サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは
サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは、原材料の調達から製造、販売までを一元管理し、全工程を最適化するための経営管理手法です。なお、SCMを実現するシステムのことを指す場合もあります。SCMは、製造業や食品業界、アパレル業界など、商品を製造・販売する多くの業界で導入されています。
サプライチェーンとは日本語で「供給連鎖」を意味し、原材料の調達から消費者に販売するまでの一連の生産プロセスを示します。サプライチェーンを統合的に最適化するのが、SCMです。
商品のサプライチェーンには、メーカー・卸売業者・物流業者・小売業者などさまざまな企業が関わります。自社内でも部門を横断し、生産に関わる多くの業務プロセスが発生します。SCMは、各企業・各部門の垣根を越えて情報をリアルタイムでやり取りし、利益の拡大を目指します。
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SCMの業務内容
SCMの業務内容は、主に以下4つのプロセスにわけられます。SCMではどのようなことを行うのか、確認しておきましょう。
- ■計画・予測
- 需要を予測して生産計画や供給計画を立てる業務です。市場データや過去の販売実績を分析し、将来の需要を予測します。そして、需要にもとづいて生産計画や在庫計画を策定し、供給チェーン全体のバランスを最適化します。
- ■実行
- 立案した計画にもとづいて各プロセスを実行する業務です。原材料の調達や製造、在庫管理や注文処理、出荷や配送などが含まれます。計画とのズレが発生した場合には、計画の修正やプロセスの改善など、迅速な対応が必要です。
- ■評価・モニタリング
- 供給チェーン全体のパフォーマンスを評価する業務です。主要な指標(KPI)をモニタリングし、各プロセスの効率性や効果性を測定します。どの部分が改善を必要としているのかを特定し、継続的な改善活動を行います。
- ■ネットワークデザイン
- 供給チェーンの構造を設計し、最適化する業務です。工場や倉庫の配置、輸送ルートの選定、サプライヤーの選択など、物理的なネットワークを設計します。ネットワークデザインは需要の変動や市場の変化に柔軟に対応できる構造をもつことが重要です。
SCMと生産管理の違い
SCMと生産管理は、どちらも企業の製品やサービスの供給過程において重要な役割を果たすものですが、目的や範囲に違いがあります。
生産管理とは、企業が製品やサービスを効率的に生産するための管理手法やプロセスのことです。製造プロセスの管理と最適化を目的としており、製品の生産計画、資材の調達、生産施設の運用などを担当します。
一方、SCMはより広範な供給チェーン全体の管理を目的としており、原材料の調達から生産、販売までを統合的に最適化します。つまり、生産管理はSCMに含まれる重要な役割の一つであるといえます。
SCMの歴史と普及している背景
SCMのルーツは、1980年初頭のアメリカです。低迷していたアパレル業界を立てなおすために生産プロセスの見直しを行い、大幅なコストカットや在庫削減によるキャッシュフローの改善に成功しました。この取り組みは他業界にも広がり、1990年代半ばにSCMと称されるようになりました。
日本でSCMの導入が活発化したのは、2000年代に入ってからです。インターネットや産業技術の発展にともない、大企業を中心に導入が進みました。なお、日本や世界でSCMの構築が進んでいる背景として、以下の3つが挙げられます。
- ■企業のグローバル化
- 各国の企業が世界中に生産・販売拠点を築くようになったため、流通プロセスの見直しが求められた。
- ■人材不足
- 少子高齢化による労働人口の減少や、労働条件などの問題から物流ドライバーの不足が深刻化している。多くの業界で人材・人手不足が進むなか、業務の自動化・標準化の推進が求められるようになった。
- ■ECサービスの発展
- ネットショップやフードデリバリーなどの発展により、在庫管理の多様化や物流の急増が顕著になった。流通の統合的な管理がより必要とされている。
