業種によってCDNの懸念点が異なる理由
CDNは、同じデータを多くの利用者に届ける場面で効果を発揮しやすい仕組みです。そのため、扱うコンテンツやアクセスの集中のしかたによって、効果の出やすさや起こりうるトラブルが変わります。まずは業種ごとの違いが生まれる理由を整理します。
扱うコンテンツの性質の違い
CDNは、画像や動画のように誰が見ても同じ内容のファイルを配信拠点に保存して届けます。一方で、ログイン後の画面や在庫の表示など、利用者や時間によって内容が変わるデータは、そのまま保存すると誤った情報を表示するおそれがあります。
EC事業者のように動的なデータを多く扱う業種では、キャッシュ(配信拠点への一時保存)できる範囲が限られるため、期待した効果が出にくい場合があります。自社サイトでどの程度のデータがキャッシュできるかを、導入前に確認しておくことが重要です。
アクセスの集中パターンの違い
アクセスが集中するタイミングも業種によって異なります。ECではセールの開始時刻、メディアではニュースの公開直後、ゲームではアップデートの配信日、教育機関では授業の開始時刻に通信が増える傾向があります。
集中の直前に内容を更新すると、多くのリクエストが同時にオリジンサーバへ向かい、負荷が高まる場合があります。業種ごとの集中パターンを把握し、更新のタイミングやキャッシュの準備方法を決めておくことが、トラブルを減らすうえで大切です。
EC事業者でCDNが機能しにくいケース
ECサイトは、商品画像のようにキャッシュしやすいデータと、カートや会員情報のようにキャッシュできないデータが混在しています。この区別が不十分なまま導入すると、効果が出にくかったり、表示の誤りが起きたりする可能性があります。
動的ページが多くキャッシュが効きにくい事例
商品ページに在庫数や会員ごとの価格、閲覧履歴にもとづくおすすめ商品を表示しているECサイトでは、ページ全体をキャッシュできない場合があります。この場合、CDNが配信できるのは画像やCSSなどに限られ、オリジンサーバの負荷が思ったほど下がらないことがあります。
導入後に効果が見られない場合は、管理画面でキャッシュが使われた割合を確認し、どのページがオリジンへ転送されているかを調べることが改善の第一歩です。
カートや会員情報が誤って表示されるリスク
キャッシュの設定を誤ると、ある利用者のカートの中身や会員情報が保存され、別の利用者に表示されるおそれがあります。ログイン状態を示すCookie(閲覧者を識別する情報)があるページをキャッシュ対象から外していない場合などに起こりうる問題です。
このようなトラブルは、個人情報の漏えいにつながる可能性があるため注意が必要です。キャッシュ対象を広げる際は、検証環境で複数のアカウントを使って表示を確認し、問題がないことを確かめてから本番に反映しましょう。
動的ページでもCDNを活かす対策
動的なページが多いECサイトでも、ページの中で変わらない部分と変わる部分を分ける設計にすれば、キャッシュできる範囲を広げられる場合があります。例えば、商品説明はキャッシュし、在庫や価格はページの表示後に別途読み込む方法が考えられます。
また、キャッシュしない通信でも、通信経路の高速化機能を持つCDNもあります。設計の変更には開発の工数がかかるため、ECカートの提供会社や制作会社と相談しながら進めましょう。
メディア運営企業でCDN導入に失敗するケース
メディア運営企業は、記事や画像を多くの読者に届けるため、CDNと相性のよい業種の1つです。一方で、更新の頻度が高く、広告や計測の仕組みも複雑なため、設定によっては思わぬ問題が起こる場合があります。
記事の修正が反映されない事例
キャッシュの保持期間を長く設定していると、記事の誤りを修正しても、しばらくの間は修正前の記事が表示され続ける場合があります。誤った情報が残ることは、メディアの信頼に関わる問題です。
対策として、記事を更新した際にそのページのキャッシュを自動で削除する仕組みを、記事を管理するCMSとの連携で整えることが有効です。トップページや記事一覧など、関連するページのキャッシュも同時に削除できるかを確認しておきましょう。
広告や計測タグとの干渉
CDNの導入後に、広告の表示やアクセス解析の数値に変化が出る場合があります。ページのキャッシュ設定や、ファイルを圧縮して軽くする機能が、広告配信や計測のプログラムの動作に影響することがあるためです。
広告配信事業者や解析ツール側の仕様が関係している場合もあるため、原因を1つに決めつけず、CDNの設定とタグの設定の両方を確認しましょう。導入前後で主要な指標を比較できるよう、数値を記録しておくことが大切です。
速報記事でアクセスが集中する場面
大きなニュースを速報で公開した直後は、アクセスが短時間に集中します。公開直後は配信拠点にまだキャッシュがないため、多くのリクエストがオリジンサーバへ同時に向かい、表示が遅くなる場合があります。
オリジンへの問い合わせを集約する機能や、同じページへの同時リクエストをまとめる機能を持つCDNであれば、こうした負荷を和らげられる可能性があります。速報時の運用手順をあらかじめ決め、編集部と技術担当で共有しておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でCDNの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
ゲーム会社でCDNを運用する際のトラブル
ゲーム会社では、アプリ本体や追加データ、ゲーム内の画像など、大容量のファイルをCDNで配信するケースがあります。大型アップデートの配信日や、ファイルの更新時に起こりうるトラブルと対策を紹介します。
大型アップデート時の配信集中
