データバックアップ用磁気テープとは
磁気テープとは、テープ状の記憶媒体のことで、テープに磁性体を塗布して磁化の変化によって情報を記録します。特徴としては、他の記録媒体に比べて故障しにくく、データの長期保存に向いているという点が挙げられます。
また媒体が安価な上に、保管中は電源が不要なためランニングコストも低く抑えられます。加えて、磁気テープの素材である磁性体技術の進化により、大容量のストレージとデータの高速転送を実現し、情報記録装置としての付加価値が高まっています。
磁気テープが再注目された背景
では、なぜ磁気テープが今注目されているのか、その背景について解説していきます。
緊急事態に便利な磁気テープ
東日本大震災で被災した企業や自治体では、重要なデータの消失から復旧に手間取った反省点を踏まえ、新たな施策を実行しつつあります。その中のひとつが磁気テープでのバックアップです。BCP(事業継続計画)の一環として、停電でもデータを消失することがなく、緊急移動の際も対応しやすい磁気テープは、データバックアップツールとして企業間で再評価を得ています。
遠隔地データバックアップサービスとあわせて磁気テープの保存を行い、堅牢性の高いバックアップ体制を構築するのも有効でしょう。
データセンターにおけるITリソースの効率化
クラウドベンダーなど巨大なデータを扱う事業者が磁気テープ装置を導入するケースが増えています。磁気テープの高速で安価、長期保存に向いているという特性が、データセンターのアーカイブ用データストレージの代用として適しているからです。このように、適材適所でITリソースを効率的に運用するため、磁気テープが重用され始めています。
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データバックアップ用磁気テープのメリット
次に、磁気テープのメリットについて解説していきます。以下の3つについて詳しく見ていきましょう。
- ●HDDよりも大容量
- ●低コストな記録媒体
- ●高いユーザビリティ
HDDよりも大容量
テープの表面には磁性体といわれる、粒子状の磁石が塗布されています。2011年にこの磁性体の素材がメタルからバリウムフェライトに移行されてから、磁気テープの記憶容量は大幅な大容量化に成功しました。
またデータセンターで活用される磁気テープにはLTO(Linear Tape Open)という標準規格が採用されていますが、2012年に登場したLTO-6規格のテープカートリッジの1本の容量非圧縮で2.5TB (テラバイト)、2016年以降に登場したLTO-8では、最大12.8TBに達しています。
2020年にはLTO-9の詳細が発表され、容量は最大18TBで、圧縮転送速度は最大1,000MB/秒と、より大容量のデータを高速で転送することが可能になりました。
参考:LTO-9 · New LTO Generation 9 Specifications|LTO Ultrium
低コストな記録媒体
磁気テープで一度データを記録すれば、HDDのように保存の際に電力を消費する必要はなく、運用中の電力コストは1/6に抑えられると試算されています。
また、低コストで省エネ性能が高いうえに携行性にも優れていることから、長期に渡るデータ保存に適した記録媒体といえます。法令により数年間保管が義務付けられたデータをはじめ、大量の実験データや調査データを扱う企業でも将来のビッグデータ活用を見込んで導入を進めています。
高いユーザビリティ
磁気テープはランダムなアクセスができるデジタル記録媒体に比べて検索性は劣りますが、データ転送速度には優れています。
また停電でも、データは失われずウイルスへの感染の脅威さえも遠ざける特性は、データの長期的な保管用途に高い信頼性を発揮します。
なお、検索性についてはファイルシステム「LTFS」を使えば、HDDやUSBと同様にランダムアクセスができるようになるので問題ないでしょう。従来はテープ上のデータを利用したい場合、専用のバックアップソフトウェアでテープからデータを読み出して、ディスク上で利用するという手間があったのです。しかしLTFSならファイル単位でデータを操作できるので、そうした手間が必要ありません。
磁気テープの活用は適材適所に取り入れるのが有用
データバックアップの手法は業務形態やデータの活用頻度によってさまざまですが、データの容量が増えると総合的なコストが大きくなってしまいます。つまり、バックアップのコストパフォーマンスを考慮して再構築していくことが求められるのです。
例えば、アクセス頻度が高いデータは高速なフラッシュメモリーを採用したフラッシュストレージに、アクセス頻度が中位のデータはHDDに、アクセス頻度が少なくとも長期的な保存が必要とされるデータは磁気テープに、というように複数のストレージを柔軟に組み合わせていくと良いでしょう。
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