業種によってDX支援の懸念点が異なる理由
同じDX支援サービスを利用しても、業種によって業務の進め方や現場の環境が異なるため、うまく機能しない原因も変わります。まずは、懸念点が分かれる背景を三つの観点で整理します。
業務の進め方と情報経路の違い
製造業は工程ごとの作業、建設業は案件ごとの現場管理、卸売業は受発注の調整、小売業は店舗の運営が業務の中心です。業務の進め方が異なれば、記録される情報の種類や、情報が流れる経路も変わります。
DX支援を依頼するときは、自社の業務がどう進むのかを、支援会社に具体的に説明する必要があります。支援会社が同じ業種の支援経験を持つ場合でも、自社の進め方まで同じとは限らないため、個別の確認が欠かせません。確認の内容は、文書にして残しておきましょう。
現場の担い手と働く環境の違い
現場で働く人の年齢層、パソコンやタブレットの使用状況、作業場所の通信環境は、業種や企業によって異なります。工場の作業場や建設の現場では、端末を操作する時間を十分に取りにくい場合もあります。
現場の負担を考えずに新しい仕組みを設計すると、運用が定着しない可能性があります。支援会社には、現場への聞き取りや見学を設計の前に行ってもらえるかを確認しておくと安心です。実際の現場を見学してもらう日程も、早めに調整しておきましょう。
取引先や商習慣とのかかわり
取引先との受発注の方法や、書類のやり取りの慣習も、業種によってさまざまです。自社だけの判断で業務を変えると、取引先に負担が生じる場合があります。
DX支援では、社内の業務だけでなく、取引先とのやり取りに影響する部分を洗い出してもらうことが重要です。変更が取引先に及ぶ場合は、事前の説明や移行期間の設定も、支援内容に含まれるかを確認しましょう。取引先への案内文の作成を支援してもらえるかも、あわせて聞いておくと安心です。
製造業で懸念されやすい作業の属人化
製造業では、熟練者の経験にもとづく作業が多く、手順が文書として残っていない場合があります。DX支援を導入しても現場の業務が整理されていないと、支援の効果が出にくい可能性があります。
作業手順が人に依存している状況
熟練の担当者が、長年の経験で判断している工程は、手順書がなくても業務が回ってしまいます。そのため、DX支援の担当者から見ると、業務の流れや判断の基準が見えにくい場合があります。
こうした状況でシステムの導入を進めると、現場の実際の動きと設計した業務の流れが食い違う可能性があります。まず現状の作業を洗い出して記録する段階を、支援の最初の工程に入れておくと安心です。記録の方法は、写真や動画の活用も含めて相談できます。
標準化を支援に求める際の注意
標準化とは、作業の手順や判断の基準を統一し、担当者が変わっても同じ品質で進められるようにすることです。DX支援の中で標準化を支援してもらえる場合もありますが、現場の合意が前提となります。
支援会社が案を示しても、現場が納得しなければ標準化は進みにくくなります。標準化の範囲を最初から広げず、特定の工程や製品に絞って試すことを、支援会社と相談するとよいでしょう。試した結果は、他の工程へ広げる際の根拠になります。
現場の協力を得る進め方
熟練者の知識を引き出すには、現場の協力が欠かせません。通常業務で忙しい現場に、聞き取りや確認の負担が偏ると、協力が得にくくなる可能性があります。特定の担当者に依頼が集中しないよう、分担にも配慮が必要です。
経営層や管理者が目的を現場に説明し、聞き取りの時間を業務の中に確保しましょう。支援会社に、現場向けの説明資料や、短時間で進められる聞き取りの方法を用意してもらえるかも確認しておきたい点です。聞き取った内容は、現場にも共有しましょう。
建設業で懸念されやすい導入の難しさ
建設業は、案件ごとに現場が分かれ、協力会社も多く関わります。DX支援を導入する際は、現場の分散や情報共有の範囲が、うまく進まない要因の一つとなる場合があります。
現場が分散していることによる運用差
建設業は、複数の現場が同時に動き、現場ごとに管理者や進め方が異なる場合があります。新しい仕組みを導入しても、現場ごとに使い方が変わると、データがそろわず、集計や分析に支障が出る可能性があります。
導入の初期は、代表的な現場を選んで試し、運用ルールを整えてから広げる進め方が考えられます。支援会社に、現場への展開計画や、現場向けの研修を含めて提案してもらえるかを確認しましょう。展開の順番は、現場の事情を踏まえて決めることが大切です。
協力会社との情報共有のルール
建設業では、協力会社と図面や工程表などの情報をやり取りする場面が多くあります。外部の支援会社が加わると、情報を共有する範囲や、閲覧できる人の権限を整理する必要があります。協力会社ごとに利用している端末や連絡手段が異なる場合も考えられます。
誰がどの情報を見られるか、持ち出しや再委託を認めるかは、契約や社内の規程でそろえておきましょう。情報の扱いに不安がある場合は、情報システム部門や専門家への相談も選択肢です。協力会社にも、決めたルールを事前に説明しておきましょう。
