業務用と家庭用の無線LANの違い
業務用無線LANと家庭用無線LANの主な違いとして、同時にネットワーク接続できるデバイスの数や導入する機器、設置方法、セキュリティレベル、コストなどがあげられます。これらについて詳しく見ていきましょう。
接続可能なデバイスの数
無線LAN機器には接続可能なデバイス数が決まっており、デバイス数が超過すると通信の遅延や停止の恐れがあります。
家庭用無線LANの推奨接続デバイス数は一般的に15台前後とされています。それに対し、業務用無線LANの推奨接続デバイス数は40台ほどです。
数人程度のオフィスなら家庭用無線LANでも対応できますが、利用者が増え接続台数が多くなるほど通信速度の差が顕著になります。10人以上の法人では業務用の製品を選びましょう。
導入する機器
通常自宅に無線LAN環境を構築する場合は、無線LANアクセスポイントとルーター機能の両方をもった「無線LANルーター」を導入します。一方、企業では多くの場合、ルーターとアクセスポイントを別々の機器で用意します。なぜなら企業では接続デバイス数が多いうえ、広範囲に電波を飛ばす必要があり、1台のルーターに対して複数のアクセスポイントが必要となるためです。
また、企業では本社と支店といった拠点同士をネットワーク接続する「拠点間通信」を目的として構築されたルーターに無線LANを追加するケースも多く、その場合はアクセスポイントのみ必要とします。
設定、設置方法
家庭用の無線LANであれば、無線LANをモデムに接続し、デバイスを無線LANと接続することで開通します。モデムが不要な場合がありますが、設定設置手順に大きな違いはありません。
業務用の場合は縦置きや横置き、壁掛けなどいくつかの設置方法があり、オフィス環境に適した設置方法があります。複数の無線LANの用意やアンテナ調節を行うことで、オフィス内にまんべんなく電波が行き届くようになります。設定については機密情報漏えい防止を目的としたアクセス制限など、業務用ならではの複雑な設定が必要です。
セキュリティレベル
無線LANは通信内容を暗号化することで通信の安全性を高めています。暗号化規格・方式には一般的に解読が難しいWPA2/AESを採用しています。この点では業務用・家庭用で大きな違いはありません。
しかし、暗号化だけでは情報を盗み見られるリスクがあります。そこで、法人向け無線LANではRADIUSやLDAPなど、外部認証サーバとの連携により情報漏えいを防ぐ仕組みが採用されています。
導入にかかるコスト
業務用無線LANは家庭用と比べ高度な機能性や耐久性が求められるため、本体価格が高額です。価格は2~5万円が一般的でしょう。また、機器の管理や点検の費用に加え、月額料金もかかります。料金の相場は月額2~3千円です。
それに対し、家庭用の無線LANは安価です。本体は数千円から1万円程度で購入可能なうえ、ランニングコストはかかりません。
企業が家庭用無線LANを使う場合の問題点
インターネット接続の仕組みに大きな違いはないうえ、店舗やオフィスでも家庭用無線LANは使用可能なため、安価で手軽に導入できることを理由に家庭用ルーターを使っているという事業所もあるでしょう。
しかし、家庭用の無線LAN機器は一般住宅の広さを想定しているため、店舗やオフィスの広い範囲にまんべんなく電波を届けることは困難でしょう。 電波の届く範囲を広げるために複数台配置すると、電波干渉を引き起こし通信速度が低下してしまう場合もあります。
また、家庭用無線LANは業務用に比べて情報漏えいを防ぐ機能が弱いため、機密情報を取り扱う企業での利用には注意が必要です。無線LAN利用時の注意点を「3つの約束」として総務省も掲げています。
- 約束1 無線LANを利用するときは、大事な情報はSSL/TLSでやりとり
- 約束2 公共の場で無線LANを利用するときは、ファイル共有機能を解除
- 約束3 自分でアクセスポイントを設置する場合には、適切な暗号化方式を設定
参考:これだけはやっておきたい!「無線LAN情報セキュリティ3つの約束」|政府広報オンライン
なお、以下の記事ではおすすめの法人向け無線LANを比較しています。法人向け無線LANの具体的な製品が知りたい方は、あわせて参考にしてください。
業務用無線LANの選び方
