バックアップの必要性
データバックアップとは、データ破損に備えてシステムに蓄積されているデータを複製して、元に戻せるようにしておくことです。企業では日々経営情報などのデータが蓄積されるため、バックアップが頻繁に行われます。多くの場合、システムの自動バックアップ機能を利用していることが一般的です。また、長期間の保管を目的にアーカイブすることもあります。
データ消失の可能性は地震や洪水、火事などの大規模な災害の際ばかりではありません。常に身近に存在しています。最も多いのがうっかりミスです。作業中のデータをうっかり消してしまって一日分の労力をムダにしてしまった経験を持つ人は多いでしょう。パソコンやサーバの故障、ハードディスクの耐久性を原因とする故障は宿命ともいえます。データ破壊を目的としたウィルスも横行しています。
OSや業務アプリケーションであれば、パッケージからリカバリすることが可能ですが、自ら作成してきたデータは不可能です。このような事故に備えて、データバックアップは必須といえる対策となっています。
バックアップのシステム構成
データバックアップは専用のツールを使用して、バックアップシステムを構築します。通常、社内LANを経由して対象となるサーバに接続し、データを吸い上げバックアップメディアに複製します。バックアップ処理が社内LANに負荷を与える場合は、専用のネットワーク(SAN)を構築することもあります。
バックアップシステムの構築においては、バックアップストレージの選択も重要となります。主に次の種類が利用されています。
- ■ハードディスクドライブ(ストレージ)
- コンピュータの記憶装置であり、バックアップメディアとして一般に使用されています。I/O性能(入出力速度)が高いため、バックアップとリストア(復元)が短時間で行えるメリットがあります。現在ではバックアップやアーカイブに適した低価格な製品も流通しています。
- ■クラウドストレージ
- 近年、ハードディスクドライブと同様にバックアップメディアとして普及しました。インターネット上にバックアップデータを保存するため、インターネットにつながっているデバイスであれば、データのバックアップやアクセスが可能な点がメリットです。しかし、バックアップ・リストア速度は回線状況に左右される点に注意が必要です。
- ■磁気テープ
- 古くから使われているメディアです。複数のテープを自動で交換する装置(オートローダ)も一般に使用されています。ランダムアクセスできないため、細かいデータのバックアップには適しませんが、アクセス頻度が少ないデータの長期保管に最適です。また、容量が大きいのでシステム全体のバックアップにも向いています。
バックアップの種類
データバックアップ方法は「フルバックアップ」「増分バックアップ」「差分バックアップ」の3種類があります。
- ■フルバックアップ(完全バックアップ)
- バックアップ時点のデータをすべて複製します。最もシンプルな方法で複製したデータがすべて1か所のバックアップ先にまとまっているため、リストアの際にデータを探す必要がありません。 ただし、対象となるデータをバックアップするたびにすべて複製するため、バックアップに時間がかかるうえに、ストレージの容量も必要です。
- ■増分バックアップ
- 前回のバックアップ時点から変更されたデータだけをバックアップ対象にして複製していく方法です。バックアップデータの容量が削減でき、処理にかかる時間も大幅に短縮できます。ただし、リストアの際にはフルバックアップした時点まで戻り、そこから増分データを取得した分だけ順番にデータをリストアしていくことになります。増分の世代がフルバックアップ時から離れれば離れるほど、リストアの回数が増え煩雑な処理になります。
- ■差分バックアップ
- 1度フルバックアップを行い、それ以降に変更/追加された分をまとめて複製するバックアップ方法です。バックアップにかかる時間は短縮され、リストアの際もフルバックアップと直前の差分バックアップの2回の処理で対応できるようになります。データ容量も削減でき、保存するメディアスペースの節約も可能です。
特徴を理解し最適なデータバックアップを
一言でデータバックアップといっても、今回紹介したとおりさまざまな方法があります。それぞれの特徴を理解したうえで、データの破損や消失は当然起こりうるものと捉えておくことが重要です。できる限りビジネスを止めることがないよう、確実なデータバックアップと復旧可能な環境を整えておきましょう。