CLMにAI機能が求められる背景
契約業務では、契約書の作成や審査、承認、締結後の管理など、多くの工程で確認作業が発生します。取引や契約書の件数が増えるほど担当者の負担も大きくなるため、CLMにAIを組み合わせて業務を効率化する動きが広がっています。主な背景を確認しましょう。
契約書の増加によるレビュー負荷
企業の取引が増えると、秘密保持契約や業務委託契約、売買契約など、確認する契約書の種類や件数も増加します。内容をすべて人手で確認する運用では、レビューに時間を要するだけでなく、重要な条項を見落とすリスクも高まります。
AIを備えたCLMでは、契約書から特定の条項や契約期間、取引金額などを抽出したり、必要な情報を検索したりする機能が利用できます。担当者が確認すべき箇所を絞り込めるため、大量の契約書を扱う際の負担軽減に役立ちます。
契約審査や管理業務の属人化
契約審査では、過去の契約内容や社内基準を踏まえた判断が求められるため、経験豊富な担当者に業務が集中する場合があります。また、過去の契約書や交渉経緯が複数の場所に分散していると、必要な情報を探すだけでも時間がかかります。
CLMに契約書や審査履歴を集約し、AIによる検索や情報抽出を活用すれば、過去の契約情報を参照しやすくなります。担当者個人の記憶や経験だけに依存せず、組織内に蓄積した契約データを活用できる環境づくりにつながります。
CLMの主なAI機能と対応できる業務
CLMのAI機能は、契約書の作成・審査から締結後の管理まで幅広い工程で利用されています。ただし、搭載される機能は製品によって異なります。代表的な活用例を確認しましょう。
契約書のドラフト作成を支援する
生成AIを活用し、契約条件などの情報を入力すると契約書のたたき台を作成する機能があります。過去のテンプレートや条項を参照しながら作成できる製品もあり、定型的な契約書を一から作成する手間を減らせます。
ただし、生成された契約書をそのまま利用するのではなく、取引条件や自社の基準に合っているかを担当者が確認する必要があります。対応する契約類型や生成方法も製品によって異なるため、導入前に確認しましょう。
契約書から必要な情報を抽出する
AIが契約書を解析し、契約相手、契約期間、取引金額、自動更新の有無などの情報を抽出する機能があります。抽出した情報を契約台帳へ反映できる製品であれば、手入力による管理作業も削減できます。
締結済みの契約書が多い企業では、既存の契約書をまとめて取り込み、契約情報を整理する用途にも有効です。台帳作成の負担を軽減するとともに、契約情報を検索・集計しやすい状態に整えられます。
重要な条項を抽出・検索する
損害賠償や契約解除、秘密保持、契約期間など、確認したい条項を抽出・検索する機能もあります。長文の契約書や大量の契約書から対象箇所を探しやすくなり、レビューや過去契約の調査を効率化できます。
製品によっては、過去案件や社内の契約データを横断的に検索し、類似する契約や参考となる条項を探せる場合もあります。契約書を単に保管するだけでなく、蓄積した契約データを法務ナレッジとして活用できる点もAI搭載CLMの特徴です。
契約期限や更新情報の管理を支援する
契約書から契約期間や更新条件などを抽出し、期限管理に活用する機能もあります。契約終了日や更新時期を台帳へ登録し、アラート機能と組み合わせることで、更新漏れや手続き忘れの防止に役立ちます。
契約書の件数が多い場合、締結後の管理にも相応の負担がかかります。AIによる情報抽出とCLMの期限管理機能を組み合わせれば、契約締結後も含めた一連の業務を効率化できます。
AI搭載CLMを導入するメリット
AI機能をCLMに組み込むことで、単純な作業時間の削減だけでなく、契約情報の活用や業務標準化にもつながります。主なメリットを確認しましょう。
契約業務の作業時間を削減できる
契約書から必要な情報を探したり、管理台帳へ転記したりする作業をAIで補助できるため、担当者の作業時間を減らせます。契約書の件数が多い企業ほど、情報検索や入力作業の効率化による効果を得やすいでしょう。
定型作業をAIやCLMに任せることで、法務担当者は契約条件の検討やリスク判断など、人による判断が必要な業務に時間を充てやすくなります。
契約データを活用しやすくなる