繁忙期や工期への影響
工事が集中する時期は、現場の担当者が支援会社との打ち合わせや研修に時間を割きにくい場合があります。導入の時期が悪いと、現場の負担が増え、定着が遅れる可能性があります。工期を優先して研修が後回しになると、使い方が浸透しない可能性も考えられます。
工期や繁忙期のカレンダーを支援会社と共有し、導入や研修の日程を調整しましょう。現場の状況に応じて、スケジュールを見直せる契約になっているかも確認しておくと安心です。繁忙期の前に準備を終える計画も、選択肢の一つです。
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卸売業と小売チェーンで懸念される運用面の差
卸売業は取引先ごとの個別の条件、小売チェーンは店舗ごとの運用の違いが、DX支援の運用で課題になりやすい点です。運用が始まってから不具合を感じないよう、事前の備えを確認しましょう。
卸売業の取引先ごとの個別条件
卸売業では、取引先ごとに価格や納期、請求の方法などの条件が異なる場合があります。個別の条件が文書にまとまっていないと、新しい仕組みに反映できず、運用開始後に手作業が残る可能性があります。
DX支援を依頼する前に、取引先ごとの条件を一覧にして、例外の扱いを整理しておきましょう。支援会社に、例外的な条件をどこまで仕組みに反映できるか、反映が難しい場合の運用案を提示してもらうと進めやすくなります。取引先の担当者との調整が必要な場合は、その進め方も確認しましょう。
小売チェーンの店舗ごとの運用差
小売チェーンでは、店舗の規模や立地、スタッフの習熟度によって、同じ仕組みでも使い方に差が出る場合があります。差が大きいまま運用を続けると、本部で情報を集計する際に支障が出る可能性があります。
運用の差をなくすのではなく、本部が守るべき基本ルールと、店舗で調整してよい範囲を分けて決める方法があります。支援会社に、店舗向けの手順書や問い合わせ窓口の整備も含めて相談しましょう。店舗の意見を集める場を設けると、現場に即したルールを作りやすくなります。
本部と店舗の連絡体制の整備
運用中に不明点やトラブルが生じたとき、店舗が誰に相談するかが決まっていないと、対応が遅れます。本部、店舗、支援会社の三者の連絡経路を、運用の開始前に整理しておきましょう。連絡の手段は、店舗の担当者が使い慣れたものにあわせると、負担を抑えられます。
連絡の内容や頻度を記録し、よくある質問を共有する仕組みを作ると、同じ問い合わせの繰り返しを減らせます。支援会社の対応時間が店舗の営業時間にあうかも、事前に確認しておきたい項目です。
業種別の懸念点にDX支援で備える方法
業種によって懸念点は異なりますが、依頼前にできる備えには共通する部分もあります。ここまでの内容を整理したうえで、支援会社へ確認したい事項をまとめます。
| 業種 | 懸念されやすい点と対策の例 |
|---|---|
| 製造業 | 作業の属人化。現状の洗い出しと、範囲を絞った標準化 |
| 建設業 | 現場の分散。代表的な現場での試行と、協力会社との共有ルールの整備 |
| 卸売業 | 取引先ごとの個別条件。条件の一覧化と例外の運用案 |
| 小売チェーン | 店舗ごとの運用差。基本ルールと調整範囲の区分 |
支援会社の同業種での経験を確認する
自社と同じ業種での支援経験があるかを、事例や担当者への質問で確認しましょう。業種の用語や商習慣を理解している支援会社は、現場への聞き取りが進めやすくなる場合があります。
ただし、経験があるからといって、自社の業務にあった支援になるとは限りません。事例の企業と自社で、規模や業務の進め方がどの程度近いかをあわせて見ると、判断しやすくなります。質問の際は、現場の課題や、うまくいかなかった点にも触れてもらいましょう。
懸念点を契約前に洗い出す
契約の前に、自社の懸念点を書き出して支援会社に共有しましょう。書き出す際は、現場の担当者や店舗の責任者からも意見を集めると、見落としを減らせます。確認しておきたい項目を、次のリストにまとめます。
- ■現場の業務の流れ
- 手順書の有無と、現場への聞き取りの実施方法
- ■運用ルール
- 現場や店舗ごとの差を許容する範囲と、本部が決める範囲
- ■困ったときの連絡先
- 相談窓口と対応時間、担当者が不在時の代替窓口
懸念点が共有されていれば、支援会社も提案に反映しやすくなります。見積もりの段階で追加の費用が必要になる項目がないかも、あわせて確認しておきましょう。回答は文書で受け取り、契約時の資料と一緒に保管しておくと安心です。
範囲を絞った試行から始める
最初から全社に広げず、特定の部門や現場、店舗で試して、うまくいった点と課題を確認しましょう。試行の結果をもとに、運用ルールや研修の内容を修正できます。試行の期間や評価の基準は、支援会社と事前に決めておきます。
