業種でDWHの要件が変わる理由
DWHとは、複数のシステムから集めたデータを分析しやすい形で蓄積しておく基盤です。同じ仕組みでも、業種によって重視される点は変わります。
扱うデータの種類と量の違い
業種によって、集まるデータの性質が異なります。注文や取引の記録のように1件ずつ積み上がるデータもあれば、設備から送られる測定値のように短い間隔で大量に届くデータもあります。データの届き方によって、取り込みの設計が変わります。
検討の前に、扱いたいデータの種類、1日あたりの件数、保存したい期間を整理しましょう。件数が多いデータについては、すべてを細かい単位で保持するのか、一定期間を過ぎたら集約するのかも決めておきます。この方針が費用と処理時間の両方に影響するため、早い段階でベンダーへ相談してみてください。
求める更新の速さの違い
分析の目的によって、どの時点までのデータが必要かが変わります。前日までの実績で判断できる業務もあれば、当日の状況を見ながら動く業務もあります。求める速さが上がるほど、取り込みの仕組みも複雑になります。
整理の際は、分析の用途ごとに必要な鮮度を書き出しましょう。すべてを最新の状態にする必要はなく、用途によって分けると設計が現実的になります。あわせて、各システム側がどの頻度でデータを提供できるかも確認が必要です。元のシステムが1日1回しか出力しない場合、基盤側だけを速くしても意味がありません。
EC通販と小売業のDWH要件
販売と在庫のデータを扱う業種では、複数の販売経路の情報をどうまとめるかが論点になります。
EC通販で確認したい条件
EC通販では、自社のサイトに加えて複数の販売先を使っている場合があります。それぞれで商品や顧客の識別方法が異なると、集めた後に対応づける作業が必要になります。この作業をどこで行うかが設計の分かれ目です。
確認したいのは、販売先ごとのデータを取り込む手段があるか、対応表を使って項目を変換できるか、取り込みの頻度を経路ごとに変えられるかという点です。あわせて、閲覧の記録のような件数の多いデータを扱う場合は、その量での処理時間も確認しましょう。キャンペーンの時期に件数が急増する可能性も、あわせて伝えておくと現実的な提案を受けやすくなります。
小売業で確認したい条件
店舗を持つ小売業では、レジの記録、在庫の状況、発注の情報を組み合わせて分析します。店舗ごとにデータが発生するため、拠点数が多いほど取り込みの管理が重要になります。
確認したいのは、店舗単位でのデータ取り込みが管理できるか、一部の店舗で失敗した際に把握できるか、店舗別に閲覧できる範囲を分けられるかという点です。店舗の担当者にも数値を見てもらう場合は、権限の設定が必要になります。あわせて、店舗の開閉や区分の変更があった際に、過去のデータとどう対応づけるかも確認しておきましょう。
金融機関と医療法人のDWH要件
扱う情報の重要度が高い業種では、保管の条件と記録の残し方が確認の中心になります。
金融機関で確認したい条件
金融分野では、参照すべき安全管理の指針があり、データの保管場所や暗号化の扱いについて条件が定められている場合があります。まず、自社が参照する指針の該当項目を整理しましょう。
確認したいのは、データを保管する場所を選べるか、通信と保管における暗号化の扱いはどうか、誰がどのデータへアクセスしたかの記録が残るかという点です。あわせて、データの出どころと加工の経緯をたどれる仕組みも確認項目です。報告する数値の根拠を説明できる状態が求められる場合、この仕組みが必要になります。要件の整理は、監査担当や専門事業者と進めてください。
医療法人で確認したい条件
医療機関では、診療に関する情報を扱うため、取り扱いの条件が厳しく定められます。分析に使う際に、個人を識別できる情報をどこまで含めるかを先に決める必要があります。
確認したいのは、識別できる情報を取り除いたうえで蓄積する仕組みがあるか、閲覧できる範囲を細かく設定できるか、操作の記録が残るかという点です。医療分野の安全管理に関する指針は改定されるため、最新版の該当項目を院内の担当者と照合したうえで要件を固めましょう。電子カルテを提供する事業者とも、データの取り出し方法をすり合わせる必要があります。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でDWHの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
製造業とIT企業のDWH要件
設備やサービスから継続的にデータが届く業種では、取り込みの仕組みと保持の方針が論点になります。
製造業で確認したい条件
製造の現場では、設備から測定値が短い間隔で送られる場合があります。件数が非常に多くなるため、すべてを細かい単位で保持し続けると容量と費用が増えていきます。
確認したいのは、大量のデータを継続して取り込める仕組みがあるか、一定期間を過ぎたデータを集約する処理を組めるか、古いデータを費用の低い保管方法へ移せるかという点です。あわせて、工場のネットワークが事務系と分離されている場合は、データをどの経路で送るかの検討も必要です。設備を担当する部門と一緒に、実現できる構成を確認してください。
IT企業で確認したい条件
自社でサービスを提供する企業では、利用状況の記録が大量に蓄積されます。契約の状況と利用の実態を組み合わせて分析する場面が多く、複数のデータを結び付ける処理が中心になります。
