときに業務が止まるリスクが無視できなくなります。同じ機器を2台用意し、一方に障害が起きても通信を引き継ぐ冗長構成が検討対象になります。導入事例を確認する際は、規模だけでなく業種や拠点数が近い事例を選ぶと参考にしやすくなります。
運用面では、設定変更の履歴を残せるかどうかも重要です。誰がいつどの設定を変えたかを追えないと、通信トラブルの原因調査に時間がかかります。設定のバックアップと復元が管理画面から行えるか、変更前の状態に戻せるかを確認しておくと、運用中の負担を抑えられます。
従業員300名以上で求められる構成
300名を超える規模では、拠点や部門ごとに異なるルールを、一つの管理画面からまとめて適用できる仕組みが求められます。機器ごとに個別設定を続けると、設定の食い違いが生まれ、意図しない通信が許可される状態につながる場合があります。
また、この規模では通信の集中する時間帯の性能低下が課題になりやすい傾向があります。暗号化された通信の中身を確認する機能を有効にすると処理負荷が上がるため、機能を使った状態での性能値をベンダーに確認しましょう。カタログ値は機能を無効にした条件で測定されている場合があるため、測定条件まで含めて比較することが大切です。
上場企業で求められる管理体制
上場している企業や上場を目指す企業では、監査や内部統制の観点から、情報システムの運用状況について説明を求められる場合があります。ファイアウォールについても、どのようなルールで運用し、誰が承認しているかを記録として残せる体制が必要です。
具体的には、管理者の権限を役割ごとに分けられるか、操作ログを一定期間保存できるか、レポートを定期的に出力できるかが確認項目になります。特定の製品を導入すれば要件を満たせるわけではなく、社内の運用ルールと組み合わせて初めて成立します。監査対応の要件は企業ごとに異なるため、自社の監査担当や外部の専門事業者と要件を整理したうえで製品を選定してください。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でファイアウォールの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
グループ会社をまとめて守る構成の考え方
親会社と子会社、あるいは複数のグループ会社でネットワークを守る場合、企業ごとに個別導入するか、まとめて管理するかで運用の形が変わります。ここでは判断の材料になる考え方を整理します。
統合管理する場合の利点と条件
グループ全体で同じ製品に統一し、一つの管理画面から設定を配布する構成では、セキュリティ基準をそろえやすくなります。新しい脅威への対応を一斉に反映できるため、対応の遅れが特定の会社だけに生じる状況を減らせます。
一方で、この構成には条件があります。各社のネットワーク管理の責任範囲を明確にし、どこまでを親会社が決め、どこからを各社が判断するかを文書化しておく必要があります。会社ごとに業種や取引先の要件が異なる場合、完全に同じルールを適用できないこともあるため、共通部分と個別部分を分けた設計が現実的です。
会社ごとに個別導入する場合の注意
各社が独自に製品を選ぶ構成では、それぞれの業務にあった機能を選べる自由度があります。ただし、グループ間で情報をやり取りする際に、片方の設定が原因で通信が通らないといった問題が起こる可能性があります。
この場合、問題の原因が自社側にあるのか相手側にあるのかを切り分ける手順を、あらかじめ決めておくと復旧が早まります。通信ログを双方で確認できる状態にし、窓口となる担当者を各社に置いたうえで、対応の記録を共有する運用が有効です。担当者を1人に固定せず、複数人で状況を把握できる体制にしておくと、引き継ぎ時の混乱を抑えられます。
企業規模別の確認項目を整理する
ここまで見てきた内容を、規模ごとの確認項目としてまとめます。自社がどの段階にあるかを踏まえ、資料請求の際に質問する項目を組み立てる材料としてください。
規模ごとの比較の目安
下表は、企業規模ごとに優先して確認したい項目を整理したものです。実際の必要要件は業種や拠点構成によって変わるため、あくまで検討の出発点として使ってください。
| 企業規模 | 優先して確認したい項目 |
|---|---|
| 10名前後 | 初期設定の代行可否、年間費用の総額、故障時の代替機対応 |
| 30名前後 | 部署単位のルール設定、社外接続の可否と同時接続数 |
| 50名前後 | アプリケーション単位の制御、ログの保存期間と検索方法 |
| 100名前後 | 冗長構成の可否、設定変更履歴の記録と復元手段 |
| 300名以上 | 複数拠点の一元管理、機能有効時の実性能、管理権限の分離 |
資料請求時に聞いておきたいこと
比較の精度を上げるには、自社の情報を整理したうえで質問することが有効です。従業員数と拠点数、現在の回線速度、社外から接続する人数、業務で使う主要なアプリケーションを一覧にしておくと、ベンダーから具体的な提案を受けやすくなります。
質問する内容は、公開情報だけでは判断しにくい項目に絞ると効率的です。推奨ユーザー数の根拠となる測定条件、サポートの対応時間と対応範囲、契約更新時の費用の変動、既存機器からの移行手順といった項目が該当します。複数社から同じ質問への回答を集めると、条件をそろえた比較がしやすくなります。
企業規模にあわせて選ぶファイアウォール
拠点の数や通信量によって、適した提供形態は変わります。機器を設置する形とサービスとして利用する形の両方を紹介します。
ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ
- 業界最多クラスのセキュリティ機能の中から独自のカスタムが可能
- 管理者負担軽減!導入から運用、保守まですべて一括対応
- 24時間365日の障害検知・切り分けから復旧対応までサポート!
