ファイアウォールの減価償却時に設定すべき耐用年数
ファイアウォールの減価償却は、ソフトウェアかハードウェアかにより分類が異なります。
無形固定資産のソフトウェアは5年
無形固定資産のソフトウェアの耐用年数は5年です。ソフトウェアは物理的な消耗はないものの、情報の価値が時代とともに減少するため、減価償却の対象となります。ソフトウェアの耐用年数は、以下のルールで決まっています。
- ■コピーして販売するための原本:3年
- ■研究開発目的のもの:3年
- ■自社で使うために購入したもの:5年
- ■自社で使うために自社内で制作したもの:5年
- ■他社が使うために受注製作したソフトウェア:対象外
ソフトウェアのファイアウォールを購入した場合は、上記のうち「自社で使うために購入したもの」に該当するため、耐用年数は5年です。
有形固定資産のファイアウォール機器も5年
有形固定資産のファイアウォール機器も耐用年数は5年です。有形固定資産の場合、電子計算機は以下のルールで耐用年数が決まっています。
- ■パーソナルコンピュータ(サーバ用除く):4年
- ■その他:5年
ファイアウォール機器(サーバ)はその他に該当します。
ファイアウォールの償却方法
ファイアウォールの償却方法を具体的に見ていきましょう。
ソフトウェアは定額法で減価償却する
ソフトウェアは「無形固定資産及び生物」に該当し、定額法が適用されます。たとえば、100万円のソフトウェアを購入した場合、耐用年数は5年なので、定額法に従って毎年20万円ずつ計上することになります。
ファイアウォール機器の法定償却方法は定率法
ファイアウォール機器の場合は「機械及び装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具器具備品」に該当し、定率法と定額法のどちらでも適用可能です。
ただし、法人の場合は定率法が法定償却方法(原則として適用される方法)と決まっています。そのため、法定償却方法以外の方法で減価償却したい場合は、「減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署に提出しましょう。
この書類の提出期限には以下のルールがあります。
- ■新たに法人を設立した場合:設立第1期の申告書の提出期限
- ■法人設立後すでに決めた償却方法を変更したい場合:資産を取得した期の申告書の提出期限
基本的に、一度採用した償却方法は3年以上経過しなければ変更できないので注意しましょう。
平成20年度の税制改正について
平成20年度の税制改正は、ファイアウォールの減価償却にどのような影響を与えたのでしょうか。
以前はファイアウォールの特別償却が可能だった
平成20年に情報基盤強化税制が強化・延長され、ファイアウォールの特別償却が可能になりました。特別償却とは本来より減価償却費以上の金額で償却する方法で、結果的に税負担を軽減できます。
情報基盤強化税制とは、平成18年に登場した制度で、平成20年までに購入したIT機器に税額免除や特別償却を認める制度です。景気対策や、情報セキュリティ強化を目的として施行されました。
さらに、平成20年には期間を2年間延長・対象IT機器を増加し、その中にファイアウォールも含まれることになりました。この制度は平成22年3月1日までに購入したIT機器に適用され、現在は廃止されています。
参考:耐用年数等の見直し(平成20年度税制改正)に関するQ&A|国税庁
今後、IT投資促進の政策が行われる可能性も
情報基盤強化税制はすでに廃止されましたが、今後もIT投資促進制度が実施される可能性があります。
新経済連盟は2019年2月14日に「デジタルファースト社会に向けた法案への期待と要望事項」を平井卓也IT政策担当大臣に提出しています。この要望事項の中にはオフィス業務のデジタル完結などが含まれており、生産性が向上するとされています。
そのため、今後も何らかの政策が実施されるかもしれません。
また、近年はクラウドを活用した環境構築を優先するクラウドファーストという言葉が登場しています。今後はソフトウェア型やクラウドサービスを導入したほうが、税制上のメリットが大きくなる可能性があります。
ファイアウォールの耐用年数を知り、適切な減価償却を!
ファイアウォールの耐用年数はソフトウェア・ハードウェア問わず5年です。償却方法は異なり、ソフトウェアの場合は定額法、ハードウェアの場合は原則として定率法が適用されます。
ただし、ハードウェアは適切な手続きをすることで定額法も適用できます。ハードウェア型のファイアウォールを保持している場合は、同類の他資産の状況も踏まえて、適切な償却方法を選んでみてはいかがでしょうか。
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