大型アップデートの公開直後は、多くのプレイヤーが同時にデータをダウンロードするため、転送量が大きく増えます。契約している帯域の上限に達したり、配信拠点にデータが行き渡る前にアクセスが集中したりすると、ダウンロードが遅くなる場合があります。
事前にベンダーへ配信予定日と想定の転送量を伝え、上限や申請の要否を確認しておきましょう。公開前にファイルを配信拠点へ準備できる機能があれば、活用を検討します。転送量に応じた費用の見積もりもあわせて確認が必要です。
古いファイルが残ることによる不整合
ゲームのデータを更新した際に、一部の配信拠点に古いファイルが残っていると、新旧のファイルが混在し、ゲームが正しく動作しない可能性があります。ファイル名を変えずに中身だけを更新した場合に起こりうる問題です。
対策として、ファイル名やフォルダ名にバージョン番号を含め、更新のたびに新しい名前で配信する方法があります。この方法ならキャッシュの削除を待たずに新しいファイルを届けられるため、反映の遅れによる不整合を減らせます。
教育機関で動画教材の再生に不具合が出るケース
教育機関では、授業動画や教材をCDNで配信するケースがあります。動画の再生に不具合が出る原因は、CDNだけでなく、動画の形式や再生する端末、学内のネットワークなど複数の要素が関係する場合があります。
動画の再生が止まる主な原因
動画教材が再生できない、途中で止まるといった不具合は、さまざまな原因で起こりえます。動画の分割ファイルや再生リストのキャッシュ設定が適切でない場合や、動画の形式が利用者の端末やブラウザに対応していない場合が考えられます。
また、学内のネットワークの混雑や、利用者側の回線速度が影響する場合もあります。どの環境で不具合が起きているかを記録し、CDNのログとあわせて確認すると、原因を絞り込みやすくなります。
視聴制限の設定による再生エラー
教材を受講者だけに公開するため、期限付きのURLやトークンで視聴を制限している場合、その設定が再生エラーの原因になることがあります。有効期限が短すぎると、長い動画の途中で再生が止まる可能性があります。
また、動画の再生プレーヤーと配信元のドメインが異なる場合、ブラウザの安全上の仕組みによって読み込みが拒否されることもあります。設定を変更する際は、学内の情報システム部門やベンダーと連携し、検証環境で確認してから反映しましょう。
授業前にできる再生トラブルへの備え
動画教材のトラブルを減らすには、授業で使う前に、パソコンやスマートフォンなど複数の端末とブラウザで再生を確認しておくことが大切です。学外の回線からの視聴も確認しておくと、受講者の環境に近い条件で検証できます。
あわせて、不具合が起きた際の問い合わせ窓口や、代わりの視聴方法を受講者に案内しておくと、授業への影響を抑えられます。問い合わせの内容を記録し、設定の見直しに活かしましょう。学期の始まりなど視聴が増える時期の前に、点検する習慣をつけると安心です。
業種ごとの懸念点に備えるCDN
ECの動的ページやメディアの更新反映、ゲームや動画の配信など、業種ごとの課題を踏まえて比較したいCDNサービスを紹介します。
エッジキャッシュCDN
- 限られた予算で効率化・年間予算を決定しやすい月額定額料金採用
- 専門知識不要・設定やチューニングはすべてサポートが実施
- Webサイトやサーバーに変更を加えることなく導入可能
合同会社レッドボックスが提供する「エッジキャッシュCDN」は、Web表示速度の向上や突発的な負荷への対策、CMSなどのセキュリティ強化を行えるCDNサービスです。CMSで記事を更新するメディアや、セール時にアクセスが集中するECサイトなど、Webサイトを軸に事業を行う企業で検討の候補に入ります。設定やチューニングはサポートが実施する体制です。動的ページや動画配信への対応状況は、自社のサイト構成を伝えたうえで確認しましょう。
J-Stream CDNext (株式会社Jストリーム)
- 国内産CDNを完備!安定した配信環境をご提供
- 利用者の要望に沿った配信環境の設定が可能!柔軟な運営を実現
- 動作が重くなりやすい動的コンテンツにも対応!
Fastly (ファストリー株式会社)
- リアルタイムな観測でトラフィック把握
- プログラム制御でキャッシュとルーティングを柔軟に設定。
- 高速パージと大容量POPでパフォーマンスと拡張性を強化。
CacheFly (CacheNetworks, LLC.)
- 75拠点以上のサーバ網を展開し、配信実績多数。
- 動画・ゲーム・ソフト配信に最適化された高速転送機能を搭載。
- 100%稼働SLAと柔軟なプランで安定運用を実現するCDN。
Akamai (アカマイ・テクノロジーズ合同会社)
- Web・API・ゼロトラスト・インフラの各セキュリティを提供
- メディア配信、アプリ性能、エッジアプリを強化
- AI推論、メディア、ゲーム業界向けのソリューションを提供
Amazon CloudFront (アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)
- 世界中へ高速・低遅延でコンテンツを配信
- DDoS保護と暗号化でセキュリティを強化
- 従量課金制で配信量に応じた柔軟な料金体系
まとめ
CDNの導入でつまずく原因は、業種ごとのコンテンツの性質やアクセスの集中のしかたに関係している場合があります。ECでは動的ページとキャッシュ対象の区別、メディアでは更新の反映と広告タグへの影響に注意が必要です。ゲームでは配信集中とファイルの不整合、教育機関では動画の形式や視聴制限の設定を確認しましょう。業種特有のリスクをふまえ、資料請求をして複数のCDNを比較検討してみてください。

