企業向け無線LANの基本構成
企業向け無線LANとは、オフィスや工場などの業務環境で使用される無線ネットワークのことです。業務に必要な安定性やセキュリティ性の高さ、管理のしやすさなどが重視されます。企業向け無線LANの主な構成要素は以下のとおりです。
- ■無線クライアント
- パソコンやタブレット、プリンタなど、無線でネットワークに接続するデバイスのこと。内蔵の無線モジュールで接続するものもあれば、LANカードやUSB無線子機を使って接続するものもあります。
- ■アクセスポイント(AP)
- 無線クライアントと有線ネットワークをつなぐ装置。ネットワークの中継点として機能します。無線LANの「ハブ」ともいえる存在で、複数のデバイスがインターネットや社内ネットワークに接続できるようにします。
- ■無線LANコントローラー
- 複数のアクセスポイントを一括で設定・管理するための機器。アクセスポイントの接続状態を監視したり、セキュリティ設定を一元化したりするのに役立ちます。
- ■PoE対応アクセスポイント
- ネットワークケーブル経由で電源を供給する技術。電源が取りにくい場所にアクセスポイントを設置する場合に使うと便利です。例えば、天井などにまとめて設置できます。
なお、アクセスポイントは、管理方式によって自律型と集中管理型の2種類にわけられます。自立型は、1つのアクセスポイント単体で動作する方式で暗号化や接続設定を個別に行えるのが特徴です。集中管理型は、複数のアクセスポイントを1つのコントローラーでまとめて管理できます。
企業での無線LANは、性能や管理のしやすさを重視して、集中管理型のアクセスポイントを利用するのが一般的です。アクセスポイントを一括管理することで、ネットワーク全体の安定性と通信速度の向上が可能になります。
企業向け無線LANと家庭用無線LANの違い
中小企業で無線LANの導入を検討する場合、小さなオフィスだから家庭用で十分と考える方もいるかもしれません。しかし家庭向けと企業向けでは性能に大きな違いがあります。
まず、ルーター機能の有無が挙げられます。家庭用の製品では基本的にルーター機能とアクセスポイントが一体化しています。一方、企業向けの製品ではアクセスポイント単体で提供されるのが一般的です。これは社内ネットワークにルーターがすでに導入されていることを前提としているためです。
次に、接続可能なデバイスの数にも大きな差があります。家庭用製品の場合、パソコンやスマートフォンなどの同時利用は3台程度を想定しているため、ビジネスでの対応は困難でしょう。企業向けでは数十台以上、また100台以上でも利用可能な製品があるので、ビジネスでもスムーズに利用できるスペックといえます。
企業向け無線LANの選び方
続いて、企業向け無線LANの選び方を解説します。
通信速度はどの程度か
無線LANの規格は、アクセスポイント選択時の重要項目といえます。最新の規格ほど高価で、速度も優れている傾向にあります。上位3規格を紹介するので参考にしてください。
- ■IEEE802.11ax(Wi-Fi6)
- 最大通信速度は9.6Gbps、周波数帯は2.4GHz帯/5GHz帯。2021年に標準化。同時接続・通信に強い、電波干渉があっても通信速度が落ちにくいなど、ユーザーがどこでも快適に利用できる環境を提供します。
- ■IEEE802.11ac(Wi-Fi5)
- 最大通信速度は6.9Gbps、周波数帯は5GHz帯。2014年に標準化。無線LAN専用の周波数帯(5GHz帯)で他の家電などによる電波干渉を受けにくく、安定した通信が可能です。その安定性から映像配信サービスにも向いています。
- ■IEEE802.11n(Wi-Fi4)
- 最大通信速度は300Mbps、周波数帯は2.4GHz帯/5GHz帯。2009年に策定。少し前の世代ではあるものの十分な通信速度をもち、手ごろな価格で利用できます。2.4GHz帯は通信距離が長く、天井や壁などの障害物にも強いのが特徴です。屋内や屋外を問わず利用できるでしょう。
接続台数はどの程度か
企業用無線LANを選ぶ際は、同時に接続できる台数を確認することが重要です。多くの製品では、10~20台程度の同時接続が可能です。さらに多くの規模になる場合は、50台以上の大規模利用に対応した製品を選びましょう。
また、ロードバランサ機能にも着目しましょう。これは負荷を分散する機能で、1つの無線LANで通信が混雑した際、自動で別の無線LANに通信を振り分けます。優れたロードバランサ機能が搭載されていれば、多くのデバイスで無線LANを使用する状況でも安定した通信が確保されます。
便利な機能が搭載されているか
企業向けの無線LANは、さまざまな便利機能を備えています。自社で利用したい機能を明確にし、製品を選びましょう。
- ■PoE
- 「Power over Ethernet」の略で、LANケーブルを使用して電力供給する機能のこと。この機能があれば、電源アダプタを接続しなくとも無線LANが稼働できます。特に壁や天井に設置するタイプなど、電源アダプタの接続が難しい無線LANの利用に適しています。
- ■設定のコピー
- 企業では多くの無線LANを使用しますが、1つひとつ設定するのでは膨大な手間がかかるでしょう。企業向け無線LAN製品の多くには、設定のコピー機能が搭載されています。この機能を利用すれば1台の無線LANで行った設定をほかの無線LANにコピーできるため、作業が効率化します。
セキュリティ機能は万全か
無線LANを選択する際、よく確認すべきなのはセキュリティ機能です。法人向けの無線LANでは以下のような機能を備えているので、自社のポリシーにあう製品を選択しましょう。
プライバシーセパレータ機能
「ネットワーク分離機能」「無線LAN隔離機能」「SSIDセパレータ機能」とも呼ばれます。アクセスポイントを経由し、無線の端末同士が交信して覗き見されることを防ぐ機能です。製品によっては同一のアクセスポイントのみ分離対応可能なものや、複数のアクセスポイントを経由しても対応可能なものがあるので、よく確認しましょう。
