データバックアップの選び方
データバックアップの選び方は、具体的に以下の通りです。
- ●データバックアップの目的を整理する
- ●データの保存方法を選ぶ
- ●データバックアップツールの種類を選ぶ
- ●選んだツールを機能で比較する
それではみていきましょう。
データバックアップの目的を整理する
データバックアップを行うための機器や、サービスは豊富に提供されており、それぞれに特徴や適した用途があります。自社のニーズに合う方法を選ぶには、まず目的を明確にすることが大切です。
たとえば人的ミスによるファイルの消失であれば、社内の別サーバーにデータをコピーしておくことで対応できますが、オフィス全体に被害が及ぶ災害への備えとしては不十分です。「トラブルからデータを守る」という漠然としたものではなく、明確な目的を定め、選定の基準としましょう。
災害時の備えを必要とする場合
近年重視されてきている地震や、火事といった災害に対する備えは、遠隔地でのデータ保管が基本です。バックアップ用テープなどデータをコピーした外部メディアを離れた倉庫に保管する、遠隔地のデータセンターのサーバーにデータをコピーする、レプリケーション用の機器を離れた場所に設置するなど、同時に被災しないよう距離を取れる方法を検討しましょう。
中でも遠隔地でのレプリケーションは、災害時の業務の中断をできるだけ短くする、ディザスタリカバリの観点からも有効な手段です。本体に障害が発生した際は、遠隔地にある別システムに同期された複製データがあることで、短時間で切り替えることが可能なためです。
日常的に起こる小規模なトラブルに備えたい場合
人的ミスによるファイルの削除など、頻繁に起こりうるトラブルへの対処は、バックアップ用サーバーやハードディスクへのコピーなど、データの復元が容易な方法が適しています。復元に手間とスキルが必要となるテープメディアや光ディスクなどへのコピーは、この用途には不向きな方法です。
業務の規模により、PC数台分のデータを保存すればよいなど、保存データが少量の場合は、NASと呼ばれる簡易サーバーを使うのも有効な手段です。
設備や人員の負担を抑えてトラブルに備えたい場合
サーバーなどの機器やシステムの管理者を用意する手間やコストを省きたいときは、データセンターやクラウドサーバーといったデータの保存場所と、その管理が含まれた製品やサービスがお勧めです。
バックアップのタイミングとデータの種類を指定することで、一定期間ごとに自動的にバックアップが行われるリモートバックアップ機能の提供、トラブル時のデータの復旧も請け負うなど、専門のスキルを要さずデータバックアップが可能なサービスが多くあります。
長期間データを保管したい場合
法令により数年間保管が義務付けられたデータなど、長期に渡るデータの保管が必要な場合は、バックアップ用テープへの保存が適しています。媒体が安価なことに加え、保管中は電源が不要なため、ランニングコストも低く済みます。
重要なデータだけど、日常的にはあまり利用しないデータが対象となります。製品によっては利用頻度によって、自動的にデータの保管方法、場所を最適化してくれるものもあります。高価なサーバーやストレージのコストを削減できる効果がありますので、バックアップデータの容量が多くなってきたら、一度検討することをお勧めします。
データの保存方法を選ぶ
消失したデータの復旧、災害時の業務中断への備えなどを目的とする、いわゆる「データバックアップ」用として提供されている製品のデータ保存方法は、大きく分けて2つあります。
コピー
一つ目は、他の媒体や機器にデータをコピーして保存する方法です。PC内のデータをCD-ROMにコピーしておくのと同じ考え方で、なんらかのトラブルでデータを失った際、コピーしておいたデータを使って元に戻すことができます。
外部記憶メディア、社内のサーバーやストレージ、外部データセンターなど、コピーしたデータの保管場所を変えることで、さまざまなニーズに応えます。
レプリケーション
データの複製(レプリカ)を作成し、リアルタイムで同期させる方法をレプリケーション、ミラーリングなどと呼びます。データの保存を目的とするバックアップとは厳密には異なりますが、本番データと複製データを同期させることでトラブル発生時に素早くシステムを切り替えることが可能になります。停止時間を最小限に抑えたいシステムのバックアップに適しています。
データバックアップツールの種類を選ぶ
かつてデータバックアップ機能はデータベースソフトの標準機能であり、業務システムを構築する際に、付属してバックアップ機能をプログラミングしていました。
それが現在では汎用的なバップアップツールが販売されるようになり、アプライアンス製品も珍しくありません。
近年、クラウド上にファイルサーバや業務システムを構築する企業も増加しています。これに対応できるバックアップツールも登場しています。ニーズや利用する環境に応じて、ツールの種類を選択しましょう。
パッケージ
古くからあるバックアップ専用のツールです。柔軟性が高く、システム個々に構築してきたバックアップ処理を統合して、省力化することができます。バックアップ先もストレージやテープなどを必要に応じて組み合わせることができます。
アプライアンス
パッケージはサーバとストレージを別に用意しなければなりませんが、アプライアンスはこれらハードウェアとソフトウェアがセットで提供されます。これにより、高度なノウハウが必要となるチューニング工程を省略でき、短期間で高品質なバックアップシステムを構築できます。
コストも個々に準備するよりも抑えることができ、バージョンアップの際もまとめて対応し運用負荷を軽減できます。
クラウド
クラウドをバックアップ先として利用する企業が多くなっています。クラウドの入門としてバックアップを推奨しているサービス提供事業者もあります。
クラウドは堅牢なデータセンターから提供されており、企業のサーバルームに保管するよりも信頼性が保証されています。事業者によっては国内2カ所のデータセンターに分散保管するサービスを提供しているところもあります。データ容量増加に柔軟に対応できるのもクラウドの魅力の1つです。
選んだツールを機能で比較する
バックアップツールに含まれる主な機能を紹介します。これらの機能の有無からツールを絞り込んでいきましょう。
- ■データ復旧
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忘れがちなのがデータ復旧の効率性です。バックアップ操作の容易性を訴えているツールは多いのですが、復旧できなければ意味がありません。いざというとき、簡単に元の状態に復旧できるかどうか検討してください。
- ■データアーカイブ
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制度上の義務やビジネス上の必要性からデータを長期にわたって保存する機能です。メールデータなどは、証跡としてアーカイブ保存することが義務づけられています。
- ■暗号化
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外部に漏れてはならない機密データに暗号処理をして保管する機能です。クラウドのデータセンターに預ける場合などに必要になります。
- ■重複排除機能
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バックアップ対象のデータの中から、重複しているデータを排除してバックアップする機能です。バックアップにかかる時間を短縮でき、バックアップ用のストレージ容量も抑えることができます。
- ■スナップショット機能
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対象となるディスク・ボリューム全体を瞬間的に複製する機能です。このスナップショットをベースに複製することで、システムの本番環境に影響を与えること無くバックアップできます。
- ■仮想環境への対応
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仮想環境が一般化していることから、対応機能が搭載されるようになっています。物理環境と仮想環境を一元管理し、1つの画面ですべてのバックアップ状況を確認できるツールも提供されています。
データバックアップの組み合わせでより効果的に
直近30日分のデータをデータセンターのサーバーに保管して日常のトラブルに対応、それ以前のデータはバックアップ用テープにコピーして長期保管に備えるなど、複数の方法を組み合わせることでそれぞれのメリットを得ることができます。
また、常に最新の状態に同期するという性質上、ミスで消失したファイルの復元用としては本来適していないレプリケーションも、「スナップショット」という技術を組み合わせることで、定期的なバックアップが可能となります。自社のニーズを満たすにはどうしたらよいか、柔軟な視点で検討してみましょう。