PLM(Product Lifecycle Management)とは
PLMとは、製品のライフサイクルを管理するためのマーケティング手法のことです。製品ライフサイクルとは、製品の誕生から衰退までのプロセスを指します。
PLMは、企画・設計開発・調達・生産・市場投入・販売・保守など、各工程で生じるさまざまな技術情報を統合的に管理します。関連部門が相互連携し、あらゆる情報を共有・分析できるため、業務効率の向上やモノづくり体制の強化、コスト削減など多くのメリットをもたらすでしょう。
なお、製品ライフサイクル管理を効率化するために用いるツールを、PLMシステムと呼びます。
参考:サイバーフィジカルシステムの戦略的導入等に係る調査|経済産業省
PLMが注目される背景と必要性
近年、製造業においてPLMのニーズは高まっています。PLMが必要とされる背景として以下のようなことが挙げられます。
- ■グローバル競争の激化
- 国内外を問わず企業間の競争が激化し、高品質の製品を低コストで製造する必要がある。
- ■ユーザー嗜好の多様化
- 顧客ニーズが多様化し目まぐるしく変わるため、製品ライフサイクルが短縮し、コストを回収できないケースも。市場や顧客ニーズに応えられる製品を迅速に開発するとともに、コスト削減が重要。
- ■コンプライアンスを遵守したモノづくり
- SDGsへの取り組みをはじめ、製品の品質や安全性、環境への影響なども重視されるようになり、適切なコンプライアンス管理が求められている。
つまり今まで以上に、QCD(Quality:品質・Cost:コスト・Delivery:納期)向上が求められるため、PLMへ高い関心が寄せられています。
PLMシステムの活用により、製品ライフサイクルにおける全データを一元管理でき、スピーディーな情報共有を可能とします。関連部門間でのシームレスなデータ連携により、市場ニーズへの変化にも対応しやすくなるでしょう。また、無駄を減らし業務効率がよくなることでコスト削減にも寄与します。
PLMシステムでできることについて知りたい方には、以下のページもおすすめです。人気のPLM製品(特徴の解説や口コミレビュー評価あり)を紹介しており、イメージを掴みやすいでしょう。
PLMとPDMの違い
PLMと類似する手法・システムとしてPDMもありますが、目的やデータ管理の対象範囲が異なります。
- ■PLM(Product Lifecycle Management)
- 目的:製品ライフサイクルの管理、QCD向上や製品開発力の強化
- 範囲:製品ライフサイクルで発生する全データ
- ■PDM(Product Data Management)
- 目的:製品情報の管理、設計作業の効率化
- 範囲:設計工程で発生するデータのみ
PDMとは製品情報管理システムのことで、CADやBOM(部品表)などのデータ管理に特化しています。開発・設計段階のデータのみを対象とし、PLMよりもデータ管理の範囲は限定的です。
しかし、なかには開発・設計以外のデータを管理できるPDMもあり、ベンダーによって管理対象の範囲は異なります。PDMについて理解を深めたい方は、ぜひ以下の記事も一読ください。
PLMシステムの導入メリット
PLMシステム導入による主なメリットは、業務効率化・リードタイムの短縮・製品の品質向上・製造コスト削減の4つです。QCD(Quality・Cost・Delivery)の向上が期待できるシステムといえるでしょう。以下で各メリットの詳細を解説します。
業務効率化
PLMシステムを導入すると、自社製品の企画から生産・販売・廃棄までの一連の流れを相互に関連付けて管理可能になるため、業務効率化につながります。分散したデータを集約したり、情報を検索したりする手間が減るほか、紙やエクセルでの管理と違い情報更新のタイムラグや伝達漏れなども発生しません。
リードタイムの短縮
設計開発や調達・製造など部門を問わず、誰もがPLMシステム上で最新データ・状況を把握できるため、情報共有が効率化しプロジェクトの進行が速まります。さらに、データを統合的に管理することで、より正確な生産スケジュールを立てやすくなるでしょう。調達・発注タイミングの最適化につながり、リードタイムの短縮にも貢献します。
製品の品質向上
PLM導入により、製品ライフサイクルにおける部門間連携が強まります。そのため、不具合やトラブルが生じた際も、原因究明や対応策の検討が迅速かつ効率的に行われるでしょう。また、設計データや品質テスト結果、市場投入後のエラー情報などの一元的な管理によって、製品の品質向上や品質の一貫性保持が期待できます。
製造コスト削減
製品ライフサイクル管理を採り入れることで、製造工程や作業における無駄、部品の重複発注などを減らせます。人件費だけでなく材料費などのコスト削減にも有効です。また品質不良やエラーにも早期対応が可能なため、後工程での手戻りやリコールの削減も図れるでしょう。
以下の記事では、PLMの導入メリットについて解説しています。さらに知識を深めたい方は、あわせて一読ください。
PLMシステムの基本機能
PLMシステムの代表的な機能は以下のとおりです。ほかにも特徴的な機能を搭載している製品もあるため、資料請求をして比較検討するとよいでしょう。
- ■ポートフォリオ管理
- 企画・開発の工程を管理する機能。市場需要や収益性を検討し、企画・開発に加え既存製品の販売継続や仕様変更などを判断します。
- ■プロジェクト管理
- 自社内で進行しているプロジェクトを管理する機能。スケジュール管理やガントチャートの共有もできます。
- ■製品設計
- 製品の自動設計や構造解析を行う機能。設計データの管理や見積書の自動作成、性能確認のシミュレーションなどが可能です。
- ■CADデータ管理
- 設計に必要なCADデータを管理する機能。CADデータの検索や過去のCADデータの管理を効率化します。
- ■BOMデータ管理
- 各種BOM(部品表)データを管理する機能。設計BOM以外に製造BOM、サービス・保守BOMなども統合的に管理します。
PLMシステムの機能詳細についてより情報が欲しいという方には、以下の記事もおすすめです。
PLMシステム導入の注意点
PLMシステム導入の際には、既存システムとの連携が可能かどうかを必ず確認しましょう。製品ライフサイクル管理に必要な情報をすべて集約しないことには、PLMシステムを効果的に活用できません。製品・サービスの比較検討時に、CADツールやプロジェクト管理システム、ERPなど、製品ライフサイクルに関わる既存システムとの連携可否についてチェックしておく必要があります。
また、PLMシステム導入は、各部門の業務に大きな変化や影響をもたらします。最初から全社的に導入することに不安があるのであれば、特定の部門・業務からのスモールスタートを検討してもよいでしょう。
PLMシステムを導入し企業競争を勝ち抜く一助に
近年、製造業界を取り巻く環境は大きく変化しています。低価格・高品質に加え、多様化する顧客ニーズへの迅速な対応が求められ、製品開発力の強化や業務効率化は避けては通れない問題です。
PLMシステム導入は、製品開発工程の効率化や品質向上、コスト削減が期待できるため、この機会に導入を検討してはいかがでしょうか。下のボタンからPLMシステムの一括資料請求が可能です。