MACアドレスフィルタリング機能
無線LANのただ乗りや、内部ネットワークの覗き見を防ぐ機能の1つ。端末固有のMACをあらかじめ無線アクセスポイントに登録しておき、登録されていない端末からのアクセスを無効にします。
認証機能
認証機能はPSKとEAPにわけられ、PSKではアクセスポイントと子機に、事前入力した共通の文字列(鍵)を使用して認証します。EAPでは認証サーバを使用し、複数の認証方法から選択できるのが特徴です。企業ではEAPのほうが多く利用されているといえるでしょう。
暗号化方式
暗号化方式は、TKIPとAESにわけられます。TKIPは暗号鍵を一定の間隔で変更するため、安全性を維持できるでしょう。従来、一般的だったWEPという方式でセキュリティ上の脆弱性が見つかったため、代替手段として設計されました。しかしTKIPで脆弱性をすべて解消できるわけではありません。対してAESは次世代の暗号化方式で、まだ解読方法が見つかっておらず、高い安全性を誇ります。
セキュリティのオプション機能
無線LANルーター(スイッチ)を購入する際は、他にどのようなセキュリティ機能が搭載されているか確認しましょう。例えば次のようなものが挙げられます。
- ■Webフィルタリング: 有害サイトの閲覧をブロックする
- ■IPS:不正侵入を防止する
- ■アンチウイルス:ウイルスのLAN内侵入を防ぐ
- ■アンチスパム:スパムメールを排除する
- ■アプリケーションフィルタ:禁止アプリケーションを見張る
- ■帯域管理:帯域の使用状況を管理する
以下の記事では、おすすめの法人向け無線LANを多数紹介しています。特徴や価格も比較できるため、ぜひご活用ください。
企業向け無線LANの人気ランキングTOP3
ここからはITトレンドの2024年上半期資料請求ランキングのうち、上位3製品を紹介します。ぜひ参考にしてください。
製品・サービスのPOINT
- スマートフォンやタブレット端末で無線LANを活用したい方
- オフィスや施設などで無線LANをご検討されている方
- 中学、高校、大学でキャンパスネットワークを無線LANにしたい方
ITトレンド上半期ランキング2024(無線LAN構築)1位
「株式会社フルノシステムズの無線LAN構築」は、オフィスや店舗向けのクラウドWi-Fiサービスです。中小から大規模までの無線LAN環境構築に対応し、環境により異なるものの、同時に100台以上を接続できます。無償保証期間は5年間。万が一の故障時も先出しセンドバック保守で安心です。
参考価格 |
100,000円 ※詳細は別途ご相談 |
対象従業員規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
パッケージソフト / アプライアンス |
《ビジネスWi-Fi》のPOINT
- マネージドクラウドでアクセスポイントを遠隔設定管理
- 高セキュリティなWi-Fi
- Wi-Fiサポートセンターを設けている為、サポートが充実
ITトレンド年間ランキング2024(無線LAN構築)2位
株式会社USEN ICT Solutionsが提供する「ビジネスWi-Fi」は、クラウド型コントローラーにより煩雑な設定や管理が不要で、手間いらずの快適なWi-Fi環境を提供します。また、初期費用・月額費用共に導入しやすい料金設定で、コストを気にせず利用可能です。特許技術により電波干渉を抑え、WPA2エンタープライズの対応で高いセキュリティを確保しています。
参考価格 |
2,600円~ |
対象従業員規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
クラウド / SaaS / ASP / サービス |
《ACERA 1150w》のPOINT
- 動画機能をアクセスポイントに集約
- つながる、切れない無線LAN環境、40人クラスでも安心
- 2.4GHz帯/5GHz帯同時使用可、電波干渉に強い
ITトレンド年間ランキング2024(無線LAN構築)3位
株式会社フルノシステムズが提供する「ACERA 950」は、学校のICT化を強力にサポートする無線LANアクセスポイントです。タブレット画面をスムーズに大画面へ表示し、生徒と情報を共有しやすくします。セキュリティ面でも暗号化と認証方式を完備し、安全な通信環境を確保。さらに、高速ローミング機能により、授業中の接続切替えもスムーズに行えます。拡張性にも優れ、将来的な導入規模の拡大にも柔軟に対応します。
参考価格 |
ー |
対象従業員規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
アプライアンス |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
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企業が無線LAN環境を手軽に構築する方法
どのような無線LAN環境が自社に適しているかを検討し、実際に構築するのは難しいものです。手軽に、確実に構築したい場合は無線LAN構築サービスを利用するのがおすすめです。
このサービスでは、最適な無線LAN機器の選定から環境構築まで任せられます。電波状況や障害物の有無といった専門的な知識が必要なポイントも、プロの技術者が支援します。自社で独自に構築するよりも、確実で安心できる方法といえるでしょう。
まとめ
企業用の無線LANを選定する際は、自社にあった通信速度、同時接続台数はもちろんのこと、セキュリティ機能の確認も必ず行いましょう。
また、自社だけで環境を構築するのが難しい場合は、無線LAN構築サービスに任せるのもおすすめです。以下のボタンから各社製品の資料資料請求が可能なため、まずは資料を取り寄せ、製品について詳しく知ることからはじめてみましょう。