業務用無線LANを選ぶ際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
対応する電波の通信規格を確認する
無線LANは対応する通信規格によって通信の品質が変わります。代表的な通信規格は以下のとおりです。
- 【IEEE802.11ad】
- 最大通信速度:6.7Gbps
- 周波数帯:60GHz帯
- 【IEEE802.11ac(Wi-Fi5)】
- 最大通信速度:6.9Gbps
- 周波数帯:5GHz帯
- 【IEEE 802.11ax(Wi-Fi6)】
- 最大通信速度:9.6Gbps
- 周波数帯:2.4GHz帯,5GHz帯
周波数帯によって適した環境が異なります。60GHz帯は狭い範囲、2.4GHzは広い範囲に適していて、5GHz帯は電子レンジやBluetoothの影響を受けにくいのが特徴です。利用環境を考慮したうえで適切な規格を選びましょう。
また、デバイスによって対応規格が異なるため、接続デバイスの仕様も考慮する必要があります。最新規格はWi-Fi6(11ax)ですが、まだデバイスが対応していないケースもあります。自社の利用するデバイスの対応規格を確認したうえで選びましょう。
アンテナの配置場所を確認する
無線LANはアンテナの位置によって内蔵型と外付け型があります。
内蔵型はアンテナが無線LAN機器の内部に配置されているため、外観上はアンテナがありません。店舗内に配置するなど、見栄えにこだわる場合は内蔵型が好まれる傾向にあります。また、電波が広範囲にバランスよく届くのが特徴です。
それに対し、外付け型は無線LANの表面にアンテナが突き出しています。外付け型のほうが電波の感度が良好で、フロアをまたぐオフィス空間にも向いています。特に、アンテナの向きによって電波を目的の方向に届けられるのが特徴です。価格は高性能な分、内蔵型より高額な傾向にあります。
外観や性能、コストを総合的に考慮し適したものを選びましょう。
同時接続台数を確認する
無線LANを導入する際は、自社の企業規模や従業員数、接続デバイス数を把握し、その数に対応できる製品を選びましょう。
また、1つの無線LANで通信が混在した際に、自動で別の無線LANに通信を振り分ける「ロードバランサ機能」があると、より通信が安定します。
セキュリティを確認する
業務用無線LANには、主に以下のようなセキュリティ機能が備わっています。
- プライバシーセパレータ機能
- アクセスポイントを経由し、無線の端末同士が交信して覗き見されることを防ぐ機能。
- MACアドレスフィルタリング機能
- 無線LANのただ乗りや、内部ネットワークの覗き見を防ぐ機能。
- 認証機能
- 複数の認証方法を選択できるEAPと、共有された符号をもとに暗号鍵を生成するPSKがある。企業ではEAPが利用されることが多い。
- 暗号化方式
- TKIPとAESに分けられる。AESは次世代の暗号化方式で、TKIPよりも高い安全性を誇る。
業務用無線LANを導入する際、情報漏えいを防ぐためにもセキュリティの確認は重要です。自社にあったセキュリティ機能がある製品を選択しましょう。以下の記事では無線LANのセキュリティの仕組みについて詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
手軽に無線LAN環境を構築する方法
オフィスに無線LAN環境を構築するには、自社に適した製品を選び、適切に設置や設定をする必要があるため、時間も労力もかかります。手軽で確実に構築したいという場合には無線LAN構築サービスの利用がおすすめです。 無線LAN構築サービスでは、最適な無線LANの選定から、環境構築までを一貫して任せることができます。自社で独自に構築するよりも、手軽で確実な方法だといえるでしょう。
業務用無線LANの特長を理解してオフィスに導入しよう
企業で無線LANを導入する際は、接続可能デバイス数やセキュリティ機能の点から、家庭用無線LANではなく業務用無線LANを選択するのが理想的です。また、無線LAN環境の構築が難しい場合は、無線LAN構築サービスを利用するのもおすすめです。
業務用と家庭用の違いや無線LANの選び方を把握して自社に最適な無線LANを導入しましょう。以下のボタンより無線LAN構築製品の一括資料請求が可能です。興味のある方はぜひご利用ください。