締結済み契約書をCLMへ集約し、AIによって内容を構造化すると、契約書に記載された情報を検索・比較しやすくなります。過去の契約条件や類似案件を確認する際にも役立ちます。
契約データが一元化されれば、特定の担当者しか過去の経緯を把握していない状態を減らし、契約業務に関するナレッジを組織内で共有しやすくなります。
契約管理の抜け漏れを抑えられる
契約期間や更新期限などをAIで抽出し、CLMのアラート機能と組み合わせることで、更新や解約通知に関する確認漏れを防ぎやすくなります。
Excelや個人の予定表などで契約期限を管理している場合、担当者の異動や入力漏れによって情報が正しく引き継がれないこともあります。CLM上で契約書と管理情報を紐づけておけば、継続的な管理体制を整えやすくなります。
AI搭載CLMを選ぶ際に押さえたいポイント
CLMのAI機能は製品によって対象業務や対応範囲が異なります。「AI搭載」という点だけで判断せず、自社の課題を解決できる機能があるかを確認することが重要です。
AIで効率化したい業務を明確にする
まず、契約書の作成、レビュー、台帳作成、検索、期限管理など、どの業務をAIで効率化したいのかを整理しましょう。製品によって、契約書作成に強いもの、締結済み契約の管理に強いもの、契約情報の検索・分析に強いものなど特徴が異なります。
現在の契約業務を工程ごとに洗い出し、特に工数がかかっている作業を明確にしておくと、自社に必要なAI機能を判断しやすくなります。
対応する契約類型や抽出項目を確認する
AIによる解析対象や抽出できる項目は製品によって異なります。秘密保持契約や業務委託契約、売買契約など、自社で頻繁に扱う契約類型に対応しているかを確認しましょう。
また、契約期間や金額だけでなく、損害賠償、解除条件、自動更新など、自社が管理したい項目を抽出できるかも重要です。トライアルやデモを利用できる場合は、自社で実際に使用している契約書を想定して操作性や解析結果を確認するとよいでしょう。
既存システムとの連携範囲を確認する
CLMは電子契約サービスやワークフロー、文書管理、基幹システムなどと組み合わせて利用する場合があります。既存システムと連携できれば、契約書や管理情報を手作業で転記する負担を減らせます。
API連携の有無だけでなく、具体的にどのデータを受け渡せるのかまで確認しましょう。自社で利用している電子契約サービスやストレージとの連携実績も比較材料になります。
セキュリティやAIへのデータ送信範囲を確認する
契約書には取引条件や個人情報、機密情報が含まれる場合があります。そのため、アクセス制御や通信・保存データの暗号化、ログ管理などのセキュリティ対策を確認することが重要です。
生成AIを利用する機能では、入力した契約情報がどのように処理されるのかも確認しましょう。外部のAIモデルへ送信されるデータの範囲や、入力データがAIモデルの学習に利用されるかなど、サービスごとの取り扱いを事前に確認しておく必要があります。
ITトレンドでは、最新のCLM製品・サービスを多数比較・掲載しています。製品によってAI機能の対応範囲や契約管理機能、外部システムとの連携方法は異なります。まずは資料を取り寄せ、自社の契約業務に合う製品を比較してみましょう。一度の入力で複数のCLM(契約ライフサイクルマネジメント)の資料をまとめて請求できます。
CLMにAIを導入する際の注意点
AIは契約業務を効率化する有効な手段ですが、すべての判断を任せられるわけではありません。導入後の運用まで想定したうえで活用する必要があります。
AIの出力だけで最終判断しない
AIによる条項抽出や契約書作成では、内容を正しく認識できなかったり、個別の取引事情を十分に反映できなかったりする可能性があります。そのため、AIの出力は契約業務を支援する情報として利用し、最終的な確認や判断は担当者が行う運用が基本です。
特に、取引金額が大きい契約や特殊な条件を含む契約では、法務担当者や必要に応じて専門家が確認する体制を整えておきましょう。
AIの解析精度を事前に確認する
契約書の形式や記載内容によっては、AIが情報を正確に抽出できない場合があります。スキャンした契約書や独自フォーマット、特殊な契約条件などでは、想定した結果が得られるか確認が必要です。
導入時は代表的な契約書を使って検証し、どの業務までAIに任せるかを決めるとよいでしょう。AIの結果を人が確認する工程も含めて運用フローを設計することが重要です。
