バックオフィスとは
バックオフィスとは、総務や経理など基本的に顧客と直接関わらない業務の総称です。対して、営業やコールセンターのような顧客と直接やり取りする業務はフロントオフィスと呼びます。
バックオフィスは直接的に利益を生み出しません。しかし、企業活動の根幹ともいえる「人・モノ・カネ・情報」の4つの経営資源を管理する重要な業務です。フロントオフィスのパフォーマンスや組織のコンプライアンスは、バックオフィスの働きにより保たれます。
バックオフィスの業務例
具体的なバックオフィスの業務例には何があるでしょうか。5つ紹介します。
経理・財務
経理と財務は、企業のお金の管理を担う業務です。それぞれ、主に以下の業務を担当します。
- ●経理:帳簿作成、請求書・領収書の発行や管理、決算作業、税金の手続きなど
- ●財務:銀行融資の交渉、予算・資金管理、投資先の選定など
経理は現在と過去、財務はこれから使用するお金を担当する点で領域が異なります。
人事・労務
人事・労務は従業員の採用や働き方を管理する業務です。業務内容の例には以下があります。
- ●採用活動全般
- ●勤怠管理
- ●人材配置
- ●人材教育
- ●人材評価
- ●ハラスメントの相談窓口
人材の面から企業の生産性を高める重要な業務領域です。また近年では、ハラスメントの相談窓口を人事・労務が担う企業も増えています。
法務
法務は企業の法律に関わる部分を担当し、コンプライアンスを維持します。具体的な業務例は以下のとおりです。
- ●契約の審査
- ●法的トラブルの対応
- ●知的財産権の管理
- ●社内の法律相談
- ●社内規程の整備
- ●内部通報窓口の設置
- ●株主総会・取締役会の運営支援
企業の信用を維持するために、なくてはならない業務のひとつが法務です。契約書の内容を入念に確認し、取引先とトラブルを起こさない役目も担います。
広報
広報は企業の活動内容を社内外に発信する業務です。企業により活動内容は異なりますが、イベント企画や広報誌作成、SNSの運営などが一般的です。
また、最近では企業のイメージアップやブランディングによる他社との差別化が重要視されています。そのため、「SDGs」の活動アピールを広報が担う企業も増えています。SDGsとは、「貧困をなくそう」「海・陸の豊かさを守ろう」など、17の「持続可能な開発目標」のこと。企業の取り組み事例としては、開発途上国への支援や製造工程における環境負荷の低減、再利用可能な資源への置き換えなどがあります。
総務
総務は、主に働きやすいオフィスの環境整備を担います。具体的な業務例は以下のとおりです。
- ●設備・資産管理
- ●消耗品管理
- ●防災企画
- ●社内ルールの整備
- ●社内イベントの企画
「ほかのバックオフィス業務が担当しない領域」を拾うのが総務の役割といえます。細かな管理が多いですが、いずれも従業員が快適に働くためには欠かせない業務です。
バックオフィスでよくある3つの課題
バックオフィスは、多くの企業で共通の課題を抱えがちです。ここでは、よくある3つの課題を解説します。
業務負荷が大きい
バックオフィスは、以下のような繁忙期に業務が集中する傾向があります。
- ●月末・月初:経費精算業務などの集中
- ●決算期:決算関連業務の発生
- ●年度初め:組織改編や人事異動への対応
システムトラブルの影響や、決裁者の不在で業務が詰まってしまうことも少なくありません。
また、バックオフィスに十分なリソースが与えられず、常に人手が不足している企業も多く存在します。これは、バックオフィスが利益を直接的に生み出す業務ではないため、多くの経営層がコスト削減を考えていることに起因するでしょう。
業務の属人化が起こりやすい
バックオフィス業務は専門性が高く、特定の従業員が長年担当しているケースが多くあります。そのため、ほかの従業員が誰も業務内容を知らない、いわゆる属人化の状態に陥りやすい傾向です。
これでは、もし担当者の休職や退職が発生したら、重要な基幹業務がストップしてしまうリスクがあります。企業の持続性を高めるためには、属人化が発生しない仕組みをつくることが重要です。
アナログ業務が多い
