地理情報システムとはどのような仕組みか
活用場面を見る前に、何を扱う仕組みなのかを押さえておきましょう。商圏分析との関係を理解すると、必要な機能も見えてきます。
地理情報システムの基本的な役割
地理情報システムとは、位置に関する情報を地図上に重ねて表示し、分析や判断に使えるようにする仕組みです。英語の頭文字からGISと呼ばれることもあります。
扱う情報は、公的な統計にもとづく人口や世帯の分布、道路や鉄道の位置、施設の所在地などです。これらに自社の店舗や顧客、売上の情報を重ねることで、地域ごとの状況を確認できます。表計算ソフトの数値だけでは把握しにくい、距離や広がりを踏まえた検討が進めやすくなります。
商圏分析での位置づけ
商圏分析とは、店舗や施設に来訪する可能性のある範囲を捉え、その中の状況を把握する取り組みです。地理情報システムは、その分析を支える土台にあたります。
範囲の捉え方には、距離で円を描く方法と、道路や移動の時間を踏まえて範囲を求める方法があります。後者のほうが実態に近づきやすい一方、必要なデータも増えます。どちらの方法に対応するかは製品によって異なるため、目的にあわせて確認しましょう。
業種から見た活用場面
事例で扱われる場面は、業種によって重点が異なります。三つに分けて確認します。
小売業や飲食業での活用
出店の候補地を検討する場面や、既存店の商圏を把握する場面での活用です。候補地の周辺にどのような世帯が多いか、競合がどこにあるか、人の流れがどう分布しているかを地図上で確認します。
既存店の売上と商圏の状況を照らし合わせ、成果の出ている店舗と共通する条件を探る使い方もあります。ただし、売上を左右する要素は立地だけではありません。品ぞろえや運営の状況も関わるため、地図から得られる情報は判断材料の一つとして扱う姿勢が求められます。
不動産業や金融業での活用
物件の周辺環境を確認する場面や、支店の配置を検討する場面での活用です。周辺の施設や交通の状況、世帯の分布を確認し、提案や説明の資料として使われます。
顧客の所在地を地図上に表示し、どの地域に集中しているかを把握する使い方もあります。営業の担当区域を見直す際の材料にもなります。個人に関わる情報を扱う場合は、利用目的の範囲内で扱うよう社内規程との整合を確認しておきましょう。
物流やインフラ関連での活用
配送の経路を検討する場面や、拠点の配置を見直す場面での活用です。配送先の分布を地図上で確認し、拠点からの距離や移動の時間を踏まえて範囲を分ける検討が進められます。
設備の保守を担う事業では、点検の対象がどこに分布しているかを把握し、巡回の計画に使う例もあります。現地での確認結果を地図上に記録できる構成であれば、次回以降の計画にも活用できます。
目的から見た活用場面
業種を問わず語られる目的もあります。二つに分けて確認します。
出店や撤退の判断
新しい拠点を設ける際の候補地の比較や、既存拠点の見直しに使う場面です。候補地ごとに商圏の状況を同じ条件で整理できるため、担当者の印象に頼らない比較が進めやすくなります。
ただし、示されるのは統計にもとづく傾向であり、将来の売上を保証するものではありません。地域の再開発や交通の変化といった要素は、データに反映されるまでに時間差があります。現地での確認とあわせて判断する進め方が欠かせません。
販促の対象地域の絞り込み
チラシの配布地域や広告の対象範囲を決める場面です。既存顧客の分布と地域の特性を照らし合わせ、反応が見込める範囲を絞り込みます。
配布した地域と、その後の来店や問い合わせの状況を比べることで、次回の判断材料も得られます。効果の測り方をあらかじめ決めておくと、振り返りを進めやすくなります。反応には季節や競合の動きも影響するため、単一の要因に結び付けない見方が求められます。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で商圏分析・エリアマーケティングツールの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
活用事例を読み解く際の着眼点
公開されている事例をそのまま自社に当てはめると、想定と異なる結果になることがあります。読む際に確認したい点を二つ挙げます。
使用データの出所と更新時期
分析の結果は、もとになるデータの内容に左右されます。公的な統計は調査の時点が決まっており、直近の状況を反映しているとは限りません。事業者が独自に整備したデータでは、集計の方法や範囲が異なる場合があります。
事例を読む際は、どのデータを使った分析なのか、いつ時点のものかを確認しましょう。データの更新がどのくらいの頻度で行われるかは製品によって差があります。判断の重みが大きい用途では、この点を事前に確かめておく必要があります。
分析結果と実際の判断の関係
事例では分析の結果が示されますが、実際の判断がその結果だけで行われたとは限りません。現地の確認、担当者の知見、賃料や契約の条件といった要素もあわせて検討されているはずです。
地図上で示された内容をそのまま結論として扱うと、判断を誤る可能性があります。分析は選択肢を絞り込む工程として位置づけ、最終的な判断は複数の材料をもとに行う進め方が現実的です。
エリアマーケティングツールの選び方