機密情報の取り扱いルールを整備する
契約書には社外秘情報が含まれるため、AI機能へ入力してよい情報の範囲を社内で明確にしておく必要があります。利用するCLMのセキュリティ仕様を確認するとともに、担当者向けの利用ルールも整備しましょう。
部門ごとのアクセス権限や契約書の閲覧範囲を設定し、必要な担当者だけが情報へアクセスできる環境を構築することも重要です。
CLMのAI活用を社内に定着させるポイント
CLMを導入しても、現場で利用されなければ十分な効果は得られません。契約業務のどの工程でAIを利用するのかを明確にし、段階的に運用を定着させましょう。
対象業務を絞って運用を始める
導入当初からすべての契約業務を変更すると、現場の負担が大きくなる場合があります。まずは契約台帳への入力や定型契約の情報抽出など、AIの効果を確認しやすい業務から始める方法があります。
運用に慣れてから対象となる契約類型や部署を広げれば、課題を確認しながら段階的に定着を図れます。
AIと担当者の役割を明確にする
「AIが抽出した情報を誰が確認するのか」「どの条件で法務部門へ相談するのか」など、AIと担当者の役割分担を決めておきましょう。判断基準が曖昧なままでは、担当者ごとに運用が異なり、かえって確認作業が増える可能性があります。
利用ルールや確認フローをマニュアル化し、関係部署で共有しておくと運用を標準化しやすくなります。
利用状況を確認して継続的に改善する
導入後は、AIによって削減できた作業時間や抽出結果の修正頻度などを確認しましょう。利用する担当者から意見を集めれば、運用上の課題や追加で自動化できる業務を把握できます。
利用状況を定期的に見直しながら、設定や業務フローを調整することが、AI機能を継続的に活用するポイントです。
AI機能を搭載した主要CLM製品
ここでは、契約情報の抽出や検索、契約書作成などにAIを活用するCLM製品を紹介します。搭載機能や対応範囲を比較し、自社の契約業務に適した製品を選びましょう。
MNTSQ CLM
- トップローファームの知見 × AIで、法務業務の革新を支援
- 相談受付から契約締結までの情報を集約し、一元管理と整理を実現
- ナレッジをユーザー全体に還元し、組織としての法務力を高めます
MNTSQ株式会社(MNTSQ, Ltd.)が提供する「MNTSQ CLM」は、契約の相談・審査から締結後の管理、契約データの活用までを支援するCLMです。契約書をAIで解析し、契約期間や取引金額、自動更新の有無などを抽出して管理台帳へ反映できます。契約書や関連資料を横断的に検索できるほか、契約業務を支援するAI機能も提供しており、蓄積した契約データや法務ナレッジの活用を進めたい企業に適しています。
ContractS CLM
- 契約書の作成から管理までをワンストップで
- 契約業務のムダな工程をなくして、リードタイム短縮
- 契約関連のあらゆる情報が集約・蓄積され、機会損失を防止
ContractS株式会社が提供する「ContractS CLM」は、契約の依頼・相談から作成、審査、承認、締結、更新・管理までを一元化するCLMです。「AI Assist」により契約書から金額や期日、条項などの情報を読み取り、入力・確認作業を支援します。また、契約内容と社内ルールをもとに、必要な承認やレビュー、タスクの振り分けを支援する機能も備えています。契約プロセス全体の効率化と内部統制の両立を図りたい企業に適しています。
LegalXross
- 貴社の課題に合わせて、必要なサービスを必要な分だけご提供
- SMBCグループが提供する、銀行基準のセキュリティ体制
- 第一線で活躍する、各領域のプロフェッショナルが集結
SMBCリーガルX株式会社が提供する「LegalXross」は、契約書の作成・締結・管理・分析などを支援するリーガルテックサービスです。生成AIを活用して契約書のドラフトを作成する機能のほか、契約書から契約期間や相手方、取引金額などを抽出して管理する機能を提供しています。さらに、損害賠償や解除などの条項を抽出・一覧化する契約書分析にも対応しており、契約データの活用範囲を広げたい企業に適しています。
LIRIS CLM
- 契約書の作成から承認、締結、管理まで一括して管理
- 抜群の操作性で、とにかく使いやすい!
