CDNを導入しても属人化が解消しない理由
CDNの導入をきっかけに、サイト配信の運用を整理しようと考える企業もあります。しかし、導入しただけでは運用の属人化は解消しない場合があります。その理由と、見直したいポイントを2つ紹介します。
設定の意図が共有されていない
CDNの導入作業を1人の担当者や外部の制作会社だけで進めると、なぜその設定にしたのかという意図が社内に残らない場合があります。設定の内容は管理画面で確認できても、変更してよいかどうかを判断できる人が限られてしまいます。
その結果、設定の変更やトラブル対応が特定の人に集中し、導入前と同じ属人化が続く可能性があります。導入時に設定の一覧と理由を文書にまとめ、複数の担当者で内容を確認しておくことが大切です。
運用ルールが導入前のままになっている
CDNを導入すると、キャッシュ(一時保存したデータ)の削除や配信設定の管理など、新しい作業が加わります。それにもかかわらず、サイト更新の手順や承認の流れが導入前のままだと、新しい作業を誰が担当するのかが決まらないまま運用が始まります。
あいまいな作業は、詳しい人が結局引き受けることになり、属人化が進みやすくなります。導入にあわせて、更新の手順書にCDNの作業を組み込み、担当者と代理の担当者を決めておきましょう。手順書は、実際の作業で気付いた点を反映して更新していきます。
オリジンサーバからCDNへの移行で失敗する原因
オリジンサーバだけで配信していたサイトをCDN経由に切り替える作業では、ドメインや証明書、キャッシュの設定など、複数の要素を同時に変更します。移行時に起こりうる失敗の原因を3つに分けて確認しましょう。
DNS切り替えの手順の誤り
CDNへの移行では、ドメインの行き先を決めるDNSの設定を変更します。設定値の入力を誤ったり、変更が反映されるまでの時間を考慮せずに旧環境を止めたりすると、一部の利用者がサイトを表示できなくなる場合があります。
移行前に、DNSの情報を保持する期間を短く設定しておくと、切り替えや切り戻しを早く反映できます。作業はアクセスの少ない時間帯に行い、元に戻す手順も用意しておきましょう。切り替え後は、複数の回線や端末から表示を確認すると安心です。
キャッシュ設定の誤り
移行直後に起こりうるつまずきの1つが、キャッシュ設定の誤りです。会員ページや問い合わせフォームまでキャッシュの対象にしてしまうと、ほかの利用者の情報が表示されたり、フォームの送信がうまくいかなかったりする可能性があります。
反対に、キャッシュの対象が狭すぎると、ほとんどのリクエストがオリジンサーバへ転送され、CDNの効果が出ません。移行前に、ページの種類ごとにキャッシュの可否を一覧にしておくと、設定の誤りを減らせます。
証明書や通信方式の不一致
CDNとオリジンサーバの間の通信方式や証明書の設定が一致していないと、ページが表示されない、エラー画面が出るといった問題が起こる場合があります。CDNからオリジンへの接続に使うドメイン名の設定が誤っている場合も、同様の問題につながります。
また、暗号化通信への切り替え時に、ページ内の画像などが暗号化されていない通信で読み込まれ、表示が崩れることもあります。検証環境で主要なページを確認してから本番に反映しましょう。
CDNを導入しても表示遅延が減らない原因
アクセス集中による表示の遅れを改善するためにCDNを導入したのに、期待したほど速くならないケースがあります。遅延の原因は1つとは限らず、CDNの設定とサイト側の構成の両方を確認することが大切です。主な原因を3つ紹介します。
キャッシュが使われる割合の低さ
CDNの効果は、リクエストのうちどれだけを配信拠点のキャッシュから返せたかに左右されます。この割合が低い場合、多くのリクエストがオリジンサーバに届き、表示の遅れが改善しません。
割合が低くなる原因として、キャッシュの保持期間が短すぎる、URLの末尾に付く文字列の違いで同じページが別々に保存されている、閲覧者を識別するCookieの影響でキャッシュされないといった設定の問題が考えられます。管理画面の分析機能で状況を確認しましょう。
オリジンサーバやアプリケーション側の処理
カートや検索結果など、キャッシュできないページの表示が遅い場合は、オリジンサーバやアプリケーション側の処理に原因がある可能性があります。データベースへの問い合わせが多い、プログラムの処理が重いといった問題は、CDNだけでは改善できません。
サーバの監視ツールやログで、どの処理に時間がかかっているかを確認しましょう。サーバの増強やプログラムの改善が必要な場合は、開発部門や制作会社と対応を検討することが大切です。
画像の容量や読み込むファイルの多さ
CDNで配信していても、画像の容量が大きすぎたり、ページが読み込むファイルの数が多すぎたりすると、表示に時間がかかります。特にスマートフォンでは、回線の速度によって影響が大きくなる場合があります。
画像の形式やサイズを自動で変換する機能を持つCDNもあるため、活用を検討しましょう。あわせて、ページの表示速度を計測するツールで、どのファイルが表示を遅くしているかを確認することをおすすめします。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でCDNの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
繁忙期にCDNの応答が遅くなるケース
年末のセールや大型連休など、アクセスが集中する繁忙期に、CDNを経由した表示が遅くなる場合があります。原因はCDN事業者側にある場合も、利用企業側の設定や契約にある場合もあるため、両面から確認しましょう。
CDN事業者側の要因