評価の基準は、現場の負担や定着の度合いなど、数値と感想の両方で設定するとよいでしょう。うまくいかなかった場合の対応や、範囲を広げる判断の基準も共有しておくと、進め方を見直しやすくなります。結果は文書にまとめ、関係者で共有しましょう。
現場の事情を踏まえて相談できるDX支援
業種ごとの懸念点に向き合うには、自社の現場の状況を伝えて相談できる体制が重要です。属人化や現場の運用に関わる支援を行うサービスを紹介します。対応できる業種や範囲は、個別に確認しましょう。
情シスSourcing(ソーシング)
- 企画業務から運用業務までほぼ全領域での支援が可能
- どんな情報システム業務も、半日作業から個別依頼ができる
- 情報システム部員を本来の企画業務へシフトすることが可能
ハイブリィド株式会社が提供する「情シスSourcing(ソーシング)」は、情報システム業務をコンサルティングから運用支援までアウトソーシングできるサービスです。属人化によって非効率になっている業務は、委託に切り替える時点でフローとマニュアルを整備し、標準化や効率化につなげるとしています。対象は従業員10名以上、提供エリアは全国です。クライアントのスタッフにナレッジを引き継ぎながら、情報システム部門の成長を促す姿勢も示されています。
ICTコンシェルジュ
- 「売上拡大」「業務効率改善」「リスク回避」を実現
- 定期訪問により課題に合わせた解決策を伴走支援
- IT周りのお困りごともリモートサポートにて即時対応
株式会社テクニカが提供する「ICTコンシェルジュ」は、定期訪問を通じて、企業の環境を把握するDX支援サービスです。現状の把握と課題の可視化を経て改善に取り組み、IT周りの困りごとにはリモートサポートで即時対応するとしています。対象は従業員10名以上500名未満、提供エリアは近畿です。PCの健康状態やセキュリティ状況の報告など、情報管理体制を見える化する支援も案内されており、現場の状況を見ながら進めたい場合に確認できます。
スポットPM
- 従来の一般的なコンサルとは異なり、低予算・小規模でも相談可能
- リサーチから運用まで、プロジェクトをスピーディーに推進
- プロジェクト専属のAIエージェントで工数削減とナレッジ化を実現
rayout株式会社が提供する「スポットPM」は、低予算・小規模でも相談できるPM(プロジェクトマネジメント)サービスです。人事や新規事業、採用、マーケティングなど、さまざまなプロジェクトに、リサーチ・設計、プロトタイプ、運用の3つのフェーズで対応するとしています。提供エリアは全国です。社内のプロジェクトを推進する担当者が不足している場合や、現場の事情を計画に反映したい場合の相談先として確認できます。
DXモジュールシリーズ (株式会社FAプロダクツ)
- シミュレーションで最適生産投入を自動化
- 仮想空間で設備を再現するバーチャルコミッションニング
- 設備異常を予知保全システムで検知「Siluro」
H&K (株式会社H&K)
- HubSpot Diamondパートナーに選出(120社中1社)
- 戦略~実行まで一気通貫でROI最大化
- 事業計画、KGI・KPI、市場分析に対応
ソフトバンクコンソーシアム (ソフトバンク株式会社)
- 5G活用の5領域で課題整理からPoCまで支援。
- 会員企業と有識者による共同ユースケース検討
- 検討成果を発信し企業間連携を促進。
DX支援に関するよくある質問
DX支援の業種別の懸念点についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:同じ業種の支援経験があれば、安心して任せられますか?
- A:経験は参考になりますが、自社の業務の進め方まで同じとは限りません。事例の規模や運用体制が自社に近いかをあわせて確認しましょう。質問の際は、うまくいかなかった点も聞いてみると参考になります。
- ■Q2:現場の業務が属人的でも、支援を依頼できますか?
- A:依頼できる場合があります。まず現状の作業を洗い出して記録する工程を、支援の最初に含めてもらうとよいでしょう。
- ■Q3:店舗ごとに運用の差があるときは、どう備えればよいですか?
- A:本部が守る基本ルールと、店舗で調整してよい範囲を分けて決める方法があります。店舗向けの手順書や問い合わせ窓口も、あわせて相談しましょう。
- ■Q4:懸念点は、いつ支援会社に伝えればよいですか?
- A:契約前に書き出して共有すると、提案や見積もりに反映されやすくなります。範囲を絞った試行から始めて、課題を確認する進め方もあります。見積もりの追加費用の有無も、あわせて確認しましょう。
まとめ
DX支援・コンサルティング・アウトソーシングの業種別の懸念点は、製造業の属人化、建設業の現場の分散、卸売業の取引先ごとの条件、小売チェーンの店舗ごとの運用差が挙げられます。原因は支援会社と依頼側のどちらか一方にあるとは限らず、進め方や現場の状況も影響します。懸念点を事前に共有し、範囲を絞った試行から始めましょう。気になる支援会社があれば、資料請求で詳細を確認してください。