- 業務フローに合わせて画面や権限を柔軟にカスタマイズ
LIRIS株式会社が提供する「LIRIS CLM」は、契約書の作成から承認、締結、管理までの契約業務を一元化するAI契約管理システムです。AIによる契約情報の自動抽出に対応しており、契約書から必要な情報を整理して管理業務の効率化を支援します。自社の契約フローに合わせたカスタマイズにも対応しているため、既存の運用を踏まえてCLMを構築したい企業にも向いています。
Keiyaku.Ai (AIデータ株式会社)
- 契約書の作成から管理を一元化
- 契約書の雛形登録で作成を効率化し、ミスも防止する。
- 契約書の検索性と自動通知により、更新漏れを防止します。
GVAmanage (GVA TECH株式会社)
- 2024年12月26日、東証グロース市場に新規上場
- Slack・Teams・メール等、普段のツールでそのまま依頼可能
- AIで契約書レビュー、形式チェック、類似案件レコメンド機能搭載
CLMのAI活用に関するFAQ
CLMへのAI導入を検討する際によくある疑問をまとめました。
- Q1:CLMのAI機能はどのような契約書にも対応できますか?
- 対応する契約類型や抽出項目は製品によって異なります。一般的な契約書には対応していても、特殊な契約書や独自フォーマットでは十分に解析できない場合があります。自社で扱う契約書に対応しているか、導入前に確認しましょう。
- Q2:AI機能を使えば法務担当者による確認は不要になりますか?
- 基本的には不要になりません。AIは契約書の作成や情報抽出、検索などを支援しますが、取引条件や個別事情を踏まえた最終判断は担当者が行う必要があります。AIと担当者の役割をあらかじめ決めて運用しましょう。
- Q3:既存の契約書をAIに学習させる必要がありますか?
- 必ずしも必要とは限りません。製品によってAIの仕組みや契約データの利用方法が異なります。既存契約を取り込んで検索や分析に活用できる製品もあるため、自社データがどのように利用されるのかを提供会社に確認してください。
- Q4:生成AIに契約書を入力しても問題ありませんか?
- 利用するサービスのデータ取り扱い方針によって異なります。契約書には機密情報が含まれるため、入力データの保存方法やAIモデルの学習への利用有無、外部サービスへのデータ送信範囲などを確認したうえで利用することが重要です。
まとめ
AI機能を搭載したCLMを活用すれば、契約書の作成や情報抽出、検索、契約台帳の作成など、契約ライフサイクルのさまざまな業務を効率化できます。特に契約書の件数が多い企業や、契約情報が担当者ごとに分散している企業では、業務負担の軽減や契約データの有効活用につながります。
一方、AIの対応範囲や解析精度、データの取り扱い方法は製品によって異なります。自社で効率化したい業務を明確にしたうえで、対応する契約類型やAI機能、既存システムとの連携、セキュリティなどを比較しましょう。まずは複数製品の資料を取り寄せ、自社に適したCLMを検討してみてください。