株式会社 USEN ICT Solutionsが提供する「ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ」は、ファイアウォールの構築から運用、保守までを担うUTM製品です。アンチウイルスやアンチスパム、Webフィルタリング、不正侵入の検知と防御といった機能を備えています。24時間365日の障害検知から復旧までの対応が含まれるため、専任の担当者を置きにくい企業でも運用を続けやすい構成です。
MRB-Cloud
- 常時最新のセキュリティを提供。ソフトの導入や定義の更新は不要
- 3つのインバウンドセキュリティで外からの脅威を防御します
- 外出先でも安全に通信可能でリモートワークにも対応します
株式会社アンペールが提供する「MRB-Cloud」は、クラウド型のUTMサービスです。専用の機器を用意せず、既存のルーターから接続するだけで利用を始められます。アンチウイルスやWebフィルタリング、不正侵入の検知と防御に対応し、定義ファイルの更新を自社で行う必要がない点も運用の負担を抑える材料になります。
FortiGate (フォーティネットジャパン合同会社)
- SSL化通信も検査し不正な通信を検出
- 独立機関による認定を獲得
- 監査の自動化によりセキュリティ担当者の負担軽減
QuantumSpark (チェックポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社)
- AIで脅威防御し最新のサイバー攻撃に対応。
- FW/VPN/AV/URL/アプリ制御を一体提供。
- クラウドポータルで遠隔設定・監視が可能。
パロアルトネットワークス次世代ファイアウォール (パロアルトネットワークス株式会社)
- インライン ディープラーニングで未知のゼロデイ攻撃を阻止
- 遅延ゼロのシグネチャが数秒で更新
- ML活用可視性でIoTデバイスのプロファイル生成
ファイアウォールに関するFAQ
企業規模とファイアウォール選定について、よく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1: 従業員10名でもファイアウォールは必要ですか?
- 企業規模にかかわらず、インターネットに接続している以上は外部からの通信を制御する仕組みが必要です。小規模であれば、ルーター一体型の機器や導入支援のあるサービスから検討すると、運用の負担を抑えやすくなります。
- Q2: 推奨ユーザー数を超えるとどうなりますか?
- 通信の遅延や接続の失敗が起こる可能性があります。ただし発生の有無は通信内容や有効にしている機能にも左右されるため、余裕を持った構成をベンダーに相談することをおすすめします。
- Q3: 拠点が増えたら機器を買い替える必要がありますか?
- 製品によっては、既存機器を残したまま拠点用の機器を追加し、まとめて管理する構成をとれる場合があります。将来の拠点追加を見込んでいる場合は、導入前に拡張方法と追加費用を確認しておきましょう。
- Q4: クラウド型と機器設置型はどちらを選ぶべきですか?
- どちらが適しているかは、拠点構成や社外勤務の割合、社内で運用にかけられる工数によって変わります。両方の見積もりを取り、初期費用と運用時の手間を並べて比較する方法が現実的です。
まとめ
ファイアウォールの選定は、従業員数と拠点構成、そして運用にかけられる人員の3点から考えると整理しやすくなります。10名規模では導入と保守の手軽さ、50名規模では通信内容の制御とログ、100名以上では冗長構成と一元管理が検討の中心です。グループ会社をまとめて守る場合は、責任範囲の明確化が前提になります。自社の条件を整理したうえで、複数の製品資料を取り寄せて比較検討を進めてください。