リモートワークによる感染症・災害対策や、ペーパーレス化による重要書類のデータ保持は、事業継続性を高めるポイントです。しかしバックオフィスには、紙ベースで印鑑を要するアナログな業務フローが多くあります。例えば、以下のような書類が挙げられます。
- ●請求書
- ●稟議書
- ●経費申請書
- ●人事評価シート
アナログな業務フローは、担当者に印鑑を押してもらうのに時間がかかり非効率的です。またデジタル化を進めなければ、火災による重要書類の焼失や地震による停電、交通機関の麻痺などが原因で業務が止まるリスクがあります。業務の効率を上げつつ、緊急事態でも企業活動を維持するためには、徐々にデジタル化を進めなければなりません。
バックオフィス業務をDX化するメリット
バックオフィスをDX化(デジタル化)することによって、企業が抱える課題の多くを解決できる可能性があります。具体的なメリットを見ていきましょう。
業務効率化により生産性の向上が図れる
バックオフィスをDX化すれば、経費精算などの定型業務や、システム間の転記作業を自動化できます。転記ミスや入力・計算ミスなどのヒューマンエラーの心配がなくなり、チェック作業も不要になります。業務を大きく効率化し、バックオフィスの生産性を向上できるでしょう。
また、生産性の向上はバックオフィスのみにとどまりません。例えば経費精算は、従業員側の申請書作成にも手間がかかりがちです。スマホで申請できるようになれば、電車での移動中などちょっとした時間で完結します。DX化することで、より利益に直結するコアな業務に時間を割けるようになるでしょう。
人件費や印刷コストを削減できる
バックオフィス業務を全体的にDX化すれば、業務の自動化やシステム間の連携により作業工数の削減が見込めます。これにより、残業代を含む人件費などのコストを削減できるでしょう。
手が空いた人員のなかから、適正者をフロントオフィス業務に転換すれば、新たに採用活動を行う必要がなくなり、コスト削減も可能です。また印刷物の減少により、紙代やインク代も削減できます。DX化にかけた費用以上に、コスト削減を図れる可能性が高いでしょう。
属人化の解消が実現する
バックオフィス業務では専門知識を要するものも多々あり、比較的属人化しやすい傾向にあります。DX化により業務の標準化やマニュアルのデータ化をすすめれば、担当者の退職や休職による業務停滞のリスクが大きく軽減されるでしょう。
BCP(事業継続計画)対策になる
BCPとは、自然災害などの緊急事態下においても損害を最小限にとどめ、事業を継続するための計画のことです。DX化により、以下のような面から事業継続性を高められます。
- ●地震で交通機関が麻痺しても、オフィスに行かずに仕事ができる
- ●感染症が発生しても、残った人員はリモートワークで蔓延防止をしながら業務を続けられる
またクラウド化を進めれば、万が一物理的な機器の破損や紙の焼失があっても重要なデータは消失しません。DX化は、従業員の安全と健康を守りながら企業活動を維持するために欠かせないポイントです。
バックオフィス業務を効率化するおすすめツール
バックオフィス業務の効率化には、以下のようなツールの活用がおすすめです。
- ●チャットボット:対話形式で自動応答する人工知能プログラム
- ●RPAツール:業務を自動化するソフトウェアロボット
- ●経営管理システム:企業の経営情報を統合的に管理・分析するシステム
特に「経営管理システム」はバックオフィス業務を効率化しつつ、経営課題を可視化しリアルタイムな経営判断をサポートします。経営管理システムについて詳しく知りたい方は、おすすめ製品や導入メリット、選び方などについてまとめた以下の記事をご覧ください。
まとめ
バックオフィスは経理・財務や広報など、顧客と直接関わらない業務の総称です。経営資源を管理し、組織のパフォーマンスやコンプライアンスを維持する重要な役割を担います。
多くの企業のバックオフィスは、業務の属人化やアナログ業務の多さなど共通の課題を抱えています。経営管理システムの導入をはじめとするDX化により、課題を解決して生産性を高め、より企業が成長できる環境を構築しましょう。