ここまでの内容を踏まえ、製品を選ぶ際の確認事項を整理します。
目的と扱いたいデータの整理
最初に、何を判断するために使うのかを具体化します。出店の検討が中心なのか、販促の対象を絞りたいのか、営業の区域を見直したいのかによって、必要な機能とデータが変わります。
あわせて、どのデータを使いたいかを整理しましょう。人口や世帯の分布、事業所の情報、人の流れに関するデータなど、扱える範囲は製品によって異なります。追加の契約が必要なデータもあるため、費用とあわせて確認しておきましょう。
自社データとの連携範囲
自社の顧客情報や売上のデータを地図上に重ねられるかは、活用の幅を左右する要素です。取り込める形式と件数の上限を確認しておきましょう。
顧客管理システムや販売管理システムとの連携が可能であれば、更新の手間を抑えられます。個人に関わる情報を扱う場合は、保管される場所や取り扱いの方針もあわせて確認が必要です。判断に迷う部分は、社内の個人情報保護の担当に相談しながら進めましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じた月額制、使用するデータの範囲によるプラン分け、初期費用と月額の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。データの追加が別料金となる場合もあるため、総額で比べることが必要です。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、分析の進め方を相談できるのかは製品ごとに差があります。社内に分析の経験者がいない場合は、この部分の充実度が活用を左右します。
目的別に選べる地理情報・エリアマーケティングツール
商圏分析や出店計画など、目的にあわせて検討できるツールを紹介します。
MEOアナリティクス
- 複数店舗の一元管理で情報の管理や運用にかかる作業工数を削減
- 情報の比較がしやすくなる、インサイト情報の一元表示
- 顧客とのコミュニケーションを活性化できる『クチコミ管理』
オルグロー株式会社が提供する「MEOアナリティクス」は、Googleビジネスプロフィールの検索順位やクチコミを分析できるツールです。店舗ごとの検索順位や口コミの状況を確認できる構成になっており、複数の店舗を持つ企業での一元管理に活用できます。
@commerce
- 候補案件を即座に全体共有・見える化し出店判断を高速化させる
- スキルを持ったデータサイエンティストによる高精度な分析
- 売上+商圏データの分析で最適なマーケティング戦略の立案へ
プロパティデータバンク株式会社が提供する「@commerce」は、不動産や店舗の情報を地図上で管理・分析できるシステムです。物件情報と周辺エリアのデータをあわせて扱える構成になっており、出店計画や商圏分析にかかわる検討を進めやすくなります。
Agoop流動人口データ (株式会社Agoop)
- 道路や建物単位の細かな人の動きを数分単位で把握。
- 日本総人口規模に拡大推計した来訪者人数を把握。
- 来訪者の居住エリア、年収、ライフスタイルなどを把握可能。
Google MapsPlatform (グーグル・クラウド・ジャパン合同会社)
- 詳細な世界地図とリアルタイム交通情報
- ブランドに合わせた地図を作成可能
- 豊富なAPI/SDKで統合が容易。
地理情報システムに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: 専門的な知識がなくても扱えますか?
- あらかじめ用意された分析の型を選ぶだけで結果を確認できる製品もあります。ただし、結果の読み取りには対象となる事業の理解が必要です。試用の機会があれば、実際に使う担当者に操作してもらい、判断できる内容かを確かめましょう。
- Q2: 表計算ソフトでの分析では足りませんか?
- 数値の集計だけであれば対応できます。距離や範囲を踏まえた検討や、地域ごとの偏りを視覚的に捉えたい場合に、地理情報システムの利点が出ます。判断したい内容を整理して、必要性を見極めるとよいでしょう。
- Q3: 分析の結果はどの程度信頼できますか?
- もとになるデータの出所と時点によって変わります。統計は調査の時期が決まっており、直近の変化は反映されていない場合があります。現地での確認や担当者の知見とあわせ、判断材料の一つとして扱うことが望まれます。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 標準のデータと機能を使う場合は短期間で始められることが多くあります。一方、自社データの取り込みや既存システムとの連携を伴う場合は準備に時間を要します。まず限られた範囲で試し、活用の見通しを立ててから広げる進め方も選べます。
まとめ
地理情報システムの活用事例では、小売や飲食、不動産や金融、物流やインフラといった業種ごとに使われ方が分かれます。出店や撤退の判断、販促の対象地域の絞り込みは、業種を問わず語られる目的です。事例を読む際は、使用しているデータの出所と時点、そして分析結果がどう判断に使われたかを確認しましょう。目的と扱いたいデータを整理したうえで、自社データとの連携や費用、サポートを比べて選ぶことをおすすめします。