確認したいのは、処理の内容を記述で細かく指定できるか、開発の仕組みと組み合わせて設定を管理できるか、検証用の環境を用意できるかという点です。開発を担当する部門が運用に関わる場合は、その部門の担当者にも試用の機会へ参加してもらいましょう。接続手段の仕様が公開されているかも、自動化を進めるうえで確認しておきたい項目です。
顧客データの統合と業種別の整理
複数の経路から集めた顧客情報をまとめる場面では、識別と重複の扱いが課題になります。
マーケティング分野で確認したい条件
広告や販促を扱う企業では、複数の媒体やサービスから集めたデータを一人の顧客として結び付ける処理が必要になります。同じ人物が別の識別子で登録されている場合、どの条件で同一と見なすかを決めなければなりません。
確認したいのは、対応表を使った変換ができるか、同一と判断する条件を設定できるか、判断の結果を確認できるかという点です。あわせて、個人に関する情報を扱う際の同意の範囲や、社内の規程との整合も確認が必要です。取得の目的を超えた利用にならないよう、法務や管理部門と取り扱いを整理してから設計を進めてください。
業種ごとの確認項目を整理する
下表は、業種別に優先して確認したい項目をまとめたものです。同じ業種でも規模や取引先によって要件は変わるため、検討の起点として活用してください。
| 業種 | 優先して確認したい項目 |
|---|---|
| EC通販 | 販売先ごとの取り込み、項目の変換、急増時の処理時間 |
| 小売業 | 店舗単位の取り込み管理、失敗の把握、店舗別の閲覧権限 |
| 金融機関 | 保管場所の選択、暗号化の扱い、アクセス記録、経緯の追跡 |
| 医療法人 | 識別情報の除去、閲覧範囲の設定、指針の該当項目との照合 |
| 製造業 | 大量データの取り込み、集約処理、保管方法の切り替え |
| IT企業 | 記述による処理指定、設定の管理、検証環境、接続手段の仕様 |
| マーケティング | 対応表による変換、同一判断の条件、同意の範囲との整合 |
業種の要件を相談したいDWH
扱うデータの種類や求める更新の速さは業種によって異なります。設計から相談したい製品を紹介します。
DWH構築サービス ~貴社独自のデータモデル構築~
- 最適なデータモデリング
- 圧倒的な透明性
- 変更に強い
キヤノン電子テクノロジー株式会社が提供する「DWH構築サービス ~貴社独自のデータモデル構築~」は、企業ごとの要件にあわせてデータ基盤を構築するサービスです。データの統合や権限の管理、システム連携といった機能に対応します。処理の定義とメタデータの管理により、後から項目を追加する際にも対応しやすい構成を目指せます。
Dr.Sum
- 導入実績8,000社超!顧客満足度No.1・サポート品質ランク★★★
- 散在したデータを一元化、10億件のデータも1秒台で◆高速集計◆
- 直感的な操作で誰でも簡単にデータ分析が可能
ウイングアーク1st株式会社が提供する「Dr.Sum」は、複数のシステムから集めたデータを統合して集計・分析するためのデータ分析基盤です。プログラムを書かずにデータの加工や取り込みの処理を組み立てられるため、専任の開発者を置きにくい組織でも扱いやすい構成です。集計結果は使い慣れた画面から参照できます。
SmartDWH (株式会社システムサポート)
- ETL/EAI、DWH完備のデータ基盤を簡単・スピーディに構築
- 多様なデータソースと自動接続
- 収集元の差異を吸収し、統一形式に自動変換
AzureDataLake (日本マイクロソフト株式会社)
- 大容量データを柔軟に扱える高スケーラビリティなストレージ。
- 多様なデータ形式を一元管理。
- Azure分析基盤・AIサービスと連携し高度なデータ活用を支援。
DWHに関するFAQ
業種別のDWH選定について、よく寄せられる質問と回答をまとめました。
- Q1: 業種専用のDWH製品はありますか?
- 業種名を冠した製品が必ずしもあるわけではなく、汎用の基盤を業種の要件にあわせて設計する形が一般的です。導入実績のある業種をベンダーに確認すると要件のすり合わせが進みます。
- Q2: データの保管場所は選べますか?
- 製品によって対応が異なります。自社が参照する指針や社内規程で条件がある場合は、その内容を提示して対応可否を確認しましょう。
- Q3: 測定値のような大量データも扱えますか?
- 取り込みの仕組みと保持の方針によって変わります。1日あたりの件数と保存したい期間を伝えて、集約や保管方法の切り替えができるかを確認してください。
- Q4: 顧客データを統合する際の注意点は何ですか?
- 同一と判断する条件を決めることに加え、取得時の同意の範囲を超えた利用にならないかの確認が必要です。法務や管理部門と取り扱いを整理してから設計を進めましょう。
まとめ
業種別にDWHを選ぶ際は、扱うデータの種類と量、求める更新の速さ、保管と記録に関する条件という3点から整理すると判断しやすくなります。EC通販や小売業では複数経路の統合、金融や医療では保管と記録、製造やIT企業では大量データの扱いが論点です。顧客データの統合では同意の範囲も確認しましょう。自社の条件を整理したうえで、複数の製品資料を取り寄せて比較検討を進めてください。