CDN事業者側の要因として、特定の地域の配信拠点に負荷が集中する場合や、事業者のネットワークで障害が発生する場合が考えられます。こうした状況は、利用企業側の設定だけでは改善できないことがあります。
事業者のステータスページで障害情報を確認し、必要に応じて問い合わせましょう。過去の障害の履歴や、障害時の報告の内容を確認しておくと、事業者を選ぶ際の判断材料として役立ちます。重要なサイトでは、複数のCDNを併用する構成を検討する企業もあります。
利用企業側の設定や契約
利用企業側の要因として、契約している帯域やリクエスト数の上限に達している場合や、繁忙期の更新でキャッシュの削除が頻繁に行われ、オリジンへのアクセスが増えている場合が考えられます。
不正な通信を遮断するWAFやボット対策の設定が厳しすぎて、正常な利用者のアクセスにも追加の確認が発生していることもあります。繁忙期の前に、契約の上限と設定を見直し、ベンダーにアクセスの見込みを伝えておくと安心です。前年の繁忙期のデータがあれば、見込みの根拠として活用しましょう。
繁忙期の前に実施したい点検
繁忙期に慌てないためには、1~2か月前を目安に点検の機会を設けることが大切です。キャッシュが使われた割合や、エラーの発生件数、オリジンサーバの負荷などを確認し、前年の繁忙期と比較しておきましょう。
あわせて、障害時の連絡先や切り分けの手順、ベンダーへの問い合わせ方法を関係者で再確認します。ベンダーが許可する方法で負荷試験を行えば、どこで処理が詰まるかを事前に把握でき、対策の優先順位をつけやすくなります。
導入効果を見直す際に比べたいCDN
表示遅延が改善しない、繁忙期に応答が遅くなるといった課題を見直す際に比較したいCDNサービスを紹介します。
エッジキャッシュCDN
- 限られた予算で効率化・年間予算を決定しやすい月額定額料金採用
- 専門知識不要・設定やチューニングはすべてサポートが実施
- Webサイトやサーバーに変更を加えることなく導入可能
合同会社レッドボックスが提供する「エッジキャッシュCDN」は、キャッシュ技術と配信環境の工夫により、Web表示速度の向上と突発的な負荷への対策を図るCDNサービスです。設定やチューニングはサポートが実施するため、キャッシュ設定の調整が特定の担当者に依存している状況を見直す際の選択肢としても検討できます。Webサイトやサーバーに変更を加えずに導入でき、オリジンサーバー側の改修を前提としません。月額定額の料金体系を採用しています。
Fastly (ファストリー株式会社)
- リアルタイムな観測でトラフィック把握
- プログラム制御でキャッシュとルーティングを柔軟に設定。
- 高速パージと大容量POPでパフォーマンスと拡張性を強化。
J-Stream CDNext (株式会社Jストリーム)
- 国内産CDNを完備!安定した配信環境をご提供
- 利用者の要望に沿った配信環境の設定が可能!柔軟な運営を実現
- 動作が重くなりやすい動的コンテンツにも対応!
HyperCDN (株式会社ハイパーボックス)
- 国内エッジサーバー多数でキャッシュ配信し負荷分散。
- SSL対応、CNAMEで自社ドメイン利用可。
- 転送量ダッシュボード、アラート、アクセスログを提供。
AkamaiCDN (アカマイ・テクノロジーズ合同会社)
- 世界規模の分散サーバーから低遅延配信。
- Web/アプリ向け高可用性・高スケーラビリティ
- 配信、API、メディア向け最適化・負荷分散に対応。
KeyCDN (proinity LLC)
- 世界のエッジサーバーを活用した低遅延配信CDN
- HTTP/2・Brotliによる高速化・性能最適化
- APIとSDKで既存インフラやアプリへ容易に統合可能。
AmazonCloudFront (アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)
- 700以上のPoPで低遅延配信。
- AWS Shield StandardでDDoS攻撃防御を無料提供
- サーバーレスでエッジコードをカスタマイズ
CDN導入の失敗に関するよくある質問
CDNの導入後に効果が出ないと感じたときによく寄せられる質問と、その回答をまとめました。
- Q1:CDNの効果はどのように確認すればよいですか?
- 導入前後で、ページの表示時間やオリジンサーバの負荷、キャッシュが使われた割合を比較する方法があります。導入前の数値を記録していない場合は、現在の数値を基準にして設定の改善による変化を確認しましょう。
- Q2:CDNを導入したら逆に遅くなったのはなぜですか?
- キャッシュがほとんど使われていない場合、CDNを経由する分だけ通信の経路が増え、遅く感じる場合があります。また、配信拠点が利用者から遠い場合も考えられます。キャッシュの設定と拠点の配置を確認しましょう。
- Q3:移行に失敗した場合はすぐに元に戻せますか?
- DNSの設定を元に戻せば、オリジンサーバからの配信に切り戻せます。ただし、反映には時間がかかる場合があるため、移行前にDNSの情報を保持する期間を短くしておくことと、元の設定値を記録しておくことが大切です。
- Q4:効果が出ない場合はCDNを変更すべきですか?
- 原因が設定やサイト側の構成にある場合は、製品を変えても改善しない可能性があります。まず原因を確認し、製品の機能や配信拠点が要件を満たしていない場合に、他の製品との比較を検討しましょう。
まとめ
CDNを導入しても効果が出ない原因は、複数の要因が重なっている場合があります。例えば、設定の意図が共有されていない、移行時の設定に誤りがある、キャッシュが十分に使われていない、オリジンサーバ側の処理が遅いといった要因です。製品を変える前に、まず原因を切り分けて設定や運用ルールを見直しましょう。そのうえで、要件に対して機能が不足している場合は、資料請求をして複数のCDNを比較検討してみてください。