そして近年、ブロックチェーンなどの新技術が搭載されたより高度なSCMが登場しています。取引データの耐改ざん性や透明性に優れたブロックチェーン技術などによって、SCMにおける煩雑な企業間連携の最適化がさらに加速しています。
SCM導入によるメリット
SCMの導入によって、企業は多くのメリットを期待できます。ここでは、代表的な5つのメリットを紹介します。
在庫量の最適化
商品の欠品や納期遅延は、メーカーや小売業者にとって大きな機会損失です。また、需要を大きく超えた商品の供給は無駄を生み出し、コストの増大につながります。
SCMを導入すると、メーカーから小売業者に至るまで、必要な情報が迅速かつ正確に伝達されます。そのため、過少在庫や過剰在庫といった需要と供給のミスマッチにより発生するリスクを最小化し、適正在庫の保持が可能です。
需要変動への機敏な対応
SCMを導入すれば、需要の変動に対する素早い対応が実現します。在庫が常に最適化されているため、需要の大幅な増加や減少といった環境の変化にも迅速に対応できるのです。
製品のライフサイクルが短縮化されている昨今、需要の変動に素早く対応することが重要です。
物流コストの削減
SCMによる適切な供給プロセスの構築によって、物流コストの削減が可能です。例えば、工場や店舗の立地を考慮したうえで、異なるメーカーの製品や複数の小売店舗に向けた商品を同一の配送業者が配送すれば、物流にかかるコストを削減できます。
近年は、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)企業も増えています。3PL企業は、第三者企業としてサプライチェーンに関わる物流企業です。物流フロー全体の最適化と、物流コストの削減を目的としています。
リードタイムの短縮
調達・製造・在庫管理などの各プロセスには、それぞれに必要なリードタイム(所要時間)があります。SCMによって、需要予測をあらかじめ各プロセスの生産計画に活かせれば、各プロセスの効率化やリードタイムの短縮が可能です。
また、SCMによる情報共有によって、すべての関連企業が商品の販売状況をリアルタイムに把握できます。例えば、メーカーや小売店の商品不足を迅速に把握できれば、補充や生産調整が可能となり、需要に対して早急な対応が可能です。
顧客や仕入先との良好な関係構築
企業が利益を生むためには、顧客ロイヤリティを高めることが重要です。顧客の希望する日時に商品を配送することはもちろん、商品の配送前から配送中、配送後のすべてのタイミングで、顧客のニーズに迅速かつ正確に応えられなければなりません。そのために企業は、顧客の観点からサプライチェーンを考える必要があります。
またSCMの実現には、企業間での良好なコミュニケーションや信頼関係も不可欠です。SCMによる情報のデジタル化や前述したブロックチェーン技術などによって、企業間の信頼性が向上し、サプライチェーン全体の最適化を実現しやすくなります。
なお、企業でSCMを導入し運用する場合、SCM専用のソフトウェアやシステムを活用するのが一般的です。SCMシステムではデータの収集や分析、意思決定を支援し、より正確性の高い需要予測によって調達や生産タイミングの最適化を実現させます。以下のボタンからSCMシステムの資料請求が可能なため、製品について詳しく知りたい方や導入を検討したい方はぜひご利用ください。
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SCM導入のデメリット
SCMの導入で効果を得るためには、越えなければならないいくつかの障壁があります。
一つめは、SCMの仕組み構築の難しさです。サプライチェーンを最適化するためには数多くの業務管理が必要であり、各プロセスが複雑になりすぎるケースが見られます。
二つめは、多くのコストを必要とする点です。専用のSCMシステム導入による初期費用やランニングコストをはじめ、SCMを構築するためには多くの開発工数と人的コストがかかります。
これらの障壁を越えるためには、自社に適したCSMシステムを選定することが重要です。例えば、クラウド型のCSMシステムを選定すると、初期コストや運用の負担を軽減できます。また、柔軟性や拡張性の高い製品や、ユーザーフレンドリーなインターフェースをもつ製品を選択することで、スムーズな導入と運用が期待できます。
おすすめのSCMシステムを紹介
ここからは、ITトレンド編集部おすすめのSCMシステムを紹介します。気になる製品は無料で資料請求も可能です。
《PlanNEL》のPOINT
- 400社超のグローバル企業に採用されたSCMソリューション
- 需要予測精度を80%に
- 計画リードタイムを80%短縮
ザイオネックス株式会社が提供する「PlanNEL」は、400社以上のグローバル企業で導入されているクラウド型SCMソリューションです。需要予測・販売計画・在庫基準計画・分析レポートなどの6つのモジュールで構成されており、部署や業務領域ごとのスモールスタートに対応します。AI(人工知能)や統計学を活用して、高精度な需要予測ができるため、予測精度の高い販売計画を策定できます。
OpenText Active Orders for JEITA(ECALGA)
製品・サービスのPOINT
- 基幹系システムとデータ連携し、業務データのやり取りを自動化
- 各業務プロセスやKPI等を可視化&迅速なアクション対応
- 国内・海外で利用可能。現地言語でのサポートにも対応
オープンテキスト株式会社が提供する「OpenText Active Orders for JEITA(ECALGA)」は、クラウド型の調達標準業務パッケージです。EDIデータをベースに、調達・購買業務の可視化と自動化ができます。多言語・多通貨に対応しており、国内外問わず利用可能です。12か国語によるサポート体制が整っているので、グローバル企業でも安心です。
《LMS-PSI》のPOINT
- ■リアルタイムな生販在の情報を基に、精度の高い生産計画を立案
- ■物流拠点と輸送のキャパを考慮し在庫・輸配送計画を立案
- ■サプライチェーン全体を可視化し、需要の変化に迅速に対応
株式会社セイノー情報サービスが提供する「LMS-PSI」は、PSI情報(生産・販売・在庫)をリアルタイムに統合管理し、余剰な在庫を抑制します。見込み在庫を全社で共有し、迅速な計画変更や納期調整が可能。物流リソースの適正化にも対応できます。 さらに計画立案を標準化し、担当者に依存しない安定した業務運営を支援します。
さらに多くのSCMシステムが知りたい方は、以下の記事をご覧ください。製品の選び方や導入事例も紹介しているので、参考にしてください。
SCMシステムの成功事例
SCMシステムの導入によってどのような効果が得られたのか確認しましょう。ここではITトレンドに寄せられた口コミより成功例を紹介します。
PlanNELの成功例
クラウド型SCMソリューション「PlanNEL」を導入した企業からは、以下のような導入効果が寄せられています。
- ■グローバルな販売見込みの集約が容易になった
- 製品カテゴリや各製品ごとに海外販売子会社別にグループ化し、集計やエクセルでの出力が可能に。さらに、これまで把握できなかった受注確度別の販売予測を、グローバルに集約し、生産計画に正確に反映できるようになった。
参考:PlanNEL:評判・口コミ|ITトレンド
Oracle Supply Chain Managementの成功例
需要分析から供給計画までのサプライチェーンを管理する「Oracle Supply Chain Management」を導入した企業からは、以下のような導入効果が寄せられています。
- ■データの一元管理を実現
- 紙で管理していた在庫や入出荷情報をデジタル化し、データでの一元管理が可能になった。また、社内に蓄積された過去のデータを可視化する上でも役立っている。
- ■リアルタイムでの管理を実現
- 直感的で見やすいダッシュボードにより、リアルタイムでサプライチェーン全体を管理できている。また、使いやすいデータモデル構造でデータ連携がスムーズになり、後からのデータ追加も容易に行えるようになった。
参考:Oracle Supply Chain Management:評判・口コミ|ITトレンド
SCMの知識を深めてサプライチェーンを最適化しよう
企業のグローバル化やビジネスモデルの変化にともない、SCMのニーズが高まっています。SCMの基礎知識を深め、実行することで企業の業績向上につながります。
なお、SCMを実行する際には、あわせて専用のSCMシステムを導入するのが一般的です。以下のボタンから資料請求も可能なため、まずは各社のSCMシステムがどのような特徴をもっているのかを資料で比較してみましょう。